真夏の記憶10
あさがおにJSの液体肥料を。
♭5日目 朝からトイレパニック!
「……んん、もう朝なんだ……」
カナカナカナカナカナ……。
ヒグラシの大合唱で葵が目を覚ましたのは翌朝になってからのことだった。
都会では夕方に鳴くイメージがあるヒグラシだけど、林に囲まれている祖母の家は、朝からヒグラシの声を浴びるように聞くことができる。
障子には、静謐な青々とした朝焼けが照っていた。
「おトイレ、行きたい……ううっ」
身体を起こして立ち上がろうとする葵だけど、お尻を包み込んでいる紙おむつの重さに顔をしかめてしまう。
ゆうべは茜がおむつを替えてくれたけど……、
だけどそれでも一晩中なんの躊躇いもないおねしょを受け止めてくれた紙おむつは、ずっしりと重たくなっていた。
「凄い。腰からぶら下がってるみたい」
立ち上がってみると、へっぴり腰になってしまうくらいにおむつが重たくなっている。
鮮やかな黄色だったであろうおしっこは、時間が経ってやや茶色がかったクリーム色に変色していた。
「まだ誰も起きてない、よね……?」
隣の布団で寝ている茜は、タオルケットを蹴っ飛ばして寝ている。
風邪が移ってしまうかもしれないのに……、それでも同じ部屋で寝ているということは、姉として頼りにされているということだろうか?
(ダメなお姉ちゃんでごめんね)
葵は呟くと、ソッとふすまを開けて長い廊下の先にあるトイレへと向かう。
ぐっすりと眠ったおかげで、身体は軽くなっていた。
……おむつは重たくなっているけど。
だけどそれもトイレに辿り着くまでの我慢だ。
「こんなところ、誰にも見せられないよ……」
へっぴり腰にしなって、しかもおむつが膨らんでいるからがに股にならざるをえない。
しかも、心ではもう完全におむつに気を許してしまっていて、
「あっ、だめぇ……」
しゅいいいいい……。
立ったままだというのに、葵は失禁してしまう。
その失敗も、紙おむつはすべて受け止めてくれた。
「あぁ……。おまた、あったかくなって……うぅっ」
しゅわわわわわわわわわわ……。
アヒルのようにお尻をつきだしたまま、葵はおしっこを出し切って……、なんとかトイレへと辿り着く。
「ふう……、なんとかトイレに到着っと。おむつ、外さないとね」
和式トイレに跨がって座り、バリバリと恥ずかしい音をたてながら、紙おむつを外していくと、
むわ……っ。
一晩中濃縮されていたおしっこの霧が、生温かい湯気となって立ち昇ってきた。
あまりの刺激臭に涙が出てきてしまったほどだ。
片手でテープを外し、もう片方の手で重たくなった紙おむつを支えながら持ち……、
なんとか跨がってる便座の横に置くことができる。
本当なら、今すぐにでも汲み取り式のトイレに捨てたいところだったけど、それをやったらトイレを詰まらせて怒られてしまうから、葵は一晩おしっこを吸収した紙おむつを目の当たりにしなければならなかった。
それにしても……、酷い有様だった。
「うわぁ……こんなにおしっこしちゃったんだ」
和式便器に跨がったまま広げたおむつを見つめて、葵は感嘆のため息をついてしまった。
薄手だった紙おむつはおしっこを吸収して分厚くなり、まるでザボンの皮のようになっていた。
だがザボンの皮の裏側は真っ白だけど、葵が充てていたおむつは違っていた。
時間が経ったおしっこは本来の鮮やかな黄色から、やや茶色く変色していたし、フレッシュな柑橘系の代わりに濃縮されたアンモニア臭を放っている。
「うう……、早く捨てないと、恥ずかしすぎるよ」
せめておしっこを出してから……、と思ったけど、さっき漏らしてしまったので全部出し切ってしまったらしい。
ヒクッ、ヒククン――ッ。
無毛のおまたはただ痙攣するだけで、一滴のおしっこも出てきてくれなかった。
なんだかクシャミが出そうで出なかったときの切なさ似たものを感じてしまう。
(おむつに全部しちゃってたんだ。赤ちゃんじゃないのに)
悔しさを滲ませながらトイレットペーパーを千切ると、ふっくらとした恥筋に指を軽く食い込ませておしっこを拭き取っていく。
おまたを拭った紙切れを見つめてみると、そこにはカスタードクリームのような女の子の汚れが、ネットリとこびりついていた。
「はぁ」
そういえばそろそろ一ヵ月が経とうとしている
それなのに赤ちゃんみたいにおむつを充ててしまうだなんて。
(もっとお姉ちゃんらしくしないと、なぁ……)
そんなことを考えながらも、使用済みの紙おむつを持ってトイレから出ようとしたときだった。
廊下をドタドタと駆けてくる足音が近づいてきたかと思ったら、勢いよくドアが開け放たれ――ガチャン!
残念ながら鍵を閉めていたので、ドアが開かれると言うことはなかった。
その代わりに、切羽詰まった妹の声が聞こえてくる。
「ちょっ!? 開かないの!? 早く早く~!」
「ちょっと待って……、ま、まだ終わりそうにないから、一旦部屋に戻っててっ」
咄嗟に応えてしまうけど、それは嘘。
本当はおまたを拭いたからあとはもう出るだけだけど……、おむつを充ててトイレに来たからすっかりショーツを持ってくるとこを忘れていたのだ。
茜とは今でも一緒にお風呂に入るけど、さすがにノーパン+すずらんスリップで、しかも使用済みの紙おむつを抱えて妹の前に出る勇気はなかった。
だから一度トイレから離れてもらおうと思ったのだけど……、
「むりっ! もう漏れるっ! 漏れるぅ!」
ドタドタとせわしない足音とともに急かしてくる。
きっとトイレのドアの向こうでは茜がおまたを前抑えして、足踏みしていることだろう。
どうやらもう限界らしい。
(だけど、パンツ穿いてないし! しかもおむつを抱えて出るなんて……っ)
それは姉として……、
いや、一人の女の子として見られたくない姿だった。
ただでさえゆうべは、おむつ交換という恥ずかしい姿を見られてしまったのだ。
だけど早く出ないと茜がおもらししてしまう。
(どうしようっ。早く出ないといけないのにっ)
頭では分かっているけど、少女としての最後のプライドがそれを許してくれない。
こうやってトイレの中で(ノーパンで)逡巡すること十秒ほど。
「もっ、もう我慢できない!」
ドアの向こうで茜の声がすると、ドタドタとせわしない足音が遠ざかっていった。
どうやら諦めてくれたみたいだけど……、
はて、もう我慢できないのに部屋に戻っても大丈夫なのだろうか?
恥ずかしくてトイレから出れなかった葵だけど、早くも茜のことが心配になってきてしまう。
トイレから出て手早くおむつをゴミ袋に放り込むと、ガラガラと玄関の引き戸が開け放たれる音。
「ま、まさか」
イヤな予感がしつつも玄関に向かうと、やはりというか玄関が開けっぱなしになっていた。
引き戸の玄関の先は、大きな庭になっていて祖母が家庭菜園をしている。
そこに、妹の姿はあった。
転びそうになりながら、綺麗に咲き誇っている朝顔まで歩いて行くと、なんの躊躇いもなくしゃがみこむ。
ショーツを降ろす余裕は残されてはいなかったらしい。
それでもしましまショーツ越しに、ぷりっとしたまん丸お尻が朝日に眩しい。
「はぁぁぁ~~~」
ぷしゅうううういいいいい!
ショーツを穿いたままだというのに。
茜はなんの躊躇いもなくおしっこを噴き出してみせたではないか。
クロッチを突き抜けて綺麗な弧を描いたおしっこは、朝顔の根元に降り注ぐと地面に吸収されていく。
だけど量が多すぎる。
朝顔を中心として、大きな湖ができつつあった。
「はぁぁ……、至福ぅ……」
しゅいいいいいいいい。
女の子の鋭い放尿音とともに、勢いよくおしっこが噴き出してくる。
その勢いたるや葵でさえも目を見張るものがあった。
女の子の尿道は太いのだ。
それにちんちんなんてものはついていないから、それだけ摩擦がなく遠くまで飛んでしまうようになっている。
「ははっ、おしっこ、ビュンビュン飛ばしちゃうよー♪」
ぷしゅっ、ぷしゅっ、
しゅわわわわわわわわ!
茜は実に楽しそうに腰をグラインドさせると、おしっこは更に遠くへと飛んでいく。
荷物を運んでいたアリがビックリしてくるくると逃げ回っているほどだ。
「肥料だぞ~! あははっ、我慢してたからいっぱい出るよ~!」
しゅいいいいいいいい!
茜の前に、おしっこを噴射した痕がジェット噴射のように地面に刻まれていく。
尿道が太いぶんだけ、一気に噴き出すような、なんの躊躇いもない模様だった。
だけど、尿道が太いということは、それだけ一気に噴射してしまうということだ。
「あああっ、ぱんつ穿いたままおしっこすると……おまたあったかくなってきもちいいよー!」
しゅわわわわわわわわわわ!
ブルルッ!
茜は身体を大きく震わせると、
ぷっしゅう!
「はふぅ……き、気持ちよかったぁ……」
最後の一噴射をして、放尿を終えた。
茜のおしっこをもらったからか、朝顔の花も心なしか瑞々しく見える。
茜は立ち上がると、ショーツの腰ゴムをつかんでキュンッとおまたに食い込ませる。
「あーあ。ぱんつ降ろせなかったよー。でも、お外だからセーフだよねっ」
そんなことを呟きながら、振り返り――、
玄関の葵とバッチリ目が合った。
「あ、お姉ちゃん、おはよー。もうトイレ大丈夫だから!」
「……そうみたいね」
「あ、お姉ちゃんったら、ノーパンなんだ。気持ちよさそう♪」
「これは……っ」
慌ててトイレを出てきて玄関までやってきたから、すっかりショーツを穿いてくるのを忘れていた。
玄関とはいえ、すずらんスリップからはツルンとした赤ん坊のようなおまたが丸見えになってしまっていた。
朝の風が、おまたをイタズラっぽく撫でていく。
「と、とりあえずぱんつは穿くとして……っ、茜こそ外でおしっこなんてして誰かに見られたら大変なんだからねっ」
「いいじゃん、肥料肥料♪」
茜はまだ恥ずかしいとは思わないらしい。
そのうち恥ずかしくなるときがくるのだと思う。そういうものだから。
「さて、と! お姉ちゃん、今日はなにして遊ぼうか! カブトムシ探す? それとも川で遊ぶ?」
「それじゃ、今日は山に遊びに行きましょうか。そこでどっちがカブトムシをたくさん捕まえられるか競争するの」
「うん! 競争するの!」
早くも茜はハイテンションになっている。
この調子だと山で迷子にならないように見守っていてあげないとな……、葵はそんなことを考えながら、早くも高く昇っている朝日を見やる。
今日も、暑くなりそうだ――。
おしまい!
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この小説は、同人誌『真夏の記憶』として発表しています。
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