WsdHarumaki 2023/08/29 21:03

SS いつもの彼女【異口同音&幼児語&スーパーヒーロー】三題話枠

「銀河に替わってお尻ペンペンよ! 」

 美少女戦士ラブラブムーンだ、俺はうんざりしたような顔をする。前口上まえこうじょうがひどい。幼いというか中学生なのに洗練されていない、思考回路が小学生なのかセンスが悪く幼児語を使う。

「悪いことしちゃだめって言ってるのに! 」

 こっちは悪の組織なんだがら悪い事をするのは当然だ。実際はせこい事しかしていない。今回は役所の小型家電の回収ボックスを狙い、中の携帯電話を盗み出して溶かして金を取り出す。溶剤とか作るのが大変だから割に合わない。

「窃盗せっとうだからな、そりゃあ悪い事だよ」
「義男よしお君は、そんなんだからダメなの」
「おい実名はやめろ、高橋なつみ」
「今はラブラブムーンなの、なんでフルネームで言うの! 」

 露出度が高い服で、頬を膨らませて怒る顔はかわいい。彼女は偶然のようにスーパーヒーローに選ばれた。もっと適任者がいると思うのだが、天然の方がヒーロ役として正しいかも? 彼女は邪心がない。

 その力をもってすれば県内の制圧くらいは楽勝だ。時代が戦国ならば日本国を統一できる。でも彼女はそんな事はしない。正義を守るために戦う。彼女の正義感は、世間一般の正義だ。異口同音のような平和。でもそんな平和が正義ならば、なぜ世界はもっと平和じゃないんだ。

「俺はせこくても悪でいいよ」

 別に悪びれるつもりもない、体力も無くクラスカーストのビリの俺は、よくて無視されていた、悪くすればイジメの対象だ。だが悪の組織に入る事で俺は強くなれた。高橋なつみが正義に選ばれたように、俺は悪に選ばれた。

「世の中は金だ、どうせ携帯は捨てるんだから金を取り出して活用する! 」
「……なんでそんな風になったの? 」

 大きな瞳から涙があふれる。まるで俺がいじめているようだ。高橋なつみは、正義感は強かった。イジメを受けた俺を助けてくれた。

「いや……泣くなよ」
「悪はダメ絶対! 」

 彼女のスーパー鉄山靠てつざんこうが炸裂する。体当たりだ、俺は彼女を間近に感じる、甘い香りを楽しみながら、俺はコンクリの壁にめり込んだ。

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「まだ背中が痛い」
「義男よしお君が悪いんだからね! 」

 いつもの通学路を高橋なつみと一緒に歩く。彼女がいる限り町内は平和だ。悪の組織に、失敗したとレポート書いて上司にメールしといた。別に怒られない。彼女の横顔を見ながら、今は対等の関係で嬉しい俺がいる。

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