新興宗教ンポ教 ―イケメン高身長女子「澪」の救済―
走る。走る。ただ、走る。すべて追い抜き、息が切れようとも、わき腹が痛くなろうとも、ただ、ただ、走り続けた。私の両足が地面を蹴る度、私の体は前へ前へと加速する。周りの景色は見えていない。ただ見えているのは、自分の前へと続くトラックの白い線だけだ。無限に続くと思われた平行な白線は、思いのほか早く、白い横線が訪れる。
横線を超えてしばらく、切れた息を膝に手をついて整える。しばらくは目が白黒して、頭に酸素が回らずまるで頭が働いていなかったが、徐々に自分の鼓動がうるさく鳴り響き、徐々にそれが遠のいて、周囲の声が聞こえてくるのに気が付く。
「やったね! 澪!」
「澪先輩、流石です!」
近づいてきた同じユニフォーム姿の女性、同期や先輩後輩が私にわらわらと駆け寄ってきた。
「あ、ああ。ありがとう」
「やっぱり、澪は群を抜いて速いわね!」
『女子400メートル走に出場した選手は、表彰台へと、向かってください』
「さあ行きましょう! 表彰台が待っていますよ!」
「う、うん」
勝ったことは嬉しい。それは本心だ。この日のためにやってきた練習だって嘘じゃない。社会人になってからも陸上を続けているのだから、走ることは好きなんだ。みんなのことだって嫌いなわけじゃない。……それでも、私が表彰台に向かおうと上体を起こしたとき、向けられる視線には嫌気がさしてしまう。
「はぁ、やっぱり素敵です……♡」
「ほんと、いいわぁ、澪……♡」
「ああ、うん……その……ありがとう」
「きゃー! イケメーン!」
「すごいわぁ、澪ぉー! 最高ぉー!」
これだ。私に向けられる彼女たちの表情、すっかりとろけてしまっていた。漫画表現なら、両目がハートマークになっていただろう。貰っている賞状だって別になんていうことはない。社会人が趣味でやっている陸上大会での成績。お互いの努力を認め、鍛え上げた肉体を称えあうためのものだ。だっていうのに、彼女たちはまるで私がオリンピック記録を塗り替えたとか、プロアスリート同士の争いに打ち勝ったかのようなテンションで見てくるのだ。
「いやぁ、和泉さんは相変わらずモテますなぁ。羨ましい」
「す、すみません……」
私は苦笑を向けながら、大会主催者の男性に頭を下げて賞状を受け取った。
そう。私、和泉澪は女性にモテる。別にこれは自分で勝手に思っているわけじゃない。けれど、学生時代は毎年女子からバレンタインにはチョコを貰い、シーズンごとに三回も告白を受け、それが25になった今も続いていればいやでもそうなんだと理解してしまう。185cmという高身長やショートカットのヘアスタイル。現在も営業部員として仕事で活躍しているという点も、彼女たちからの評価に一役買っているのだろう。もちろん、それだけならなんていうことはない。男女関係なく、自分を魅力的だと感じてくれるのは、感謝すべきことのはずだ。それだけのことなら。
授賞式を終えて部室に戻った時だった。同じサークルの後輩二人が、私のもとへやってくる。
「あ、あの。澪先輩……♡」
「和泉……先輩……♡」
「あ……どうしたの? もう部活終わったでしょう?」
「いえ……そ、そうじゃ、なくて……♡♡」
「また、お願いしたくって……♡」
「……そ、そっか。いいよ? おいで……?」
誰もいない更衣室に頬を染めた二人を連れて入る。汗を吸ったユニフォームのまま、着替え用のベンチに腰を下ろすと自分の太ももを軽くたたいて見せた。彼女たちは嬉しそうに微笑むと、そのまま足を開いて、私の左右の膝にそれぞれ腰を下ろしてきた。私の膝が、彼女の股間にあたり、そのまま前後へと擦りつけられていく。
「あぁ、先輩……せんぱ、ぁ……♡」
「すき、先輩、すき、です♡ 先輩、好きって、言って? 嘘でもいいからぁ♡」
「こ、こらこら……好きはなしって、約束でしょう?」
「じゃあ、キス、キス……おねがい♡」
「キスもだーめ」
二人をたしなめながら、満足するまで腰を振らせてやる。競技をするときには付けない主義なのか、あるいは私のところに来る前に外したのかは知らないけれど、ユニフォームに浮かんだ乳首や乳輪を指でなぞると、彼女たちは顔を後ろへ反らしたり、私にもたれかかったりしながら、安い愛の言葉を漏らしていた。周囲に聞かれないようにと、抑え気味の悶え声とは裏腹に、私の膝は滑つく股間とこすれあってぬちゃぬちゃといやらしい音が漏れていた。
「ぁっ、んんっ、せん、ぱっ、ぁっ♡」
「せんぱぃ、いっちゃう、きちゃぅ、ぅっ♡」
「うん……イって、いいよ? たくさんイきな?」
「ぃっぐ、いぐっ、せんぱいすきっ、すきぃ♡」
「ぉっ、お゛っ、んんっ♡ あ゛んっ、っぐぅ♡」
二人は腰をびくつかせながら、たくさんイった。腰をへこへことさせて、舌を天井へと突き出しながら。本当に、私の膝なんかでどうしてこんなにもイケるんだろうと不思議になる。とはいえ、実際にこうしてイってるんだから仕方がない。倒れそうになる彼女たちを支えると、二人と交代するようにベンチに座らせた。
「はい、おしまい。それじゃあ、シャワー浴びて、着替えたら帰るんだよ? バレない内に、掃除してね」
「は、はぃ……♡ 澪先輩。ごめんなさい汚しちゃって……♡」
「あの、よかったらきれいにしましょうか? 私達だけじゃ……♡」
「そこまではしないって約束でしょう? あんまり言ってると、みんなに抜け駆けしてるって言いふらしちゃうよ?」
「はぁーい……♡」
「先輩、また、お願いしますね……♡」
「うん。またね」
彼女たちに言い聞かせてから着替えを手にシャワーへと向かう。私の足から伝った液が、私の陸上ユニフォームを湿らせている。けれど……私の下着のクロッチは、少しも濡れてなどいなかった。