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WsdHarumaki 2023/02/07 19:00

赤の洞窟:退屈な少年【魔女のミナリア、洞窟へ行く】(07/50)

第二章 赤の洞窟
第二話 退屈な少年

 あらすじ
 魔女のミナリアは洞窟に居た黒髪の少女レオノーアに出会う、ミナリアは封印を解く仕事をまかされる。【赤の洞窟】を目指す。

「女の子と冒険したい……」
 俺は退屈していた、親父は厳格で融通が利かない。領主の息子として生まれたが特別な才能は無い。もし平民ならば苦労した筈だ。自分が無能なのが判る。手先は不器用、勉強が嫌い、音楽は不得手、努力したくない。

 自分で何ができるのかも判らない。親父の仕事にも興味が無い、数字を並べているだけに見える。何がそれで判るのか?俺はいつものように、子供の頃に読んでいた冒険の本を探す。冒険はあこがれだ、洞窟を探検して財宝を得る。そして美女と結婚する。

「そんな話は転がって無いかなぁ…」
 俺はいつものように親父に金をせびろうとした、街の酒場で飲んで女を抱く。それだけが生き甲斐。親父の部屋から少女が出てくる。金髪の美しい少女はまだ未成年に見えた。俺のそばを通る時に声をかける。

「名前を教えてくれないか?」
 びっくりしたような顔をした少女はミナリア。俺は彼女と歩きながら、街で遊ばないか?と聞いてみた。

「この後に調べたい場所があるんです」
 話を聞くと秘密の洞窟があると言うのだ。俺は半信半疑だったが、確か父親の書庫に鉱山の地図が残っている事を想い出す。俺も引っ張りだして夢想していた。この場所にはお宝があると勝手に想像して楽しんだ。実際はもう廃坑で近寄ると危険だ。

「地図を見せようか?」
「ありがとうございます」

 ミナリアは嬉しそうに笑う。俺は心が暖まる。誰かの役に立てる事がこんなに嬉しいのか?人のために働く事が馬鹿げている。そんなひねくれた事を考えた自分が別人のように熱心になる。

 書庫を引っかき回すと廃坑の地図が出てくるがミナリアは、これとは別の物を探している。俺も資料を調べた。

「あ!見つけました。これです」
 俺も見てみると……骨竜の谷だ。ここは大昔に滅んだ竜が住んでいた場所で今では荒廃している。竜の毒で大地が死んでいる。農作物は育たない。確かに見つけた地図には洞窟が描かれていた。

「ありがとうございます、ここに用事があります」
 ニコニコ笑う彼女は、一泊してから現地に向かうと教えてくれた。俺は……彼女と冒険をしたい。強く願う。それに彼女のひ弱さを見たら洞窟探検は無理に思えた。入り口まで案内すれば満足する筈だ。

「あとで俺も行くよ」
 彼女は怪訝そうな顔をするが俺は胸を張る。これでも剣術に関しては人並みな事や地理を知っていると説得すると彼女はしぶしぶ応じてくれる。

 俺は部屋に戻ると骨竜の谷へ行く事を手紙にする、親父宛に机に置いた。剣を取り出すが、俺の腕前は人並み以下だ、そこらのチンピラと闘っても負ける。下手すると年下にすら負ける。それでも俺は万能感で何の疑問も感じない。

「今日は早く寝るか……」

 俺はベッドに入りながら明日の冒険の夢を見る。

WsdHarumaki 2023/02/06 20:19

赤の洞窟:ギルドのお姉さん【魔女のミナリア、洞窟へ行く】(06/50)

第二章 赤の洞窟
第一話 ギルドのお姉さん

 あらすじ
 魔女のミナリアは継母から働けと言われて、ギルドに入る。仕事の途中で道に迷うミナリアは洞窟の中に入ると、黒髪の少女レオノーアに出会う、ミナリアは封印を解く仕事をまかされる。

「おかえりなさい」
 魔女ギルドの案内人がねぎらってくれる。マリアは赤毛色の短い髪をした女性だ。魔女を引退してギルドの仕事をしている。いつもいそがしく帳簿に何か書いている人だ。

「どう?お手紙を渡せた?」
「はい、配達証明にサインをいただきました」
 ギルドのマリアは私を娘のように感じているのか、親身になって仕事を世話してくれた。配達証明を受け取ると、いくらかの銅貨を貰う。食事代で消えるレベルだ。完全な赤字仕事だが、まじめに働いている所を見せないと次の仕事が貰えない。

「ありがとうございます」
 礼を言ってギルドから外に出る。今日はもうクタクタだ、早く寝たい。まだ痛みのある左手をなでる。指に融合した魔法の指輪は簡単な呪文でも数十倍の威力を見せた。

「とても強力な指輪ですね」
「原石をカットすると威力が増すのよ」
 霊体の状態で一緒に居る黒髪の少女レオノーアが教えてくれる。もの珍しそうに街を見ている。ここ数十年は外を見てない。あちこちを指さしながら質問される。こうしていると友達のようにも感じた。私は質素な宿屋に戻ると食事も忘れてベッドで横になる。いつのまにか寝ていた。

「ミナリア、起きて」
 大声で体が跳ね上がる、びっくりした。

「なに?なんですか?」
「朝よ」
 目が覚めると陽が高い。私は冒険者の姿のまま寝ていた。体がちょっと痛い。レオノーアは私を面白そうに見ている。恥ずかしくて私は立ち上がると階下で食事を取ることにした。

「小声で話をしなさい」
 霊体のレオノーアはつぶやく、これから冒険する【赤の洞窟】はルビーで守られている。自分にもどうやって封印を破壊するか判らない。まずは様子を見てくれと頼まれる。

「判りました、がんばります」
 指輪の力は強いし、洞窟の主も一緒に居る。私はまったく心配していなかった。この世界では転送ゲートがある。ギルドに登録して仕事をしていると利用可能だ。一般の人は使えないが、仕事ならば使える。

「赤の洞窟付近にある仕事を選んで」
 いつものようにお手紙配達を見ると領主への年貢の計算書を届ける仕事を見つけた。私をそれに応募する。

「これも安いわよ……大丈夫?」
「大丈夫です、継母から貰ったお金がまだあります。」
 ギルドの案内役のマリアは心配そうにしている。継母はけちんぼだけど、それなりの支度金は貰えた。さすがに追い出していきなり飢え死にされると家の問題になる。贅沢しなければ数年は暮らせる。まずは経験を積む事が大事だ。

「大丈夫です、がんばります」
「あなたのがんばりますは、口癖ね」
横でマリアには見えないレオノーアが笑っている。もういいじゃない、頑張るから頑張るの。私はゲートに向かう。少しも心配していない。

WsdHarumaki 2023/02/05 16:15

SS 食べないで

 牛女王が俺に敵意を向ける、俺と彼女の最終決戦だ。

「人間達に私を食べさせない! 」
 豊満な胸を見せながら角で突撃をする。俺はふわりと赤いマントをたなびかせると突撃をかわす。もう何十回も繰り返した儀式。右手のエストックで彼女を刺せば終わる。だが俺は刺せない。

 エストックは細く長い剣で、相手を刺し殺す時に使われる、それだけ技量が必要な武器だ。熟練した技術を持つ俺は、モンスター牛の討伐を頼まれた。

「野菜を食えって言われるんですよ」
「別に彼女を食べるわけじゃなくて、肉食うなって話で……」

 菜食主義者の牛女は、人間が肉を食べるのに嫌悪感がある。村で暴れて困る。だがそんな理由で、彼女の命を絶つ事はできない。

 俺は疲労をしていた、徐々に追い詰められる、村にある見張り用の鉄塔までくると俺は彼女の突撃を避けられない!

 俺は牛女王に鉄塔に押しつけられる。万事休す! ん? やわらかい、彼女は汗まみれの豊満な胸を俺の顔に押しつけて、ぐったりしていた。彼女もスタミナ切れだ。

 俺は彼女を優しく地面に横たえると彼女は一言
「私を食べないで」
「タベナイヨ」
 その夜は、もちろんベッドでいただきました(棒)

WsdHarumaki 2023/02/03 00:04

SS 動かない鬼

「悪い鬼が居るぞ」
 父は逃げた。侍達が追いかける。小石を投げつけられる。当たれば痛いが黙って逃げる。それが掟だ。追儺(ついな)の儀式は大事だ。災いを避けるために必須な行事。自分の家は代々その役割を担う。

 鬼の面をつけて赤い着物で逃げる。宮司が太鼓を叩き、巫女の踊りが終わると、鬼やらい人が逃げる。逃げる後ろから石つぶてを投げる。普通は当てないのだが、中には当てる侍も居る。散々に嬲られた父親は家に戻る。扶持米(ふちまい)も少ない家で周囲から疎まれているが大事なお役目だ。

 金が足りないと内職する。農作業した作物で換金する。鉢植えや栗や梨、柿などで金を作るくらいで、他の侍とは交流しない。

「鬼の役目は大事だ、次はお前が継ぐ事になる」

 父の厳命だ。お家のための犠牲だ。元は鬼に祟られた城主を救うために家来を生け贄にしたのが由来と聞いた。形骸化したが行事として残っている。

「今年は豊作でね、金になりませんよ」

 作った作物が売れない。換金できなければ粗末な食事に耐える事になる。家の者はみなが痩せ細っていた。父が病に倒れると耐えられずに死んだ。自分が後を継ぐ。子供の頃から父の苦痛を間近で感じていた。損な役割な上に、大事にされない。理不尽な怒りが自分の中にある。

「今年の追儺の儀式は、新しい嫡男が行う」

 鬼の面をかぶり赤い着物をつけて立つ。儀式が進み鬼が逃げる番だ。俺は逃げない。動かない鬼だ。

「どうした、逃げないと石が当たるぞ」

 侍たちが石をなげる。体にも当たる。逃げない鬼に向かって本気で投げる侍も居る。ごつごつと当たる。誰かが刀を抜いた。脅すつもりだが激高したのか、俺を刺し殺した。

 俺は死んだ筈だが痛みすらない。体に刺さる刀を引き抜くと侍の首をもぎとる。俺は鬼だ。鬼が乗り移った。先代の呪いの鬼かもしれない。細かい事は気にならない。境内に居るすべての侍を殺した。俺は山に入る。

xxx

 今でも村人は恐れている。
「あの山には鬼がいるぞ、人の事を鬼扱いしたからな……」

終わり

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