レモネードオアシス 2018/12/23 17:17

大洪水!3


昨日は玄関の鍵を開けることができずに失禁してしまった教訓からーー、




翌日。



美春は下校中に、余裕があるうちに公衆トイレに駆け込むも、そこには。




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●2章目 下校中、我慢できずに。

「昨日に続いて今日も連続で補習だなんて、先生ったら、血も涙もないんだから……っ」

放課後の誰もいない教室。
美春はいつものように椅子の背もたれに寄りかかって、補習を受けていた。
昨日に続き、今日も補習だ。




……昨日はサボって帰ったのだから、当然と言えば当然なんだけど。
目の前の机に置かれている課題のプリントは、例のごとく真っ白のままで、()のなかは一つも埋まっていない。




だけど明日できることは明日やるというのが美春のポリシーであり生き方なのだ。
そうそう簡単に曲げるわけにはいかない。
それに今の美春には、補習なんかよりもずっと気になることがあったのだ。
気になる……、と言うよりも、嫌でも思いだしてしまうと言ったほうが近いかも知れないけど。

「はぁ……。昨日は最悪だったよ。まさか玄関の前でおもらししちゃうなんて」

この年にもなっておもらしをしてしまうだなんて。
あのあと制服や靴をドライヤーで乾かして、玄関の前に広がるおしっこの湖をバケツに水を汲んできて散らしたりと、散々だった。
もっとも、証拠隠滅に励んだおかげでお父さんにもお母さんにもおもらしがバレると言うことはなかったけど。
だけど凹んでいるのは事実だった。

「落ち込んでたら、補習なんてやる気でるはずないし~」

いや、元々補習なんてやる気起きるはずなんてないし。
やる気満々で補習を受ける奴がいたら、きっとそいつは補習を受ける以前に成績上位者になっているに違いなかった。

「もうみんな帰っちゃったし、せんせーもいないし。この補習も明日できることだし」

ここまで条件が揃って、帰るなというほうが無理だと思う。
こういう行き過ぎた自主性に任せた補習が、将来社会に出たときにサービス残業へと駆り立てるのだろう。

「うん。帰ろう! やる気がないときは帰るに限るよ!」

美春は手早くカバンに荷物を詰め込むと、颯爽と教室を後にするのだった。

「うっ、またトイレ行きたくなっちゃったかも」

美春が尿意を感じたのは、昨日と同じように校門を出たときのことだった。
多分緊張の糸が途切れているのだと思う。
……元から緊張なんてしてないだろというツッコミは無しにしておくとして。

「もう昨日みたいな失敗、しないんだから」

昨日は無理して一気に家に帰ろうとしたから、玄関の前で慌てることになってしまったのだ。
幸いなことに、帰り道には公園があって、そこには公衆トイレもあったはずだ。
そこでおしっこをしておけば昨日のように漏らすことなんて、絶対にないだろう。

「気持ちに余裕を持って、のんびりいこー」

美春は、ゴールデンウィーク前の温かな日差しの中を、のんびりと歩き始めた。

それは住宅街の一角にあるにしては、あまりにも大きな公園だった。
元々ある大きな池を囲うようにして道が整備されていて、ツツジなどの灌木が植えられている。
遊具などはほとんどなく、子供が遊ぶよりも散歩をするための公園……そんなイメージだ。
そんな公園の隅っこに、その公衆トイレはあった。
公園の公衆トイレと言えばあまり綺麗なイメージはないけど、ここのトイレは綺麗に掃除が行き届いているしトイレットペーパーもしっかりあるから安心して使うことができる。

「ふう……。おトイレ見えてきた。もうここまでくれば安心、だよね。危なかったぁっ。まだ余裕あるけどね!」

春の日差しを受けて、白壁の公衆トイレが見えてくる。
もうここまでくれば、おもらしなんてするわけがなかった。
だけどトイレを見つけて、ちょっとだけ気が抜けてしまっただろうか。

プシュッッッ!

「あうっ!」

尿道が緩んで、クロッチの裏側に生温かく恥ずかしい温もりが染みこんでいく。
だけどここで歩みを止めるわけにはいかなかった。
トイレはもうすぐそこ……、あと10メートルほどのところにあるのだ。
もうここまでくれば、昨日のような失敗はない――。

「…………ふぁ!?」

女子トイレへと続くドアを開き……、しかし美春は我が目を疑ってしまった。
なにしろすべての扉に貼り出されていた紙には、

『故障中』

と、無慈悲な三文字が書かれていたのだ。

「そ、そんなの関係ねぇ……っ」

貼り紙を見なかったことにしてトイレのドアを開けようとするけど、ご丁寧にも内側から鍵がかけられていた。
ガチャガチャと何度かドアを開けようとするけど、ドアが開いてくれる気配は全然なかった。

「えっ、あっ、ちょっ、なんでよりによってこんなとき故障中なの……うっ! ううー!」

まだ余裕があった尿意が、一気に押し寄せてくる。
てっきりもうおしっこができると思っていたから、尿道は今にもほどけようとしていた。

じゅわっ、じゅわわっ。

「うっ、ちょ……っ、ダメ……ッ。まだ、出てきちゃ、ダメ……! こんなところで、漏らすなんて……ッ!」

男子トイレは使えるんじゃないか?
一瞬だけそんな考えが脳裏をよぎるけど、もしも男子トイレへと続くドアを開いたときに男の人がいたら、それだけでビックリして漏らしてしまいそうだった。

「ヤバ……いぃっ。もう、家まで保たな……いいっ」

なんとか女子トイレから出るも、一気にこみ上げてきた尿意の限界はもうすぐそこまできている。

「こ、このままだと……ッ、昨日に引き続き……ッ! や、ヤバい! も、漏れるぅ~!」

公衆トイレの前でおもらし――。




脳裏に最悪なシナリオが浮かぶ。
不幸なことに、整備が行き届いた公園の道には、お年寄りやランニングに励む若い人たちが行き交っている。
こんなところで漏らしてしまったら、ご近所の噂になってしまうに違いなかった。

「せめて……っ、誰にも見られないように……ッ! ううー!」

ジョボボッ!

クロッチの裏側が更に生温かくなり、美春は苦痛のあまりにへっぴり腰になってしまっている。
それほどまでに、残された余裕はなかった。

「し、茂み……」

トイレを出た、すぐそこにあったのは茂みだった。
手前のほうにはツツジの花が咲いているけど、奥のほうに踏み込んでいけば、よほど目を凝らさないと見つかることはない……と思いたい。

「ここなら、誰にもバレない、よね……」

こんなところでおしっこをするだなんて。
普段では絶対に思いつかないことだけど、それほどまでに美春は追い詰められていた。





■■■■■■■■■■■




茂みが美春のことを誘惑してくる。



美春はその誘惑に抗うことができずにーー。




お仕事がないのでブログを更新中です。



小説や同人誌を買ってくれると、次の仕事に繋がったり僕が元気になれます。




大洪水!4につづく!








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