黒の洞窟:婚約者として【魔女のミナリア、洞窟へ行く】(28/50)
第六章 黒の洞窟
第三話 婚約者として
あらすじ
魔女のミナリアは洞窟に住む黒髪の少女レオノーアに出会う、呪いのために閉じ込められているレオノーアは、洞窟の封印の解除をミナリアに頼む。今はギルドの案内人のマリアからシーフの娘の様子を見てくれと頼まれている。現地には元婚約者のライアンが待っていた。
「これで足止めしてくれ」
俺は金で専門の詐欺師を雇う。こいつらは借金があると見せかけて金をだまし取るプロだ、銃使いに借金があると嘘の証文を作らせて催促させる。これで対応に追われて動けない筈だ。
銃使いに邪魔されなければ、ミナリアのような幼い少女から信頼を得るのは簡単に思える。信頼を得て彼女と結婚して持参金で借金を返す、完璧な計画だ。彼女が依頼を受けて転送門を使う事を知ると、私もギルドに金を払い転送門を使わせてもらう、彼女の信頼を得るためだ。
「少女は一人で転送門から転移したぞ」
見張り役から知らされて俺も転送ゲートを使い移動する。偶然を装って彼女と出会うと彼女は冒険で山に登るらしい。俺も参加することにした、こんな若い少女が冒険とか信じられないが、お嬢様の散歩程度と考えていた。
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「あの…………まだですか? 」
「大丈夫ですか? 戻りますか? 」
俺は前を歩く少女達の背中を見て息切れをしていた。急な坂道で一歩が重い、若い彼女達は平気で歩いている。ミナリアは心配そうに俺を見る。
「──大丈夫です」
山と言っても人里近くで危険なモンスターは居ない、護衛も必要無いと考えて呼んでない。それにやたらと体のでかい女が一緒だ。山頂に到着する頃には汗で体が濡れて冷える。
「ライアンさんは、こちらでお休みください」
「いや! 大丈夫です、護衛させてください」
ミナリアはその美しい金髪を触りながら、迷っている様子だ。
「こいつなら、私が守るよ、あんたの連れなら料金内だ」
ラミラと言うシーフの女が俺を見る。でっかい体で自信満々に言う。俺のようなひ弱な男は相手にしないタイプだ。俺に媚を売る女は金目当てか、地位目当てだ。こいつみたいな、ごついタイプは鼻で笑って馬鹿にされる。
「じ……自分の身くらいは守れる! 」
ラミラは鼻をフンと鳴らすと洞窟に向かう。自分のひ弱さや卑劣さが恥ずかしくなる。こんな俺がミナリアと結婚していいのか──いや金のためだ。ミナリアが近づくと俺の手をとると引っ張ってくれる。
「中は暗いですから注意しましょう」
輝くように笑う彼女の目を見られない。