市街地 2024/04/03 07:41

【小説サンプル】神託婚〜神様のお告げで幼馴染のお嫁さんになったら溺愛された話〜

あらすじ

神様が存在する世界で幼馴染と再会したヒロインが、神託によって夫婦になり、互いの初恋を叶える話。

全体を通したプレイ内容

甘々・いちゃラブ・愛撫・中出し・正常位・立ちバック・寝バック・潮吹き・連続絶頂 etc.

※ヒロイン視点の一人称小説です。



『神託婚〜神様のお告げで幼馴染のお嫁さんになったら溺愛された話〜』


お使いを終えて仕事場のカフェへ戻った。書店で買った雑誌から付録を抜いて、店の棚の古い雑誌と入れ替えていく。
作業を終えて棚全体を見渡した時、モード雑誌に視線が吸い寄せられた。書店で平積みにされていた時から気になっていたその雑誌には、海外で活躍中の若手の日本人モデルが表紙一面に大きく取り上げられていた。

もうすっかり遠い存在になってしまった彼の勇姿に思わずため息がこぼれる。なんとなく、私は彼の特集が組まれたその雑誌を目立たない棚の隅へと移動させた。


昼時を過ぎた店内は客足が落ち着き、穏やかな時間が流れていた。
ひと組のお客様が席を立ち、会計を済ませてテーブルを片付ける。慣れた動作を手早くこなしていたら、来客を知らせるベルの音が聞こえた。

「いらっしゃいませ」

片付けを中断して入り口へと急ぐ。そこにいたのはスーツ姿の男性と女性が、一人ずつ。

「何名様でお越しでしょうか?」

二人ですと言われることを想像しながらもお決まりのセリフを告げた私に、男性が手を胸の位置まで持ち上げて待ったをかける。

「唯里ミサキさんですね」

「……はい。そうですが……」

確信のこもった口調に警戒しながらも頷いた。確かに、私は唯里ミサキという名前だ。
男性は背広の内ポケットから畳まれた用紙を取り出し、訝しがる私へと広げて見せた。

「国際神託研究所・日本支部の渡里と申します。唯里さん、あなたに神託が下りましたので、研究所までご同行願います」

漢字ばかりの難解な文章と、仰々しい四角いハンコが押された用紙を掲げて彼はそう言った。

「車はこちらで用意しておりますので、すぐに研究所にお連れします。これはどんな業務よりも優先すべき国民の義務ですから、ご了承いただくしかありません」

決定事項だと言わんばかりに彼の隣に立つ女性は戸惑う私を車へと押し込んだ。



    *



この世界には神様が存在する。海や陸地といったこの世のあらゆる物質、そして命を造った大いなるその存在には、確かな意思があるらしい。
らしい……というのは、創造主の思考はとても難解で、理解できる人はごく僅かにしかおらず、一般人にとってその存在は漠然としたものだからだ。私も、神様について実のところ詳しくは知らない。

古代より人類が文明を築いて以来ずっと、神様の心を正確に汲み取る研究がされてきた。現代においては国連が運営する神託についての研究機関が各国に設置されている。

神様の意思は神託として地上にもたらされる。それは世界を維持するために守るべき絶対のルールであり、たとえ権力者であっても逆らうことは許されない。私欲で神託を利用しようものならば、発覚次第死罪になる国際基準の法律がある。

しかし不思議なことに、人類史において今日に至るまで神意に違反した者は一人も出ていない。人間が神意に背くと、神様の力によって最初から「いなかった」ことにされる、なんて噂も巷に出回っているけれど、真偽の程は定かでなかった。

神様なんて、庶民の私からしたらそれこそ雲の上の人だ。心の中で漠然と神様を信じてはいても、決して身近な存在ではない。


世界的にも最新鋭の設備が整えられた、国際神託研究所の日本支部。応接室に通された私は、言われるままにソファへと腰掛けた。
壁も床も真っ白な部屋には中庭が見える窓があり、隅には観葉植物が置かれている。落ち着きなくキョロキョロと部屋を観察していると、入り口の扉が開いた。

「えっ……」

研究者らしい白衣姿の壮年男性に連れられて入室した人物に、はっと息を飲み込んだ。スラリとした長身の、人間離れした美貌を持つ男性。まるでファッション誌から飛び出してきたような——というのが比喩でもなんでもない。まさに私が先ほど雑誌の表紙で眺めていた彼が、そこにいた。

パリコレをはじめとした世界のコレクションで活躍する、メンズモデル——義守アラタ。

幼い頃の面影をほんの少しだけ残した彼は、私に気づくと驚きに目を見開いた。



    *



神託とは、人間のちっぽけな都合で決して覆してはならない、世界における絶対のルールである。
なぜ神は私たち人間に神託を下すのか。その意味を研究する学者は数多くいるが、確実なことは今もわかっていない。

——そんな神託が、私とアラタに下った。

およそ一年前に神託研究所の職員が受け取った神の意思を分析・言語化して、解釈について何度も会議を重ねた結果、唯里ミサキと義守アラタが夫婦になることを、神が望んでいるという結論が導き出されたそうだ。

なんとも荒唐無稽。意図のわからない神託に当事者として困惑を隠しきれない。

なぜ自分たちなのだと問うた私に、研究所の職員は「神託とはそういうものです。神の心は、人間には未だ遠く、理解するには及びません」と淡々と告げた。これは世界的な決定事項であり、反故することは許されない。

唐突に突きつけられた無茶な要求に、戸惑いながらもチラリと彼を盗み見た。私の隣に座るアラタは一見すると落ち着いた様子で、正面のソファに腰掛けた研究所職員の説明に耳を傾けていた。

アラタはこの決定をどう思っているのだろう……。

彼からしてみれば、私なんかを妻にしろといきなり言われたのだ。世界に通用するモデルと、なんの取り柄もない私を——こんなの、申し訳なさに俯くしかない。

惨めさに耐えかねて小さくなる私を置いて、研究所の職員の話はどんどん進んでいく。これから私たちはひとまず三ヶ月、この研究所内にある住居施設で夫婦として暮らさなければならない。先に入っている仕事の予定などは神託を覆す理由にならず、親の危篤などよほど重大なことが起こらない限り、施設から出ることは出来ないとのこと。

私たちの衣食住は保証され、夫婦の関係を築くためにあらゆるサービスが受けられるらしい。サポートは充実している。……だけど、いきなり今日から彼と同棲しろと命じられても「はいわかりました」とすんなり頷けるはずがない。
アラタと私は赤の他人というわけではない。しかし結婚となるとそんな事実は慰めにならない。

「き……急にそんなこと言われましても……」

「困惑されるのはもっともですが、ご理解いただく他ありません。お二人の戸籍は、すでに政府によって確保されています。どちらの籍に入られるかは自由に決めていただいて構いませんが、お二人が婚姻に至らずこの施設から出ることは許可できません」

「そんな勝手な……っ」

絶句する私にアラタが視線をくれた。彼は一瞬、寂しそうな表情になったけどすぐに真顔に戻り、正面の職員をまっすぐ見据える。

「夫婦、というのは具体的にはどのような状態を指しているのか、改めてお伺いしてもよろしいですか。例えば、戸籍上だけ夫婦になれば良いのか……、俺たち個別の意思は、どのぐらいまでなら尊重されるのか……」

うろたえるしかできない私と違い、彼は神託の抜け道を見つけようとしているみたいだった。そんなアラタに研究所の職員は厳しい現実を突きつける。

「お二人の婚姻は、あくまでも現代の社会に適応させた手段にすぎません。神はあなたたちに『仲睦まじく、生涯常に共にあること』を望んでおられます。無論、戸籍の上でのみ夫婦となり、別々に生活を送るなどもってのほかです」

「……では、施設内の生活において、夫婦として子供を作る行為も、容認されると?」

どこか試すような口調のアラタに、職員は至極真面目に強く頷く。

「もちろんです。むしろ我々としては関係を深める手段として、性行為を推奨しています」

当然とばかりに言い放たれた言葉に顔がカッと熱くなる。
その後もアラタと職員の間でやり取りが繰り返されていたけれど、どうあっても私たちが夫婦になるという事実が取り消されることはなかった。



    *



二人きりで話がしたいというアラタの頼みを職員が聞き入れ、私たちは居住施設へと案内された。
それは国際神託研究所の広大な敷地内の一角にある、平屋の小さな住宅だった。周囲には直線の道に沿って、同じ形の建物が等間隔にぽつぽつと並んでいる。その中のひとつが、これから私たちがしばらく共に暮らす家となる。

家の中はこじんまりとしながらも清潔に整えられていた。八畳ほどのリビングと、カウンターキッチン。足を伸ばせる広々としたバスタブ付きの浴室に、トイレは別。そして当然のように寝室はひとつだけ——。

あとは二人でごゆっくりと、ここへ案内してくれた研究所の職員は早々に立ち去ってしまった。気まずい空気から逃れようとリビングの窓から外を見る。意外にも見張りの人は見当たらず、屋外には無人の風景が広がっていた。

「……とりあえず、座ろうか」

「う……うん」

アラタに促されるようにして、私たちはダイニングテーブルに向かいあって腰掛けた。

「久しぶり……。俺のこと、覚えていてくれたら嬉しいけど……」

「覚えてるよ。……忘れるわけがない……けど、まさかこんなことになるなんて……」

鼻筋の通った彫りが深い顔立ちは、彼のお爺さんの血が影響している。子供の頃の彼は女の子みたいに可愛くて、よく一緒に遊んでいた。
小学校も毎日二人で登校した、ひとつ年上の、近所のお兄ちゃん。

「……アラタくん……その、ごめん……」

神託があったとはいえ、世界的モデルにまで上り詰めた彼のお嫁さんが、平凡な私だなんて。神様はなんて理不尽なんだろう。
怒っていい、落胆していいはずのアラタは小さく笑んで首を横に振った。

「ミサちゃんが謝ることなんてひとつもないよ。そっか、俺のこと忘れないでくれたんだ」

安堵してそうに呟いた彼が、すっと真顔になる。

「確認しておきたいんだけど、ミサちゃんには今、付き合っている人とかいるの?」

「……ううん」

「その……、中学の時の、彼は?」

アラタの示す男性はすぐにわかった。

「彼とは付き合ってもないよ。高校も違うところだったし、関係自体が自然消滅しちゃってる」

中学生で成長期を迎え、アラタはますます格好良くなった。学校の枠を超えて女子たちからの人気は計り知れず、彼と仲の良かった私は先輩たちから手酷いイジメを受けた。アラタが私を庇えば、彼女たちの嫉妬心に火に油を注ぐことになって事態は悪化の一途を辿る。

周りがみんな敵だらけのあの頃、アラタの他に同級生の男子が唯一私の味方だった。そういった経緯から、同級生の男子と一時期距離が近くなったのは事実だ。
だけど告白はしてないし、彼からもされてない。互いに付き合っているという認識があったのかさえ、結局確認しないままに男子との関係は終わった。

アラタが中学卒業と同時に渡欧して、物理的にも私たちにとって遠い存在になってしまった影響も大きい。
私へのイジメは次第に沈静化して、それと比例するように例の男子が「自分の恋人はあの義守アラタの幼馴染だ」と自慢する姿を見聞きする機会が多くなる。彼の名声に利用されることに嫌気がさして距離を置くようになり、私たちも中学を卒業して——その男子とはそれっきりだ。

大学を卒業して、久しぶりに実家に帰省した際、風の噂で今でも彼は変わらず「自分の恋人はあの世界的モデルの幼馴染だ」と吹聴していると聞いたことはあるけど、もはや私とは関係ない話だ。上京を機にスマホの連絡先も変えてしまったから、彼と連絡のしようがない。

そのことをかいつまんでアラタに話すと、脱力して盛大なため息を吐かれてしまった。

「……よかった。この前久しぶりに地元に帰ったら、すごく嫌な話を聞いたから……うん、全部嘘で、本当によかった……」

机に肘を付いて、俯き気味に額を両手の甲で支えてぶつぶつと独り言を漏らしていたアラタだが、やがて決心したように姿勢を正し、真っ直ぐに私を見つめた。

「こんな言い方して申し訳ないけど、俺は、選ばれた相手がミサちゃんで良かったって、思ってしまってる。……あの時、ミサちゃんのこと助けられなかった、情けない俺で不安かもしれないけど、できることなら、夫婦として仲良くやっていきたい」

「あれは……アラタくんのせいじゃないよ」

「今度は、これからは俺が守るから。誰にもミサちゃんを傷つけさせない」

「神様のお墨付きがあるものね」

私がそう言うと、アラタはキョトンと瞬きを繰り返してクッと吹き出した。

「そうだね。文句があるなら神様に言えって、堂々と言える」

二人でくすくすと笑いあう。その空気の懐かしさに涙が出そうになるのを必死で堪えた。

ずっとずっと、幼いころから私はアラタが好きだった。それはおそらく、アラタも同じ……。だからアラタが海外へ行くと知った時、これでもうイジメはなくなると安堵したのと同時に、とてつもない寂しさと後悔に襲われた。

あの時から、私の恋心は胸の内に秘めたまま。大学に入って何人かの男性とお付き合いしたものの、結局は誰とも長く続かなかった。

私なんかがアラタを好きになるなんておこがましいと、何度も諦めようとしたけれど……。神様が望むなら、この想いを我慢しなくてもいいよね。

アラタがそっと手を差し出す。

「その……よろしくお願いします」

その手と握手して、私は畏まって深々と頭を下げた。

「こちらこそ。不束者ですが……アラタくんのために頑張ります」

「俺だって、絶対ミサちゃんを幸せにする。引き合わせてくれた神様に感謝できるように、頑張るから」

大きくて温かい手に強く握り返されて、耳まで熱くなる。赤面してたじたじになる私を、昔のまんまだとアラタは楽しそうに笑った。

こうして私たちの、強○だけど満更でもない夫婦生活がスタートした。



    *



二人の暮らしに慣れるのは早かった。
アラタはとても優しい。私との共同生活においてあらゆることに気を遣ってくれる。
日中はアラタと映画を見たり、料理をしたり、施設内の緑地公園を散歩したりと、本来は親睦を深める期間を私たちは最初から和気藹々に過ごした。成人しているいい大人が仕事もせず自堕落な日々を過ごしているのに多少の罪悪感はあったけど、それもこれも神様が決めたことなら仕方がない。

そんなアラタとの生活での唯一の困り事は、夜の営みについてだった。
夫婦が別々の部屋で寝るのは現段階では推奨されず、まずはそれなりの関係を築いてくださいと。研究所の職員に私たちは初日に釘を刺され、同じ寝室で眠ることを余儀なくされた。

ストレートに言うのはためらわれても、私にだって性欲はある。自慰の経験だって当然あるし、好きな人が隣で寝ていて、彼を気にしないなんてまず不可能だ。

しかしパートナーのアラタはそんな欲求は一切表に出さず、紳士然とした態度で毎晩同じベッドで平然と眠りにつく。私に魅力がないのはわかりきっているけれど、ここまで意識されていないのは、ちょっとショックだった。


悶々としていた私に、転機は突然訪れた。
早朝にふと、目覚ましが鳴る前に目を覚ました。ゆっくりと起き上がり隣を見る。眠っているアラタが居ることがとても新鮮で、寝ぼけた頭はすぐに覚醒した。
アラタの朝はいつも早い。私が起きるまでにとっくに起床して、ベッドからいなくなっているのが常だった。そんな彼が自分の隣で無防備な寝顔を晒していることに、愛おしさが込み上げる。

やっぱり私は、神託なんかに関係なく、アラタが好きだ。

空調の効いた寝室ではタオルケットも暑すぎたようで、就寝時は体を覆っていたはずの薄い布は今や彼の横でしわくちゃになっている。お腹を冷やすのはいけないと思い、身を乗り出して彼の胴部分にだけ布をかけようとしたその時——あることに気づいてしまった。
私と同じ灰色のスウェット姿のアラタの股間に、異様な膨らみがあったのだ。

朝立ち、という単語が頭の中をぐるぐると回り、固まってしまった私の隣で、アラタがモゾモゾと身じろいだ。

「……あ、ミサちゃん……おはよう……」

うっすらと目を開き、寝ぼけながらも呟いたアラタは軽く首を持ち上げる。そして私の視線の先——自らの脚の付け根を注視して慌てて身を起こした。

「ごっ……、ごめん! ちょっとシャワー浴びてくるね!」

「あっ、待って!」

ベッドから立ちあがろうとするアラタの腕に咄嗟にしがみつく。恥ずかしくても、ここで私が引いちゃいけない。

「その……、夫婦なんだし……私が、お世話したら……だめ?」

恐る恐るアラタを窺う。すると今度はアラタが顔を真っ赤にしてカチコチに固まってしまった。
ベッドの縁に座った彼が動かないのをいいことに、覚悟を決めて床に移動してアラタの脚の間に陣取った。怖気付くわけにはいかない。ここで私が積極的にならないと、この先のアラタとの関係が気まずくなってしまう。

「……無理しなくていいよ」

「無理じゃない。私がやりたいの」

床に膝をつき、スウェット越しに股間の膨らみに触れる。そっとそれを撫でても、アラタから拒絶の言葉は上がらなかった。

「腰……少しだけ上げられる?」

遠慮がちに持ち上がった腰から、スウェットと下着をずり下ろす。露わになったそそり立つペニスを目の当たりにして、私の口の中でじゅわりと唾液が溢れた。
彼が今、性的に興奮しているという事実に心臓がドキドキと高鳴る。

もっと……もっと私が気持ち良くしてあげたい。

衝動のままに手を伸ばし、熱い肉棒をそっと両手で握った。

「……んっ、ミサちゃ……っ」

亀頭を包み込むようにして手のひらでこね回し、先端を親指でくすぐる。頭上から聞こえた余裕のない声に気分が高揚し、夢中になって奉仕を続けた。
運命で定められた夫婦は、当然浮気や愛人を持つことも許されない。彼の性欲を解消できるのは、この先一生私だけなのだ。

経験不足とか、そんなことを言い訳にしている場合じゃない。少しでも、彼を満足させられるように私が努力しないと。
ニチャニチャと先走りをまとった手で竿を扱く。アラタの呼吸が乱れる。息を詰める彼の余裕のない気配に、私の下腹部きゅんと疼いた。

「……っ、ミサちゃん、放して……っ、もっ、出す、から——っ」

切羽詰まった声の最中、アラタの体にぎゅっと力が入るのがわかった。彼が言い終えるよりも前に、ペニスの先端から勢いよく精液が吐き出される。避けるなんて選択肢は最初からなく、顔面にそれを受けた私にアラタのほうがうろたえた。

「ごっ、ごめん!」

「……大丈夫。気にしないで」

においとかも、想像していたより全然平気だった。頬に付着した精液を指で掬い、なんとなく舐めてみる。これまでフェラチオの経験はなかったけれど、アラタのだったらできそうな気がした。

はぁ……と熱い吐息を漏らし、ペニスにキスしようとした私を、アラタが全力で止めた。

「駄目! お願いだから、最初のキスは俺としようよ!」

抱き上げられてベッドに押し倒される。仰向けになったところで顔をタオルケットで拭われた。

「ほんっとに、ごめん」

「……嫌だった?」

「嫌じゃない! ……〜〜〜〜っ、あぁ、もう……、俺が必死で耐えてるってのに、どうして煽ってくるかなぁ」

私に乗り掛かったアラタがぎゅっと抱き締めてくる。彼の柔らかい栗色の髪の毛を撫でると、体に回された腕の力が強くなった。

「人の気も知らないで……。俺、一緒に暮らし始めてからすっと我慢してんだよ……」

「我慢なんて……私たち、夫婦になるんだからそんな……」

「怖がらせたくなかったんだ。でも……ミサちゃんにそんなことされたら、もう耐えられそうにない」

いつになく弱気な彼に愛おしさが込み上げる。アラタの頬に両手を添えて、コツンと額を突き合わせた。

「私は、アラタくんと、エッチなことが……したいよ?」

だから優しくなんてしなくていい。気を遣わなくていいの。
生涯かけてあなたを束縛してしまうこの罪が、私の体で少しでも償えるなら……いくらでも好きにしてくれて構わないから。

「……っ、ミサちゃんっ」

唇が、触れる。キス……されてる。
数えるほどしかない経験値で、それでも必死に背伸びをしてアラタを受け入れた。舌を出して、ぐにぐにと押し付けあう。口を開き、口内へとアラタの舌を招き入れた。

いつになく積極的になれている自分に内心驚きはあるも、悪い気はしない。相手がアラタだからだろうか。

「……ふっ……んんっ……」

互いの舌を絡め合い、呼吸も忘れてキスに夢中になった。涙で滲んだ視界。眼前の美しい美貌がすっと目を細めるのを見た。

「んっ、んぅ……っ」

口腔でアラタが舌の動きを急に変えた。舌先で口蓋をくすぐられ、縦横無尽に歯列をなぞられる。応え方がわからず逃げ腰になっても、アラタは私を解放してくれなかった。

息苦しさに頭がくらくらする。アラタの手が火照って赤くなった私の頬を優しく撫でた。

「はぁ……かわいい。……一生懸命なとことか、ホントに好き……」

至近距離でうっとりと微笑まれて目が泳いだ。きっと彼には、私に情事をリードできるような技術がないのはとっくにバレている。

「あっ……アラタくん……」

「うん? 服、脱ごうか。さすがにここまでしておいてこの先はお預けってのはナシだよ?」

とてもいい笑顔に反射的にこくりと頷く。
緊張で心臓が鼓動を早める。今更ながら、とてつもない不安に襲われる。もとより彼を満足させられる自信など私にはなかった。それでも……アラタをがっかりさせるのだけは嫌だ。

全部神様のせいだと言い訳して、アラタを独占できる仄暗い愉悦に酔いしれた、こんな浅ましい人間が彼の伴侶でいいのかと、自問しては自分自身に幻滅する。
様々な感情がせめぎあうも、アラタは次々に私の着るものを脱がせていった。抵抗なんて、するはずがない。

やがてアラタも自らの衣服に手をかける。彼の裸——鍛えられて引き締まった肉体に、思わず見惚れてしまった。モデルという職業柄、体型づくりには余念がないのだろう。

「……すごい」

「そう? ミサちゃんが褒めてくれるなら、努力して鍛えた甲斐があったよ」

ベッドの上に座った状態でアラタに抱き寄せられる。次に、私はどうすればいいのか。何かをしないとって焦るばかりで、彼を喜ばせる方法が思いつかない。そんな自分が情けなくて、彼の片方の腕に縋るように抱きついた。

「ミサちゃん……足、開ける? ……そう、そのまま……ね?」

耳に吹き込むような囁きに素直に従う。
彼の手が脚の付け根へと下ろされ、ゆっくりと秘裂を撫でられる。クチュ……と、微かな水音がして、今更ながらに途轍もない羞恥心を自覚した。

今、私の恥ずかしいところを……アラタくんが触っている。

優しい手つきに下腹部で燻り出した熱が頭まで上昇する。暑さで溶けて消えてしまいそうだ。
額に浮いた汗をアラタがぺろりと舐めとった。

「濡れてる。俺で興奮してくれてるのか?」

「やっ……言わないで……っ、ひんっ、んあっ」

まるで否定を打ち消すように指でくにくにとクリトリスをこねられた。性感帯への直接的な刺激に腰が跳ねる。膣口からじわりと愛液が溢れるのを感じて、そこへの愛撫を私は待ち侘びていたのだと思い知らされた。

「ああ……もう、夢みたいだ。君が俺の腕の中にいるなんて……」

「ひっいぁ、あっ……なん……て? ああっ、指、止めてぇっ」

甘い刺激につんと勃起したクリトリスを指で摘んでしごかれては、アラタの言葉に集中できない。

「なんでもない。こうして君が俺のモノになるなら、神様のお告げも悪いものじゃないって思っただけだ」

「んっ、あ……ぁっ、アラタくん、の……モノ?」

「そうでしょ? 当然俺はミサちゃんのモノだよ。神様が決めたことは、絶対に誰にも引き離せない。——運命は受け入れるしかないんだ。だから、心移りなんて絶対に許さないよ。俺たちは、もう……」

アラタの声は心なしか震えていた。何がそんなに怖いのか、顔を覗き見ると力なく微笑み返される。一呼吸もしない間に、彼の顔から怯えがなくなった。ぎらついた瞳に獰猛さを垣間見る。

「ああ、でも……、相手がミサちゃんなら、何も心配はいらないか。神様もその辺は気を遣ってくれたのかな?」

「あっ……ぅあ、んんぅ……っ、アラタ、くん?」

彼の言っていることの意味がよくわからない。説明を求めようとしたのにへらりとはぐらかされ、彼は指でクリトリスをぐりりと強く押した。

「ぃあっ! ああっ」

「大丈夫だよ。ミサちゃんは俺が繋ぎ止めるから、なんの心配もいらない。そのまま感じて。……ナカをいじるね」

逞しい体に背中を預ける。後ろから伸びてきたアラタの腕が私の膝を左右に割り開いた。くぱりと曝け出た秘所は愛液でぬるぬるだった。
クチュ、クチッ……、クチャ……。
アラタの指が膣口の上を行き来するたびに卑猥な水音が聞こえてくる。

「ゃっ……あっ」

恥ずかしさに耐えられず逃げ腰になった私が行動に移すより先に、長い指が膣内へと侵入を果たした。くにくにとGスポットを揉まれ、外側からはもう片方の手でクリトリスをいじられる。強烈な快感に足がベッドのシーツを蹴り上げて跳ねた。
時折膣内の指が奥の壁をグリリと押した。そしてまたすぐに腹側の感じる箇所に戻ってくる。何度かそれが続くと、膣奥に指への到達を……さらに大きな刺激を期待して、じんじんと子宮が疼きだす。私はこんなにも淫らな体だったのかと、驚きは長く続かず次々と与えられる快楽に思考が簡単に押し流されてしまう。

「気持ち良い?」

「う、んっ……あっ、うん……、きもち……いあっ、気持ちイイっ……ああぁ」

どうしてこんなに感じてしまうのだろう。彼が初恋の相手だから? それとも、神様の決めた伴侶だから——?

わからない。というよりも、浮かんだ疑問はすぐに消えて、この快楽の前では理由なんてどうでも良いと思えた。
もっと感じたい。彼とひとつになりたいと、際限のない欲望が湧き上がるのを抑えられない。

「あ……おく、奥がいいの……っ」

深く考える前に欲求が口から言葉がこぼれた。

「ん? こっち……?」

アラタは私の望み通り、二本の指で膣奥をコリコリと優しく引っ掻く。ぶわりと、胎の底から込み上げた快楽に目を見開いて、身も世もなく悶えた。

「……えっ、ああぁ! あっ、うっ……ぁっ、どぅ……してっ」

こんな快感、これまで経験したことがない。気持ちがいい。もっと味わいたいと思うのと同時に、これまでに経験ことのない感覚に戸惑う。
私はこんなに、敏感な体じゃないはずなのに。

「やっ、まって……、ああっ、なにっ……こ、おぁ……あうぅ、んんぅっ!」

何かがおかしい。それをアラタに訴えようとするも上手くいかない。まるで私の疑念ごと快楽で沈めてしまおうとするように、彼はポルチオを責める指を止めなかった。ぐぬりと強く指の腹で押したところを、慰めるようにやわやわと撫でられる。弱まった刺激に私が焦れて腰を揺らしたのを見計らい、アラタは指で小刻みに膣奥を揺さぶった。

「イっ、ああっ! あっ、やあぁんっ、……い、ぐぅ……あぁっ!」

「イキそう? ……いいよ、俺の顔見てイってごらん」

クリトリスを弄っていた手で彼は私の顎をクイと持ち上げる。強○的に上を向かされ、彼の顔を間近で見た。
今、私を気持ちよくしているのは——アラタなのだと。脳が改めて意識する。

「はぁうっ!」

目が合っただけで子宮の疼きが強くなった。膣壁がぎゅうっと収縮して彼の指を締め付ける。

「あっああっ、あんっ、う……ぁ、アラタくんっ、あぁっ」

「あぁ、ホントに可愛い……」

彼の恍惚とした笑顔に、幸せが胸いっぱいに広がっていく。悦びに笑おうとした私の目から、一筋の涙が伝う。同時にどろり……と、膣から流れる愛液の量が増した。

グヂッ、グジュ、グジュッ、ググゥ——ッ。
ストロークの短い抽送でアラタの指が膣道を解す。最奥の子宮口に到達するたびに指は丹念にポルチオを抉った。
容赦のない責めに快楽の高みへと押し上げられる。じわじわと足元から侵食していく絶頂の気配に、身を委ねることしかできない。

「ぁお、お……ぅあっ! い、く……っ、いっちゃう、からっ、……っ、んぅ————っ‼︎」

全身に力がこもり、アラタに喘ぎ顔を晒したまま私は達した。

「うん。上手に中イキできたね」

よしよしとアラタに頭を撫でられると、嬉しさで胸がいっぱいになる。彼が褒めてくれるなら、いつの間にか淫らになった体も悪くないと思えるから不思議だ。

絶頂の余韻に浸る私を、アラタがそっとベッドに横たえた。秘部に押し付けられた熱に、ぼんやりとしていた頭が急に覚醒する。やっと、ようやく、ついに……。

「……挿れるよ」

「うん、……うんっ」

緊張していても不安はない。アラタとひとつになれる喜びだけが思考を埋め尽くし、私は自ら大きく脚を開く。

神様の意思という、抗えない「何か」が私をそうさせていたとしても、そんなことはどうでもよかった。アラタとこうして結ばれることができるのだから、むしろ私は神託に感謝しなければいけない。

「好き……、アラタくんが、好きなのっ」

「……俺も、ミサちゃんのこと愛してる。ミサちゃん以外……考えられない」

ペニスの先端が愛液でぬかるんだ膣口に当たる。押し付けられた熱い膨らみがめり込み、ゆっくりと挿入が開始された。

「……ん、ぁ……っ、……うぅ」

猥路を彼のペニスが押し広げて進んでいく。僅かながらに引き攣る感覚はあったけれど、肉棒の到達を待ち侘びる胎の奥の疼きに比べたら、膣壁に感じる痛みなど些細なものだった。膣道の狭さにアラタが息を詰める。

「……っ、ミサちゃん大丈夫? 苦しくない?」

余裕のない表情で、それでも彼は私を労ってくれた。

「平気よ……。大丈夫、だから……っ、ぅんっ……」

早く、もっと奥まで彼で埋め尽くして……支配してほしい。
腰が揺れて、膣道がうねり、私は夢中で彼のペニスをしゃぶる。ペニスが奥に届くほど思考が悦楽に蕩け、アラタがどうしようもなく好きなのだと思い知る。

離れたくない……離したくない。気がつけばアラタの腰に足を絡めていた。

「これ……やばっ…………っ」

ズンッ——と、行き止まりに到達したペニスが子宮を押し上げた。

「いっ……ぁっ——っ!」

深くて重い衝撃に息を止めて、背中を反らす。全てが満たされたことへの悦びから、たまらずアラタに手を伸ばした。二人で抱き締めあい、口付けを交わす。その間も私の腰はへこへこと動き、ペニスの先端を自らの子宮口へと押し付けた。
必死になって快感を追いかける私に、アラタが目を細める。そしてぐにぐにぃ……と彼のほうからも腰を密着させてきた。

「んあっ、……あっ、ああぁ!」

深く重い快楽が膣奥から脳天へと駆け抜ける。脳内でパチパチと火花が散って、キスが解けた唇から余裕のない喘ぎがこぼれた。

「……あぁ、うん、気持ち良いね」

「なっ……あぁっ! なん、で……ぃっ、あっあっ……これっ」

「おかしい? ……なにが?」

「おっ……おく……っ、ぅ、うそ……っ、わ……私、こんなに……ぃっ、いい、の……っ」

「感じたことない……ってことかな? ……俺もだよ。ミサちゃんのナカ、びっくりするぐらい気持ちいい。ぎゅっと包み込んでくれて……気を抜けばすぐにイキそうになる」

私の耳元でアラタが囁く。彼の低い声と、トチュトチュと子宮口を突き上げるペニスの快感に、たまらず身をしならせて悶えた。
自分がポルチオで感じるなんて知らなかった。これまで経験したことのない深い快楽に早くも絶頂の波が押し寄せる。膣の肉壁がペニスを締め付け、子宮のさらなる疼きを自覚した。
知ってしまうと、熱い飛沫が欲しくて欲しくてたまらなくなった。

「いっ、ぐぅ……ぅあぁっ! あぉっおく……んっ、アラタくん……もっと……っ」

「——っ、動くよ……っ」

ズルズルとペニスが引き抜かれ、膣口に亀頭が引っかかったところで勢いよく膣奥へと戻された。

————ゴチュンっ!

「あぅっ、んん————っ!」

肉壁を叩く刺激に体が大きく跳ねた。ペニスはそこに留まらず、アラタはすぐに腰を引いて、また子宮口を穿つ。

「きゃっ……あっ! あんっ、あっ……ああぁっ!」

ピストンの最中、ペニスが膣道の感じる箇所を亀頭でぞりぞりとなぞる。そこにポルチオの快感が合わさり、この身は呆気なく絶頂に達した。

「ひっ……いあっ! あっ、あぁうっ! んっ……もぅっ、やぁあっ!」

ズチュッ、ズチュッ、ズチュッ————!
余韻に浸る間もなく膣を責められる。絶頂感がいつまでも続き、体が痙攣を繰り返した。次から次へと快楽の限界が上書きされていく。果てが見えないことに恐怖して、どうにかアラタにしがみついた。

「くっ——……っ」

深く繋がった状態で、膣奥に熱が爆ぜた。びゅーびゅーと子宮に精液が叩きつけられる。
数秒の間、呼吸が止まった。それと同時に強烈な浮遊感を味わう。
次の瞬間、思い出したかのようにビクンと大きく体が跳ねた。

「ああっ! んぁっ……あ……はぅ、ん……っ。う、ん……アラタ、くん……」

「ミサちゃん、……ミサちゃん」

覆い被さるようにしてアラタが私を腕の中に閉じ込める。名前を呼ばれただけで気分が高揚して、自然と笑みがこぼれた。ぼやけた視界にアラタの笑顔が映る。

「絶対に、幸せにするから……ずっとこうしていようね。俺から離れるなんて、許さないから」

「うん……ずっと、アラタくんと一緒にいる」

彼が世界的なトップモデルで、庶民の私では釣り合わないとか。快楽に呑まれた今となってはそんなことは私たちを隔てる障害とも思えない。

二人でいられたらそれでよかった。……二人でいられるなら、たとえこれが自分で勝ち取った結果じゃない——神様が定めた運命であっても、どうでも良かった。




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