WsdHarumaki 2023/03/23 20:00

婚約者:望む男【魔女のミナリア、洞窟へ行く】(24/50)

第五章 婚約者
第四話 望む男

あらすじ
 魔女のミナリアは洞窟に住む黒髪の少女レオノーアに出会う、呪いのために閉じ込められているレオノーアは、洞窟の封印の解除をミナリアに頼む。赤と青の洞窟を攻略したミナリアは次の攻略へ向かう。ミナリアは不思議な男性から許嫁と告白される。

 長い金髪の少女がギルドのカウンターに頼んでいたリストを出している。私はゆっくりと近寄ると声をかけた。

「――君の婚約者だ」
 驚いたように俺を見つめる少女はまだ幼い。女でもない子供でもないそんな境界線の少女は、無垢の美しさを保っている。どちらかにバランスを崩してしまうと、この美しさが損なわれる貴重な瞬間。

「君の家と話が進んでいる最中に不幸があってね」
 俺は彼女を助ける事ができる、そして彼女の持参金で俺の借金も帳消しにできる。お互いが得だ、まだ幼い顔つきの少女だが、すぐに大人になる。性格も良さそうだし素直で明るい。彼女が欲しいと真剣に思う。彼女は理想的な女性だ。今にも手を出しそうになるのを我慢する。

 だが見ていると彼女は結婚に関してかなり消極的だ、何故だ? 働くのが苦痛ではないのか? もちろん正式な婚約はしていないが、婚約一歩手前までは、話が進んでいた筈だ。

「妻として僕と暮らしてくれないか? 君が選んだリストがあるよね? なんでも好きなものを買ってあげよう」
 自分で選んだものだ、すべて買い与えれば、考えを変えるかもしれない。俺は笑い顔を崩さないように我慢する。このためのプレゼント作戦だ。自分が欲しいものを自分で選ばせる、完璧だ。

「一年は待って下さい」
 唖然とした、俺は今までも女にはモテた。金も権力もあるが重要なのは顔だ、女に好かれる顔をしている。なんで子供に否定される、腕がふるえる。悪い癖だ、激高すると女を殴る時がある。俺は左手で右手を抑える。

「ミナリア、ちょっといいか? 」
 長身で黒髪の男がミナリアの後ろに立つ、目つきが鋭い、見ればわかる。こいつは人殺しだ。職業軍人を社交界でも見たことがあるが、特有の匂いがする。いつでもお前を殺せる、そんな目つきをしている。

「君は誰かね? 今は許嫁と話をしている最中なんだが? 」
 目をまともに見られない。殺気を感じている、だがここで逃げてしまえば終わりだ、こちらは正統な手段で女をモノにする権利がある。

「お客さん、ここでもめごとは遠慮してください、今回の仕事はキャンセルでお願いします」
 カウンターの赤毛の女性が俺に宣告する。俺は踵を返すと急いで、その場から離れた。問題はあの男か、調べないといけない。

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