真夏の記憶1
小学6年生の茜と、中学3年生の葵は仲良し姉妹。
ある夏、祖母の家に帰省する途中、高速道路で渋滞に巻き込まれてしまう。
茜の膀胱は決壊寸前ッ!
♭プロローグ おばあちゃんの家に帰省!
「海! 海よ! 真っ青な海がアタシを呼んでいる!!」
高速道路を走る車の窓を開けて叫んだのは、ツインテールの小さな少女。
Tシャツに三分丈の黒スパッツを穿いた、見るからに活発そうな少女だ。
開け放された窓からは、爽やかな磯の香りを乗せた風が吹きつけてくる。
吹きつける磯風に、少女のツインテールがパタパタとなびき、Tシャツの裾もバタパタと小気味よくはためいていた。
捲れ上がったTシャツからは、ときおりおへそがチラッと見えて、スパッツの腰ゴムからはコットンのショーツがちょっとだけはみ出している。
だけどツインテールの少女は、そんなことお構いなしに、車窓から見える海に瞳を輝かせていた。
「風もこんなに爽やか! ああ、早く泳ぎたーい!」
「はいはい、分かったから。茜、風が強いから窓、閉めて」
茜と呼ばれた少女をたしなめるのは、後部座席で茜の隣に座っている3つほど年上の少女。
少女は、黒髪を腰のあたりまで伸ばしている。
あまりにも長いから、車のソファーに届いて広がっているいるほどだった。
「ええー!? こんなに気持ちいいのにっ。お姉ちゃんのケチー」
ブーブー口を尖らせながらも、茜は大人しく窓を閉めた。
「茜(あかね)ったら、せっかく綺麗に梳いてあげた髪の毛が、こんなにボサボサになってるじゃないの。ちょっと大人しくしてなさいな、梳いてあげるから」
「お姉ちゃんみたいに綺麗な黒髪じゃないからいいもん」
「そう? 茜も綺麗な亜麻色で可愛いと思うけど」
「えへー、そうかなー」
お姉ちゃん、と呼ばれた少女は、ハンドバッグから櫛(くし)を取り出すと、茜のツインテールの一房を梳き始めた。
妹の髪を丁寧に梳く姉……、名前を、
風(かざ)祭(まつり)葵(あおい)、
という。
葵は慣れた手つきで、妹の亜麻色……光の反射によっては黄金色にも見える……髪の毛を梳いていく。
「お姉ちゃんに髪、梳いてもらうの、好き」
「私も、茜の髪の毛に触るの好きよ。サラサラしてて」
「えへへ~」
運転席で車を運転している父は、後部座席に座っている姉妹たちの微笑ましい姿をルームミラー越しにチラリと一瞥し――、
車は、潮風を切って高速道路を飛ばしていく。
……助手席で安らかな寝息を立てている母を乗せながら。
☆
高速道路を飛ばしていた車だけど……、
しかし今となってはその勢いは無くなっていた。
……渋滞、である。
亀や牛のほうが早く進むのではないかと思えるほどに、車はノロノロとゆっくりと進んでいく。
「うう……っ、ちょっと、やばい、かも……っ」
苦しげに呟いたのは、後部座席に座っている茜だ。
車内は冷房がかかっているというのに、茜の額には脂汗が浮かんでいた。
隣に座っている葵が、心配そうに声をかけてくる。
「どうしたの、茜。なんだか苦しそうな顔してるけど」
「お姉ちゃん……ううっ、おしっこ、漏れちゃいそうかも……っ」
「えっ。ちょっ、茜、我慢できそうにないの!?」
「も、もう少し我慢できそうだけど……、早くトイレに行かないと、やばい、かも……っ」
「茜、もうちょっとでパーキングエリアに着くから! だからもうちょっとの我慢!」
「う、うん……っ」
遅々として進まない窓の外を見ると、タイミングよくもうすぐパーキングエリアだという案内標識が見えた。
あと、もう少し我慢すれば、この尿意からも解放されるのだ。
(あ、あともうちょっとの我慢……っ)
だけど、渋滞に巻き込まれてしまった車は、ほとんど動いているような気がしなかった。
あともう少し……。
そう思っていればいるほど、尿意というものはこみ上げてくるものだ。
この渋滞さえなければ、もうトイレに駆け込むことができているはずなのに――。
そう考えてしまうと……、
ジョッ!
「うっ、ううー!」
じんわりと広がる、クロッチの裏側のぬくもり。
とっさに両手でおまたを前押さえするけど、スパッツの股間の部分からは、ジュワッとおしっこが滲み出してきてしまう。
……チビッた……、
にしては、ちょっと量が多すぎるかもしれない。
「ううっ、も、漏れそう……!」
前押さえしてなんとか決壊だけは免れるけど、こうしている瞬間にも、おしっこは少しずつ膀胱を水風船のように膨らませている。
このままだと、決壊するのは時間の問題だった。
「お、お父さん……っ、早くぅ……っ。おしっこ! おしっこが! もう、漏れちゃいそう、だよ……うっ、ううーっ」
「そんなこと言ってもなぁ、もうちょっとの辛抱だから、もう少し我慢しててくれ」
お父さんは呑気にいってくれるけど、もう茜の膀胱は限界を超えていた。
前押さえしている両手を離せば、ジョバジョバとレモン色の飛沫を上げてしまうに違いなかった。
「も、もう……、無理、かも……っ」
膨らみすぎた水風船のように膀胱が悲鳴を上げ、引き裂かれそうな痛みに襲われる。
この苦しみから逃れるためには、尿意を放つしかない。
ちょっとだけ……、
ちょっとだけくらいなら。
そんな思いが、茜の脳裏をよぎっていく。
なにも全部一気に出さなくてもいいのだ。
ほんの少しだけ出すくらいなら……。
もう、チビってしまったにしては多すぎる量を、漏らしてしまっているのだ。
前押さえしている股間は、スパッツの上にまでおしっこが滲み出してきていた。
こうなってしまった今、もうちょっとくらい漏らしてしまっても、同じじゃないか。
(ちょっとくらいなら……。いいよね? 楽になっても、いい、よね……? おしっこ、おしっこ、おしっこしたい……!)
そんなことを考えながら、前押さえしている両手から、少しずつ力を抜いていくと……、
じゅわ……じゅわわ……。
「あっ、はあぁぁぁぁ……」
クロッチの裏側がじんわりと新たに温かくなり、そのぬくもりは少しずつ広がっていく。
座ったままの秘密のおもらし……。
スパッツに包まれた会陰が生温かくなって、お尻のほうまでぬくもりが広がっていき……。
(だめっ)
そのときになって、茜は正気を取り戻した。
気がつけば……、お尻のほうにまで生温かい感触が広がろうとしているところだった。
あと一秒でも前押さえしている両手から力を抜いていたら、大決壊していたことだろう。
「あ、危ないところだったよ……。あともうちょっとで漏らすところだった……」
「茜、もう少しの我慢だから。もうすぐ駐車場に着くから」
「……うんっ」
渋滞に巻きこまれていた車は、なんとかパーキングエリアへと続く脇道へと辿り着く。
「あと……、あともうちょっとでトイレに行ける……っ」
そう思っただけで、じゅわり……、今にも決壊しそうなおまたから生温かい感触が滲み出してくる。
だけど、ここまでくればこの苦痛からもうすぐ逃れることができるのだ。
お父さんは、駐車場のできるだけトイレから近いところに車を止めてくれた。
あとは、トイレにまで歩いて辿り着くことさえできれば……!
「茜、一人で大丈夫そう!?」
「うんっ、なんとか……っ、行け、そう……っ」
車が止まったのと同時、茜は車のドアを開けると、外に飛び出していた。
その直後……、
ふっと、爽やかな潮風が頬を撫でていく。
近くに海があるから、それ自体はなんの不思議なことはないのだが……、
その潮風を受けて、茜はほんの少しだけ……、ほんの少しだけ開放的な気分になってしまった。
狭い車から外に出たということもあるのだろう。
太陽と潮風を小さな身体に受けて、開放的な気分になってしまったのだ。
その隙を切羽詰まった尿意が見逃してくれるはずがなかった。
「あっ」
じゅわわ……。
膀胱から解放された温もりに、頭が真っ白になる。
だけどこうなってしまっては止めることなどできるはずなんてなかった。
女の子の尿道は、太く、短い――。
「あっああぁ……! まだ、ダメ……!」
ジワリ、
クロッチの裏側が、新たなぬくもりで塗りつぶされていく。
両手で押さえていると言うのに、一度緩んでしまった尿道は、もう閉じてはくれなかった。
それほどまでに、茜の小さな膀胱はパンパンに膨らんでいた。
ジュワリ、
じゅわわわわ。
クロッチとスパッツという三重布から、生温かい感触が滲み出してくる。
前抑えしている指の隙間からおしっこが溢れ出してきて――、
茜は、ついに決壊を迎えてしまった。
「ああっ、だめっ、まだトイレじゃないのにっ」
パーキングエリアの駐車場で。
しかも夏休み中のパーキングエリアは人通りも多い。
漏らしながらトイレに駆け込むことなど、そんな恥ずかしいことを茜にできるはずがなかった。
それにトイレに駆け込んだとしても、この混雑具合だ。
女子トイレが開いている可能性も低い。
じょぼぼ!
じゅもももも!
前抑えしている指の隙間から、更におしっこが湧き出してくる。
「う、ううー! あっ! あっ! あっ!」
じゅわわわわ。
じょぼっ、じょぼぼ!
前抑えしたままで、漏らしながらも、一歩、二歩、三歩……。
だけど、それが限界だった。
三分丈のスパッツに包まれた太ももが、生温かい手によって撫で回されているかのような感覚に襲われる。
「ああっ、おしっこ、おしっこ! おしっこが……! も、う! おしっこぉっ!」
内股を撫で回してくるかのような、生温かい手。
それは茜自身のおしっこに違いなかった。
両手では抑えきれないおしっこが、スパッツを包む太ももにまで滲み出してきてしまっているのだ。
「あっ! ああっ! ううっ、も、もう我慢でき……うっ、ううー! おしっこ、勝手に出てきちゃ……!」
視界が真っ白になって、おしっこを我慢しすぎて意識が飛びそうになる。
身体が警告を出しているのだ。
これ以上おしっこを我慢すると身体に悪いぞ、と。
じゅわわ……。
じゅわわわわ……。
前押さえしている指からは黄金水が溢れ出してきて、駐車場のアスファルトへと散っていく。
太ももを覆っているスパッツもジトジトに濡れていて、このまま立ったままだと靴や靴下を汚してしまうことになるだろう。
――こうなってしまったら……、
茜に残されている道は、一つしかなかった。
「も、もう我慢、できない、よぉ……っ」
車を出た直後だというのに――。
茜は、その場にしゃがみ込んでしまう。
それはまるで、和式のトイレにまたがるかのような、女の子が誰にも見られない個室でする、恥ずかしいポーズで。
「あっ! あああっ! はああああぁぁぁぁぁっ」
プシュッ、
心が折れて、前押さえしている両手を離した、その直後だった。
クロッチの裏側に、おしっこの飛沫が弾けると、
ジュモモッ、
じゅもももももももも……。
くぐもった水音ととともに、我慢に我慢を重ねていたおしっこが漏れ出してきてしまう。
「はぁ、はぁぁぁぁぁぁ……ううっ、はぁぁぁぁぁっ、おしっこ、はっ、はふう……っ」
じゅももももももも……。
茜の股間には、黒スパッツにシュッと縦筋が刻み込まれていた。
その縦筋がヒクヒクと苦しげに痙攣するたびに、おしっこが噴き出してくる。
こうなってしまったらもう茜には止めることはできなかった。
「ああっ、うううー! おもらしなんて……っ」
不幸中の幸いか、混雑している駐車場には死角がたくさんあった。
今まさに、茜がしゃがみ込んで漏らしてしまっている場所も、車と車の間……つまり、死角になっている。
だけど、いつ誰が通りかかるかも分からない。
いつまでも漏らし続けているわけにはいかないのだ。
「ちょっ、茜!?」
「茜、大丈夫……!?」
「む、無理だよぉ……っ」
車から降りてきた姉と母に心配げに声をかけられるけど、漏れ続けているおしっこで、駐車場のアスファルトには大きな水たまりができあがっている。
「茜、お姉ちゃんが影になってあげるから……っ」
「うっ、ううー!」
姉が人から見えないようにと影になってくれる。
姉は着ているワンピースの裾を広げて、少しでも死角になるようにと立ってくれた。
「ごめんなさいっ、ごめんなさい……っ、お姉ちゃん、おしっこ止まらないよぉっ」
しゅいいいいいいいいい……。
クロッチとスパッツという三重布を突き破って、茜は溜まりに溜まっていたおしっこを放ってしまう。
だけどその勢いも、少しずつ弱くなってきて……。
「あっ! あっ! あああっ!」
じょぼぼぼぼぼぼぼぼ……。
勢いのなくなったおしっこは股布を突き破ることができず、茜のお尻を撫で回すかのように広がっていくと、桃尻を覆っているスパッツの双丘から雫となって落ちていく。
茜を中心として、大きなおしっこの水たまりができあがっていた。
もうこうなってしまったら、どんなにおしっこを我慢しても無駄なのだ。
それにおもらしをしているところを誰かに見られてしまうほうが、よほど恥ずかしいだろう。
だから茜は――、
自らの意思で、お腹に力を入れていく。
「うう……。早く、早く終わってよぉ……っ」
じょぼぼぼぼぼ……。
しゅいいいいいいい……。
「はぁ……、はぁ……、はぁぁ……っ」
しゅいいいい……。
ぽた、ぽたた……。
ブルルッ!
茜は丸めている身体を大きく震わせると、
プシュッ――!
最後の一滴が、スパッツ越しから噴き出してくると、茜のおもらしは唐突に終わりを告げた。
茜は、トイレに辿り着くことができずに、尿意に屈してしまったのだ。
あとに残されたのは、じっとりとおしっこに濡れそぼった、ショーツとスパッツだった。
しゃがみ込む前に漏らし始めてしまったせいで、三分丈のスパッツの太もも部分までもがおしっこにジトジトに濡れている。
スパッツが茜を責め立てるかのように、太ももとお尻にぺったりと気持ち悪く貼り付いてきていた。
「うう~。全部、出しちゃった、よぉ……」
真夏のアスファルトにできあがった、大きな水たまりを見つめ、茜はしゃがみ込んだまま涙目になってしまう。
「茜……、すっきりした?」
背後に立って影になってくれていた姉が、ぽつりと呟く。
「うん……」
「それじゃ、着替えちゃおうか」
「……うん」
狭い車の中では着替えることができなかったので、茜はその場で……駐車場の、車と車の狭いスペースで着替えることになった。
「うう……、お気に入りのパンツだったのに……」
スパッツごとショーツを脱ぐと、茜のお気に入りのショーツ……ネコの顔がプリントされたショーツは、おしっこで真っ黄色に染まっていた。
我慢していたぶんだけ、おしっこが濃くなってしまったのだろう。
「風……冷たいよ」
いつ誰に見られるかも分からない状況だ。
プリッとしたお尻を、真夏の潮風がイタズラっぽく撫で回していく。
その些細な風が、とても冷たく感じられてしまう。
茜の剥き出しになった少女の部分……、そこは、まだ産毛さえも生えていないツルツルのおまただった。
学校のクラスの子は、早い子では生えている子もいるというのに。
茜にもいつかは生えてくるのだろうとは思うけど、姉である葵もまだツルツルなので、その望みは薄いと思っている。
「茜、じっとしててね」
「……うん」
姉はタオルを手に取ると、手際よくおまたとお尻を拭き取ってくれていく。
ぐしょ濡れになってしまったショーツとスパッツは、ビニル袋に入れてキツく口を結んで車のトランクへと封印された。
「はい、着替え。自分で着替えられる?」
「うん。一人で着替えられる、もん……」
「そう。茜は偉いわね」
頭を撫でてくれる姉だけど、もう茜だっていつまでも子供ではないのだ。
……でも。
ちょっとだけ、姉に甘えていられるのも、嬉しく思ってしまう自分もいる。
「……着替え終わった」
姉に渡された換えのショーツとスパッツを穿くと、茜は頬を赤くして呟いた。
「よし、それじゃあ、おばあちゃんちに出発しましょうか」
「……うんっ」
姉に手を引かれて車の後部座席に乗り込む。
そんな茜の小さな手は、姉の手を離すものかとギュッと握られていた。
あと数時間……。
夕方になるころには、おばあちゃんの家に着くことだろう。
だけど――。
(なんでだろう……。おしっこできて、凄くスッキリしたの)
おしっこを我慢して出すと、気持ちいいのだろうか?
おもらししてしまったのに、気持ちいいだなんて。そんなの、絶対におかしいのに。
それに、ショーツを穿いたままでおもらしをしてしまったとき、なぜかおまたがムズムズしてきたような気がする。
(おもらししちゃったのに気持ちいいなんて、変なの!)
茜はもぞもぞと内股を擦り合わせると、なにも知らない少女の秘裂は、無自覚の蜜に湿るのだった。
この小説は、同人誌『真夏の記憶』として発表しています。
フルカラー・フルサイズのイラストを楽しみたいという方は購入してもらえると創作の励みになります。