千代田マサキ 2024/07/02 01:19

むすばれた日

むすばれた日



「そっか、やっぱりゲーム作りのお仕事って大変なんだなー。本当、ひふみちゃんはよく頑張ってると思うよ」
「そ、そうかな……ありがとう……」
 ある夜のこと。
 ひふみは仕事終わりに、最近付き始めた彼と待ち合わせをし、あるお店に入って守秘義務に触れない程度の仕事の話をしたり、まだ大学生の彼の学校での話を聞いたりしていた。
「その、ね。お仕事は大変だけど、最近新しいコスプレ衣装を買ったの。昨日にはもう家に届いて、まだ一度も着てないんだけど……見てみる?」
「えっ、本当!?ぜひ見たいけど、今から家に……?」
「う、うん。初めて、だよね。でも、その……あなたには本当にその、お世話になってるし。……他の人と違って、私をからかったりしないから」
「…………ひふみちゃん」
 彼とひふみの出会いは、彼女が街中で見るからにチャラそうな男たちに絡まれていたのを、助けたところからだった。
 男たちは、やれおっぱいがでかいだとか、髪が奇麗だとか、適当で、そして下品なことを言って彼女を困らせていて、ただ通りがかっただけの彼だったが、どうしても許せず、勇気を出して追い払い、そこから生活圏が被っていることもあり、何度か会うことになって自然と付き合い始めたのだった。
 確かに魅惑的なプロポーションを持ち、それを更に強調するようなコスプレの趣味を持っている彼女だが、性格自体は大人しく臆病であり、彼もそれを理解しているからこそ、露骨にその体をじろじろと見たり、容姿のことを褒めすぎるようなことは避けていた。
 その絶妙な距離感が、彼女にとっても安心感を覚えさせていたのだろう。彼女の言葉でそうわかると、自分は他の男とは違い、彼女を安心させられているんだ、と少し得意になる。
「ありがとう。じゃあ、お邪魔しようかな」
「あの、でも遅い時間だから、迷惑なようならまた別の日でも……」
「ううん、大丈夫だよ。俺、大学通うために一人暮らしって言ったでしょ?どうせマンションに帰っても一人だし、全然迷惑じゃないよ」
 自分からお誘いをしながらも、あくまで控えめな彼女に和まされながら、内心はドキドキしつつ彼女のマンションへと向かうことになった。

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