真夏の記憶2
中学三年生にもなっておねしょをするわけにはいかない。
♭1日目 朝 お姉ちゃんなのに……おねしょ
おばあちゃんの家に着いたのは、空が真っ赤に染まった夕暮れ時だった。
年季の入った木造家屋は夕日を浴びて、有名な日本画のようにも見える。
ヒグラシの鳴き声が幾重にも重なり、縁側には梅干しが干してあった。
車のエンジン音を待ちわびていたのだろう。
葵と茜が車から降りると、がらがらと玄関の引き戸が開いておばあちゃんが出てきた。
「遠いところからお疲れさん」
「お久しぶりです、おばあちゃん」
「久しぶりなの! おばあちゃん!」
「はいはい、お久しぶり。葵ちゃんに茜ちゃん、また大きくなったみたいで。秋彦さんと凉子もお疲れさん。さあさ、お上がりなさい」
着替えが入ったリュックを抱えて玄関の三和土に上がると、ふんわりとした線香の香りを感じる。
玄関から続く廊下を左に行けば仏間になっていたはずだ。
おじいちゃんは、葵が小さいころに車の事故で死んでしまったからもういない。
五十歳くらいで亡くなったらしいけど、仏壇に飾ってあるのはどう見ても二十代の若いころの写真が飾られている。
お父さんとお母さんも揃って『ただいま』と、みんなで手を合わせた。
「さて、それじゃ夕飯にしちゃおうか。今夜はお刺身、用意しておいたからね」
「やった! おばあちゃんのお刺身、だーい好き!」
普段はあまり魚を食べたがらない茜だけど、おばあちゃんが作ったお刺身は美味しそうに食べる。
茜が言うには、海が近いからお魚も美味しいのだそうだ。
その日の夜は、久しぶりの帰省と言うこともあって葵も茜も、父も母もたくさん食べて飲んだ。
楽しい時間はあっという間に過ぎていき――、
☆
「ねえねえお姉ちゃん、明日はなにして遊ぼうか」
「遊んでばかりじゃなくて、まずは宿題を片付けないと」
広々とした和室に二つ布団を敷いて、葵と茜は同じ部屋で床につく。
祖母の家に泊まるときは、いつも二人同じ部屋で寝ることにしていた。
それでも茜は興奮してなかなか寝付けないらしい。
明日はなにをして遊ぼうか、色々と想像しては話しかけてくる。
それでもやっぱり長い時間、車に乗って疲れていたのだろう。
しばらくすると、やがて安らかな寝息が聞こえてきた。
「茜……? もう寝ちゃった?」
身体を起こして茜を見やると、茜はタオルケットを蹴っ飛ばして寝ていた。
そんな茜にタオルケットをかけ直して、髪を梳いてあげると、茜はかすかな笑みを浮かべてくれる。
「おやすみなさい、茜」
茜に優しく囁くと、葵も床につくのだった。
☆
「んにゅ……。おトイレ、行きたい……」
目を擦りながら身体を起こしたのは葵だった。
広々とした和室はまだ真っ暗で、たぶん真夜中といってもいい時間なのだろう。
すぐ隣の布団では茜が安らかな寝息を立てている。タオルケットを蹴飛ばしているのでかけ直してやる。
「おトイレ、行かないと……」
深夜の木造建築の家は、なにかが『出てきそう』な、得も言われぬ雰囲気を醸し出している。
和室から出ると、真っ暗な廊下が続いている。
普段はお化けや幽霊を信じていない葵だけど、この時ばかりは信じてしまいそうになる。
「こ、怖くなんてないんだから。お姉ちゃんなんだしっ」
葵は自らに言い聞かせるように呟くと、そろりそろりと真っ暗な廊下を進んでいく。
廊下の先にある、トイレへと続く薄い木の扉を開ける。
スイッチを入れて明かりをつけると、裸電球に照らし出されたのは汲み取り式の和式トイレだった。
真っ暗な穴からは、換気扇が回るゴーゴーとした不気味な音が響いてきている。
葵は昔からこの汲み取り式トイレが大嫌いだった。
それでもトイレはここしかないから文句なんて言えないんだけど。
「早く済ませちゃお……」
葵は和式の便器に跨がると、ピンクのパジャマのズボンとショーツを降ろす。
露わになったのは、産毛さえも生えていない、ツルツルのおまただった。
葵は二次性徴期を迎えてさえも、まだ下の毛が生えていないパイパンだったのだ。
赤ん坊のようなシュッとした一本筋から、桜の花びらのような小陰唇がはみ出している。
「はぁぁ……」
しゅいいいいいいい……。
葵はトイレにしゃがみこむと、なんの躊躇いもなく尿意を放っていく。
誰にも聞かれることがない放尿する音が飛び散り、真っ暗な穴へと流れ込んでいく。
夏の夜気にツンとしたアンモニア臭が立ち昇ってきた。
「スイカ、たくさん食べたし、ジュースも飲んだし……はぁぁ」
しょわわわわわわ……。
水風船のように膨らんだ膀胱からは、止めどなくレモン水が噴き出してくる。
夕飯のときにたくさんスイカを食べたし、その後に桃のジュースを飲んだ。
この小さな膀胱には、たくさんの幸せな水分が詰まっているのだ。
しゅわわわわわわわわ……。
「あぁ……、気持ちいいよ……はふう……」
女の子の尿道は太くて短い。
その分だけおしっこは勢いよく出てしまうし、飛び散ってしまう。
学校でおしっこをするときはゆっくりと力を抜いていくことにしているけど、いまは誰もいない深夜なのだ。
葵はなんの躊躇いもなく尿意を放っていき……、
しょぉぉぉぉぉぉぉぉ……、
プシュッ!
「んっ!」
ブルルッ!
葵は身体を大きく震わせると、勢いよく飛沫をあげ、放尿は唐突に終わった。
「はぁ……。全部、出た、よね……んんっ」
ぽた、ぽたた……。
小陰唇から垂れてくるおしっこは、会陰を伝ってトイレの中へと落ちていく。
どうやら全部出てくれたらしい。
これで朝までぐっすり……だと思う。スイカをたくさん食べたから、また目が覚めてしまうかも知れないけど。
「おまた、拭こう……」
トイレットペーパーを手に取り、赤ん坊のようにツルツルのおまたを拭いていく。
肉の谷間におしっこが残らないように、指を少しだけ奥に食い込ませるような感じで。
「……んっ」
痺れるような感覚に、再び尿意が込み上げてきてしまう。
どうやらまだまだおしっこは出てきそうだ。
「全部出しとかないと、ね」
ぷしゅっ、
しょわわわわわわ……。
全部出し切ったと思ったのに、膀胱にはまだおしっこが溜まっていたらしい。
止めどなくレモン水が噴き出してくると、真っ白な便器に弾けて消えていった。
その放尿は、いつまでも、いつまでも続き――、
この小説は、同人誌『真夏の記憶』として発表しています。
フルカラー・フルサイズのイラストを楽しみたいという方は購入してもらえると創作の励みになります。