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現代ファンタジーの記事 (4)

市街地 2024/04/07 09:04

【小説サンプル】二柱の愛にこいねがう・2〜4話(抜粋)

※当記事は2話以降のサンプルとなります。
第1話のサンプル記事はこちらからお読みいただけます。
【小説サンプル】二柱の愛にこいねがう・第1話

あらすじ

とある依頼を受けて遥香が探っていた二人組は、とても彼女の手に負える存在ではなかった。
正体がバレて捕まって、無理矢理身体を開かれて——。与えられる快楽に溺れ……、やがて遥香は、自らの意思で彼らのもとへと堕ちていく。

全体を通したプレイ内容

快楽責め・無理矢理・焦らしプレイ・アナルプレイ・複数プレイ・3P・二穴責めetc.

【!ご注意!】

本編には下記のシーンがございます。

・無理矢理系の性描写。
・アナル責め
・複数プレイ(3P)


【第2話】


意識が覚醒し、遥香はベッドから跳ね起きた。

見覚えのある部屋。ベッドと壁際のデスクが床面積のほとんどを占領しているここは、遥香がワザオイの二人と宿泊しているビジネスホテルのシングルルームだ。

自分はいつ戻ってきたのか。

夢幻境で辰臣たちと話しているうちに睡魔に襲われて……、二人がここまで運んでくれたのだろうか。

深夜にホテルを抜け出したところから、何もかも夢だと思いたかった。しかしながら秘部の違和感が遥香の願望を否定する。

あの淫らな時間は……二人に犯されたあの出来事は決してなかったことにならない。

——どうしよう、どうしたらいい……?

時計を見ると、朝の六時をすぎたところだった。

ホテルのすぐそばに駅があるのは知っている。二人が起きる前に、ここを離れないと。

氷雨さんもオミ先輩も、私がどうにかできる相手じゃない。

「……ぅぅ」

腰の鈍痛に耐えながら遥香はベッドから這い出た。

彼らの正体を神括連に報告するかどうか、いろいろ考えるのは後回しだ。

床に置いてある小型のボストンバッグを肩に担ぎ、急いで靴を履く。壁の差し込み口からカードキーを引き抜いたら照明が消えた。

勢いよくドアを開けた瞬間——背後に強烈な気配を感じた。

驚きの悲鳴をあげる前に口を塞がれ、振り返る間もなく遥香は部屋の中へと引き戻される。

パタン。ひとりでに部屋のドアが閉まった。

「朝っぱらから元気だな」

辰臣が遥香からカードキーを奪い、壁の挿入口へ差し込む。暗かった部屋に明かりがついた。

「オミ、先輩……っ、い……、いつから⁉︎」

などとついうっかり聞いてしまったが、答えはとうにわかっていた。ほんの数秒前まで、室内にこんな強い存在感はなかった。辰臣は遥香の逃走を察知して瞬時にここまで移動してきたのだ。

昨日の夜まで普通に人間をやってたくせに。本性を知られたからっていきなりこれは反則じゃないか。

「そんなにビビんなよ。つーか腹減ってねえか? コンビニでパン類適当に見繕ってきたから食えよ」

遥香を抱きしめるように片腕で拘束しながら、辰臣はワザオイのオリジナルグッズであるトートバッグを掲げた。

そんないつもと変わらない辰臣の態度に遥香の反発心が強まる。

「のんきに朝ごはんなんて食べてる場合じゃないでしょう」

自分たちの関係はもう、以前と同じとはいかない。

遥香は神括連の手先であって、ワザオイの辰臣と氷雨に近づいたのは、彼らを探るためなのだから。

気まずさと寂しさと——様々な感情がせめぎ合って泣きそうになる。感傷に浸る遥香とは対照的に辰臣はあっけらかんとしていて、彼女の立場を気にする素振りをみせなかった。

「なんだいらねえのか。せっかく買ってきてやったのに」

などとわざとらしくぼやきながら、デスクの上にエコバッグをぞんざいに放り投げる。

そして軽々と遥香を抱きかかえ、ベッドの上に押し倒した。

「きゃ……っ」

「だったら先にお仕置きしとくか」

辰臣のまとう空気が変わった。

「……っ!」

昨夜を思い出させる不穏な気配に遥香の身体が硬直する。そんな彼女と顔を突き合わせ、辰臣は悪どい笑みを顔に貼り付けた。

「チェックアウトまで時間はある。それまでに俺たちから逃げようなんて、二度と考えないようにしとかないとなあ?」

宣告に、頭からさっと血の気が引いた。まずい……。本能的な恐怖から、脳内で警報が鳴り響く。

そんななかで、なぜか遥香の子宮は雄を求めてキュンと疼いていた。





泊まったビジネスホテルの客室の壁は薄い。昨日の晩は、隣の宿泊客が視聴するテレビの音が、遥香の泊まった部屋まで漏れ聞こえていた。

防音は完璧でない。隣の部屋で宿泊客が寝ていることも知っている。叫んで助けを求めれば、誰かが駆けつけてくれるかもしれない。

だけどそれをしてしまうと、自分はこの痴態を他人に晒すことになって、辰臣が社会的に殺される。……その前に、一般人が辰臣のいるこの部屋に立ち入るなんて、果たしてできるのだろうか……。

「考えごととは余裕だな」

「んっ、く……ぅ、ぅう……ぅっ」

こぼれそうになった嬌声を、枕に顔を押し付けることでこらえた。

服を脱がされた遥香はベッドの上で後ろから辰臣に犯されていた。最初は四つん這いになっていたが、枕を手繰り寄せたときに上半身がベッドに沈み、そこからずっと、掴まれた腰を高く掲げる体勢で貫かれている。

ズリィ……——ドチュンッ。

遥香が必死で声を抑えるのを嘲笑うように、辰臣はじわじわと腰を引き、膣口にカリが引っかかったところで、勢いをつけて奥を叩いた。

「——っ! んんぅっ……うぁっ」

パンっと肌がぶつかる音とともに子宮口をペニスの先端で容赦なく抉られ、全身に電流のような快感が駆け巡る。

おかしいおかしい。昨日はこんなに気持ち良くなかった。

許容を超えた質量に肉壁が引きつる痛みはなく、遥香のナカは愛液を分泌しながら剛直を咥え込み、与えられる快感に歓喜し収縮を繰り返す。

「ぁっ……身体、おかし……ぃの……っ。わたしに、なに……したんですか……っ」

「なんもしてねえよ。もとから素質があったんだろ。自分が淫乱なことを俺のせいにするのは、さすがにまだ早いんじゃないか?」

「なっ、ぁぁっ……っ! ……だめ……っ、ダメだから……っ」

クリトリスをクニクニとこねられる。不自由な体勢でなんとか振り向き静止を乞うも、彼が聞き入れるはずもなく。

肉芽の裏側を膣のナカから亀頭でズリズリと擦られ、遥香はあっけなく絶頂した。

「……あっ、やぁ……んっ、もぅ……っ」

「まぁ、お前がこんなに感じやすかったってのは、俺らにとって予想外だったが……嬉しい誤算だ。これからもっとエロい身体にしてやるからな」

「なに、ヘンタイみたいなこと、言ってんですかっ」

息を乱しながらも言葉で噛みつく。たとえ彼の正体が神格であろうと、辰臣は辰臣。彼があまりにもいつも通りだから、遥香は畏怖の念からくる恐怖心を抱けない。

強がりな後輩の一面が復活してきた遥香に、辰臣はおもしろそうに笑みを深めた。快感に耐え、必死で平静を装う彼女に加虐心が湧き上がる。そんな顔をされたら、もっといじめたくなる。

膣道の浅い位置に留まっていたペニスが動く。肉壁のうごめきを楽しむようにじわじわと奥に到達して、辰臣は遥香の背中に被さった。

「——ひんっ、んっ……ぁ」

「俺がヘンタイなら、お前はなんだ? 昨日の今日でこんなに感じて……」

「ゃ、耳元で……しゃべらないで……っ」

くすぐったさに肩が跳ねる。男の低音ボイスから逃げるように、遥香はきつく目を閉じた。

グジュ……ググ、グゥ……。

「……っ、ぅ……う……」

視界の情報を遮断すると、ペニスが埋まる膣内の感覚がより鮮明になる。辰臣は何もしていないのに、遥香の腰がわずかに揺れることでナカが刺激され感じてしまうのだ。

膣奥にペニスの先端が当たる。気持ち良いけど……もどかしい……。

「腰、動いてんぞ」

「……っ、やぁ……っ」

「ナカもぎゅうぎゅうに絡み付いてきやがる。これで嫌だなんてよく言えたもんだ」

「んんぅっ! うっうぅ——っ、……くっ……んぁっ」

辰臣が腰をグラインドしてきて、子宮口をこねまわされる。

重い刺激に腹の奥底から痺れるような快感が湧き上がった。腰の痙攣が止まらない。

自分の肉体がおかしくなっていく。危機感に足をばたつかせるも、それで蹂躙者をしのげるはずがなかった。

切羽詰まった遥香が顔を上げ、涙のにじむ目を辰臣に向けた。

「もぅ……やぁっ、……からだ、おかしく……しないでっ」

「はっ——、嫌に決まってんだろ」

「……っ、オミ……先輩っ、も……ほんと、やだっ!」

これ以上辰臣を嫌いになりたくない。遥香にとってはそんな意味のこもった拒絶だったのだが、それに辰臣はがらりと空気を変えた。

「にしても……ずっと俺たちのそばで影響を受けてたってのに、堕ちきってないのはすげえよ。さすがは遥香チャン……だが、そろそろ自分の立場を理解しようか」

無邪気な笑顔に不穏さを察知して遥香の背筋が凍りつく。対照的に、下腹部が燃えるように熱くなった。

「ひっ……あ、や……っ」

ベッドの上部にずり上がろうとした身体は辰臣に引き戻され、容赦のないピストンが始まった。

抉るように肉壁を擦りながらペニスが膣道を往復する。最奥に衝撃が加えられるたびに、遥香の口から上擦った嬌声が押し出された。

「やっ、だめ……っ」

咄嗟に手にした枕を辰臣に奪われ、ベッドの下へと放り投げられる。

「抑えようとすんな。感じてる声、ちゃんと聞かせろ」

「……ゃ、ちがっ……ぅっ、となり……聞こえちゃう、からぁっ」

「どうせ聞かれたところで、相手は朝っぱらから盛ってんなぁぐらいしか思われねえよ」

そんなわけあるか。

恨みがましく辰臣を睨むも、鼻で笑って軽くあしらわれた。しかも遥香は掴まれた両腕を背中にまわして固定されてしまったため、手で口を塞ぐこともできなくなった。

後ろに手を引かれて背中がそり返り、肩甲骨がきゅっと中心に寄った。拘束をとこうともがくものの、膣道をペニスで穿たれると身体から力が抜けてしまう。

「やっ、あっ……あん、あ……っ、やぁっ」

剛直にポルチオを突き上げられるたびに、子宮に快感が溜まっていく。頭の中が快楽に染められ、他のことが考えられない。

「あぅっ、あっ……あぁんっ」

喘ぎ声が艶を帯びたものに変わったのを、辰臣は聞き逃さなかった。

「……気持ち良いか?」

「ぁっ……だめっ、あ……いぅっ……せんぱいっ……やっ」

それでもまだ、享楽を認めるのは恥ずかしいらしい。うわ言のように拒絶の言葉をもらしながら、遥香は首を横に振った。

そのくせ膣は辰臣のペニスを締め付けて快楽をむさぼり、射精を誘ってくる。身体のほうが正直だとはよく言ったものだ。

嫌がったところで誰が放すか。

天邪鬼な後輩に辰臣はいっそう執着を強くする。彼女が自分たちのものだと周囲に——そして遥香自身に教え込むためにも、行為を止めるつもりはさらさらない。なにより辰臣自身が、彼女のナカで達したいと強く望んでいるのだ。

「あぁ……、俺はすんげぇ気持ち良いんだけどなあ……。お前のナカが良すぎて、すぐにイってしまいそうだ」

不穏な言葉に遥香がハッとした。何も考えなくても膣内の剛直に意識が向いた。

熱い、硬くて、大きいのが……イイところを、ズリズリって……っ。さっきより太くなって、ドクドクしてるっ。

膣の感触を鮮明に感じたことにより快楽が増幅する。ビクビクと腰が小刻みに跳ねて絶頂を迎えるも、辰臣はピストンを止めなかった。

「んん——っ、ああっ、やあぁっ……っ!」

イった直後の余韻に浸れず、遥香の頭は真っ白になった。激しい抽送による強烈な快感に全身が痙攣を起こす。

「やめてっ、イッ……イったのっ、あっあぁ、……あっ! ……もう、いやぁ——っ」

悲鳴に近い喘ぎ声を聞きながら、辰臣がズチュンッと一際深く膣奥を叩いた。そして子宮に己の精を注ぎ込む。

「————っ!」

胎内に熱い飛沫が叩き付けられる。熱い……熱くてとても、気持ち良い……。

絶頂に絶頂が重なり、精神がとろける。全身が震えるなかで自ら秘部を辰臣の腰に擦り付けたのは、まったくの無意識だった。

膣道はペニスから最後の一滴まで精液を搾り取ろうと収縮を強める。それにまた、遥香はたまらないほど感じてしまうのだ。

「はぅ……あっ、……あぁ……っ」

ぐぬ……ぐぅ……っ。二度ほどたっぷりと媚肉を擦りながら膣道を往復して、辰臣は名残惜しそうにしながらもペニスを引き抜く。

「はっ、なんつう顔してんだ」

涙で瞳を潤ませ恍惚とする遥香の頭を撫でる辰臣の手つきは、どこまでも優しかった。





※省略




言葉の応酬のさなか、辰臣は薄紫の棒を指で挟み、遥香の目の前で見せつけた。

「……なんですかそれは……」

どう考えてもいい予感がしない。

「まあそう怯えるな。お前が寝てるあいだにひとっ走りして買ってきてやったんだから」

「どこに⁉︎」

「いやあ田舎でもこういう店は探せばあるもんだなあ。最近のは小さくても高性能なのが増えたらしいから、ひとつ試してみような」

話が微妙に噛み合ってない。絶対にわざとだ。

詳しくはなくても遥香だって大人のオモチャの存在ぐらいは知っている。辰臣の口ぶりから道具のおおよその使い道を察した途端、下腹部にきゅっと力が入った。

「……っ」

逃げなきゃ……嫌がらないといけないのに……。ソレが膣内に入れられるさまを想像してしまい、トロリと愛液が膣口からこぼれた。

パステルカラーのバイブが秘裂を往復して、本体に愛液をまとわせる。

クチッ、クチャ……クチィ……。

「……ぅ、ふぅんっ、……ゃっ」

光沢を帯びたバイブの膨らんだ先端で膣口を押される。辰臣の剛直よりも細くて小さなソレを、入り口は簡単に呑み込もうとする。しかし辰臣はなかなか奥へと入れてくれず、焦れた遥香は腰を揺らした。

チュプリ……ヌポッ……。

膣口に嵌るも、すぐに抜かれてしまう。じれったさに膣がきゅうっと締まった。

もっと奥まで挿れてほしい……。自分の淫蕩な欲望を自覚させられ、うろたえながらも遥香は無意識に自ら膝を開いた。

「……せんぱい……っ」

「奥をいじめてほしいか?」

問われて羞恥に目を泳がせる。

「これがナカでぶるぶるーってなったら、きっと気持ち良いぞ」

「んぅ——っ」

耳元でささやかれて肩が跳ねた。

求める気持ちは自覚していても、素直に伝えられるまで遥香の心は陥落していない。

かたむいていた精神は些細なきっかけで正気を取り戻す。一瞬でも快楽に身を委ねようとした自分を恥じて遥香は反射的に脚を閉じた。しかしその程度のことで辰臣のイタズラを阻止することなどできるはずもなく——。

「まあお前が嫌がってもするんだけどな」

辰臣がほんの少し力を込めただけで、ヌチリとバイブは遥香のナカへと呑み込まれた。

直後、異物に広げられた膣道を振動が襲う。

「いぅん……っ、……やっ、……なにっ? 動いてる……っ」

「そういうオモチャだからな」

「これ、や……あっ……はいって……くぅっ、止めて……いやぁっ」

バイブの振動と膣の収縮によって、異物が勝手に奥へ奥へと進んでいく。たまらず秘部へ伸ばされた遥香の手を、ストラップに指がかかる寸前で辰臣が掴んだ。

「——っ、放してっ!」

「ダメに決まってんだろ。なに勝手に抜こうとしてんだ。これがお仕置きだってこと、忘れてんじゃねーよ」

「……ぁっ」

「良い子だから手は横に……な?」

ことさらゆっくりと告げて、辰臣は遥香の手を放す。

強力な力に逆らえず、遥香は両手をベッドにつけた。

「……ぅっ、あぁっ……あんっ」

単調な振動が下腹部に甘い疼きをもたらす。呼吸が乱れてひとときも休まらない。

辰臣がストラップを引っ張り、バイブの位置を調整してくる。先端の膨らみでGスポットをピンポイントで狙われた。

カチリと小さな音がして、異物の振動箇所が先端部分のみに切り替わる。

「あぅっ……あっ、あ……っ、んぅっく、んぁっ」

快楽の波は静かに高まっていった。身体を手で支えるようにして腰が浮き、へこへこと上下に揺らしてしまう。

「良さそうだな」

「んっ、い……いぃっ、気持ちぃ……っ、あっ……い、イきそ……ぁっ」

「そうか。じゃあここまでな」

遥香が絶頂の気配を感じた途端、バイブの振動が止まった。

「え……あっ……」

「簡単にイかせたらお仕置きになんねぇだろ」

戸惑う遥香にあっさり言ってのけ、辰臣は指でバイブを膣奥へと押し込む。

「あぅんっ……ゃあっ」

媚肉を擦る刺激に身悶えるも絶頂感はほど遠く、どかしさがつのる。

「続きはあとでな」

「……オミ先輩、あ……あの……」

熱のこもった視線を向けて呼びかけても、辰臣はあっさりとベッドを降りてしまった。



※省略



【第3話】


ワザオイが拠点としているマンションに帰ってきて、地下の駐車場に車が止まった。

「お疲れさま。よく我慢したね」

「……は……っ、ひゃ……ぃっ」

氷雨に頬を撫でられ、嬉しさで胸がいっぱいになる。遥香は甘えるように自ら氷雨の手に顔を寄せた。

運転席を降りた辰臣が遥香の横側のドアを開ける。

「大丈夫か?」

「ぅっ、……い……ぁっ、せんぱい……ぃん、あぅ……っ」

「これだとさすがに歩けねえか。ほら、運んでやっからこっちにこい」

氷雨にシートベルトを外される。遥香は背中を向けた辰臣の両肩に手をかけて身体を預けた。

遥香をおぶって膝裏に腕を絡めた辰臣が、体勢を整えるために軽く身をはずませる。

「きゃぅんっ!」

「あ、わりぃ」

落下の衝撃でナカのバイブが媚肉を擦りながら下方へと移動して、腰がビクビクと痙攣を起こした。地下駐車場に嬌声が響くも、遥香に周囲の目を心配する余裕はもはやない。

「ぅ……あぁ、んっ、せんぱい……はぁうっ、や……とまらない……っ」

少しでも快感を得ようと辰臣の腰に秘部を押し当ててしまう。はしたないとわかっていても、やめられなかった。

辰臣の背中で落ち着きなくもぞもぞと動く遥香へと、氷雨が自身のジャケットをかけてやる。

「家に帰ったら、たくさん気持ち良くなろう」

耳元でこっそり囁かれた。そのときを期待して子宮がきゅんと疼きを強める。

涙で顔をくしゃくしゃにしながら、遥香は何度もうなずいた。




※省略





唾液で濡れた唇に、氷雨がキスを落とす。自然とそれを受け入れて、薄く開いた唇から口腔へ入り込んだ氷雨の舌を、遥香はちゅっと吸った。

「……ぅ、……んぅっ」

「キスは好き?」

「……だと思います」

氷雨とのキスは安心する。……辰臣も。

夢中になっていると頭の中がふわふわして、幸せを実感できるから。

恋人でもなんでもない。自分たちの関係性を考えるとこの幸福感はまやかしなのかもしれないけど……それでも、二人の優しさに触れられるひとときを、遥香は嫌いだとは言えなかった。

「うん。——俺も好きだ」

——好き。それは口付けのことであって、自分に言われたわけじゃない。わかっていても、顔が赤くなってしまう。

優しく微笑みかけてくる氷雨は、相変わらず綺麗だった。

甘い空気に気恥ずかしさをおぼえてうつむいた遥香を、ソファに深く腰掛けた氷雨が抱き寄せる。

「はぅ……ぁあんっ」

体勢が変わったことで下腹部に快感が走り、咄嗟に氷雨へと抱きついた。

「そのまま、じっとしていられる?」

「……はい……ぅっ、んん……」

ナカの快感は耐えられないほどじゃない。うなずいた遥香の耳に、氷雨が唇を寄せた。

「良い子……」

中性的な声音が頭に直接響き、身体からくたりと力が抜ける。

快楽に浸りながらも脱力した遥香の背中に腕がまわされた。氷雨のもう片方の手は、二人の結合部へと降りていく。

「すご……ギチギチに広がって、俺のを咥え込んでる」

「へ……? ……やっ、そこダメっ、あっ……ゃっ」

膣口とペニスの境目を指でなぞられ、小さく腰が跳ねた。ソコを意識した途端に膣壁がうごめき、剛直のカタチを体内で鮮明に感じ取ってしまう。

「ひぁっ、やぁ……んっ」

氷雨は些細な刺激にも反応する遥香を楽しんだあと、膣口からあふれた愛液を指ですくい、イタズラをやめた。そして愛液で濡れた指は遥香の後ろに移動して——。

「ひ……ぇっ? 氷雨さんっ⁉︎」

「うん。じっとしていて」

後ろの穴に指の腹が押し当てられ、遥香がはっと正気に返る。理解が追いつかず戸惑うあいだも、氷雨はきつく窄んだ小さな孔に指を食い込ませてきた。

「だっ、ダメですっ! そこは……そんなとこっ」

「なんにも駄目じゃない。遥香ちゃんならこっちでもすぐに感じられるようになるよ」

「うそっ、……む、無理です……やぁっ」

どうにか逃げようともがくものの、膣を氷雨に貫かれた状態では前にも後ろにも進めない。腰を上げて引き抜こうとしても、背中を抱きしめる腕がそれを許してくれなかった。

「やっ、ホントに、ダメ……っ、んっ、ゆび、やめっ……んぅ」

後ろのふちに愛液が塗り込まれる。孔をパクパクと開閉させてしまうのが自分でもわかった。

これは反射であって、断じて期待しているわけではない。

アナルプレイなんて無謀すぎる。普通のセックスだって昨日が初めてだったというのに、いきなりこんなハードなことをさせるとは何事か。……経験を積めば良いってもんじゃないけど……。

ここは流されちゃいけない。

爽やかに笑いながらなんてことしてるのこの人は⁉︎」

快楽に染まっていた思考に理性的な考えが混ざる。

そうだった、いくら品行方正に見える好青年であっても、氷雨さんはあのオミ先輩の相方なんだ。ただ優しいだけの人なはずがない。

そもそも品行方正な人間はこんな無理矢理な行為はしない。それ以前にそういや彼らは人間でもないのか——とか。

遥香の頭はたとえ正常に回り始めたとしても、現状をどうこうできる妙案は浮かんでこなかった。

「氷雨さん、ほんっとうに、……その、そこで……」

するんですか? とは、怖気付いてしまって最後まで聞けなかった。

「うん、するよ。裂けないようにじっくり慣らしていこうね」

氷雨は遥香の言えなかった部分を察して言葉を拾ってくれた。しかしそんなのはなんの慰めにもならない。

前側で愛液を追加した指がまた後ろへと戻る。後孔に指先が埋められた。慣れない異物感に、遥香は背中を縮こませた。

「やっ……キツいの、だめっ……」

「だからゆっくり拡げてるんだけど……俺の指が嫌なら専用の器具で拡張しようか?」

さらりと言われたとんでもない単語に勢いよく首を横に振った。

「そっか、指のほうが良いんだね」

「……そういうわけじゃなくて……」

どっちも嫌なんです……と、もごもごと口の中で呟いた言葉は氷雨に届いていておかしくないのに、さらりと流されてしまった。

「強引に入れたり、痛いことは絶対にしないよ。それにこっちでも快感を拾えるようになったら、遥香ちゃんはもっともっと気持ち良くなれる」

「そんな、とこで……感じるなんて……」

「お尻が性感帯になるって、知らなかった?」

「……っ、別に知らなくてもいい、ことのはずですよっ」

「知ってしまって、戻れなくなるのが怖い?」

心の内を見透かされたような指摘に言葉が詰まる。

氷雨の目つきがかすかな冷たさを帯びて、遥香は身をすくませた。

「まだ俺たちから逃げられると思ってるんだ」

「や……ちが、う……」

「だったらなおさら、ここはしっかりと開発しないといけないな。普通じゃ満足できないぐらいが遥香ちゃんにはちょうどいい。心配しなくても、俺とオミがいつでも君を満たしてあげるから」

「んぅ……っ」

後孔の上を撫でていた指が、少しずつ窄まりにめり込んでいく。

痛みはないけど……やっぱり怖い。

きつく目を閉じた遥香は、暗闇の中で膣内に埋まるペニスの熱を感じ取り、無意識に腰をくねらせた。快感が、下腹部にじわりと広がる。

「あっ、……あんっ、んぁあっ」

「嫌がってるわりには、甘い声が漏れてるけど……」

「ち……ちがうのっ……、ナカ、と……氷雨さんの、声が……っ」

「耳でも感じてるんだ。——ホントに敏感な身体をしてる」

「んん——っ」

耳元でいつもより低めの声で囁かれ、耳穴に舌を差し入れられた。

グジュリ……クチャ——ッ。

頭の中にダイレクトに響いた水音に脳が痺れ、ゾワゾワと肌が粟立つ。上半身が力んだのは数秒のことで、すぐに身体からふにゃりと力が抜けた。

その瞬間を見計らい、後孔に氷雨の中指が第二関節まで侵入を果たす。

「ひっ……」

お尻に力を入れたが、遅かった。

アナルへと入り込んだ指に抜け出る様子はなく、そのまま指先にやんわりと肉壁を押される。わずかな動きにも強烈な違和感があって、遥香の息が詰まった。

「も……やっ、抜いて……っ」

「苦しい?」

「わ、かんない……、へんな感じ……っ、お尻、熱くて……」

狭く閉じた肉路をこじ開けられて、身体の内側が広げられる、今まで体験したことのない感覚だ。

違和感がとてつもない。これが快感に結びつくとは到底思えなかった。

「……でも、遥香ちゃんの腰、さっきから揺れてるよ?」

「え……んんぅっ」

アナルを○す指がぐるりとまわされる。

「前のほうで、奥を突かれるのは気持ち良いよね? こっちからも子宮をズンズン押し上げて、二本のペニスで境目の壁をずりずりぃって同時に擦ったら、どうなるかな?」

後孔を開発する指が膣側の肉壁をクニクニと揉み押す。氷雨の言葉とその指の動きに、膣道でめいっぱい咥え込んでいるペニスへと意識が向いて、カッと下腹部に熱が灯った。

「はぁ……ん……っ」

脳裏に浮かんだ淫らなイメージが膣の快感を増幅させる。背中をしならせて悶える遥香から、氷雨は指を抜いた。

「んんんっ……ぁあっ」

強烈な異物感から解放された瞬間、背筋に痺れるような感覚が走り抜けた。ほっとしたのも束の間、愛液を追加でまとった指は再びアナルの攻略にかかる。今度はもう少し、奥まで……。

「いっ……ぐ、うぅ……」

「そう力まないで、力を抜いて、リラックスして」

そうしてしばらく指は動きを止める。遥香が戸惑い、アナルの違和感に慣れたころあいをみて、拡張の作業を開始した。

「やっ、氷雨さん、動かしちゃダメっ」

「やっぱり抜くときが一番感じるみたいだな」

「違います! そんなこと、ないっ……ぁっ」

「ないことないでしょ。ほんの少し引き抜いただけで、膣が俺のをぎゅっと締めてくる。解放感と快感が結びついてるって、自覚できてないのかな」

自覚もなにも、それこそありえない。アナルから指が抜けたときに感じたあのゾクゾクは、快感ってわけじゃなくて……。

「もっと奥からずるずるぅって、中の壁を擦りながら熱くて硬いモノが抜け出ていったら、どんな感じがするんだろうね」

言葉を模して、氷雨がアナルから指を引いた。

「……っ、ふぁ……あんっ」

ひくんっと遥香の身体が小さく跳ねる。

後孔に入り込む圧迫感は苦しいけれど、出ていく感覚は、なんだかクセになりそう……。アレが、もっと奥から、ズルズルゥってなったら……。




【第4話】


※省略



氷雨に見下ろされ、不穏な空気にごくりと唾を飲み込む。

「今日はさすがに疲れただろうから、俺もオミも、朝までゆっくり寝かせてあげようと思ったんだよ? それなのに……遥香ちゃんの元気には驚かされるよ」

「元気なわけないでしょう! 疲れてます。はっきり言って疲労困憊です! だから自宅に帰ってゆっくり休もうと……」

「そっか、家に帰るだけの体力があるなら問題ないかな」

「ちょっ——、待って!」

胸元で握りしめていたスウェットのトップスを奪われ、ボトムスもショーツと一緒に脱がされてしまう。

「視聴者とオミを待たせてるから、手早く済ませようか」

「だったらこんなことしてないで、帰るなって一言命令して、とっとと戻ればいいでしょう!」

「急にどうしたの?」

「……そもそもお二人が忙しくしてるなら、私はここにいなくてもいいはずです」

「夜道は危ないのに、ひとりで帰らせたりはしないよ。魑魅魍魎だけじゃなくて、生きてる人間も油断ならないってのに」

「バカにしないでください。これでも多少は生きてる人間対策にも鍛えてます」

挑むように睨むと、氷雨はへぇと気のない返事をして、遥香の内腿をするりと撫でた。

「……ゃっ」

「なんにしても、君がそれだけ動けるなら、こっちの予定も変わってくる」

「…………ぁ……」

墓穴を掘ったことに、遥香は今になって気がついた。ヤバい。さっと血の気が失せて慌てふためく。

「ち、違うっ……本当に、もうムリっ」

「そんなことはないでしょ。ひとまず手は頭の上……ね?」

両手首をひとまとめに掴まれ、頭上でシーツに押し付けられる。氷雨が離しても、遥香の両手はベッドに縫い止められたまま動かせなかった。

縛鎖の術だ。それも、恐ろしく強力な。

「これっ! といてください!」

こんなの暴漢よりもよっぽどタチが悪い。

「せっかくだし足も縛っておこうか」

ついでと言わんばかりに、肩幅に開いてゆるく膝を曲げた状態の左右の足も、その状態で固定されてしまった。

遥香のしなやかな裸体が氷雨の前にさらされる。氷雨は己の成果に満足し、ヘッドボードの棚に備え付けられている引き出しから、ローションと怪しげな道具を取り出した。

黒々とした道具の素材がシリコンなのかプラスチックなのか、遥香には判別ができなかった。氷雨が先端にある輪に指を通したそれには、ビー玉ほどのサイズの黒い球体がいくつも連なっていた。輪っかの持ち手に一番近い部分の玉だけは、他の球体よりも大きい。

遥香の腹の上で、ボトルのローションが真っ黒な玉のひとつひとつにたらされる。

「な……んですか、それ……」

「後ろを開発するためのオモチャだよ。暇してるならこれを咥えておこう」

秘裂にもローションを流され、冷たさにうっと息を詰めたのも一瞬のこと。どろりとした液体を塗りつけるように、後孔のふちをフニフニと押され、お尻にぎゅっと力がこもった。

「やめて……、やだっ」

「嫌がってるわりには、ここは物欲しそうにヒクヒクしてるよ。昼間の感覚を忘れていないうちにおさらいしようか」

「ひっ……ぃ……っ、や、やめ……っ」

プツ、プツ……と、アナルの入り口を押し広げて球体が中に入り込んでくる。ひとつの球体が入ると口が窄まり、また球体に沿って広がって……その繰り返し。

「んぁっ……ゃっ……やだぁ……っ」

ゾリゾリと腸壁を擦りながら奥へ奥へと侵入する球体の連なりは、ついに指では届かない未開の場所まで攻略し始めた。

どうして……。

あらぬ場所を異物に占拠される感覚が不快でないことに、遥香はうろたえた。尾てい骨の奥あたりがぞわぞわと甘く痺れて、膣道がこっちにも刺激が欲しいと切なくうごめくのだ。

氷雨は貪欲に快感を求める肉体に困惑する遥香に構わず、小さな球体を遥香のアナルに押し入れる。

「すんなり入りきった。……これが最後」

「やっ、ん、いたっ……ぐ、ぅ……っ」

持ち手と直接繋がったゴルフボールに近いサイズの球体が後孔を広げる。このときだけは引きつる痛みに遥香がうめいた。しかしそれも球体が半分を越えるまでのこと。後半は氷雨が何かをする必要もなく、口の窄まりとともにオモチャはすんなりアナルの中へと呑み込まれていった。

アナルから生えた持ち手の輪を氷雨が軽く引く。

「ぃうんっ」

孔からわずかに覗いた黒い球は、ふちがきゅっと閉じたことにより見えなくなった。まるで外に出すのを拒むような遥香の反応に満足して、氷雨は先端の輪から手を離した。

「じゃあ、あっちが終わったら続きをするから、それまで良い子にしていてね」

額に軽くキスされて遥香は慌てた。

「やっ、氷雨さん、待って……これ取って。手のやつ、といて。……お願いっ」

「風邪ひかないように暖房つけておくよ」

懇願はあっさりと無視される。自身のスマートフォンを使って空調を操作した氷雨は、遥香の頭をひと撫でして、そのまま部屋を出て行ってしまった。

バタン——。無情にもドアが閉められる。

「——っ、あの人は!」

込み上げた怒りに任せて叫ぶ。こんな状態で放置するとか鬼畜すぎやしないか。

「……ぅあっ、ゃ、……もうっ」

無意識に浮き上がった腰が揺れる。アナルの異物感もさることながら、何もされていない前側が刺激を欲して疼く。どうにもじっとしていられなかった。

ひとり全裸で腰を振って、私は何をやっているのか。自分を客観視できる理性が残っているだけに、この状況に羞恥心を抱かずにはいられない。

本当は、家に帰ろうとせず、ここでワザオイの配信が終わるのを待っているのが正解だったと、遥香だってとっくにわかっていた。

知っていながら彼らの望んだとおりにできなかったのは、自分の子供じみた嫉妬心が原因だって……それぐらいちゃんと自覚している。

でも……だからってこの仕打ちはあんまりじゃない!?

「……氷雨さんのバカ……っ」

——氷雨が馬鹿なら自分は何だ——?

悪態には常に感情の矛盾が付きまとった。

処女を奪われ、逃げることを許されず二人に良いようにされている現状。当然納得はできないでいるものの、遥香はこんな扱いを受けても氷雨と辰臣を嫌いになれなかった。

ワザオイとして活躍する、二人のパフォーマンスも大好きだ。これからも続けてほしいと思うし、神括連なんかに潰されたくない。

この身を無理矢理犯した相手だというのに、悲観にくれることのない自分の図太さに驚かされる。二柱の神に強烈な畏怖の念を抱くことはあっても、遥香は精神を強○的に屈服させられてはいなかった。

その証拠に、こんなことになっても遥香は彼らに軽口を叩けるし、文句も言える。辰臣と氷雨も、遥香のそんな態度を咎めず、当然のこととしていて——。

「……なんなのよ、もう……」

明らかに歪んでいる関係を、神様だったら仕方がないかと受け入れている自分も結局のところどこかおかしい。

ねじ曲がっているのは彼らに向ける好意か、はたまた自分の性癖か。

「……ぅっ、く……ぅ」

腰をくねらせると体内の異物を鮮明に感じ取ってしまう。

「ぐっ、うぅ……んぅっ」

どうにかしたいのに、手前の大きな球体は、多少力を入れたくらいではアナルから出ていきそうになかった。

「も……いやぁ……」

壁にかかった時計を見る。時刻は二十三時をまわったところだ。辰臣たちが配信を終えるまであと三十分もある。

期待した快感が得られないもどかしさは記憶に新しい。というか、今日車の中で体験したばかりだ。あのときはずっと、ナカにバイブを挿れられた状態で氷雨にじらされて……。

「んぁっ……ぁっ……」

思い出したら下腹部がことさら疼き遥香を追い詰める。

あのときとは違い、そこは何もされてなくて、代わりに、後ろの穴を変なオモチャに犯されている。痛みはない。それどころか、よくわからない異物感を、遥香は快感と認識し始めていた。

……たしかに気持ち良いのかもしれないけど、秒針の音と自分の吐息や喘ぎ声しか聞こえないこの空間は、ただただむなしかった。

こんなオモチャなんかより、熱い肉棒がいい。……ううん、そんなことよりも……彼らに傍にいてほしい。

「……氷雨さん……オミ先輩っ」

名前を呼ぶと、求める気持ちがよりいっそう強くなる。応える声はなく、寂しさに拍車がかかった。

カチ……、カチ……。

時間を気にするほどに、秒針の進む速度は遅く感じた。




※省略



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全編はDL siteにて販売しています。
気になった方はご購入いただけますと幸いです。

市街地 2024/04/07 08:54

【小説サンプル】二柱の愛にこいねがう・第1話

あらすじ

とある依頼を受けて遥香が探っていた二人組は、とても彼女の手に負える存在ではなかった。
正体がバレて捕まって、無理矢理身体を開かれて——。与えられる快楽に溺れ……、やがて遥香は、自らの意思で彼らのもとへと堕ちていく。

全体を通したプレイ内容

快楽責め・無理矢理・焦らしプレイ・アナルプレイ・複数プレイ・3P・二穴責めetc.

【!ご注意!】

本編には下記のシーンがございます。

・無理矢理系の性描写。
・アナル責め
・複数プレイ(3P)



【第一話】


バレてたと、知ったときにはもう遅い。氷雨(ひさめ)と辰臣(たつおみ)に対して遥香(はるか)が畏れを抱き、「勝てない」と悟った時点で、支配と隷属の関係性はできあがってしまった。

精神を強○的に屈服させられたともいえる。



——私は何をしてたんだっけ?

かすみがかかっていた思考が、少しずつはっきりしてきた。

——そう、大学の学費を稼ぐために、土地神消失事件の調査することになって……、疑われている、先輩たちに近づいたんだ……。

それで、どうなったんだっけ……?

——オミ先輩と氷雨さんに捕まって、夢幻境に引き込まれて……。

「……っ、……ぁっ……んぅっ」

バラバラになった思考がゆっくりと組み立てられていくも、秘部に感じる快感が核心にたどり着くのを阻害した。

よくわからない。だけど、身体の中心が気持ち良いのだ……。

——……二人の活動の、ライブの手伝いをしてたの。オミ先輩が……バイトに誘ってくれて……。ホテルに泊まって……あれ?

だんだんと、記憶に残る出来事の時系列があやふやになっていく。そうして思考が混乱の渦に流された先でようやく「現状」へと意識が戻った。





クチュリ……。

ぬめり気のある水音と共に、身体の中心が甘く疼いた。

腹の奥底に感じる切なさにたまらず遥香は身をよじるも、背後からまわされた腕に抑えられ、体勢を変えることは叶わない。

「はぁ……ぁっ、ぅ……え……?」

「ふふっ、混乱してるね。でもやっぱり、力のある子は醒めるのが早そうだ」

後ろで楽しそうに笑っている、これは氷雨の声だ。

「それでもこんだけよがってんだから、起きてももう逃げられないだろ。感じやすい良い身体だ」

辰臣の声が、近くて遠い場所から聞こえてきた。出どころを探ろうと意識を向けたら、またあの甘い感覚が腹の底から湧き上がってくる。

「ふぁっ、あっ、あぁ……んあぁっ」

「軽くイったか? かわいいなぁ……」

喉の奥で笑われる。なんだかとても恥ずかしくなって、イヤイヤと首を横に振った。

何があった。何が起こっているの。どうしてアソコがジンジンしているの……?

次から次へと疑問が浮かぶ。

芽生えた危機感に対応するかのように、聴覚に次いで、ぼやけていた視界が徐々に鮮明になっていった。

「は? ぇ……んぅっ、な、にが……?」

「おはよう、遥香ちゃん。時間的にはこんばんはが正解かな?」

「んんぅっ」

背後から耳に直接流し込むようにささやかれ、くすぐったさに遥香は思わず首をすくめた。

大げさな反応に氷雨がクスクスと笑う。後ろから伸びる手が、服を着ていない遥香の乳首をキュッとつまんだ。

チリリと感じた痛みに、遥香の肩がまた跳ねる。

「いっ……! あっ、なん……で、氷雨さんっ」

後ろにいるのは氷雨だ。むき出しになった背中に、彼の体温が感じられた。

首をまわした視界のすみで、浴衣姿の氷雨が美麗な微笑みを浮かべている。

御簾(みす)のかけられた、木造の建物の、どこかの部屋。

床に置かれた燭台には蝋燭が立てられ、室内を淡く照らす。

そんな部屋の中央で遥香は服を脱がされた裸の状態で、氷雨に背中をあずけて座らされていた。お尻に当たる感触はふかふかしていて、床には布団が敷かれているようだ。

視線が上から下へと移動する。遥香の脚元には、辰臣がいた。

辰臣は大きく開かれた遥香の脚のあいだに片膝を立てて陣取り、彼女の恥ずかしい部位に触れている。秘部に指をそえた状態で困惑する遥香と目が合い、辰臣がニヤリと口端を持ち上げた。

急に遥香の意識が覚醒する。

「なっ、なにして——っ!?」

後ずさって辰臣から離れようとしたが、背後に腰を落ち着ける氷雨によってはばまれた。

「こらこら、邪魔してはいけないよ」

秘部をいじる手を払いのけようとするも、氷雨に両手首を捕えられ、みぞおち部分に押し付けるようにして拘束される。相手は片手しか使ってないのに、どんなにもがいても手は自由にならなかった。

ならば脚を閉じてしまいたいのに、膝のあいだでは辰臣の身体が邪魔をしていた。しかも辰臣は遥香の膝に手をかけてさらに開脚させ、羞恥心を煽ってくる始末だ。

「オミ先輩……どうして……」

「今は理由なんざ考えるな。俺と氷雨が与える感覚だけに集中しとけ。——賢い遥香チャンならできるよな?」

目を合わせて、ゆっくりとした口調で辰臣が言い放った言葉が耳の奥に響く。意味の理解には、強烈な畏れが伴った。

得体の知れない圧倒的強者の言うことに本能的な恐怖が芽生え、遥香から抵抗の意思をかき消してしまう。

怯えながらも小さくうなずく遥香を、辰臣と氷雨は「良い子だ」と褒めた。

「心配しなくても取って食いやしないって」

「……ほんと、に……」

異形に屈した術者の末路はたいがい悲惨なものだ。異形の糧にされるか、精神を蝕まれて生き地獄を味わうか。実家でそういった話を頻繁に聞いていた遥香は、目に涙を溜めて辰臣の顔色をうかがった。

「当たり前だろバーカ。つーか死ぬのが怖いなら、俺らを探る依頼なんか受けてんじゃねえよ」

「だって……」

そうでもしないと、お金がもらえない。大学に通えないどころか、生活だってままならなくなってしまう。

それにワザオイを調査する依頼を受けたときは、二人がこんな大物だなんて知らなかった。

こぼれかけた涙を氷雨にぬぐわれる。そして頭をポンポンとあやすように軽く叩かれた。

「オミの言うことは聞き流していいよ。アレはただの八つ当たりだから。本当は君が神括連と接触するより先に、こちら側に引き込みたかったんだけど……叶わなかったのは俺たちの力不足が原因だからね。でも……ようやくここまでこられた」

口ぶりからして、遥香の行動を二人は逐一把握していたのだ。そのことに顔を青くする一方で、遥香は別の部分に引っかかりを覚える。

——こちら側に引き込むって、どういう……。

恐々と見上げた先で、氷雨はうっとりと見惚れるほどに美しい笑みを向けてきた。

「もう、ほかに目移りしてはいけないよ。といっても、そんな余裕は与えるつもりないけど」

目をぱちくりさせて告げられた言葉の意味を探そうとした遥香だったが、秘部に快楽が走りそれどころではなくなった。

辰臣が愛液でぬかるんだ膣口に指を挿入したのだ。

「や……、いやっ、やめて……オミ先輩っ」

「濡れているとはいえ、やっぱり狭いな。俺らの知らない野郎にここを許したことはあるのか?」

「なっ……ない、……ないですっ」

真っ赤になって否定する。

遥香は処女だ。中学時代に交際経験はあるものの、当時の彼氏とはキス止まりで肉体関係にはいたらなかった。

高校ではいろいろなことがあって周囲から浮いてしまい、誰かと付き合うなんて夢のまた夢だった。大学に入ったあとは、勉強とバイト、それに映像制作という趣味にであってしまい、恋愛はそっちのけになっていた。

そんなところに、憧れの先輩からあっけらかんと男性経験を尋ねられたのだ。恥ずかしくないはずがない。

辰臣は慌てふためく遥香に気をよくして、膣内で指を動かし腹側のザラザラした部分を軽くひっかいた。

「……っ、ぅ……ん」

「ならいい。手間が省けて助かるよ」

——お前を先に食った奴がいたなら、そいつを始末しなきゃいけなかったからなあ……。

ボソリと漏らされた独り言は、声量が小さすぎて遥香の耳には届かなかった。

そんなことよりも。膣壁を押す指の存在に遥香は戸惑った。よくわからない不思議な感覚が腹の奥に溜まってくのを自覚して、理解が及ばず無意識に膣を締め付けてしまう。

クチッ、クチャリと辰臣の指の動きに合わせて秘部からはいやらしい音が聞こえてくる。

「ぁ……ゃあ……っ、先輩、こんなの……もうやめて……っ」

「ああ、やっぱりナカよりも、今はこっちのほうが感じるか」

懇願はあっさり流され、辰臣は膣に指を挿れたままもう片方の手の親指でクリトリスをぐりぃと押した。

途端に鋭い快感が遥香を襲う。

「ひぅんっ! あっ、なっ……それ、やだぁっ」

「嫌じゃなくてイイ、でしょ? これからもっと良くなっていくんだから、こんなことで音を上げていては身がもたないよ」

そう言った氷雨に胸を揉まれる。やわやわと下からすくうようにして乳房をゆらされ、大きな手のひらに二つの膨らみを包まれる。

「大きくて柔らかいね。いつも隠しているのがホントにもったいない」

「や……むね、だめっ、……っ! ソコも、あっぁあ……ぁ……っ」

二人がかりで責められては、遥香にはどうすることもできない。

辰臣は親指と人差し指で挟むようにしてクリトリスの皮を下ろし、むき出しになったピンクの肉芽を指で撫でこする。途端に遥香の両膝がビクビクと揺れた。

クリトリスに刺激が走るさなかに、膣を攻略する指を一本増やされた。膣道の広がりに遥香は一瞬息を詰めたが、愛液を纏った指でクリトリスをぬるぬると擦られてすぐに口から甘い嬌声がこぼれた。

奥から手前へ、辰臣は柔らかい肉壁をゆるく押しながら指を引いていく。膣道は遥香の意思に反して異物を歓迎し、愛液を分泌させてうごめいていた。

「んっ……あん……うぅ、ぅあっ、ああぁっ」

Gスポットを重点的に揉み押されるのと同時に、クリトリスを指で挟んでしごかれる。まるでクリトリスで得られる快感に、膣内の感覚を連動させるように。今はまだ眠っている快楽の根幹を、強引に呼び覚ますように。

「やっ、そこ……っ、いっ、きちゃっ……ぁっ……っ!」

執拗な責めに遥香の身体は抗えず、絶頂へと追い上げられた。

ぎゅっと身体に力が入る。ビクンとひときわ強く膝が痙攣して、氷雨にあずけていた背中が仰け反った。

氷雨は荒い呼吸を繰り返す遥香の背後からしりぞき、彼女を敷布に寝かせた。

仰向けになって身体が安定し、絶頂の余韻に身を委ねる遥香の様子を観察していた辰臣が、膣に挿れる指を三本に増やす。

快楽に引きつるような痛みが加わりはっとするも、氷雨によって両手を敷布に縫い止められ、身を起こすことができない。

「やっ、氷雨さん……放してっ」

「オミの邪魔をしてはいけないよ。大切な準備だから、もう少しがんばろうか」

口調は優しいが、彼らは決して遥香の懇願を聞き入れてはくれなかった。

「なるべく痛い思いはさせたくない。トラウマになられても嫌だからね」

「ま、お前が痛くされるほうが好きってのなら、それはそれで良いんだが」

加虐心を隠そうともしない辰臣の空気に、遥香の背中がぞくりとわななく。

「ひっ、……ゃ……いやぁ」

「だーからすぐにはしねえって。どんなことで気持ち良くなれるかは、これからじっくりと見つけていこうな」

ぐじゅり……。膣奥の壁を押し上げられ、子宮がかすかに疼いた。

「遥香ちゃん」

呼ばれて視線を上げると、身を屈めた氷雨の顔が眼前にせまってきた。口元を舌先で舐められ、ちゅっと唇を吸われる。

……キス、されてる。遅れて気づき、遥香はどうしていいのかわからず目を泳がせた。

初々しい反応に氷雨が目を細める。

口腔内に侵入してきた舌に口蓋をくすぐられ、遥香の身がすくむ。反射的に顔を背けると、氷雨はあっさりと口付けをといた。

「逃げないで、舌を出して」

頭の中に命令が反響する。遥香の力では逆らうことができず、薄く開いた口からおずおずと舌を差し出す。

「……よくできました」

氷雨の薄い唇が、遥香の舌を挟んで吸い上げる。ちゅっという音は口からか、それとも秘部からだったのか。

舌を口内に押し戻すようにして、氷雨が遥香に深く口付ける。今度は顔を背けて逃げる気が起こらなかった。

口内で逃げようとする舌を絡め取る、氷雨の舌に翻弄される。初めてディープキスに気を取られていると頭がぼうっとしてきた。

清涼感のある甘い香りは氷雨のつけている香水だろうか。うっとりとする遥香から、次第に力が抜けていく。

「ふ……むぅっ、……んっ」

左右の手が自由になっていることに、遥香は気づけない。たとえ自分の意思で動けたとしても、その手で氷雨たちを拒絶することはできそうになかった。

リップ音をさせて氷雨が唇を離した。

至近距離で微笑まれ、胸の中が喜びでいっぱいになる。

どうしてこんなにも嬉しいのか。自分の感情に思考が追いついてくれない。

「氷雨さん……っ、私」

この不思議な感覚の正体を知りたくて、支配者へと伸ばした手は、指を絡ませるようにして握り返された。

「大丈夫、怖いことなんて何もない」

言葉に疑う余地はなく、すんなりと腑に落ちた。元々正体を知る前から尊敬し、慕っていた相手だ。そんな彼が大丈夫というなら、何も心配しなくていいと思えてくる。

とんっ……と、遥香の手は敷布の上へと戻される。眼前で微笑む氷雨に魅入っていると、秘部に熱の塊があてがわれた。

ぐじゅり。

愛液がこぼれる膣口に突き立てられたソレは、狭い肉路を広げながらゆっくりと遥香のナカに押し入る。

「いっ……ぃた……っ、ぃやっ、やあぁっ」

「……っ、くそっ、まだキツいか。……まあでも裂けることはないだろ」

亀頭がナカに収まりきったところで、辰臣は遥香の腰を掴んだ。

「苦しいか? にしてはナカは俺のを柔らかく包み込んでくるぞ」

ズ……グウゥ……。

また一段と深く剛直が入り込む。

膣内に痛みはあるが、それ以上に膣道を強引に広げられる圧迫感が強かった。

しかしそんな肉体の感覚よりも、辰臣に犯されている事実に遥香は愕然とする。

「……ゃっ、オミ先輩、そんな……ダメっ」

「はっ、今さらだろう。なんのための準備だと思ってたんだ」

「でもっ……ぅっ、くぁ……っ」

「落ち着いて。オミに任せて、身体の力を抜いてごらん」

「むりっ……むり、ですっ」

首を振ってもがく遥香を困った子だと氷雨は苦笑して、赤く色付いた頬をするりと撫でた。

「ゆぅっくりと呼吸してごらん……そう。……身体のナカにあるオミを意識して。どんな感じか、俺に教えて?」

繊細なタッチで氷雨の指先が唇に触れる。

「あ……」

目の前の青年を凝視しながらも、遥香は秘部の感覚に集中した。

「あ、あつい……ぃっ、んぅ……」

「熱い、だけ?」

「……ぁっ、熱くて、……いっぱい、広がって……おなかが、ぞわぞわって……」

剛直が膣内に埋まるほどに、腹の奥から痺れのような、それでいて疼きに近い不思議な感覚が湧き上がってくる。

「うん、えらいね。ちゃんと快感を拾えてる」

快感? ……これが?

「今は違和感のほうが勝っているかもしれないけど、すぐにほかのことなんて考えられないぐらいに気持ち良くなれるよ」

うそだ。こんなのが良いだなんて、とてもそうは思えない。

ズンッ——。

「…………っ」

「……入りきったな」

身体の内側を侵略され、遥香はうっと息を詰めた。

快感とかそんなことよりも、辰臣に犯されているショックが大きくて、きつく閉じた遥香の目から涙がこぼれた。

「こんなことで泣くなよ」

グリリと奥を強く抉り、辰臣が遥香の腰から手を離した。

「氷雨だけじゃなくて俺も見ろ」

目蓋を持ち上げると、ぼやけた視界に辰臣が映った。大学に入学したときから慕っていた青年の顔だ。容姿は同じなのに、彼が放つ気質は人間のものではなく、強烈な畏怖の念を遥香に抱かせた。

「どうして、……こんなことっ」

振り絞った声は自分でもわかるぐらいに震えていた。

怯えて泣く遥香に、辰臣は不機嫌そうに眉を寄せた。

「これから何が起こるのか、なーんもわかってないって顔だな」

「それに関しては仕方がないことなんだから、この子に当たるんじゃないよ」

氷雨の口出しに辰臣はフンと鼻を鳴らし、口端を吊り上げる。

「……まあ、先のことはどうでもいいか。今は俺を感じろ」

宣言と共に、亀頭が膣奥——子宮の入り口に押し付けられる。

「んぅっ、う……ぅあ、や……ぅ」

辰臣が奥を穿ったままゆっくりと腰をまわす。

深い場所をこねられて、胎内がじわじわと熱を孕んだ。ペニスの動きに呼応して、もどかしさが腹の奥に溜まっていく。

ペロリと、辰臣が遥香の首筋を舐めた。唇は肌の上をつたって胸元へ移動し、そこに赤い所有の印を残す。

「そろそろ動くぞ」

再び遥香の腰を掴んだ辰臣がゆっくり後ろにさがる。ずるずると肉襞を擦りながらペニスが引き抜かれ、遥香は背をしならせて悶えた。

開放感と喪失感が一緒になって押し寄せる。感情に折り合いがつかず混乱していると、膣口に引っかかった亀頭がまた膣内に侵入してきた。

ゆっくりと、確実に、狭い肉路をほぐされる。

最初に感じていた体内を強引にこじ開ける強烈な拡張感は次第になくなり、それと共に抽送がスムーズになっていく。

辰臣が微妙にペニスを挿れる角度を変えてきた。それはまるで遥香の感じる場所を探しているかのような動きだった。

「……っ、オミ先輩……んぁっ、あ……ぅっ」

身体の奥深くから湧き上がってくる、確かな快楽に遥香が身震いする。それを目敏く見つけた氷雨は彼女の秘部に手を伸ばし、クリトリスをいじりだした。

「ひあっ、あっ、やあぁっ!」

突然鮮明な快感を与えられ、膣道がきゅうっと締まって意図せず辰臣のペニスを感じてしまう。

「……おい」

「楽しむのはあとにしてほしいな。最初は譲ったんだからさ」

いつになく先を急がせる相棒に内心驚きつつも、辰臣は顔に出さずに肩をすくめてみせた。

「しゃあねえな、まあ遥香もだいぶなじんだろうから、いったん終わっとくか」

クリトリスの直接的な刺激に身悶える遥香の腰を掴み直し、辰臣はひときわ強く膣奥を抉った。

「あっ、いん……ぁっ、……っ」

衝撃は一度では済まされず、二度、三度とペニスの先端が子宮の入り口に打ち付けられる。

「はぁっ、あっ……あぅっ、んっ……ぁあ」

熱い。自らを○すペニスの熱が、下腹部だけでなく全身を飲み込んでいく。呼吸が早くなり、吐き出される息と共にうわずった声がひっきりなしに口からこぼれた。

「んっ、うぅ、……あっ……っ!」

ドクリと、膣壁がペニスの脈動を感じ取るのとほぼ同時。子宮口にめり込んだ先端から、熱い飛沫が噴き出した。

「あっ、そんな……」

辰臣が射精したのだと、遅れて理解する。

呆然とする遥香に構わず、ペニスの先端はなおも膣奥を押してきた。精液を肉壁に塗り付ける動きに子宮が反応し、遥香は痺れるような甘い刺激にみまわれた。

「は……ぁ、はぅ、あっ……うんぅ」

覆い被さってきた辰臣にキスされる。強引に口腔へと入り込んだ舌が遥香の舌をグニグニと押した。左右の内頬をぐるりと舐められ、縦横無尽に口内を蹂躙される。

息が苦しい。酸欠でぼんやりする頭の中、自分が思いのほかショックを受けていないことに遥香は困惑した。

慕っていた先輩に犯されているというのに。

遥香自身にも、彼らに後ろめたいことがあったから?

彼らが私を殺さないって、わかったから?

——二人と敵対するぐらいなら、こっちのほうが全然……。

この状況を受け入れるように、徐々に思考が順応していく。

「ふ、ぅ……ぁっ」

目の前にある辰臣の端正な顔に焦点が合うと、下腹部だけでなく頭までもが沸騰しそうなほど熱くなった。

「たまんねえな。ほんと、よく今までほかに喰われずに生き残れたもんだ」

「……え? ……っんぁ……」

キスをとかれて辰臣が身を起こすと肉杭が膣壁を擦り、その刺激に腰が揺れた。

止めたいのに、膣はきゅうきゅうと収縮を繰り返してはナカに埋まる肉棒のカタチを教えてくる。

熱い……熱くて、気持ち良い。

それを快感だと認識した遥香の目が恍惚にとろける。

「そうだね」

ほぅ……と、吐息がこぼれた口端からたれた唾液を氷雨に指でぬぐわれる。

「地獄の蓋が開ききる前に、君に出会えてよかった」

氷雨の言った言葉の意味を深く考える余裕は遥香になかった。

「ぃうっん、ぁ……」

名残惜しそうにごじゅりと一度、子宮口をペニスで穿ち、辰臣は腰を引いた。

「ぁ……っ、んん……ゃぁ……っ」

肉棒がずるずると抜け出ていく。

終わったことに安堵するよりも先に、おかしな焦燥感が遥香の心に湧き上がる。

たりない。欠けている。まだ……満たされない。

望んでいないはずの行為なのに、どうして……。

「オミ先輩……っ、氷雨さんっ」

どうしたらいいのかわからない。ただひとつ、今の自分はひどく脆く、不安定な状態だということだけは、漠然と自覚できていた。

ここが辰臣と氷雨が支配する空間だから、かろうじて正気を保っていられる。もし、このまま現世に戻されたら私は——……。

最悪の予想が頭に浮かび、恐怖で身がすくんだ。

「そんな顔すんなって。ここで終わりじゃねえから安心しろ」

羽織を肩にかけ直した辰臣が遥香の頭部まで移動して、彼女の髪をすくった。

「まだ半分だ。言われなくても自分でわかるんだから、やっぱり遥香チャンは優秀だな」

あやしているともからかっているともとれる口調だった。

「まだ……?」

終わりじゃない。そのことに遥香はほっと肩の力を抜いた。

次の瞬間、脚元へ移動した氷雨が愛液と精液がこぼれる蜜壺に指を挿れてきた。

「すっかりとろとろになって、いやらしいね」

「あっ、……あん……ぁあっ」

中からかき出した精液を、指で再び奥へと戻す。ポルチオをコリコリと揉み押し、膣壁を擦りながらゆっくりと氷雨は指を引き抜く。

遥香が反応しないところはそれなりに。余裕のない喘ぎが上がった部分はねちっこく——。

奥へ挿れては入り口まで戻っていた指は、次第に腹側の浅い部分を集中的に揉み始める。

グチュリ、グチョリとひっきりなしに響く水音に、遥香の口から切羽詰まった声が混ざりだす。

「あぁっ、あっ、あう……っ、氷雨さ、んっ……」

「うん、ここが気持ち良いんだ。ナカもうねって、健気に俺の指に絡み付いてくる」

「やぁ……あっ、……ぁあ……」

膣内の動きを説明され、恥ずかしさに耐えきれず首を横に振るも、ひくひくと腰が揺れていては説得力のかけらもない。

しかし絶頂の気配を感じ始めたところで氷雨はあっさり指を抜いてしまった。

「あ……え…………」

予想していなかったおあずけに、遥香は落胆の声を漏らす。近くでそれを聞いていた辰臣がくっと喉の奥で笑った。

「お前って、ホントわかりやすいよな」

「なっ⁉︎ ち、違いますよっ」

慌てて否定したらさらに笑われる。

「違うって、何がだよ?」

「そ、れは……っ」

私はイかせてもらえるって、期待していた、わけではない——、のではなくて……。それはつまり、……あれ……?

否定に否定が重なって、思考がこんがらがった末に自分が墓穴を掘ったことを悟り、顔が真っ赤になった。

そんな遥香を辰臣と氷雨は面白そうに眺める。

「いいかげん、隠し事が苦手だってこと、自覚しとけよ」

「そんなに残念そうな顔をしなくても、すぐに俺のでイかせてあげるから」

氷雨が浴衣の合わせをくつろげる。布生地のあいだからのぞかせたそそり立つ肉棒に、遥香はひっと悲鳴をあげた。太くて長い、男性の象徴。色白の氷雨からは想像できないグロテスクな色のソレを目の当たりにして、顔から血の気が下がる。

「……む、むりです……っ、そんなの、入りませんっ」

「入らないわけねえだろ。俺とヤったあとだってのに何言ってんだ」

「オミのときは見てる余裕がなかったんだね。遥香ちゃんのココはもう、俺たちのを受け入れられるようになってるよ」

「……うそっ」

怖気付いた遥香は肘を敷布について頭上へとずり上がろうとするも、それを辰臣が許してくれるはずもなく。背後であぐらをかいた辰臣の脚の上に背中を乗り上げ、軽く身を起こした体勢からはもう、後ろに下がれない。

「大丈夫だって。疑うならその目で確かめればいい」

耳元でした低いささやきに、ゴクリと息を呑んだ。

ぬぷり……。熱をもった氷雨のペニスが膣口に触れる。

「いくよ……」

前後を二人に挟まれて逃げ場を失った遥香のナカへと、氷雨はペニスを侵入させた。

「や……っ、んぅ……っ」

亀頭の膨らみが入り口を押し広げる。身を固くしたものの、想像した肉を内側から裂かれる痛みは襲ってこなかった。

「え……っ、あっ……ど、して……」

ずるずると奥に侵入してくる熱棒の、通りのよさに遥香自身が氷雨たちよりも戸惑いをみせた。

「だーから言ったろ」

言いながら辰臣は遥香の胸へと手をまわし、胸のいただきを指先でくすぐった。

「遥香ちゃんの気持ち良いところは……ここかな」

先ほどまで指で刺激していた感じる箇所を、氷雨がペニスで責め立てる。

ぞくりと遥香の背筋に電流が走り、下腹部にぎゅぅっと力がこもった。

「はぅ、んっ、あ……っ、氷雨さん、それ……っ」

「うん。良さそうだね」

「い、いい……の? わかんない、けどっ……」

ぞわぞわして身体が落ち着かない。これが快感だというのか。

「よかった。そのまま……もっと俺を感じて」

ズチュ、グチュ、グチュ……ズズゥ……。

激しくは動かず、遥香の様子を見て労わりながらも、氷雨は容赦なく快楽をその身に教え込んでいく。

膣道はそんな氷雨の剛直を喜んで迎え、愛液をこぼしながらうねった。まるでペニスを奥へと誘っているようだ。

「あっ、んくっ……ぅ、ん……、あっ」

「イきそう?」

「うんっ、い……く、……イッ、あ、んっ……っ!」

ひくんっと大きく膝が痙攣し、遥香は軽い絶頂を迎えた。

膝を曲げて敷布についた両足に力が入り、自然と腰が上下に揺れる。それはもっと快楽がほしいと、自ら膣内の感じる場所にペニスを押し付けるような動きだった。

自身の淫らな行動が信じられず、遥香は咄嗟に辰臣の手を掴んだ。

「どうして……っ、私、こんな……」

「ああ、氷雨ので上手にイけたな」

辰臣に手を握り返され、両手をそれぞれ身体の横へと誘導される。

「ほんとう、敏感で感じやすい良い身体だよ。さて、もっと奥でも気持ち良くなろうか」

氷雨に両手で腰を抱えられる。

遥香は胸の膨らみのその先に、膣に半分も入っていない氷雨のペニスを見てしまいはっとした。

ズググゥ——。

竿で感じるところを擦りながら、ペニスがさらに奥へと入ってくる。

「あ……うそっ、なか……んぅ……ぁんっ」

そんなに大きなもの、収まりきらないと思っていたのに……。膣道はペニスの形にそってじわじわと広がり、ペニスを呑み込んでいく。その様子をまざまざと見せつけられ、困惑するさなかもゆるやかな快感に身がしなった。

トチュン——ッ。

最後は少しだけ勢いをつけて、膣内にペニスが収まった。

「……これで全部。まだ少しキツイけど、ちゃんと入りきった」

「んっ、ぜんぶ……?」

……アレを?

嘘だと思いたいのに、目の前の事実がそれを証明している。

氷雨がわずかに腰を引いては戻すたびに、ペニスの先端に子宮口をこねまわされる。すると子宮にじわじわと甘い痺れがもたらされた。

「でも奥は開発が必要かな。もっともっと敏感になって、いずれはポルチオで深イキできる身体になろうね」

「……ゃ、だめ……あぁっ」

そんなことされたら、戻れなくなる。

「別にいいだろ? 他に目移りする余裕がないぐらい、たっぷり可愛がってやるからな」

辰臣が腹部をするりと撫で、へその下あたりをくにくにと押してきた。へこんだ腹の内側で、深く刺さった氷雨のペニスをまざまざと意識してしまい、拒絶はいともたやすく喘ぎに変わる。

些細な愛撫も快楽に変わり、膣はペニスを締め付けて解放を誘う。本人は無自覚のまま行われる雄への奉仕に、受け手である氷雨は大変満足し、お返しとばかりにポルチオをえぐった。

「ひぅんっ」

「動くよ」

短い宣言の直後、ずるずると剛直が引き抜かれる。

「や、あっ、待って……あっ、や、それっ、……ああぁっ」

膣の浅い部分を亀頭でゾリゾリと責められ、快感に膣が収縮したところを見計らい、奥を突かれる。

トチュンと、狭まった肉路を強引に開かれる感覚に、背中にゾクゾクと痺れが走った。

ペニスの先端が子宮口を叩く。重い衝撃に腰が跳ね、ガクガクと膝が揺れた。

トチュ、トチュッ、トチュンッ。……ズルゥ……。

二度三度と奥を突いたペニスが後退して、また膣口付近を重点的に擦られる。

「あ……やだ、もっ……ぅ、んん、あ……イっ——っ」

決して激しくはない。しかし感じるポイントを抑えた執拗な抽送に、膨れあがった快感がはじけた。クリトリスや胸には触れられず、正真正銘膣内だけの刺激で遥香は氷雨にイかされたのだ。

「イったか?」

「ああ、覚えの早い子だよ」

息を乱して全身を小刻みに痙攣させる遥香を、辰臣と氷雨は微笑ましげに見守った。そして遥香が絶頂の余韻から抜け出す前に、氷雨はペニスでナカを強く穿つ。

ドチュン——ッ。

「ああんっ! やっ、ま……まって、いまっ、やあぁっ!」

快感にさらなる快感が上乗せされる。底知れない恐怖から

逃れようともがくが、二人は遥香を離さない。先ほどのゆっくりとした抽送から打って変わり、氷雨に激しく膣内を蹂躙される。

強すぎる快感に悶える遥香を抑えながら、辰臣は遥香のクリトリスへと手を伸ばした。

ツンと突き立つ肉芽を親指と人差し指でしごかれる。

「きゃああぁっ——!」

不意打ちで加わった強烈な刺激に、遥香は背中を仰け反らせた。

「すご、また締まった……」

「やめ、もうだめっ、……もぅ、ムリっ……ああっ」

初めて感じる強すぎる快楽に泣き言を漏らす。そんな遥香の意思とは裏腹に、肉体は快楽に歓喜した。膣からは愛液があふれ、媚肉はもっと感じたいと言わんばかりにペニスをしゃぶる。

ダメだと言いながらも氷雨のピストンに合わせて腰が揺れているから、なんの説得力もありはしない。

膣道を埋め尽くす剛直がかすかに膨らむ。

「……っ、……俺もイきそう」

「ぁ……やっ!? だめですっ、ナカは……っ」

「今さらなに言ってんだ。俺が良くて氷雨はダメなのか?」

後ろから辰臣に笑われるが、遥香はそれどころではなかった。

「だって、…………できちゃう……っ」

「そんときゃ俺たち三人で育てればいいだろ。……まあ、本当にできるかは俺らもわかんねえけど」

「心配しなくても、君を捨てるなんて無責任なことはしない。どんな結果になっても、君を逃がすことは絶対にないから」

「や、ああっ、あっ……ぁっ!」

言葉の不穏さに芽生えた危機感ですら、膣奥を責められてすぐに快楽へと塗り替えられてしまう。

「つーかお前、まだ俺たちから逃げられると思ってんのか? 往生際が悪いな、さっさと諦めて溺れちまえっての」

辰臣が親指でクリトリスを押し潰す。強烈な快感を受けて、遥香は膣内を占領する肉棒を反射的にきつく締め付けた。

「……くっ」

氷雨が息を詰める。涼しげな彼の表情が一変して余裕のないものに変わった。

秘部と氷雨の腰がこれまで以上に密着し、子宮の入り口に亀頭がめり込む。

腹の奥底から内臓を押し上げられる感覚に、遥香の息が止まった。

次の瞬間、膣奥に熱い液体が注がれた。

神経が鈍い身体の奥で起こるさまを、具体的に想像するのは難しい。しかし腹の奥底にじわじわと温かいものが溜まっていく感覚は遥香にもわかった。さらには胎内の熱に歓喜して、もっともっとと精液をねだるように膣壁がうごめいている。

「あ……やぁっ、あん……ぁあっ」

「タイミングがズレてイけなかったか」

「ごめんね。俺ばっかり夢中になってしまって……もう一度する?」

「やっ、もう、これ以上はムリですっ!」

イったとか、イってないとか、自分の状態はよくわからない。ただ快楽の波はずっと続いていて、当分引きそうになかった。

これ以上されたら身がもたない。

泣きながら首を横に振る遥香に氷雨は苦笑し、あっさりとペニスを抜き去った。

「そうあせる必要はないか。これからじっくり慣らしていこうね」

遥香の額へと氷雨が軽くキスを落とす。

「安定した?」

「……安定?」

「欠けているような、嫌な感覚はもうしてないよね」

言われてみれば、氷雨に抱かれる前にあった強烈な焦燥感が消えている。

素直にうなずくと、二人に頭を撫でられた。

氷雨の羽織を肩にかけ、辰臣と氷雨に支えられるようにして敷布に腰を落ち着ける。

望んでいない淫らな行為の直後だというのに、遥香の心は思いのほか穏やかだった。

殺されないだけマシだったとか、そういった面の諦めもあるが、やはり一番の要因は相手がこの二人だったからなのだろう。

「……お二人は、何者なんですか……?」

動画サイトで世界的に人気を博しているダンスパフォーマー。「ワザオイ」として活躍する、氷雨と辰臣。

ワザオイの活動に専念するため辰臣が大学を辞めるまでは、遥香にとって彼は一緒のサークルに所属する頼れる先輩だった。

そんな二人が関東を中心に発生している土地神消失事件の容疑者になり、遥香に調査の依頼がまわってくるなんてどんな因果だ。

しかも、彼らは容疑者のままでは終わってくれなかった。

「いなくなった土地神は、いったいどこへ……」

わからないことが多すぎる。

唯一、この二人は人間ではないということだけははっきりした。しかし彼らの本性は妖なのか……、はたまた人に憑いた怨霊のたぐいなのか、遥香には何ひとつ判別がつかなかった。

そんな正体不明の存在に身をあずけているというのに、本能的な恐怖心を抱けないのも不思議だった。霊的なことで危険を感じた際に起こる、背筋に走る冷たい感覚がまったくないのだ。

するりと頬を撫でてくる彼らの手が気持ち良くて、自ら顔を寄せる。あんなことをされても、遥香は辰臣と氷雨を敵だとはどうしても思えなかった。

氷雨が遥香の手をそっと掴み、自らの胸へと導く。

「土地神ならここにいるよ。俺とオミに神力を託したあとは自我を手放し、穏やかに眠っている」

まるでいなくなった土地神たちがそれを望んだかのような口ぶりだった。

「忘却による消滅は、人間が思う以上に、神にとっても寂しくて怖いことだ。……人の祈りによってこの地に生じた神々にとっては、特にね」

その説明に遥香の心臓がどくりと跳ねた。

全国の土地神を管理する神括連は、過疎化や人口減少によって祀られなくなった神が自然に消滅することを、時代の流れとして受け入れている。しかしそれは土地神たちの望む終わり方ではないのだと、氷雨は主張しているのだ。

辰臣が遥香の腹部にまわした腕の、抱きしめる力を強くした。

「この国ははるか昔から、ありとあらゆる事象に対して、多くの神格が創られてきた。そして今も……。神を生めるのは、何も天津神や人間だけじゃないからなあ」

辰臣が言っているのは、二人の正体に繋がるヒントだ。

神括連が管理しているのは、天津神に与せず各地でひっそりと信仰されてきた土着の神々だ。かつては人々の祈りによって生まれ、奉られた土地神たち。

つまり……時代の変遷と共に信仰を失い、人知れず消滅していくかと思われた神たちの切実な願いが集い、辰臣と氷雨という——新たな神が発生した、ということ……?

「人が住まなくなった土地に神は不要だから……僻地で管理ができないならひっそり消えてくれなんて、自分たちで創っておきながら無責任だとは思わないか? せめて奉遷をサボらないでいれば、奴らも加護を失うことにはならなかったのにな」

皮肉そうに笑う辰臣がどこか悲しそうに見えたのは、気のせいだろうか。

「今の時代、土地神たちは人間になんの期待もしていない。俺たちが生まれたのが何よりの証拠だ」

「御神体の管理者が神社本庁に属しているならいざ知らず。祈りを受け、ただ祀られることを望む、そんな神は神括連がまとめるところにはもういないよ」

辰臣に続いて、氷雨も遥香の肩を抱く。

二人の体温を感じる遥香の心臓はどきどきと鼓動を速めた。

パズルのピースが組み合わさっていく。

ここにいるのは人間を知り、社会を理解し、自ら考え行動できる知恵を持った神である。

そんな二柱の神様が「ワザオイ」という名でダンスパフォーマーとして活動している理由は——。





いつの時代も、舞は人の心を魅了する。

切実な祈りには程遠くても、彼らのパフォーマンスによってファンが熱狂すればするほど、信仰の力を得ることができる。ワザオイの活動の合間に本来の役目である土地神の回収をしていけば、二人はさらに強力な存在になっていく。

「イマドキの神様は、自分から推しを集めるものだよ」

氷雨の答え合わせに納得して、遥香は今度こそ諦めたように身体の力を抜いた。

こんなの、私に敵うはずがない。





続きのサンプル記事はこちら
【小説サンプル】二柱の愛にこいねがう・2〜4話
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全編はDL siteにて販売しています。
気になった方はご購入いただけますと幸いです。

市街地 2024/04/05 07:50

【小説サンプル】境界の向こう側でマスターに愛され、囚われる

あらすじ

友達から半ば強引に譲り受けた「曰く付き」の人形——エルクが姿を消した。
その友人が面倒を押し付けた「お詫び」にと贈ってくれた飛行船のディナークルーズのさなかに気を失った私は、気がつけば蝋燭の火が照らす薄暗い部屋にいた。

怪しい魔法陣の上で手足を拘束されて、快楽に悶える。
混乱を極める状況で、私は消えた人形、エルクと再開を果たす。
クルーズ船のスタッフは、エルクが私の主人なのだと告げた。

この儀式はマスターが望んだ、必要な措置らしい。
問題なく『あちら側』へ渡るため。『あちら側』に私の意識を順応させるために——。
エルクが見守る視線の先で、私の体は自らの意思に反して淫らに作り替えられてく。

——そんな夢を見た。気がついたら朝になっていた。

ディナークルーズはとっくに終わっていて、私はひとり、船内に取り残されていた。
急いで家に帰ろうと、出口を探す船の中で、私は人の姿になったマスターと再会する。

マスターに連れられて、船から降りた。
港街の風景は日本のどこかにありそうな街並みに見えて、それでいて何かがおかしかった。

ここは境界を越えた先ある、あちら側。

不思議な世界。マスターのお屋敷で——
私は彼に囚われ、愛される。


全体を通したプレイ内容

無理矢理・拘束・連続絶頂・快楽堕ち・クリ責め・電マ・バイブ・ポルチオ責め・溺愛・甘々(後半)etc.

※ヒロインに名前のないネームレス小説です。
※文体はヒロイン視点の一人称です。
※モブキャラが人形になるなど、軽微なホラー要素があります。
※ヒーロー以外から快楽責めを受けるシーンがあります。



『境界の向こう側でマスターに愛され、囚われる』


鍵を回して扉を開けた時、家の中から風を感じた。

窓を閉め忘れて外出してしまったかと、自分の失敗が一番に頭を掠めたもののすぐにその考えは否定する。冬の寒さが終わりを迎え、一気に暖かくなった——つまり花粉の最盛期となるこの時期に、飛散量の多い日中に窓を開けるなんて絶対にしない。
嫌な予感を覚えつつ、あえて強めにドアを閉めた。

「ただいまー」

中に向かって大きく声を張り上げる。もしもの時のための、ほんの威嚇のつもりだった。

一人暮らしのマンションに、当然返ってくる声はない。恐る恐る廊下を進む。突き当たりのリビングへと続くドアが開けっぱなしなのはいつものことだ。しかし部屋の内部は、全然いつも通りではなかった。

ベランダへと続く大窓は全開となり、風ではためくカーテンを目の当たりにして頭からさっと血が引いた。

——まさか、空き巣……?

人の気配はもちろん、荒らされた形跡はない。しかし何者かが外出中に部屋に入ったことだけは明らかだった。用心しながらリビングに足を踏み入れ、あることに気づく。

「……エルクがいない」

チェストの上に飾ってあった、人形が姿を消している。
驚愕しながらも私はすぐにカバンからスマートフォンを取り出して警察に通報した。



現場検証の結果、盗みに入った犯人の指紋や靴跡等は一切採取されなかった。不審者などの目撃証言も得られず、盗まれた人形が戻ってくる可能性は限りなく低いという。

空き巣の侵入経路はベランダからだった。

ここはマンションの三階だけど、警察の人が言うに、慣れた者なら階下から簡単に侵入できるらしい。家の中に入られたのは、ベランダの鍵を開けたまま外出した私の落ち度ということになった。




数日後、居酒屋にて——。

「——いや……私、ベランダの鍵は掛けてたはずなのよ。前の日の夜に換気して、あんまり意識してなかったけど、忘れず戸締りはしたんだって……たぶん」

指差し確認とか、厳重にチェックしたわけじゃないから確証はない。しかし毎日のルーティーンがその日に限って抜け落ちてしまったとは思えず、なんだか腑に落ちない。

「でもよかったじゃない。それって偶然鍵が開いてたから、窓も割られずに済んだってことでしょう? しかも盗まれたのは『あの』人形だけとか……。ぶっちゃけ悪いことは一つも起きてない気がするんだけど」

「…………」

空き巣に入られたショックを一人で抱えていられず、専門学校時代からの友人——アザミに愚痴を聞いてもらっていたが、彼女は私の傷心を全く気に留めずハイボールを煽った。

「被害届は出したの?」

「……一応」

担当した警察官の態度から、盗まれた人形が戻る可能性が限りなくゼロに近いのは悟っていた。空き巣が盗んだのは人形一体。家中を確認したが、他の貴重品には一切手がつけられていなかった。

「人形が盗まれたのは事実だけど、痕跡はないとか……もしかしたら、あの人形が自分から出ていったんじゃないの?」

「やめてよ怖い」

酒のあてにタコわさを摘みながら冗談よとアザミは笑う。

「怖いって、今更じゃない? アンタ何年あの人形と過ごしてたのよ」

「だって……本当に普通の人形だったし……。月香が言ってたようなことは全く起こらなかったんだから」

月香とは、アザミと同じく専門学校で知り合った友人である。在学中は私とアザミと月香でよく一緒に行動していた。



空き巣に盗まれた人形——エルクは月香から半ば押し付けられる形で引き取った、曰く付きの人形だった。

エルクは全長が六○センチを超える、大きめの球体関節人形である。うねりのある金髪に、エメラルドグリーンの瞳が特徴的な、美しい顔立ちをした白い肌の青年だった。

ボディの裏側、腰の下あたりに、油性ペンで「エルク・バエル・カウスブルト」と書かれていたところから、私は勝手にエルクと呼んでいたが、もしかしたらこれは人形ではなく製作者の名前なのかもしれない。

もともとのエルクの持ち主——月香は彼に一目惚れをしたのをきっかけに、知り合いから勧められて手に入れたのだと言っていた。
しかしエルクを家に飾ったその日から、どうにもおかしな夢をみる。さらには家の中に自分以外の誰かの気配を感じるようになり、次第に人形が怖くなっていった。恐怖に駆られて人形を破棄しようとしたが、何度処分しても何故か家に戻って来てしまう——。

私とアザミがそんなベタすぎるホラーを月香から相談されたのは、専門学校を卒業してすぐのことだった。お互い社会人になったばかりで心細かったのもある。その頃はよく仕事帰りに三人で会ってファミレスで仕事の愚痴を言い合っていた。

作り話のような恐怖体験を真剣に語る友人の話に対しては半信半疑だった。アザミに至っては完全にスルーして、一人でビールを飲みまくっていたと記憶している。正直なところ、私も月香の話はあまり信じていなかった。

こんなはずじゃなかったと怖がる月香に、私が人形を捨てる以外に手放す具体的な方法——人形供養や骨董品店に売りにいく、オークションに出品するなど——を提案しても、でもでもだってで全く動こうとしないものだから、しまいには人形を買ったという事実そのものが嘘なのではと疑ったほどだ。

泣き言を漏らすだけで何もしない、可哀想な自分に酔う態度に私とアザミは苛立ち、その夜はギスギスした空気で月香と別れた。

その二日後、月香はなんと私の家に曰く付きの人形——エルクを送り付けてきたのだ。

すぐに電話で抗議をしたら「色々できるんだったらそっちでどうにかしてよ!」と訳のわからない逆ギレをされた挙句、私は着信拒否の仕打ちを受ける。
メッセージアプリもブロックされて、とどめとばかりに彼女は仕事を辞めて一人暮らしのマンションを引っ越し、行方をくらませた。

話を聞いて怒ったアザミに対しても、月香は同じ行動を取ったらしい。

そこまでするかと呆れ半分。人形をどうするかと最初は迷ったものの、結局私が引き取ることに決めた。

私自身、オカルト的なことはあまり信じないたちだったのと、友人が一目惚れするのも納得できるほどに、エルクが美しかったのが何よりの理由である。

くっきりとした目鼻立ち、すらりと伸びる手足。ボディには傷ひとつないのだけど、背面に油性ペンで書かれた手書きの名前が、唯一の残念な点となっていた。よりにもよってなぜこんなところにと、何度首を傾げたことか。

同時にこんなにも綺麗な人形を身勝手に押し付ける友人にも腹が立った。

何より許せなかったのが、友人が人形に服も着せずに裸のままにしていたことだ。
こういうのって、普通は専用サイズの服もセットで販売されてるものじゃないの?
なかったとしても、仮にも服飾専門学校で服作りの技術を学んだ身なのだから、ちょっとぐらいどうにかしてあげようよ……。

しかも月香は人形を自分の家で飾っていたと言っていた。まさかその時も裸のままだったってことは……ないと信じたい。

人形とはいえ、男性の裸体をそのまま放置するのは気が引けた。
胸部の筋肉や、股間の男性器など、無駄にリアルに造られているものだから気恥ずかしさに拍車がかかる。

私はリビングの直射日光が当たらないチェストの上をエルクの定位置にして、試行錯誤の末に完成させた自作の服を着せてみた。

一着作ると改善点がいくつも出てきて、もっとエルクに似合う服を作って着せたくなってくる。
そうこうしているうちに愛着が湧いてきて、エルクのためにドール専用の椅子を購入したり、季節ごとに新作の服を作ってみたりと、彼を着飾らせることにハマっていった。

最初こそ心配していたけど、私は月香が言うところのおかしな現象は全く体験しなかった。
エルクが家に来てから三年になるが、不自然な不幸も幸運もなく——本当に、いつも通りの普通の日常を送っていた。

——それが、ここにきての、これである。

「私もあんまり信じたくないけど……月香的解釈でいけば、待遇に不満があったから、人形は自分の意思で出ていったとかもあり得るのかなあって……」

冗談のつもりで言ったが、愛想笑いはぎこちないものになってしまう。

一切の痕跡を残さなかった空き巣。盗まれた物は、エルクだけ……。

穿った考え方をすると、エルクが自分で出ていったとも取れてしまう状況が出来上がっている。こんなこと警察に言えるはずもなく黙っていたが、私は今になって月香の怯える顔を鮮明に思い出していた。

「まあ……そんなわけないか。どうせ、空き巣した誰かが高値で売れると思ったから、持って行ったのだろうね」

現実なんてそんなものだ。肩を落として私もちびちびと梅酒を飲む。

「盗まれたのがそんなにショックなら、今度は自分で好みの人形を買ったら?」

「うーん……そこまでは……」

手にした経緯はどうであれ、私が大切にしたかったのはエルクだけだ。いなくなったからといって、新しい人形を迎えたいとは思えない。

これもオカルト的なことが好きだった月香に言わせれば「魅入られている」状態なんだろうけど……。

「今は盗んだ犯人が見つかって、人形が戻ってきたらラッキーぐらいに思ってる」

ないとは信じているが、もしも……本当にエルクが自分で出て行ったなら、もうお好きにしてくださいとしか言いようがない。

その場合は、エルクに帰ってきて欲しいとは……、さすがに思えなかった。




   ※省略




食事中も飛行船は進む。徐々に都会の明かりが遠ざかっていく。私はこのディナークルーズはどこかでUターンして、また係留地に戻るのだと思っていたが、食後になっても一向に進路を変える気配はなく、夜の空を飛び続けていた。

歓談スペースでひとりやることもなく外を眺める。都市の照明が完全に見えない距離に到達すると、今度は雲ひとつない夜空に無数の星が浮かび出した。

「……すごい」

間近に迫る天の川に感動して思わず声がこぼれた。

「でしょう? 百万ドルの夜景も素敵だけど、やっぱり夜空の旅はこうでなくちゃ」

いつの間にか隣には、ディナー時にお世話になった女性の姿があった。彼女に同意して、何度も頷く。

「そろそろ到着かしら」

「……え?」

ディナークルーズの予定表にはどこかに停泊するなんて書かれていなかったはずだ。陸地は遥か彼方だというのに、一体どこに到着するのだろう。

疑問に首を傾げた私の耳に、スタッフの案内放送が届く。

「間もなく中継地点に到着します。乗客の皆様は——」

「あ、あの……っ、中継地点とは、どういうことでしょうか?」

恥を忍んで女性に聞くと、彼女は嫌な顔ひとつせず答えをくれた。

「ああ、初めてだったら知らなくて当然ね。この空の旅は、途中から海の旅に切り替わるのよ」

それはつまり……行きは飛行船で、帰りは船に乗って陸地を目指すということか。

「ほら、あそこに停泊しているでしょう?」

いまいちピンと来ていない私に、女性は窓の外を指差した。彼女の示す先にある光の集まりは、飛行船が近づくにつれて大きくなっていく。

最初は陸地の夜景にも思えたそれが巨大な船舶であると判明した時、目を見開いて驚いた。一晩で飛行船と豪華客船を楽しむディナークルーズ……そりゃあ価格が十万円以上するはずだ。

でも、ここは海の真ん中だ。港もないのにどうやって乗り換えるんだろう……?

私が不思議に思っているうちに飛行船は高度を下げて、ゆっくりと着陸態勢に入った。



降り立ったのは、まさかの海の上だった。

いや、ちゃんと着陸地点としての舗装はされているのだろうけど、暗くて地面は見えないし、ちゃぷちゃぷと波の音が聞こえてきてどういった場所に飛行船が降りたのかが全くわからない。
しかも海の水音はしていても、波の揺れは一切感じない。どうなっているの?

不思議な現象に困惑する私を置いて、乗客たちは当然のように飛行船を後にしていく。

降り口の向こうには、真っ暗な海と、その先に煌びやかに光を灯すあの大きな船があった。

飛行船から船までは、歩道橋のような階段状の道になっているらしく、幾つもの小さな光が足元を照らしていた。こんなの見たことも聞いたこともないけど、おそらくこれは船舶への連結橋なんだと思う。

道はきっと、透明な筒状のもので上下左右が覆われているのだ。そうでなければこんな海の上、風も気にせずスタスタと歩けるはずがない。

あの女性も先に行ってしまい、私は飛行船の最後の客となった。

早くみんなに追いつかないと。焦る気持ちで出口をくぐる。降り口の階段の先に誘導灯はあるも、足元は真っ暗で身がすくんだ。

「……こわ……っ」

なかなか海の上に足をつける勇気が出ず、他の乗客たちとの距離は開く一方だ。

怖気付く私を見かねた飛行船のスタッフが、海の上の道に降りて私へと手を差し出した。

「お手をどうぞ。初めてではためらうのも無理もありません。怖いようでしたら、船内まで私がご案内いたします」

「……すみません」

スタッフに甘えて手を重ねる。

乗客はここを通った。彼も海の上に立っているのだから、絶対に道はあるのだ。そう自分に言い聞かせ、スタッフに手を引かれるまま降り口の階段から一歩を踏み出す。

「————っ!?」

真っ黒な地面に足をつけようとした私は、底なしの闇の中に落下して——意識を失った。







   ※省略





ぽつぽつと明かりが灯る暗い場所。薄らと壁と天井が見えるから、ここはどこかの部屋なのだろう。

明かりは電気を使用した証明ではなく、太い蝋燭やランプといった、火を使う器具で統一されていた。蝋燭は壁際に設置された棚やテーブルだけでなく、床のあちこちにも置かれている。

そんな部屋の中央で、私は横になっていた。

海に落ちた、はずだった。

私は助かったの? ここはどこ? どうしてこんなところに……?

「——っ!? な、に? ぇっ……んうっ!」

次から次へと浮かんでくる疑問は、胎内から湧き上がった強すぎる快楽によってたちまち流された。

「ひっ、いやっ、……なんで……っ!」

体の中から感じる振動に思考が搔き乱される。
確かめようとしたわけじゃない。
それでも私はソコを意識したのと同時に下腹部にぎゅっと力を込めてしまい、伝わってくる重い揺さぶりをありありと感じてしまった。

「あぅっ、んぅうっ……っ。やだっ、なにこれっ、……いや、……っいやぁっ!」

状況がわからないながらも快楽に悶える。

元凶となっている、膣奥に埋まる何かを取り出そうとするも、起き上がることができない。
唯一動く首を持ち上げて、自分の状況を確認する。

「なに……どうしてっ……」

暗い部屋の中。私は床の上で蝋燭に囲まれて、手足を大きく開いた大の字の形に固定されていた。服も、いつの間にか全部脱がされ裸の状態だ。

両手首と両足首は幅の広い厚めの革で拘束され、手足首を跨いだ革は床に鋲のようなもので打ち止めてある。いくら力を入れて身を捩っても、革の拘束から手を抜くことはできなかった。

服を脱がされて身動きができないなんて、一体誰がこんなことを……、海に落ちて、助けられたのではかったの?

「うっ、……んぐっ、うぅ……っ」

秘所の疼きに耐えながら、周囲を見渡す。快楽よりも狼狽が勝り、じっとしていられなかった。




   ※省略




自力ではどうにもならず、悶え苦しみどれだけの時間が過ぎただろう。

イキたい。……もっと強く責めてほしいと、頭の中が性的なことでいっぱいになった矢先、一筋の光が室内を照らした。

ぼやけた頭では、部屋の扉が開かれたのだと理解するのが遅れた。

「……っ、…………ぅっ」

眩しさに目を細める。二人の人間が入室して、扉はすぐに閉ざされた。

「これはこれは、お目覚めでしたか。遅くなって申し訳ございません」

丁寧な口調の、男性。この声には聞き覚えがあった。飛行船から船に乗り換える時、海の上に降りるのを渋っていた私に手を差し出してくれた、あのスタッフだ。

薄暗い部屋に慣れた目は、彼の顔を難なく見ることができた。さらさらの、癖のない黒い髪。狐のような細い目に、薄い唇。ダーク色のスーツに身を包んだその人は、裸で床に拘束された私を見下ろしながら、驚く様子は微塵もなく穏やかに微笑んでいた。

「——っ」

スタッフも加担している? 私は最初から騙されていたの?

沸き立つ怒りは唇を噛み締めて堪えた。腹は立つが、それ以上に入室した彼らは気味が悪く、恐ろしかった。

飛行船のスタッフと連れ立って入ったもう一人の男性は、俯いたままぴくりとも動かない。隙なくスーツを着こなすスタッフとは正反対に、こちらはジーパンにTシャツというラフな格好だった。髪もボサボサで、なぜか肘や手首といった関節部分に黒い横線が入っている。

不可解な点は他にもあった。飛行船のスタッフ——スーツ姿の彼はずっと、右手を胸の位置まで持ち上げていて、地面と並行になった腕には、なぜか人形が座っている。
しかも……私はその人形を知っていた。

「……エルク?」

一ヶ月前に盗難にあった、曰く付きの人形。猫っ毛の金髪に、蝋燭の日にゆらめく緑色の瞳。人形の着ている服は、私が彼のために仕立てたスーツだから、見間違えるはずがない。

「どうして、エルクがここに……?」

「ああ、それはいけませんね」

飛行船のスタッフは困り顔を向けてきた。

彼は部屋の隅においてあった人間用の椅子にエルクを丁寧に腰掛けさせ、壁際のチェストを白い手袋をした手で開き何かを取り出す。

私の頭上で片膝を付いた彼に、頬をするりと撫でられる。

「さあ……お口を開けましょうね」

「——んっ……ぅっ」

鼻の付け根を摘まれて、息ができない恐怖から口を開いたところに、無数に穴が空いたピンポン玉サイズの球体を、口内に押し込まれた。

「ふぅっ、ひゃぁ」

異物を舌で口から出そうとするも上手くいかず、彼は慣れた手つきで球体に付いたバンドを私の頭に回して固定した。

「うぃっ……ぃっ、……ぃんう」

「よくお似合いですよ。お辛いでしょうが、しばらくはこのまま頑張りましょうね」

よしよしと頭を撫でられても、全く慰められた気がしない。

「あちらの御方の名前を、あなたが呼ぶことは禁じられています。今後は主人については『マスター』とお呼びしましょう。わかりましたか?」

「んんっ……ふぅう、んぅっ」

わからない。理解できるはずがない。
どうして人形を「マスター」と呼ぶ必要があるの? 人形なのに、マスターなんて呼び方……まるで私が人形に服従しているみたい。

あり得ない。何もかもがおかしい。

何がどうなっているのか、説明を求めようにも口枷のせいで言葉が紡げない。代わりに力強く首を横に振る。これが精一杯の意思表示だった。

「それは困りましたね。承諾していただかない限り、これは外すことができませんよ?」

コツコツと、彼が私の口に押し込まれた穴だらけのボールを指先で小突く。

「——……そうですね。先に儀式を進めましょう」

エルクのほうをじっと見つめ、彼は深く頭を下げた。そして再び私を至近距離で見下ろして軽く頷く。

「ご心配なさらずとも、あなたもじきに意思を汲み取れるようになります。申し遅れましたが、わたくしはあなたの渡りの手助けをさせていただく、カロンカンパニーのオリヴァと申します。以後お見しおきを」

彼——オリヴァは片膝を床につけたまま、胸に手を当て私にも頭を下げた。





   ※省略





「……ぐっ、うっ……げほっ」

空気を吸い込んだ時に唾液が気管に入ってむせた。

「ああ、大丈夫ですか?」

すかさずオリヴァが私の口枷を外し、呼吸がしやすいようにと頭部に手を添えて顔を少し持ち上げて支えた。

「快楽を拒まず受け入れること。あの御方を、マスターとお呼びすること。この二つを了承いただけるなら、口はこのままにいたしましょう。約束を守っていただけますか?」

拒絶の選択肢ははなから浮かばず、頭上から顔を覗いてくるオリヴァに対し、小刻みに何度も頷いた。

「聞き分けがよくて助かります。では、一度練習しておきましょう」

オリヴァは後頭部を支える手の角度を変えて、エルクへと私の顔を向けた。

「あの御方があなたの主人です」

人間用の椅子の中央にちょこんと座るエルクは、こちらに顔を向けていた。そうなるようにオリヴァが調整していたかどうか、記憶が曖昧だ。

エルクと目が合ったような気がして、ドクリと心臓が強く鼓動する。

「主人をあなたは、なんとお呼びになりますか?」

どこからどう見てもエルクは無機質な人形だ。そんなものを主人などと認められるはずがないのに……。

おかしくなった私の頭はこれが偶像崇拝とかじゃないって理解してしまっていた。言葉にはできなくても、なんとなく、わかる。——エルクは、ただの人形ではない。

「……ぁっ、……マスター……?」

良く出来ましたと、オリヴァに頬を撫でられる。じわり……。私の中を、またひとつ新たな色が侵食した。

「その通りです。他の禁忌は後ほどでも問題ありません。この場において、あなたが絶対に守らなければならないのは、主人の名を口にしてはいけないという一点のみなので、しっかりと覚えましょうね。もう一度……あなたは主人をなんと呼びますか?」

「ぅんっ、ん……っ、マスターっ、ぁっ」

満足そうに深く頷き、オリヴァはそっと私の頭を床に預けた。

「良いでしょう。では、こちらも次の段階へと進めさせていただきます」

「ひんっ、んっ、んんっ……」

ローションでぬらぬらと光る下腹部をオリヴァに押される。腹の奥がキュンと疼き、無意識に膣が締まった。
ぐにぐにと腹部を揉まれるだけでじんわりと甘い感覚に襲われ体を捻った。
悩ましげな嬌声がひっきりなしに口から漏れる。体内に蓄積した快楽が弾けそうになったその時、オリヴァは人形から電マを取り上げた。

「……あっ……はぅ、ぅうー……」

絶頂をはぐらかされ、耐え切れず脚の内側に力が入る。足を開いた状態で拘束されては、もじもじと太腿を擦り合わせることも叶わない。

「んぁっ、あ……ィっ、イキたい、のに……っ」

「少しだけ辛抱ください。陰核は十分に、可愛く勃起できましたので、次は膣の様子を見ていきます」

カートを引いて脚元に移動したオリヴァは人形を後ろへと退け、私の大きく開いた脚の間に膝を付いた。

ぐじゅり……。

とろとろの愛液が溢れた秘裂をオリヴァがなぞる。

「こちらも、よくとろけてますね」

ぬかるんだ膣にするりと指が挿れられた。

「あっ……ゃ、ぁうっ」

オリヴァは膣道の具合を確かめるようにナカをまさぐり、膣奥の肉壁をコリコリと手袋越しに指先で揉み込んだ。

「あぁっ、やだ……、そこっ」

「体の発情に伴い、子宮も降りています。ポルチオでも快楽を得られているようで何よりです」

「いああぁっ、あっ! おく……っ、ぐにぐにするのっ、だめぇっ」

こしゅこしゅと執拗に子宮口をいじられ、腹の奥から深い快楽が湧き上がる。クリトリスの刺激の比ではない、強い絶頂を予感したものの、オリヴァはあっさりと膣から指を引き抜いた。

「……これは失礼。どうやら私が直接責めることは、あなたのマスターのお気に召さないようです。相変わらず、気難しいお人だ」

注文が多くて困ったものだと言いながらも、オリヴァは楽しげに笑う。そしてカートの上に置かれていた棒状の器具を掴み、体の向きを変えてエルクに見せるように掲げた。

「それでは、こちらでさせていただきます」

緩やかな曲線を描く、先端が丸く膨らんだ器具。大人の玩具——バイブであろうそれに、オリヴァがローションを垂らす。私の上半身に塗られたのと同じ、肌が熱くなるものだ。

「……っ、……いや、やめて」

それをどうするつもりなのか、安易に想像ができてしまい顔が引き攣った。

「大丈夫ですよ。膣の状態からして、この太さでしたら問題なく楽しめるでしょう」

「無理っ、……やだ、おねが————っ」

ずぬ……、ぬぐぐぐぅっ——。

「やぁっ、あああぁっ!」

静止を乞うも聞き入れられず、オリヴァは容赦なく膣奥までバイブを突き入れた。
ぞりゅぞりゅと膣壁を押し広げていく。
圧迫感はあっても、痛みは感じなかった。
それどころか、膣道は異物を歓迎するかのように纏わり付き、余すことなく快感を拾い上げてしまう。

強烈な刺激に、私は背中を弓なりにしならせて呆気なく達した。

「いっ……あぁんっ」

トチュン——と、奥を先端の突起が抉る。腹の奥から頭へと甘い痺れが突き抜けた。

「ひっ、やぁあ! ああっ、あんっ、あっ……やだっ! 止めっ……やめてぇっ!」

ズチュッ、ズチョリ……っ、ズチュ、ズチュッ、ズチャ……ッ。

バイブを容赦なく抜き挿しされて、膣がカッと熱くなる。

快楽に身悶える私の理性が、体内の熱によって溶けていく。また……自分の知らなかった「何か」がこの身に植え付けられる感覚に見舞われた。

「……っ? な、あっ……ぇ? もぅっ、あっああぁっ、あうっ、んんぅ」

わからない。わからないけど、何かがおかしい。

……いや、これまで普通じゃなかったことが、ようやく適応できている……?

まるで頭の中がシェイクされて、そこに私の知らないフレーバーが入り込み、知らない味に整えられるみたい。

壊されるのではなく、作り替えられているんだ。

そうしないと……私は、私でいられなくなるから……。

「い——っ、きゃあぁっ! あっ、うぉ……おっ、ぁっ……」

ぐにぃと奥を強く押されて目の前に火花が飛んだ。制御がきかず、全身がビクビクと痙攣する。
オリヴァがバイブによる膣責めを緩やかな動きに変えた。

「…………?」

余韻が落ち着き視線を下に向けるといつの間にか、オリヴァの隣にエルクが立っていた。

「——っ」

人形がひとりでに動いた。驚きに声を出しかけて、咄嗟に自分を律する。

エルクの首がゆっくりと回り、私を見た。無機質で、動かないはずの彼の顔——ほんのりと赤みを帯びた唇が、微かに笑った気がした。

「……ぁっ、あぁっ」

羞恥心がどっと押し寄せて耳まで熱くなる。心臓が高鳴り自分の感情がわからなくなる。

……私、こんな状況で、エルクにときめいているの……?

相手は人形だというのに、どうしてこんなにどきどきするのだろう。戸惑う私の内腿をエルクの小さな手が撫でる。私はそれに確かな安心を感じていた。

エルクが秘所へと手を伸ばす。目指したのは、バイブを咥えた膣の上、ツンと勃起したままになっているピンク色の肉芽だった。

「きゃうんっ!」

小さな小さな人形の手で、クリトリスを摘まれる。
神経の集中する裏筋を細い指で撫でられて体が仰け反った。ひとつひとつの指が繊細に動き、親指と中指で突き立つ肉芽を挟んで扱かれる。

「やあぁっ、それ、もっ……っ! ああっ、ああぁんっ、やだぁ……あうっ」

どれだけもがいても、エルクの手はクリトリスから外れない。敏感な箇所に与えられる刺激に連動して膣が収縮して、ナカのバイブを食い締める。
そしてまた、身に余る快楽が思考を埋めていく。

「気持ち良さそうで何よりです」

オリヴァはドア近くに控えていた大きな人形を呼び寄せバイブを持たせる。

「ゆっくりと動かしてあげてください。メインの快楽は、主人の施しがよろしいでしょう」

膣の責めを人形に任せ、黒の手袋を新しい物と交換したオリヴァが、その手で私の目を覆った。

「んんっ、はっ……ああぁん、あっ、……あぁ」

「感じる快楽はたくさんあるでしょうが、あなたはマスターの指に集中しましょう。……陰核は、どのように触れられているか、感覚でわかりますね」

「いぃんっ、あっ、はい……いっ、わ……わかっ……りゅ」

「よろしい。そのまま身を預けて……」
「うっ、ぃんっ……ぁ、あぁ……」

視界が真っ暗になっても、エルクがクリトリスを弄る手つきは鮮明に感じられた。

細い指が突起の上を滑り、優しく撫で上げてくる。決して激しくはない。強さの加減にいたわりを感じ、無意識にエルクの愛撫に身を任せようとした、その時——。

ヴウウウウゥゥン————っ。

重い振動に膣奥を叩かれ、電気ショックを受けたように大きく体が跳ねた。

「いやああああぁぁ——っ!!」

電源の入ったバイブにポルチオをゴリゴリと責められ、頭の中で神経が焼き切られていく。黒かったはずの目の前が真っ白に染まり、自分でも驚くほど大きな悲鳴をあげた。
エルクの手がクリトリスから離れる。
膣奥に押し付けられた振動が緩み、ガコンッと足元で物が崩れる音がした。

「きゃうっ、あっ! はぁっ、あぁっ、んぁ……ぁあっ」

バイブの責めが弱まっても、体の痙攣が止まらない。





   ※省略




「……っ、ぁっ……マスター……」

自分が変わっていく恐怖に耐えられず、エルクに縋る。

大丈夫だ、ここにいる——と。私を安心させようとするエルクの心が、手に取るように理解できてしまった。

膣内の振動が気持ちいい。頭がふわふわして、涙が止まらなかった。

しばらくそんな状態が続き、疲労が快楽を上回りかけたころ。

……ポーンと、どこからともなく電子音が聞こえてきた。

「——ご乗船の皆様にお知らせいたします。当船は間もなく、境界の上を通過します。繰り返します————。——皆様におかれましては……」

抑揚のない事務的な声の館内放送が聞こえてきたのは覚えている。

しかしスピーカーから響く案内を聞き終わる前に、私の意識は暗転した。





     *





「————っ!」

勢いよく身を起こすと、体に掛けられていた薄い羽毛布団がずれ落ちた。

「……ゆめ……?」

ベッドの上で、私は眠っていたようだ。

「…………ここは?」

周囲を見渡すが、記憶にない場所だ。
室内には二つのベッドが並び、チェストや鏡台、椅子にソファなどの家具も置かれているが、生活感がない。洋風の装いも相まって、高級なホテルみたいだった。

惑いながらも自分の手のひらを見る。私の手だ。身に纏っているのは、飛行船のディナークルーズのために新調したカクテルドレス。
間違っても、裸などという破廉恥な姿ではない。

体には異常がないようで、安堵感から大きく息を吐き出した。

とてもとても、淫らな夢を見ていた気がする。
飛行船とか、上流階級の人たちの中に入って食事をしたり……普段経験しないことに緊張しすぎて、頭がキャパオーバーになってしまったのだろう。
きっとそうに違いない。

自分に言い聞かせてベッドを降りる。
明るい日差しが差し込む大窓から外を覗くと、広場のような場所のさらに奥、大通りを挟んで民家やビルの並ぶ街が見えた。

全体像は把握できないけど、ここは船の上——なのだと思う。広場の先に建つ横長の施設には、二階のバルコニーの柵に「おかえりなさい! ようこそ! ×××港へ!」と大きく書かれた横断幕が掲げられていた。

港の名前は私の知らない漢字が使われていて、読むことができない。
横断幕を注意深く観察すると、おかえりの「り」と、ようこその「よ」と「こ」の文字が反転して鏡文字になっている。
これはあえてなのか、誤字なのか……。

「あっ……」

陸地に見知った人を見つけ、窓を開けてバルコニーに出た。

柵から身を乗り出して凝視すると、広場の芝生を歩く人たちも私に気づいたようで、振り返ってこちらに向かって手を振ってくれた。昨夜、飛行船で一緒に食事をした人たちだ。

ぺこりと頭を下げて、急いで部屋に戻る。
船はもう港に到着したのだ。私も早く降りなければいけない。

ソファに置かれたバッグからスマホを取り出して開くも電池が切れていた。昨日一日使って夜に充電していなかったのだから仕方がない。

行きもそうだったのだから、港から駅までシャトルバスは出ているはずだ。それで帰ろう。

幸いにも今日は土曜日。仕事もないからゆっくりできる。
部屋を出て、長い廊下を駆け足で進んだ。

しんと静まり返った船内には人の気配がなかった。
早く船から降りなきゃいけない。焦る気持ちはあっても、広い船内のどこに出口があるのかわからなくて困り果てた。せめて船の案内図が見つかればいいんだけど……。

少し歩いただけで足が重い。息切れも酷くて……きっと疲れているんだ。

とても船の中とは信じられない、大きな階段を上に行くか下に行くか悩んで立ち止まる。

階下からスーツ姿の男性が階段を登ってきた。
人がいた。ほっとできたのは一瞬だけで、一気に緊張が高まった。男性のスーツのデザインが、彼——オリヴァの着ていたものと同じだったから。

「どうかなされましたか?」

「あの……、出口がわからなくて……。すみません、船を降りるには、どちらに行けばいいのでしょうか?」

物腰穏やかに話しかけられたことで少しだけ安心して、恥を忍んで帰り道を聞いた。
男性は不思議そうに私を見下ろす。

「失礼ですが、お連れの方はどちらにいらっしゃいますか?」

「いえ、私は今回は一人で——」

——参加したと、言おうとしたのだ。

「ああ、ここにいたのか」

だけど背後からした声に遮られ、私の言葉は最後まで続かなかった。

振り返ると、青年が悠然とこちらに向かって歩いていた。

猫っ毛にうねる、綺麗な金色の髪をした、エメラルドグリーンの瞳の、美しい男性だった。
まるで物語の王子様が、現実に姿を現したみたい。
それほどまでに完璧な容姿の、まるで人形のような……。

近づいた彼は私よりも頭ひとつ分背が高かった。

「駄目じゃないか。勝手に先に行くなんて……部屋に戻ったら君がいなくて心配したよ」

その人は当然のように私の肩に手を回す。
上を向いて、至近距離でまじまじと見た彼の顔には既視感しかなくて。

ぐるぐる、ぐるぐると脳内が混乱を極めた。

「大丈夫?」

心配そうに、彼が私の顔を覗き込む。
人懐っこそうな優しい目つき、口や鼻といった顔のパーツ……彼はどれもが、エルクにそっくりで……。

「…………マスター?」

——エルク、と。呼ぼうとした私の口から、自然とその単語が溢れた。

私の呼びかけに、彼の口端がゆっくりと持ち上がる。

「うん、そうだよ? 何かあった?」

そう……だ。マスターで、いいんだ……。
——刹那、私の脳裏に淫らな記憶がどっとなだれ込んできた。

霞が晴れて、夜の出来事が鮮明になっていく。

あれは夢じゃなかった。

夢なんかじゃなくて……。

もう私にもわかる。——わかるように、なったのだ。

人形だった彼は、ここにいる。

この人が、私のマスター——。

パズルのピースが揃うように、頭の中で様々な情報が合致していく。

認識が深まるにつれて、秘部に耐えがたい疼きが蘇る。

どさりと、手首からバッグが滑り落ちた。

「おっと」

足に力が入らなくなって崩れ落ちる私を、——マスターが支えてくれた。

「……ぁっ」

彼の体温を肌で感じ、甘い吐息が漏れた。腰のあたりがゾクゾクと痺れてくる。
急な発情にうろたえることしかできない。

「な……んでっ……?」

「まだ不安定なんだから、無理もないよ」

マスターが軽々と私を横抱きにした。

「お待たせ。——さあ、うちに帰ろうか」

当然のように彼は言い放つ。
一体どこに帰るのかと、私はマスターに問いかけることができなかった。




    ※省略




マスターが私のカクテルドレスのファスナーを下ろす。光沢のある生地が肩からずれ落ちるのを、ぼんやりと見届けた。

「これはもういらないかな。ドレスも下着も、これからは君が身に付けるもの全ては僕が選ぶよ」

下着を外され、生まれたままの姿になっていく。恥ずかしさとか、心許なさはあるけど、嫌だとは思えない。
そんなことよりも、やっとマスターに可愛がってもらえる、期待のほうが大きかった。

ベッドの上でマスターに背中を預ける。後ろから脇腹を撫でられると、くすぐったさに吐息を漏らした。

「君の気持ちいいところはどこだろうね」

「ひんっ、……っあ……っ」

耳に流し込むように囁かれ、びくりと肩が跳ねる。首をすくめた私をクッと笑った彼に耳たぶを甘噛みされる。

「耳も弱い? 僕の声に感じるんだ」

中性的な響きが脳を揺らす。弾力のある舌が耳を押し舐め、いやらしい水音に聴覚が犯される。

「はぁっ……あっ、んぅう……っ」
淫らな音は子宮にまで響き、下腹部が疼く。マスターで満たされたいと望むものの、体が思うように動かない。

「マスター……っ、んゃあ……、あんっ、もぅ……っ」

「我慢できない?」

「うん……ぅぁあっ、も、ほし……ぃっあぁっ、……ナカ、寂しいの……あぅんっ」

言葉にしてしまうと、もう駄目だった。
触れられてもないのに膣口から蜜がとろりと零れていく。早くマスターに奥まで蹂躙して欲しい。身も心も、彼のものになりたいの。

「そうだね。ここもゆっくり慣らしていこうか」

マスターの手がぬかるんだ秘裂をなぞる。クチュリと愛液が絡み、滑りを纏った指先でクリトリスを撫でられた。

「あっ、ああぁっ、……んぅ——っ」

「こらこら、脚を閉じてしまったら可愛がれないよ?」

「あっ……ぁ」

指摘されておずおずと脚を開く。

「そう……いい子だね」

「んぁあ、ああっ、あうぅ……んっ」

マスターの長い二本の指が、膣内に侵入してきた。肉壁を探りながら、奥へ、奥へ——。

「君のナカはすごく温かいね。ヒクヒクして、健気に締め付けて……やっと、ここに僕の指で触れられる」

「ふぅんんっ」

最奥を一突きして、指は浅いところへとずらされる。ぐうぅとクリトリスの裏側を押され、快感に背中がしなった。

「んんぅ、あっ、はあぁん……っ、いぅっ」

敏感なポイントを優しく撫でさすられ、緩い快感に油断してくたりと力が抜けたタイミングで、強く肉壁を揉み込まれる。
変則的な動きに翻弄されて片時も休まらない。膣道はマスターの指を締め付けては少しでも快楽を享受しようとうねり、愛液を分泌し続けた。

掻き回される動きに合わせ、クチュクチュといやらしい水音が響いて羞恥心に襲われる。

「人形の体だとこんなことできなかったからね。君を可愛がるのは僕ひとりで十分だ。安心して……もう誰にも触れさせないよ」

とろとろの膣道をじっくりと余すことなく弄られる。

「はっぁあっ、んやぁ……っ、マス、タ……ぁっ」

感じる箇所を見つけては重点的に責められ、甘い声をあげてしまうのだけど、絶頂には至らない。

快楽と焦ったさに翻弄されるも、不思議と自分で欲求を解消しようとは考えられなかった。
マスターの楽しみを、私が邪魔してはいけないの……。




   ※省略




マスターが服を脱ぎ捨てる。引き締まった肉体——体のバランスに既視感を覚えるも、自分がどこでそれに近いものを見たのかは思い出せそうになかった。

それよりも、美しい彼の裸に期待が高まり、膣からどろりと精液が溢れた。

私に覆い被さったマスターは、精液をまた膣奥へと押し戻すように、肉棒を挿し入れる。

ヌチャ、ズヌヌウゥ——ドチュンッ!

「ああっ! あああぁっ——!!」

一気に奥まで捩じ込まれたペニスを膣壁が隙間なく包み込む。たったひと突きで絶頂に押し上げられた私は、腹の奥に感じる強い痺れに酔いしれて、無意識に腰をへこへこと動かしていた。

「いぇ……? へ、えぁっ……あ、おぅっ……っ」

さっきよりも、快感が深まったのは絶対に気のせいなんかじゃない。
口をパクパクして必死に息を吸い込み、全身を痙攣させる私に反して、マスターは快感を得ながらも余裕そうだった。額に汗を滲ませながら、私の目からこぼれた涙を舌で舐めた。

「あっ……あぁっん、マスター……ああっ、あうっ!」

「こうやって、ポルチオをぐにぐにと捏ねられるのと、さっきみたいに激しくピストンするのとじゃ、どっちが好き?」

「いぃんっ、あぁ、……どっちも、どっちも……すきぃ……いっ」

深い場所で味わう絶頂感は余韻が長く、なかなか降りることができない。落ち着く間もなく膣奥を責められ、子宮を揺さぶられてまたすぐにイッてしまう。

ズチュッ、ズチュン——ッ。ヌグッ、グゥ……、ググッ、グニグニィ——。

「おぁっ、あぅっ、ん……ぅ、うっ、ぐぅ、いっ……いぐ、ぁっ、ああぁ——っ!」

私が何度絶頂に至っても、マスターは腰を止めない。
彼は私の口から漏れる喘ぎに聞き入り、肉体の反応を観察して、膣壁の淫蕩なうねりを楽しんでいた。

「可愛いなぁ……。……不運で哀れな君が、愛おしくてたまらないよ」

「へぁ……、あっ、……? い……ぃあっ、ああっ」

マスターが話している。言葉に集中したいのに、ポルチオをズンズンされては快感でそれどころじゃなくなってしまう。




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市街地 2024/04/03 07:41

【小説サンプル】神託婚〜神様のお告げで幼馴染のお嫁さんになったら溺愛された話〜

あらすじ

神様が存在する世界で幼馴染と再会したヒロインが、神託によって夫婦になり、互いの初恋を叶える話。

全体を通したプレイ内容

甘々・いちゃラブ・愛撫・中出し・正常位・立ちバック・寝バック・潮吹き・連続絶頂 etc.

※ヒロイン視点の一人称小説です。



『神託婚〜神様のお告げで幼馴染のお嫁さんになったら溺愛された話〜』


お使いを終えて仕事場のカフェへ戻った。書店で買った雑誌から付録を抜いて、店の棚の古い雑誌と入れ替えていく。
作業を終えて棚全体を見渡した時、モード雑誌に視線が吸い寄せられた。書店で平積みにされていた時から気になっていたその雑誌には、海外で活躍中の若手の日本人モデルが表紙一面に大きく取り上げられていた。

もうすっかり遠い存在になってしまった彼の勇姿に思わずため息がこぼれる。なんとなく、私は彼の特集が組まれたその雑誌を目立たない棚の隅へと移動させた。


昼時を過ぎた店内は客足が落ち着き、穏やかな時間が流れていた。
ひと組のお客様が席を立ち、会計を済ませてテーブルを片付ける。慣れた動作を手早くこなしていたら、来客を知らせるベルの音が聞こえた。

「いらっしゃいませ」

片付けを中断して入り口へと急ぐ。そこにいたのはスーツ姿の男性と女性が、一人ずつ。

「何名様でお越しでしょうか?」

二人ですと言われることを想像しながらもお決まりのセリフを告げた私に、男性が手を胸の位置まで持ち上げて待ったをかける。

「唯里ミサキさんですね」

「……はい。そうですが……」

確信のこもった口調に警戒しながらも頷いた。確かに、私は唯里ミサキという名前だ。
男性は背広の内ポケットから畳まれた用紙を取り出し、訝しがる私へと広げて見せた。

「国際神託研究所・日本支部の渡里と申します。唯里さん、あなたに神託が下りましたので、研究所までご同行願います」

漢字ばかりの難解な文章と、仰々しい四角いハンコが押された用紙を掲げて彼はそう言った。

「車はこちらで用意しておりますので、すぐに研究所にお連れします。これはどんな業務よりも優先すべき国民の義務ですから、ご了承いただくしかありません」

決定事項だと言わんばかりに彼の隣に立つ女性は戸惑う私を車へと押し込んだ。



    *



この世界には神様が存在する。海や陸地といったこの世のあらゆる物質、そして命を造った大いなるその存在には、確かな意思があるらしい。
らしい……というのは、創造主の思考はとても難解で、理解できる人はごく僅かにしかおらず、一般人にとってその存在は漠然としたものだからだ。私も、神様について実のところ詳しくは知らない。

古代より人類が文明を築いて以来ずっと、神様の心を正確に汲み取る研究がされてきた。現代においては国連が運営する神託についての研究機関が各国に設置されている。

神様の意思は神託として地上にもたらされる。それは世界を維持するために守るべき絶対のルールであり、たとえ権力者であっても逆らうことは許されない。私欲で神託を利用しようものならば、発覚次第死罪になる国際基準の法律がある。

しかし不思議なことに、人類史において今日に至るまで神意に違反した者は一人も出ていない。人間が神意に背くと、神様の力によって最初から「いなかった」ことにされる、なんて噂も巷に出回っているけれど、真偽の程は定かでなかった。

神様なんて、庶民の私からしたらそれこそ雲の上の人だ。心の中で漠然と神様を信じてはいても、決して身近な存在ではない。


世界的にも最新鋭の設備が整えられた、国際神託研究所の日本支部。応接室に通された私は、言われるままにソファへと腰掛けた。
壁も床も真っ白な部屋には中庭が見える窓があり、隅には観葉植物が置かれている。落ち着きなくキョロキョロと部屋を観察していると、入り口の扉が開いた。

「えっ……」

研究者らしい白衣姿の壮年男性に連れられて入室した人物に、はっと息を飲み込んだ。スラリとした長身の、人間離れした美貌を持つ男性。まるでファッション誌から飛び出してきたような——というのが比喩でもなんでもない。まさに私が先ほど雑誌の表紙で眺めていた彼が、そこにいた。

パリコレをはじめとした世界のコレクションで活躍する、メンズモデル——義守アラタ。

幼い頃の面影をほんの少しだけ残した彼は、私に気づくと驚きに目を見開いた。



    *



神託とは、人間のちっぽけな都合で決して覆してはならない、世界における絶対のルールである。
なぜ神は私たち人間に神託を下すのか。その意味を研究する学者は数多くいるが、確実なことは今もわかっていない。

——そんな神託が、私とアラタに下った。

およそ一年前に神託研究所の職員が受け取った神の意思を分析・言語化して、解釈について何度も会議を重ねた結果、唯里ミサキと義守アラタが夫婦になることを、神が望んでいるという結論が導き出されたそうだ。

なんとも荒唐無稽。意図のわからない神託に当事者として困惑を隠しきれない。

なぜ自分たちなのだと問うた私に、研究所の職員は「神託とはそういうものです。神の心は、人間には未だ遠く、理解するには及びません」と淡々と告げた。これは世界的な決定事項であり、反故することは許されない。

唐突に突きつけられた無茶な要求に、戸惑いながらもチラリと彼を盗み見た。私の隣に座るアラタは一見すると落ち着いた様子で、正面のソファに腰掛けた研究所職員の説明に耳を傾けていた。

アラタはこの決定をどう思っているのだろう……。

彼からしてみれば、私なんかを妻にしろといきなり言われたのだ。世界に通用するモデルと、なんの取り柄もない私を——こんなの、申し訳なさに俯くしかない。

惨めさに耐えかねて小さくなる私を置いて、研究所の職員の話はどんどん進んでいく。これから私たちはひとまず三ヶ月、この研究所内にある住居施設で夫婦として暮らさなければならない。先に入っている仕事の予定などは神託を覆す理由にならず、親の危篤などよほど重大なことが起こらない限り、施設から出ることは出来ないとのこと。

私たちの衣食住は保証され、夫婦の関係を築くためにあらゆるサービスが受けられるらしい。サポートは充実している。……だけど、いきなり今日から彼と同棲しろと命じられても「はいわかりました」とすんなり頷けるはずがない。
アラタと私は赤の他人というわけではない。しかし結婚となるとそんな事実は慰めにならない。

「き……急にそんなこと言われましても……」

「困惑されるのはもっともですが、ご理解いただく他ありません。お二人の戸籍は、すでに政府によって確保されています。どちらの籍に入られるかは自由に決めていただいて構いませんが、お二人が婚姻に至らずこの施設から出ることは許可できません」

「そんな勝手な……っ」

絶句する私にアラタが視線をくれた。彼は一瞬、寂しそうな表情になったけどすぐに真顔に戻り、正面の職員をまっすぐ見据える。

「夫婦、というのは具体的にはどのような状態を指しているのか、改めてお伺いしてもよろしいですか。例えば、戸籍上だけ夫婦になれば良いのか……、俺たち個別の意思は、どのぐらいまでなら尊重されるのか……」

うろたえるしかできない私と違い、彼は神託の抜け道を見つけようとしているみたいだった。そんなアラタに研究所の職員は厳しい現実を突きつける。

「お二人の婚姻は、あくまでも現代の社会に適応させた手段にすぎません。神はあなたたちに『仲睦まじく、生涯常に共にあること』を望んでおられます。無論、戸籍の上でのみ夫婦となり、別々に生活を送るなどもってのほかです」

「……では、施設内の生活において、夫婦として子供を作る行為も、容認されると?」

どこか試すような口調のアラタに、職員は至極真面目に強く頷く。

「もちろんです。むしろ我々としては関係を深める手段として、性行為を推奨しています」

当然とばかりに言い放たれた言葉に顔がカッと熱くなる。
その後もアラタと職員の間でやり取りが繰り返されていたけれど、どうあっても私たちが夫婦になるという事実が取り消されることはなかった。



    *



二人きりで話がしたいというアラタの頼みを職員が聞き入れ、私たちは居住施設へと案内された。
それは国際神託研究所の広大な敷地内の一角にある、平屋の小さな住宅だった。周囲には直線の道に沿って、同じ形の建物が等間隔にぽつぽつと並んでいる。その中のひとつが、これから私たちがしばらく共に暮らす家となる。

家の中はこじんまりとしながらも清潔に整えられていた。八畳ほどのリビングと、カウンターキッチン。足を伸ばせる広々としたバスタブ付きの浴室に、トイレは別。そして当然のように寝室はひとつだけ——。

あとは二人でごゆっくりと、ここへ案内してくれた研究所の職員は早々に立ち去ってしまった。気まずい空気から逃れようとリビングの窓から外を見る。意外にも見張りの人は見当たらず、屋外には無人の風景が広がっていた。

「……とりあえず、座ろうか」

「う……うん」

アラタに促されるようにして、私たちはダイニングテーブルに向かいあって腰掛けた。

「久しぶり……。俺のこと、覚えていてくれたら嬉しいけど……」

「覚えてるよ。……忘れるわけがない……けど、まさかこんなことになるなんて……」

鼻筋の通った彫りが深い顔立ちは、彼のお爺さんの血が影響している。子供の頃の彼は女の子みたいに可愛くて、よく一緒に遊んでいた。
小学校も毎日二人で登校した、ひとつ年上の、近所のお兄ちゃん。

「……アラタくん……その、ごめん……」

神託があったとはいえ、世界的モデルにまで上り詰めた彼のお嫁さんが、平凡な私だなんて。神様はなんて理不尽なんだろう。
怒っていい、落胆していいはずのアラタは小さく笑んで首を横に振った。

「ミサちゃんが謝ることなんてひとつもないよ。そっか、俺のこと忘れないでくれたんだ」

安堵してそうに呟いた彼が、すっと真顔になる。

「確認しておきたいんだけど、ミサちゃんには今、付き合っている人とかいるの?」

「……ううん」

「その……、中学の時の、彼は?」

アラタの示す男性はすぐにわかった。

「彼とは付き合ってもないよ。高校も違うところだったし、関係自体が自然消滅しちゃってる」

中学生で成長期を迎え、アラタはますます格好良くなった。学校の枠を超えて女子たちからの人気は計り知れず、彼と仲の良かった私は先輩たちから手酷いイジメを受けた。アラタが私を庇えば、彼女たちの嫉妬心に火に油を注ぐことになって事態は悪化の一途を辿る。

周りがみんな敵だらけのあの頃、アラタの他に同級生の男子が唯一私の味方だった。そういった経緯から、同級生の男子と一時期距離が近くなったのは事実だ。
だけど告白はしてないし、彼からもされてない。互いに付き合っているという認識があったのかさえ、結局確認しないままに男子との関係は終わった。

アラタが中学卒業と同時に渡欧して、物理的にも私たちにとって遠い存在になってしまった影響も大きい。
私へのイジメは次第に沈静化して、それと比例するように例の男子が「自分の恋人はあの義守アラタの幼馴染だ」と自慢する姿を見聞きする機会が多くなる。彼の名声に利用されることに嫌気がさして距離を置くようになり、私たちも中学を卒業して——その男子とはそれっきりだ。

大学を卒業して、久しぶりに実家に帰省した際、風の噂で今でも彼は変わらず「自分の恋人はあの世界的モデルの幼馴染だ」と吹聴していると聞いたことはあるけど、もはや私とは関係ない話だ。上京を機にスマホの連絡先も変えてしまったから、彼と連絡のしようがない。

そのことをかいつまんでアラタに話すと、脱力して盛大なため息を吐かれてしまった。

「……よかった。この前久しぶりに地元に帰ったら、すごく嫌な話を聞いたから……うん、全部嘘で、本当によかった……」

机に肘を付いて、俯き気味に額を両手の甲で支えてぶつぶつと独り言を漏らしていたアラタだが、やがて決心したように姿勢を正し、真っ直ぐに私を見つめた。

「こんな言い方して申し訳ないけど、俺は、選ばれた相手がミサちゃんで良かったって、思ってしまってる。……あの時、ミサちゃんのこと助けられなかった、情けない俺で不安かもしれないけど、できることなら、夫婦として仲良くやっていきたい」

「あれは……アラタくんのせいじゃないよ」

「今度は、これからは俺が守るから。誰にもミサちゃんを傷つけさせない」

「神様のお墨付きがあるものね」

私がそう言うと、アラタはキョトンと瞬きを繰り返してクッと吹き出した。

「そうだね。文句があるなら神様に言えって、堂々と言える」

二人でくすくすと笑いあう。その空気の懐かしさに涙が出そうになるのを必死で堪えた。

ずっとずっと、幼いころから私はアラタが好きだった。それはおそらく、アラタも同じ……。だからアラタが海外へ行くと知った時、これでもうイジメはなくなると安堵したのと同時に、とてつもない寂しさと後悔に襲われた。

あの時から、私の恋心は胸の内に秘めたまま。大学に入って何人かの男性とお付き合いしたものの、結局は誰とも長く続かなかった。

私なんかがアラタを好きになるなんておこがましいと、何度も諦めようとしたけれど……。神様が望むなら、この想いを我慢しなくてもいいよね。

アラタがそっと手を差し出す。

「その……よろしくお願いします」

その手と握手して、私は畏まって深々と頭を下げた。

「こちらこそ。不束者ですが……アラタくんのために頑張ります」

「俺だって、絶対ミサちゃんを幸せにする。引き合わせてくれた神様に感謝できるように、頑張るから」

大きくて温かい手に強く握り返されて、耳まで熱くなる。赤面してたじたじになる私を、昔のまんまだとアラタは楽しそうに笑った。

こうして私たちの、強○だけど満更でもない夫婦生活がスタートした。



    *



二人の暮らしに慣れるのは早かった。
アラタはとても優しい。私との共同生活においてあらゆることに気を遣ってくれる。
日中はアラタと映画を見たり、料理をしたり、施設内の緑地公園を散歩したりと、本来は親睦を深める期間を私たちは最初から和気藹々に過ごした。成人しているいい大人が仕事もせず自堕落な日々を過ごしているのに多少の罪悪感はあったけど、それもこれも神様が決めたことなら仕方がない。

そんなアラタとの生活での唯一の困り事は、夜の営みについてだった。
夫婦が別々の部屋で寝るのは現段階では推奨されず、まずはそれなりの関係を築いてくださいと。研究所の職員に私たちは初日に釘を刺され、同じ寝室で眠ることを余儀なくされた。

ストレートに言うのはためらわれても、私にだって性欲はある。自慰の経験だって当然あるし、好きな人が隣で寝ていて、彼を気にしないなんてまず不可能だ。

しかしパートナーのアラタはそんな欲求は一切表に出さず、紳士然とした態度で毎晩同じベッドで平然と眠りにつく。私に魅力がないのはわかりきっているけれど、ここまで意識されていないのは、ちょっとショックだった。


悶々としていた私に、転機は突然訪れた。
早朝にふと、目覚ましが鳴る前に目を覚ました。ゆっくりと起き上がり隣を見る。眠っているアラタが居ることがとても新鮮で、寝ぼけた頭はすぐに覚醒した。
アラタの朝はいつも早い。私が起きるまでにとっくに起床して、ベッドからいなくなっているのが常だった。そんな彼が自分の隣で無防備な寝顔を晒していることに、愛おしさが込み上げる。

やっぱり私は、神託なんかに関係なく、アラタが好きだ。

空調の効いた寝室ではタオルケットも暑すぎたようで、就寝時は体を覆っていたはずの薄い布は今や彼の横でしわくちゃになっている。お腹を冷やすのはいけないと思い、身を乗り出して彼の胴部分にだけ布をかけようとしたその時——あることに気づいてしまった。
私と同じ灰色のスウェット姿のアラタの股間に、異様な膨らみがあったのだ。

朝立ち、という単語が頭の中をぐるぐると回り、固まってしまった私の隣で、アラタがモゾモゾと身じろいだ。

「……あ、ミサちゃん……おはよう……」

うっすらと目を開き、寝ぼけながらも呟いたアラタは軽く首を持ち上げる。そして私の視線の先——自らの脚の付け根を注視して慌てて身を起こした。

「ごっ……、ごめん! ちょっとシャワー浴びてくるね!」

「あっ、待って!」

ベッドから立ちあがろうとするアラタの腕に咄嗟にしがみつく。恥ずかしくても、ここで私が引いちゃいけない。

「その……、夫婦なんだし……私が、お世話したら……だめ?」

恐る恐るアラタを窺う。すると今度はアラタが顔を真っ赤にしてカチコチに固まってしまった。
ベッドの縁に座った彼が動かないのをいいことに、覚悟を決めて床に移動してアラタの脚の間に陣取った。怖気付くわけにはいかない。ここで私が積極的にならないと、この先のアラタとの関係が気まずくなってしまう。

「……無理しなくていいよ」

「無理じゃない。私がやりたいの」

床に膝をつき、スウェット越しに股間の膨らみに触れる。そっとそれを撫でても、アラタから拒絶の言葉は上がらなかった。

「腰……少しだけ上げられる?」

遠慮がちに持ち上がった腰から、スウェットと下着をずり下ろす。露わになったそそり立つペニスを目の当たりにして、私の口の中でじゅわりと唾液が溢れた。
彼が今、性的に興奮しているという事実に心臓がドキドキと高鳴る。

もっと……もっと私が気持ち良くしてあげたい。

衝動のままに手を伸ばし、熱い肉棒をそっと両手で握った。

「……んっ、ミサちゃ……っ」

亀頭を包み込むようにして手のひらでこね回し、先端を親指でくすぐる。頭上から聞こえた余裕のない声に気分が高揚し、夢中になって奉仕を続けた。
運命で定められた夫婦は、当然浮気や愛人を持つことも許されない。彼の性欲を解消できるのは、この先一生私だけなのだ。

経験不足とか、そんなことを言い訳にしている場合じゃない。少しでも、彼を満足させられるように私が努力しないと。
ニチャニチャと先走りをまとった手で竿を扱く。アラタの呼吸が乱れる。息を詰める彼の余裕のない気配に、私の下腹部きゅんと疼いた。

「……っ、ミサちゃん、放して……っ、もっ、出す、から——っ」

切羽詰まった声の最中、アラタの体にぎゅっと力が入るのがわかった。彼が言い終えるよりも前に、ペニスの先端から勢いよく精液が吐き出される。避けるなんて選択肢は最初からなく、顔面にそれを受けた私にアラタのほうがうろたえた。

「ごっ、ごめん!」

「……大丈夫。気にしないで」

においとかも、想像していたより全然平気だった。頬に付着した精液を指で掬い、なんとなく舐めてみる。これまでフェラチオの経験はなかったけれど、アラタのだったらできそうな気がした。

はぁ……と熱い吐息を漏らし、ペニスにキスしようとした私を、アラタが全力で止めた。

「駄目! お願いだから、最初のキスは俺としようよ!」

抱き上げられてベッドに押し倒される。仰向けになったところで顔をタオルケットで拭われた。

「ほんっとに、ごめん」

「……嫌だった?」

「嫌じゃない! ……〜〜〜〜っ、あぁ、もう……、俺が必死で耐えてるってのに、どうして煽ってくるかなぁ」

私に乗り掛かったアラタがぎゅっと抱き締めてくる。彼の柔らかい栗色の髪の毛を撫でると、体に回された腕の力が強くなった。

「人の気も知らないで……。俺、一緒に暮らし始めてからすっと我慢してんだよ……」

「我慢なんて……私たち、夫婦になるんだからそんな……」

「怖がらせたくなかったんだ。でも……ミサちゃんにそんなことされたら、もう耐えられそうにない」

いつになく弱気な彼に愛おしさが込み上げる。アラタの頬に両手を添えて、コツンと額を突き合わせた。

「私は、アラタくんと、エッチなことが……したいよ?」

だから優しくなんてしなくていい。気を遣わなくていいの。
生涯かけてあなたを束縛してしまうこの罪が、私の体で少しでも償えるなら……いくらでも好きにしてくれて構わないから。

「……っ、ミサちゃんっ」

唇が、触れる。キス……されてる。
数えるほどしかない経験値で、それでも必死に背伸びをしてアラタを受け入れた。舌を出して、ぐにぐにと押し付けあう。口を開き、口内へとアラタの舌を招き入れた。

いつになく積極的になれている自分に内心驚きはあるも、悪い気はしない。相手がアラタだからだろうか。

「……ふっ……んんっ……」

互いの舌を絡め合い、呼吸も忘れてキスに夢中になった。涙で滲んだ視界。眼前の美しい美貌がすっと目を細めるのを見た。

「んっ、んぅ……っ」

口腔でアラタが舌の動きを急に変えた。舌先で口蓋をくすぐられ、縦横無尽に歯列をなぞられる。応え方がわからず逃げ腰になっても、アラタは私を解放してくれなかった。

息苦しさに頭がくらくらする。アラタの手が火照って赤くなった私の頬を優しく撫でた。

「はぁ……かわいい。……一生懸命なとことか、ホントに好き……」

至近距離でうっとりと微笑まれて目が泳いだ。きっと彼には、私に情事をリードできるような技術がないのはとっくにバレている。

「あっ……アラタくん……」

「うん? 服、脱ごうか。さすがにここまでしておいてこの先はお預けってのはナシだよ?」

とてもいい笑顔に反射的にこくりと頷く。
緊張で心臓が鼓動を早める。今更ながら、とてつもない不安に襲われる。もとより彼を満足させられる自信など私にはなかった。それでも……アラタをがっかりさせるのだけは嫌だ。

全部神様のせいだと言い訳して、アラタを独占できる仄暗い愉悦に酔いしれた、こんな浅ましい人間が彼の伴侶でいいのかと、自問しては自分自身に幻滅する。
様々な感情がせめぎあうも、アラタは次々に私の着るものを脱がせていった。抵抗なんて、するはずがない。

やがてアラタも自らの衣服に手をかける。彼の裸——鍛えられて引き締まった肉体に、思わず見惚れてしまった。モデルという職業柄、体型づくりには余念がないのだろう。

「……すごい」

「そう? ミサちゃんが褒めてくれるなら、努力して鍛えた甲斐があったよ」

ベッドの上に座った状態でアラタに抱き寄せられる。次に、私はどうすればいいのか。何かをしないとって焦るばかりで、彼を喜ばせる方法が思いつかない。そんな自分が情けなくて、彼の片方の腕に縋るように抱きついた。

「ミサちゃん……足、開ける? ……そう、そのまま……ね?」

耳に吹き込むような囁きに素直に従う。
彼の手が脚の付け根へと下ろされ、ゆっくりと秘裂を撫でられる。クチュ……と、微かな水音がして、今更ながらに途轍もない羞恥心を自覚した。

今、私の恥ずかしいところを……アラタくんが触っている。

優しい手つきに下腹部で燻り出した熱が頭まで上昇する。暑さで溶けて消えてしまいそうだ。
額に浮いた汗をアラタがぺろりと舐めとった。

「濡れてる。俺で興奮してくれてるのか?」

「やっ……言わないで……っ、ひんっ、んあっ」

まるで否定を打ち消すように指でくにくにとクリトリスをこねられた。性感帯への直接的な刺激に腰が跳ねる。膣口からじわりと愛液が溢れるのを感じて、そこへの愛撫を私は待ち侘びていたのだと思い知らされた。

「ああ……もう、夢みたいだ。君が俺の腕の中にいるなんて……」

「ひっいぁ、あっ……なん……て? ああっ、指、止めてぇっ」

甘い刺激につんと勃起したクリトリスを指で摘んでしごかれては、アラタの言葉に集中できない。

「なんでもない。こうして君が俺のモノになるなら、神様のお告げも悪いものじゃないって思っただけだ」

「んっ、あ……ぁっ、アラタくん、の……モノ?」

「そうでしょ? 当然俺はミサちゃんのモノだよ。神様が決めたことは、絶対に誰にも引き離せない。——運命は受け入れるしかないんだ。だから、心移りなんて絶対に許さないよ。俺たちは、もう……」

アラタの声は心なしか震えていた。何がそんなに怖いのか、顔を覗き見ると力なく微笑み返される。一呼吸もしない間に、彼の顔から怯えがなくなった。ぎらついた瞳に獰猛さを垣間見る。

「ああ、でも……、相手がミサちゃんなら、何も心配はいらないか。神様もその辺は気を遣ってくれたのかな?」

「あっ……ぅあ、んんぅ……っ、アラタ、くん?」

彼の言っていることの意味がよくわからない。説明を求めようとしたのにへらりとはぐらかされ、彼は指でクリトリスをぐりりと強く押した。

「ぃあっ! ああっ」

「大丈夫だよ。ミサちゃんは俺が繋ぎ止めるから、なんの心配もいらない。そのまま感じて。……ナカをいじるね」

逞しい体に背中を預ける。後ろから伸びてきたアラタの腕が私の膝を左右に割り開いた。くぱりと曝け出た秘所は愛液でぬるぬるだった。
クチュ、クチッ……、クチャ……。
アラタの指が膣口の上を行き来するたびに卑猥な水音が聞こえてくる。

「ゃっ……あっ」

恥ずかしさに耐えられず逃げ腰になった私が行動に移すより先に、長い指が膣内へと侵入を果たした。くにくにとGスポットを揉まれ、外側からはもう片方の手でクリトリスをいじられる。強烈な快感に足がベッドのシーツを蹴り上げて跳ねた。
時折膣内の指が奥の壁をグリリと押した。そしてまたすぐに腹側の感じる箇所に戻ってくる。何度かそれが続くと、膣奥に指への到達を……さらに大きな刺激を期待して、じんじんと子宮が疼きだす。私はこんなにも淫らな体だったのかと、驚きは長く続かず次々と与えられる快楽に思考が簡単に押し流されてしまう。

「気持ち良い?」

「う、んっ……あっ、うん……、きもち……いあっ、気持ちイイっ……ああぁ」

どうしてこんなに感じてしまうのだろう。彼が初恋の相手だから? それとも、神様の決めた伴侶だから——?

わからない。というよりも、浮かんだ疑問はすぐに消えて、この快楽の前では理由なんてどうでも良いと思えた。
もっと感じたい。彼とひとつになりたいと、際限のない欲望が湧き上がるのを抑えられない。

「あ……おく、奥がいいの……っ」

深く考える前に欲求が口から言葉がこぼれた。

「ん? こっち……?」

アラタは私の望み通り、二本の指で膣奥をコリコリと優しく引っ掻く。ぶわりと、胎の底から込み上げた快楽に目を見開いて、身も世もなく悶えた。

「……えっ、ああぁ! あっ、うっ……ぁっ、どぅ……してっ」

こんな快感、これまで経験したことがない。気持ちがいい。もっと味わいたいと思うのと同時に、これまでに経験ことのない感覚に戸惑う。
私はこんなに、敏感な体じゃないはずなのに。

「やっ、まって……、ああっ、なにっ……こ、おぁ……あうぅ、んんぅっ!」

何かがおかしい。それをアラタに訴えようとするも上手くいかない。まるで私の疑念ごと快楽で沈めてしまおうとするように、彼はポルチオを責める指を止めなかった。ぐぬりと強く指の腹で押したところを、慰めるようにやわやわと撫でられる。弱まった刺激に私が焦れて腰を揺らしたのを見計らい、アラタは指で小刻みに膣奥を揺さぶった。

「イっ、ああっ! あっ、やあぁんっ、……い、ぐぅ……あぁっ!」

「イキそう? ……いいよ、俺の顔見てイってごらん」

クリトリスを弄っていた手で彼は私の顎をクイと持ち上げる。強○的に上を向かされ、彼の顔を間近で見た。
今、私を気持ちよくしているのは——アラタなのだと。脳が改めて意識する。

「はぁうっ!」

目が合っただけで子宮の疼きが強くなった。膣壁がぎゅうっと収縮して彼の指を締め付ける。

「あっああっ、あんっ、う……ぁ、アラタくんっ、あぁっ」

「あぁ、ホントに可愛い……」

彼の恍惚とした笑顔に、幸せが胸いっぱいに広がっていく。悦びに笑おうとした私の目から、一筋の涙が伝う。同時にどろり……と、膣から流れる愛液の量が増した。

グヂッ、グジュ、グジュッ、ググゥ——ッ。
ストロークの短い抽送でアラタの指が膣道を解す。最奥の子宮口に到達するたびに指は丹念にポルチオを抉った。
容赦のない責めに快楽の高みへと押し上げられる。じわじわと足元から侵食していく絶頂の気配に、身を委ねることしかできない。

「ぁお、お……ぅあっ! い、く……っ、いっちゃう、からっ、……っ、んぅ————っ‼︎」

全身に力がこもり、アラタに喘ぎ顔を晒したまま私は達した。

「うん。上手に中イキできたね」

よしよしとアラタに頭を撫でられると、嬉しさで胸がいっぱいになる。彼が褒めてくれるなら、いつの間にか淫らになった体も悪くないと思えるから不思議だ。

絶頂の余韻に浸る私を、アラタがそっとベッドに横たえた。秘部に押し付けられた熱に、ぼんやりとしていた頭が急に覚醒する。やっと、ようやく、ついに……。

「……挿れるよ」

「うん、……うんっ」

緊張していても不安はない。アラタとひとつになれる喜びだけが思考を埋め尽くし、私は自ら大きく脚を開く。

神様の意思という、抗えない「何か」が私をそうさせていたとしても、そんなことはどうでもよかった。アラタとこうして結ばれることができるのだから、むしろ私は神託に感謝しなければいけない。

「好き……、アラタくんが、好きなのっ」

「……俺も、ミサちゃんのこと愛してる。ミサちゃん以外……考えられない」

ペニスの先端が愛液でぬかるんだ膣口に当たる。押し付けられた熱い膨らみがめり込み、ゆっくりと挿入が開始された。

「……ん、ぁ……っ、……うぅ」

猥路を彼のペニスが押し広げて進んでいく。僅かながらに引き攣る感覚はあったけれど、肉棒の到達を待ち侘びる胎の奥の疼きに比べたら、膣壁に感じる痛みなど些細なものだった。膣道の狭さにアラタが息を詰める。

「……っ、ミサちゃん大丈夫? 苦しくない?」

余裕のない表情で、それでも彼は私を労ってくれた。

「平気よ……。大丈夫、だから……っ、ぅんっ……」

早く、もっと奥まで彼で埋め尽くして……支配してほしい。
腰が揺れて、膣道がうねり、私は夢中で彼のペニスをしゃぶる。ペニスが奥に届くほど思考が悦楽に蕩け、アラタがどうしようもなく好きなのだと思い知る。

離れたくない……離したくない。気がつけばアラタの腰に足を絡めていた。

「これ……やばっ…………っ」

ズンッ——と、行き止まりに到達したペニスが子宮を押し上げた。

「いっ……ぁっ——っ!」

深くて重い衝撃に息を止めて、背中を反らす。全てが満たされたことへの悦びから、たまらずアラタに手を伸ばした。二人で抱き締めあい、口付けを交わす。その間も私の腰はへこへこと動き、ペニスの先端を自らの子宮口へと押し付けた。
必死になって快感を追いかける私に、アラタが目を細める。そしてぐにぐにぃ……と彼のほうからも腰を密着させてきた。

「んあっ、……あっ、ああぁ!」

深く重い快楽が膣奥から脳天へと駆け抜ける。脳内でパチパチと火花が散って、キスが解けた唇から余裕のない喘ぎがこぼれた。

「……あぁ、うん、気持ち良いね」

「なっ……あぁっ! なん、で……ぃっ、あっあっ……これっ」

「おかしい? ……なにが?」

「おっ……おく……っ、ぅ、うそ……っ、わ……私、こんなに……ぃっ、いい、の……っ」

「感じたことない……ってことかな? ……俺もだよ。ミサちゃんのナカ、びっくりするぐらい気持ちいい。ぎゅっと包み込んでくれて……気を抜けばすぐにイキそうになる」

私の耳元でアラタが囁く。彼の低い声と、トチュトチュと子宮口を突き上げるペニスの快感に、たまらず身をしならせて悶えた。
自分がポルチオで感じるなんて知らなかった。これまで経験したことのない深い快楽に早くも絶頂の波が押し寄せる。膣の肉壁がペニスを締め付け、子宮のさらなる疼きを自覚した。
知ってしまうと、熱い飛沫が欲しくて欲しくてたまらなくなった。

「いっ、ぐぅ……ぅあぁっ! あぉっおく……んっ、アラタくん……もっと……っ」

「——っ、動くよ……っ」

ズルズルとペニスが引き抜かれ、膣口に亀頭が引っかかったところで勢いよく膣奥へと戻された。

————ゴチュンっ!

「あぅっ、んん————っ!」

肉壁を叩く刺激に体が大きく跳ねた。ペニスはそこに留まらず、アラタはすぐに腰を引いて、また子宮口を穿つ。

「きゃっ……あっ! あんっ、あっ……ああぁっ!」

ピストンの最中、ペニスが膣道の感じる箇所を亀頭でぞりぞりとなぞる。そこにポルチオの快感が合わさり、この身は呆気なく絶頂に達した。

「ひっ……いあっ! あっ、あぁうっ! んっ……もぅっ、やぁあっ!」

ズチュッ、ズチュッ、ズチュッ————!
余韻に浸る間もなく膣を責められる。絶頂感がいつまでも続き、体が痙攣を繰り返した。次から次へと快楽の限界が上書きされていく。果てが見えないことに恐怖して、どうにかアラタにしがみついた。

「くっ——……っ」

深く繋がった状態で、膣奥に熱が爆ぜた。びゅーびゅーと子宮に精液が叩きつけられる。
数秒の間、呼吸が止まった。それと同時に強烈な浮遊感を味わう。
次の瞬間、思い出したかのようにビクンと大きく体が跳ねた。

「ああっ! んぁっ……あ……はぅ、ん……っ。う、ん……アラタ、くん……」

「ミサちゃん、……ミサちゃん」

覆い被さるようにしてアラタが私を腕の中に閉じ込める。名前を呼ばれただけで気分が高揚して、自然と笑みがこぼれた。ぼやけた視界にアラタの笑顔が映る。

「絶対に、幸せにするから……ずっとこうしていようね。俺から離れるなんて、許さないから」

「うん……ずっと、アラタくんと一緒にいる」

彼が世界的なトップモデルで、庶民の私では釣り合わないとか。快楽に呑まれた今となってはそんなことは私たちを隔てる障害とも思えない。

二人でいられたらそれでよかった。……二人でいられるなら、たとえこれが自分で勝ち取った結果じゃない——神様が定めた運命であっても、どうでも良かった。




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