大洪水!1
新作小説の『大洪水!』の更新開始です!
JK2年生の美春は、尿意を我慢しながらなんとか玄関に辿り着くも(ry
●中野美春 春から夏へ
「はぁ~、退屈だなぁ~」
一人きり、放課後の教室で呟いたのは、
中野美春(なかのみはる)
と言う少女だった。
明るい茶色に染めた髪の毛をサイドアップにして、椅子の背もたれに寄りかかっているからゆらゆらと馬の尻尾のように揺れている。
どんぐり眼は退屈そうに教室の天井を見つめて、尖らせたおちょぼ口にはシャーペンを乗せて、見るからに退屈そうにしていた。
別にやることがないわけではない。
「ぜんぜん分からないし。……っていうか考えるの面倒だしっ」
美春の目の前にある机――、そこには補習用の数学のプリントが広げられている。
退屈というか、このプリントを終わらせなければ帰ることはできないのだが……、
楽天的な美春は、頭よりもペンを回転させ続けてただ無為に時間を過ごしていた。
他の生徒たちは既にプリントを終わらせて帰ってしまった。
美春の友達も、だ。
駅前の商店街に、新しいケーキ屋さんができたとかなんとか言って。
「薄情者~」
呟くも、しかし美春一人しかいない教室に虚しく響くばかりだ。
補習を見てくれていた教師でさえも、美春の手の遅さを見かねて職員室へと帰ってしまった。
時計へ視線をやると、もうすぐ十六時になろうかというころだった。
そろそろやる気のなくなってくる時間だ。
……元々無いじゃないか、というツッコミは抜きにして。
「あー、お腹空いたなー」
四角く切り取られた窓を見上げれば、ほんのりと黄金色に変わってきた春の日差しに、綿菓子のような雲が浮かんでいた。
ぐぅ~……。
実にタイミングがいいことに、お腹の虫が大きな声で鳴いてくれた。もう、やる気なんてないぞ、と。
「もう、やってらーれなーい!」
幸いなことに教師も、生徒も誰もいない。
それにこの数学のプリントだって、今日中に済ませる必要なんて、なーんにもないのだ。
「明日できることは、明日やろ~」
明日できることは明日やる。
これが美春の生き方だった。
今までだっていつもそうしてきた。
夏休みの宿題だって、テスト勉強だって。
……だから、こうして補習を受ける羽目になっているんだけど。
それでも今のところ上手くいってるから結果オーライ。
「みなさんさよーなら!」
美春はプリントと筆記用具を手早くカバンに詰め込むと、颯爽と教室を後にするのだった。
●1章目 玄関前で大洪水!
「あっ、ヤバ……」
美春がふと呟いてしまったのは、校門を出た直後のことだった。
下腹部を襲う、ツキーンとしたこの感覚は……。
「おしっこ……したくなってきちゃった、かも……」
でも。
これくらいならまだまだ大丈夫だ。
家まで歩いて二十分。
そのくらい我慢できるくらいの余裕はある……と、思う。
それに学校に引き返して、教師にでも鉢合わせしたら目も当てられないし。
「家に帰るまで、我慢できる、よね……」
美春は呑気に呟きながら、温かな春風が吹き抜けていく帰路を、ゆっくりと歩いていく。
☆
「ちょ……ッ、ヤバ……ッ! こ、これはぁ……ッ」
あと五分で家に着くというところで、美春の膀胱は今にも限界を迎えようとしていた。
思っていたよりも、無意識のうちにおしっこを我慢していたらしい。
今や、美春の膀胱は水風船のように膨らんでいた。
「うう~、お腹、冷やさないようにタイツ穿いてきたのに……っ」
今年の春はGW前だというのに肌寒い日が続くから、用心して黒タイツを穿いてきたというのに。
十六時を過ぎて、春宵の気配を孕んだそよ風が、美春の太ももをイタズラっぽく撫で回していった。
「さ、寒っ」
冷たい風に、ブルリと身体を震わせてしまう。
それがマズかった。
ジュワリ……、
クロッチの裏側に広がる、生温かい感触。
(やだ……チビッ、ちゃった……?)
ごまかしようのない感触に、背筋を滝のような汗が流れていく。
思っていたよりも残された猶予は少ないようだ。
「まだだ、まだ慌てる時間じゃ無い……!」
歩いてあと五分で家に着くのだ。
さすがにそのくらいは我慢できる……はず。
美春は、人気の無い帰路を、ちょっとだけ前屈みになりながら足早に急いでいく。
☆
「セ、セーフ!」
日本のどこにでもありそうな閑静な住宅街の一角にある、そのうちの一軒。
それが美春と、その家族が住んでいる家だった。
美春は家の門扉を震える手をかけると、キィ……、小さくも甲高い音とともに門扉が開く。
(ふう、ここまでくれば、もう安心っと。あ、危なかったぁ!)
ふっとため息をついてしまい――、それは明らかな隙だった。
ジョッッ!!
「あっ、あう!」
クロッチの裏側に広がる更なる感触に、美春は変な声を上げてへっぴり腰になってしまう。
……チビッた、にしては、ちょっと量が多すぎるようだ。
ジンワリとクロッチの外側にまで広がってきた感触は、黒タイツを伝って太ももにまで広がってきていた。
「ううっ、ヤバっ、も、漏れそう……っ」
トイレまであともう少しというところで、気が抜けてしまったとでもいうのだろうか?
尿意メーターが、一気にリミットブレイクしそうになる。
だけど、もうトイレはすぐそこなのだ。
目の前にある玄関のドアを開けて、靴を脱いで廊下を数歩。
たったそれだけで、水風船のように膨らんだ膀胱からおしっこを解放することができるのだ。
まずは玄関を開けて――ガチャッ!!
だがどんなに開けようとしても玄関のドアはうんともすんとも言ってくれない。
「えっ!?」
玄関のドアに手をかけて引っ張るも、無情にもカギが閉まっているではないか。
ジュワリ、
生温かくなる股間。
どうやら残されている時間は、そう多くはなさそうだ。
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はたして美春は無事にトイレに辿り着くことができるのだろうか!?
新作なので気合入れていきたいです!