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WsdHarumaki 2023/03/24 22:16

婚約者:奇妙な婚約者【魔女のミナリア、洞窟へ行く】(25/50)

第五章 婚約者
第五話 奇妙な婚約者

 あらすじ
 魔女のミナリアは洞窟に住む黒髪の少女レオノーアに出会う、呪いのために閉じ込められているレオノーアは、洞窟の封印の解除をミナリアに頼む。赤と青の洞窟を攻略したミナリアは次の攻略へ向かう。ミナリアは不思議な男性から許嫁と告白される。

 銃使いのオスカーがいつのまにか後ろに居る、火薬の匂いですぐに判る。体が煙臭い、彼には秘密にしている。臭いとか言うと男性はすぐに傷つくから。「ミナリアには、許嫁が居たのか? 」「私は初めて知りました」

 貴族のライアンと紹介された青年は、もめごとが嫌いなのか。気分を害してギルドの館から出ていく。悪いことをしたと思う。私のような娘でも許嫁からつれない態度されたら悲しい筈だ。後で謝罪しないと。

 魔女ギルドの案内人のマリアが笑いだす。「あはははっ、まぁ貴族様だ、色々と複雑なんだろ」「私も後で弟に聞いてみます」 弟のリュカも顔を一回だけ出して、会いに来てくれない、少しだけさみしい。まぁ弟も忙しくて私と遊ぶことも少なかった。立派な領主になるためには勉強も大変だ。弟ならば現在の状況を知っているかもしれない、継母とは────話をするのが難しい。追い出されてから私は彼女と話をしていない。

「でもリストは無駄になりました」 リスト作りは依頼された内容に対して、それなりの金額だったから期待していたが仕方ない、私がリストを引っ込めようとすると、マリアがその手を抑える。

「私の娘の件を頼むよ」 私はマリアにうなずく、マリアの娘が洞窟の攻略で困っている、私は承諾してギルドの正式の契約書にサインをした。

「俺も行くぞ、新しい銃の試し打ちを増やさないと」 銃使いのオスカーは前回使った新しい宝石銃を試したい、彼も一緒に仕事するための契約書を作成する、この場合は私の護衛になるので私から彼に賃金を払う事になる、前回のサファイアを加工して払う予定だ。

 銃使いのオスカーと別れると宿屋に向かう、レオノーアに話をしなくてもいいかな? とも思う。今回はマリアさんの依頼だ。レオノーアも彼女なりに私生活を大事にしたい筈だ、私もずっとレオノーアと一緒に居ると、常に隣に居るのが当たり前に感じるのは問題だ、いつかは別れる運命だ。あまり親しくならない方がいいかもしれない。別れる時の悲しさで辛くなるから。

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 翌朝になり転送門で待っていても、銃使いのオスカーは来なかった。何か緊急の用事があるのかもしれない、私はしばらく待ってから転送門へ歩み寄った。

「ちょっとマリアさんの娘さんの様子を見に行くだけだから……」

WsdHarumaki 2023/03/23 20:00

婚約者:望む男【魔女のミナリア、洞窟へ行く】(24/50)

第五章 婚約者
第四話 望む男

あらすじ
 魔女のミナリアは洞窟に住む黒髪の少女レオノーアに出会う、呪いのために閉じ込められているレオノーアは、洞窟の封印の解除をミナリアに頼む。赤と青の洞窟を攻略したミナリアは次の攻略へ向かう。ミナリアは不思議な男性から許嫁と告白される。

 長い金髪の少女がギルドのカウンターに頼んでいたリストを出している。私はゆっくりと近寄ると声をかけた。

「――君の婚約者だ」
 驚いたように俺を見つめる少女はまだ幼い。女でもない子供でもないそんな境界線の少女は、無垢の美しさを保っている。どちらかにバランスを崩してしまうと、この美しさが損なわれる貴重な瞬間。

「君の家と話が進んでいる最中に不幸があってね」
 俺は彼女を助ける事ができる、そして彼女の持参金で俺の借金も帳消しにできる。お互いが得だ、まだ幼い顔つきの少女だが、すぐに大人になる。性格も良さそうだし素直で明るい。彼女が欲しいと真剣に思う。彼女は理想的な女性だ。今にも手を出しそうになるのを我慢する。

 だが見ていると彼女は結婚に関してかなり消極的だ、何故だ? 働くのが苦痛ではないのか? もちろん正式な婚約はしていないが、婚約一歩手前までは、話が進んでいた筈だ。

「妻として僕と暮らしてくれないか? 君が選んだリストがあるよね? なんでも好きなものを買ってあげよう」
 自分で選んだものだ、すべて買い与えれば、考えを変えるかもしれない。俺は笑い顔を崩さないように我慢する。このためのプレゼント作戦だ。自分が欲しいものを自分で選ばせる、完璧だ。

「一年は待って下さい」
 唖然とした、俺は今までも女にはモテた。金も権力もあるが重要なのは顔だ、女に好かれる顔をしている。なんで子供に否定される、腕がふるえる。悪い癖だ、激高すると女を殴る時がある。俺は左手で右手を抑える。

「ミナリア、ちょっといいか? 」
 長身で黒髪の男がミナリアの後ろに立つ、目つきが鋭い、見ればわかる。こいつは人殺しだ。職業軍人を社交界でも見たことがあるが、特有の匂いがする。いつでもお前を殺せる、そんな目つきをしている。

「君は誰かね? 今は許嫁と話をしている最中なんだが? 」
 目をまともに見られない。殺気を感じている、だがここで逃げてしまえば終わりだ、こちらは正統な手段で女をモノにする権利がある。

「お客さん、ここでもめごとは遠慮してください、今回の仕事はキャンセルでお願いします」
 カウンターの赤毛の女性が俺に宣告する。俺は踵を返すと急いで、その場から離れた。問題はあの男か、調べないといけない。

WsdHarumaki 2023/03/22 20:39

婚約者:素敵なプレゼント【魔女のミナリア、洞窟へ行く】(23/50)

第五章 婚約者
第三話 素敵なプレゼント

あらすじ
 魔女のミナリアは洞窟に住む黒髪の少女レオノーアに出会う、呪いのために閉じ込められているレオノーアは、洞窟の封印の解除をミナリアに頼む。赤と青の洞窟を攻略したミナリアは次の攻略へ向かう。

「こんなもんかしら? 」
 私は流行りの小物をリストアップした。高額な商品はもとから除外している、高い金を出せば職人から素敵なアクセサリーは作ってもらえる。その手の特注品は普段使いはできない。友達同士で見せ合ったりする程度のプレゼントに絞る。流行りのお芝居で使われたアクセとか、俳優さんの名前入りのハンカチとか、そんな程度で良い。私はまだ現役なので受けそうなものはピックアップできた。

「後は洞窟の話かぁ」
 そう言えば、最近はレオノーアが一緒に居てくれない。街を一通り見たら飽きたらしい。指輪で呼べば来てくれるが封印を順調に解いているので安心しているのかもしれない。

「リスト作りました」
 魔女ギルドのマリアさんに書いたものを渡そうとすると、ギルドカウンターの近くに居る長身で金髪の顔の長い貴族が声をかけた。

「君がミナリア? 」
「――どなたです? 」
「これは失礼した、君の婚約者のライアンだ」
 突然の話で私は言葉を続けられない、婚約者が居るとは思わなかった。婚約は家同志の関係にも影響がある、私のような追い出された娘と婚約できるとは思えない。

「私はミナリアですが────父からは何も聞いていないのです」
 こんな私が婚約者とか、彼も不幸に思えた、見ればそれなりにハンサムで女性にモテそうに見える。私なんかよりも別の人を選んだ方が良い。

「私は家を出て働いています、別の家の人と婚約された方がいいですよ」
 ニッコリ笑いながら首を少しだけかしげた、こうすると父は嬉しそうに私を抱きしめた。男性にはこれが一番だと思う。彼は憮然とした表情する。

「んん……君が働いている理由は判らないが、婚約して結婚すれば働く必要もない、私の妻だ」
 私は困惑する、確かに貴族の奥さんになれば働かなくても良い────でも、魔法の勉強もできない。私は私にできる事で社会に貢献したいと前から思っている。働くのは大変だけど楽しいのは事実だ。それに今は、レオノーアの封印を解かなくてはいけない。

 私は彼にどう説明すればいいのか考えた。
「一年くらい待ってください、継母にも相談します」

WsdHarumaki 2023/03/21 20:16

婚約者:不思議な依頼人【魔女のミナリア、洞窟へ行く】(22/50)

第五章 婚約者
第一話 不思議な依頼人

あらすじ
 魔女のミナリアは洞窟に住む黒髪の少女レオノーアに出会う、呪いのために閉じ込められているレオノーアは、洞窟の封印の解除をミナリアに頼む。赤と青の洞窟を攻略したミナリアは次の攻略へ向かう。

「ミナリア、あんたに仕事を頼みたい人が居るよ」
 魔女ギルドの案内人のマリアさんが、私を呼び止める。貴族が私を雇いたい。指名で来るのは珍しい、新米の私は名前や顔を覚えて貰えない筈なのに?

「私ですか? 」
「若い娘に頼みたいんだってさ、あんたくらいの歳の娘が欲しそうなプレゼントを選んで欲しいみたいね」
 恋人にでもプレゼントするのだろうと思う。確かにプレゼントされれば、なんでも嬉しいけど、贈られて嬉しい物ならば何倍も効果がある。

「私でいいんですか? 」
「貴族で若いのは、あんたしか居ないんだよ」
 マリアが笑って説明する。もうベテランが多いギルドは若い娘が少ない。危険な仕事だし、ソロ活動をする女魔法使いは希少だ。大半は大きな部隊で活躍したり、専門のパーティか魔女仲間同士でつるんで働く。私の場合は、実績もない若い娘で誰からも声をかけてもらえない。

「判りました受けます────どうすればいいのかな? 」
「店で欲しい物を選んでリストにすれば? 」
 なるほどマリアさんは、頭が良い。私は頭をうんうんと縦にふる。

「あとね…………私からも依頼があるんだよ」
「マリアさんから依頼? 判りました、まかせてください」
 内容も聞かないうちに安請け合いをする私にマリアさんは笑う。彼女には娘が居るという、シーフの彼女は何週間も前から、洞窟の一つで苦労をしている。様子を見て来てほしい。

「親ばかだよね、私に似ないで魔法は使えない娘でね」
 親になる気持ちは私には判らない、心配で仕方がないのねと思う。それに比べて私の継母は、私がこんなに苦労しているのに、少しも心配をしてくれない。実子じゃないから無理はないか────ちょっとだけさみしい。

「どうしたの? 難しそう? 」
 私が落ち込んだ事に誤解をしたマリアさんが心配をしてくれる。

「あ!違うんです、私の継母も心配してくれるのかなと……」
「心配するのは当然だよ、あんたには判らない苦労があるかもよ」

 マリアさんが私を見る目は…………継母に似ていた。あなたには判らないでしょうけど────理解できない子供を見る目。私は自分の鬱屈した考え方に憂鬱になる。まずは貴族からの依頼を達成させよう。

 私はマリアさんに今日中にリストを作りますと告げてギルドを出た。さて、どんなリストを作ろうかな。

WsdHarumaki 2023/03/20 21:48

婚約者:不誠実な男【魔女のミナリア、洞窟へ行く】(21/50)

第五章 婚約者
第一話 不誠実な男

 あらすじ
 魔女のミナリアは洞窟に住む黒髪の少女レオノーアに出会う、呪いのために閉じ込められているレオノーアは、洞窟の封印の解除をミナリアに頼む。赤と青の洞窟を攻略したミナリアは次の攻略へ向かう。

 安宿場で眼が覚めると上半身は裸のままだ、俺は整髪していない金髪をかきむしる、また深酒をした。隣で寝ている女は街角で立っていた娘だ。俺はベッドから出ると急いで服を着替える。

「親父に怒られるな」
 ぶつぶつと独り言を言う癖は治らない。顔を見せれば小言を言われる、確かに俺は放蕩息子だ、酒癖も悪いし女癖も悪いのは自覚している。俺は惰性で生きている、目標がない、金があるから酒を飲んで女を抱いている、他にする事がない。

 親父の仕事は貴族だ、難しい書類を扱うが実務はすべて専門家にまかせてある、年貢や帳簿の計算や管理、もめごとの調停。仕事をする人間はすべてそろっているし親父が判断するような問題は発生しない。重大な問題が発生したとしても、親父が判断する段階で何を判断しても良くも悪くもならない。

 象徴として生きているだけだ、俺もそれを継ぐ事になる。嫁を貰えば変わるかと思ったが、悪評が立ちすぎたのか成立しなかった。唯一残ったのはアスタ家だが、父親が事故で死亡する。婚約が成立する前だ。俺には嫁を貰う名家がどこにも無くなった。

「金もそろそろ、無くなるか」
 カード賭博の借金もでかい、取り立てが来ると思うと恐怖で足がすくむ。命は取られないと思うが何日も閉じ込められて責められる。知り合いの貧乏貴族の息子はそれで廃人になった。何日も座らせない、眠らせない、そんな○問で精神を破壊する。見せしめだ。それを見て借金がある奴は金を払う。自分でも真面目に働くのが無難なのは理解している。

 でも俺にどうしろと? 真面目に机の前に座ればいいのか? まるで置物だ。バカげた人生に、うんざりしていた。

「いってきます」
 長い金髪が揺れる、宿屋から一人の少女が出てくる。かわいらしい顔つきは町娘とはまったく異なる。貴族の娘だ、いや見たことがある。アスタ家の娘だ、確かミナリアという名前だったような…………

「──冒険者の恰好かな? 」
 なんで貴族の娘がこんな所に住んでいるのか判らない、俺はゆっくりと彼女の行先を確かめる。魔女ギルドの館に入る所を確認する、彼女は働いているのか? 理由が判らない。名家の娘がこんな場所で働く理由を知りたい。俺は魔女ギルドのドアを開ける。

「頼みたい仕事があるんだ」
 カウンターに居る赤い髪をした年配の女性に声をかけた。

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