WsdHarumaki 2023/04/06 19:41

黒の洞窟:暗転【魔女のミナリア、洞窟へ行く】(29/50)

第六章 黒の洞窟
第四話 暗転

 あらすじ
 魔女のミナリアは洞窟に住む黒髪の少女レオノーアに出会う、呪いのために閉じ込められているレオノーアは、洞窟の封印の解除をミナリアに頼む。先にギルドの案内人のマリアからシーフの娘の様子を見てくれと頼まれた。現地には元婚約者のライアンと出会い、マリアの娘のラミラとミナリアで、山頂の洞窟を探検する。
 
 私は山を登りながら少女を観察する、洞窟を見たがっていたが理由が判らない。黒の洞窟には、お宝は無い筈だ。

 ミナリアは不思議な雰囲気がある、魔女だと聞いたがかなり若い。若いのにソロで活動しているのは、実力がある証拠だ。それに金も気前よく払う。儲けているのが判る、才能がある人が羨ましい、ミナリアは美人で魔力もある、ギルドで働いている母親を想い出した。
 
「シーフのラミラさんは、洞窟にどんなご用があるのですか? 」
「訓練だね、洞窟内は松明でも明るくならない、トラップなのかもしれないから挑戦しているの」
「不思議ですね……」

 ミナリアは首をかしげながら悩んでいる。魔法を使えば見えるようになるのだろうか? それにしても一緒についてきた、ライアンと言う男がお荷物だ、山に登るだけで息切れをしている。日頃から運動していない証拠だ。
 
「ミナリアさん、あの男は知り合いなのか? 」
「ミナリアと呼んで下さい、許嫁だそうです」

 ライアンは見るからに貴族に見える。ミナリアも貴族だろう、彼女がギルドで働いている理由は判らないが貴族同士の決まり事と思えた。
 
「ただ私も判らなくて、父が死んで結婚の事はうやむやなのです」
「……私の父も居ないんだ、別れたと聞いたよ……」
「まぁマリアさんは離婚されたんですか? 」
「なんで母の名前を? 」

 ミナリアはあわてて口に手をやるが、理由を教えてくれた。母が私の心配している。私は逃げるように母親から離れた事を後悔する。母は何も悪くない、それなのに自分の気持ちしか考えて無い。母が心配をするのは当たり前だ。
 
「あの──私も洞窟の中を探索したいので、案内のお願いできますか? 」
 彼女は洞窟に興味があるらしく状態を知りたがる。不思議な洞窟なので当然に思えた。山頂で洞窟の入り口から入るが、なにしろ入り口から数歩でも進むと闇で何も見えなくなる。太陽光が入り口付近で遮られていた。
 
「松明を用意するがそれでも奥は見えないんだ」
「判りました、ガラスの魔法を使います」

 ミナリアはガラス玉を取り出すと魔法で光らせる。淡く輝くガラス玉を壁沿いに置くと目印になる。
「すごいな、これなら戻り道が判るぞ」

 ライアンは自信なさげについてくる、私は慎重に周囲の壁や床を見る。ミナリアから貰ったガラス玉の一つを手に持って照らすとかなり遠くまで確認できた。やはり魔法は便利だ。彼女の魔法は洞窟内の力に抵抗できる。
 
 洞窟内は下り道で、山から下りる感じで内部の大空間を確認する、広大な大空間は天井すら見えない。下りの一本道だが、右手の壁とは逆に左手は底なしの穴だ。落ちれば命は無い。もし光の魔法が無ければ、と考えると恐ろしい。ミナリアが慎重そうに洞窟を歩きながら私につぶやく。

「底になにかあるんでしょうか? 」
「何があるのか誰も知らないんだ」

 ふいに光が全て消えた、漆黒の闇に私は体が固まる、何かが私の体に抱きつくと、地面に押し倒された。何かにしがみつかれる。


 

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