1話<挿絵付き小説>一年後、オタクのオレ♂は爆乳(ビッチ)ギャル♀になっている

♯1 
オタクに優しいギャルはいない。
中学の時、オレたちオタグループは、クラスの女子たちに白眼視されていた。
その中心となっていたのは、いわゆるギャルグループだった。
特に表立ってイジメられたりしたワケじゃないんだけど、一体何が気に入らなかったのか、事あるごとにカゲでチクチク言われたり、根も葉もない噂を流されたりしていたのだから、たまったものじゃない。
まぁオレたちは紳士だったから、やり返したりはしなかったけどな。ビビってたわけじゃないぞ。
そういった理由もあって進学先を決める際、オレは迷わず男子校を選んだ。
オタク友達の何人かが一緒だったし、ギャルもいない。
あとは家から近いから。共学の学校は二駅も離れていて、毎朝通うのはしんどそうだったし。
オタク的にはラブコメみたいな高校生活に期待をしないでもなかったが、
そんな非現実的な夢を信じられるほど、オレ『曲輪(くるわ) タクオミ』にとって中学生活はいいものではなかったんだ。

県立 磐屋堂(いわやどう)男子高等学園。
男子校であるという以外、特に取り立てて何か言うこともない、普通の学校だ。
質実剛健というありきたりな校是をもち、
グラウンドが広く、運動部に力を入れていることが自慢らしいが、文化部志望のオレには関係ないな。
一学年のクラスは6クラスで、一クラスは30名ほど。
オレは1年F組。一階校舎の端に教室があるため、若干遠いのだが、まぁそのくらいはいいだろう。
残念ながら中学のオタ友達とはクラスが離れてしまったが、
F組の雰囲気は良く、オタ話の通じるヤツも多くて、すぐに馴染むことができた。
まだそれほど親しい友人ができたってわけじゃないけど、男子校もそう悪いものじゃない。
何とかやっていけそうだと思っていた。

一か月が過ぎた。
ここ数日なんとなく、体が不調ではあった。
といっても少し熱っぽく感じるくらいで、軽い風邪かな?というぐらいの。
ゴールデンウィークが明け、休日モードが抜けきらないままだったので、
気だるい感じはそのせいだろうか。あるいは5月病とか、そんなものだろうと特に気にも留めなかった。
今日は深夜アニメは録画にして、早めに寝ようと思っていたそんな矢先、オレは突然意識を失った。後から聞いた話だけど、授業中のことだったので、ちょっとした騒ぎになったらしい。
保健室に担ぎ込まれ、保険医の判断ですぐに救急車が呼ばれた。
意識が戻らず、一時は呼吸も止まっていたそうだ。

そしてその日の夕刻過ぎ、オレは病院のベッドで目を覚ました。
倒れた原因は端的に言うとただの貧血で、命に別状はないとのことだった。
今日一日念のため入院するだけで、明日には退院できるらしい。
詳しい説明は落ち着いてからということで、医師たちと両親は病室を出ていく。
説明やら何やらはとりあえず親に話すのだろう。
オレはひとり病室のベッドでボーっとしていた。運ばれてきた食事を終え、何もやることがなくヒマなので、ゲームでもやるかとスマホをいじっていると、
中学の時の友人やアドレスを交換したばかりのクラスメイトから何件かメッセージが来ていた。
礼と、心配いらないとメッセージを返しながら、何か熱っぽい体と、ぼんやりした頭で、深夜アニメの録画予約してたっけ、なんてことを考えていた。
オレは、オレ自身に何が起きたのか、いや、起きつつあるのか、
この時はまだ何も理解してはいなかった。

【漸転換(ぜんてんかん)型TS症】。次の日告げられたのは、そんな名前の病気だった。
正式にはもっとくどくど長ったらしい名前の病名らしいのだが、要するに、
【身体が徐々に女の子になってしまう】という謎の奇病らしい。
原因不明、治療法不明のこの症状は、近年日本のみならず、世界中で増加傾向にあるとのこと。
もちろんオレは初耳だった。
さっきまでただの貧血だと思い込んでいたオレは、事態を飲み込めず、ぼんやりと他人事のように医師の説明を聞いていた。
女の子になる、というのは文字通りの意味で、徐々に肉体が男から女へと作り変えられていってしまう。
期間については数か月からおよそ一年程度で完全に女体化するのがよくあるケース。
だけど、人によるらしく5年以上かかった人もいたとか。
身体が作り変えられていく過程で、変化への防衛反応なのか、貧血のような症状で気を失ってしまうことがよくあるのだという。
今回は呼吸が止まるようなショック症状を起こしたが、これはごく初期の症状で、通常ほとんど大事になることはないらしい。
ちなみに急転換型というのもあるらしく、その場合はもっと高熱が出てつらい状態になるとのことで、その点においてはラッキーだったかもしれない。
その他色々な説明を受けたが、真剣な両親とは対照的に、オレはほとんど右から左へ聞き流してしまっていた。
だってそうだろう。今日から君は一年かけて女の子になります、とか言われても、はぁそうスか、という感想しかでてこない。
しかも今のところ体には何らの変化も見られないのだから、悪い冗談だと思うのが当然だ。トイレに行ったときに確認したが、男の証だってちゃんとついてたしな。
結局、その後退院して帰宅してからも、オレはいつも通りに過ごした。
いつも通り飯を食って、いつも通り弟と少し話をして、いつも通り風呂に入って、いつも通りアニメを見る。
明日も学校があるし、両親がリビングで何やら相談していたのも無視して、オレはベッドにもぐりこんだ。

その晩、オレは夢を見た。はっきりとは覚えていないが、
ものすごくエロい夢だったような気がする。オレと、誰か、知らない…ギャル、そう褐色のギャルがいて、それで……。
なんでそんな夢を…オレの好みは黒髪清楚系ツインテ、しかも胸は控えめな…だというのに…。
あぁなぜオレには妹がいないんだ……。
目を覚ますと、丁度深夜をまわったあたりだった。なぜか背中は寝汗でびっしょりで、体は火照っている。
「……ん!?…この感覚はまさか…」
オレは女の子になると言われてから一日と経たないうちに、男らしく夢精するハメになった。

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