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WsdHarumaki 2023/04/07 21:37

黒の洞窟:黒の洞窟【魔女のミナリア、洞窟へ行く】(30/50)

第六章 黒の洞窟
第五話 黒の洞窟

 あらすじ
 魔女のミナリアは洞窟に住む黒髪の少女レオノーアに出会う、呪いのために閉じ込められているレオノーアは、洞窟の封印の解除をミナリアに頼んだ、ギルドの案内人のマリアからシーフの娘の様子を見てくれと頼まれて、マリアの娘のラミラとライアンとミナリアで、山頂の洞窟に入ると光の魔法が消えてしまう。

「ラミラさん、ライアンさん…………」
 暗闇の中で私は迷う。光の魔法が消されたのは、赤の洞窟の時と同じだ。魔法がキャンセルされる祠(ほこら)にはルビーがはめられていた。この洞窟にも同じ仕組みがあるのだろうか?
 
「ミナリア? 大丈夫? 」
 ラミアさんの声が聞こえる、私は返事して動かないでと伝えた。壁に手をつけて戻る事は可能だろうが、暗闇の中だ、方向感覚がなくなれば奈落に落ちる。私はゆっくりと壁を探すと手をつけて戻る。ガラス玉を用意すると魔法を使う。ぼんやりと光が灯る。
 
 周囲をかざしてみるとラミラさんの腰に、しがみついているライアンさんが見えた。驚いて転んだのかもしれない。光がゆっくりと薄れる、この付近に魔法を抑制する何かがあると私は感じる。私は手袋を外して、左手の指輪にそっと話しかける、洞窟の主のレオノーアと連絡が取れる筈だ。
 
「レオノーラさん、居ますか? 」
「何?」

 耳元に声がして驚く、心臓がドキドキした。こんなに速く反応できるのは、凄いとか思ってしまう。私はレオノーラに、事情を説明するとみんなには見えない姿で私のそばに立つ、霊体と同じだ。レオノーラは、周囲を見回すと洞窟の底を指さした。
 
「底に祠(ほこら)があるわ」
 底に近づいた事で魔法がキャンセルされていた、ここは【黒の洞窟】と教えて貰う、彼女の呪いを解く場所だ。彼女は最初から私を呼んでと怒っている。
 
「どうしよう……光の魔法が使えない」
「簡単よ、山頂を破壊して」

 私は大胆さに呆れた、問題は天井だけ落とせるか、落石で周囲への被害が出ないか、それが心配だった。私は光の魔法が使える所まで坂を登る。このあたりなら光の魔法が使える場所で立ち止まる。
 
「魔力集中して天井に魔法を当てられればいいわ、穴を開ける程度ね」
 難しいと思うが私は左手の七色に光る指輪の力を信じて、天井に向けると呪文を唱える。
 
「暴烈光芒」

 爆発的な光でまぶしい、天井に向かって光の矢が伸びると天井を崩落(ほうらく)させた。まぶしい光が広がると落下した岩石が地の底の祠(ほこら)に向かって落ちて行く………

 祠が壊れた事で魔法が復活をした。

「たぶん底にあるのはブラックオニキスよ、光を吸収して閉じ込める性質があるわ、破壊しただけで十分よ」
 魔女のレオノーラは、価値が低いので回収は不要と言う。私はラミラさんとライアンさんと一緒に山頂の出口へ戻る。外に出るとライアンさんが抱きついた事をラミラさんに謝罪している。ラミラさんは怒った風でもなく彼を慰めている。

「変な男だな、私が好きだってさ」
 山を下りながら、ラミラさんはずっとライアンさんの話をしていた。嬉しそうに笑う彼女は幸せそうに見える。

WsdHarumaki 2023/04/06 19:41

黒の洞窟:暗転【魔女のミナリア、洞窟へ行く】(29/50)

第六章 黒の洞窟
第四話 暗転

 あらすじ
 魔女のミナリアは洞窟に住む黒髪の少女レオノーアに出会う、呪いのために閉じ込められているレオノーアは、洞窟の封印の解除をミナリアに頼む。先にギルドの案内人のマリアからシーフの娘の様子を見てくれと頼まれた。現地には元婚約者のライアンと出会い、マリアの娘のラミラとミナリアで、山頂の洞窟を探検する。
 
 私は山を登りながら少女を観察する、洞窟を見たがっていたが理由が判らない。黒の洞窟には、お宝は無い筈だ。

 ミナリアは不思議な雰囲気がある、魔女だと聞いたがかなり若い。若いのにソロで活動しているのは、実力がある証拠だ。それに金も気前よく払う。儲けているのが判る、才能がある人が羨ましい、ミナリアは美人で魔力もある、ギルドで働いている母親を想い出した。
 
「シーフのラミラさんは、洞窟にどんなご用があるのですか? 」
「訓練だね、洞窟内は松明でも明るくならない、トラップなのかもしれないから挑戦しているの」
「不思議ですね……」

 ミナリアは首をかしげながら悩んでいる。魔法を使えば見えるようになるのだろうか? それにしても一緒についてきた、ライアンと言う男がお荷物だ、山に登るだけで息切れをしている。日頃から運動していない証拠だ。
 
「ミナリアさん、あの男は知り合いなのか? 」
「ミナリアと呼んで下さい、許嫁だそうです」

 ライアンは見るからに貴族に見える。ミナリアも貴族だろう、彼女がギルドで働いている理由は判らないが貴族同士の決まり事と思えた。
 
「ただ私も判らなくて、父が死んで結婚の事はうやむやなのです」
「……私の父も居ないんだ、別れたと聞いたよ……」
「まぁマリアさんは離婚されたんですか? 」
「なんで母の名前を? 」

 ミナリアはあわてて口に手をやるが、理由を教えてくれた。母が私の心配している。私は逃げるように母親から離れた事を後悔する。母は何も悪くない、それなのに自分の気持ちしか考えて無い。母が心配をするのは当たり前だ。
 
「あの──私も洞窟の中を探索したいので、案内のお願いできますか? 」
 彼女は洞窟に興味があるらしく状態を知りたがる。不思議な洞窟なので当然に思えた。山頂で洞窟の入り口から入るが、なにしろ入り口から数歩でも進むと闇で何も見えなくなる。太陽光が入り口付近で遮られていた。
 
「松明を用意するがそれでも奥は見えないんだ」
「判りました、ガラスの魔法を使います」

 ミナリアはガラス玉を取り出すと魔法で光らせる。淡く輝くガラス玉を壁沿いに置くと目印になる。
「すごいな、これなら戻り道が判るぞ」

 ライアンは自信なさげについてくる、私は慎重に周囲の壁や床を見る。ミナリアから貰ったガラス玉の一つを手に持って照らすとかなり遠くまで確認できた。やはり魔法は便利だ。彼女の魔法は洞窟内の力に抵抗できる。
 
 洞窟内は下り道で、山から下りる感じで内部の大空間を確認する、広大な大空間は天井すら見えない。下りの一本道だが、右手の壁とは逆に左手は底なしの穴だ。落ちれば命は無い。もし光の魔法が無ければ、と考えると恐ろしい。ミナリアが慎重そうに洞窟を歩きながら私につぶやく。

「底になにかあるんでしょうか? 」
「何があるのか誰も知らないんだ」

 ふいに光が全て消えた、漆黒の闇に私は体が固まる、何かが私の体に抱きつくと、地面に押し倒された。何かにしがみつかれる。


 
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