千代田マサキ 2024/09/21 11:48

白百合の肉奴

白百合の肉奴



「おおっ、これはお美しい……!私ともあろう者が、こんなにも美しいお嬢さんを知らずにいたとは、なんたる非礼でしょう。どうぞ、お名前を教えてくださっても?」
「ありがとうございますわ。ですが私は今まで伯爵様のお耳に触れることもなかった程度の者。この名前でお耳を穢してしまうのも恐れ多いですわ」
「ああ、どうかそんなに悲しまれないで……!私が物を知らなかっただけのこと。どんなに美しく鳴く小鳥も羨む、その声で名前を聞かせていただければ、死の間際まで決して忘れることはありません。どうか、お名前だけでも」
「本当に名乗るほどの者ではございませんわ。ですが、私を本気で求めていただけるのならば……どうか、私の名前を調べ、お当てください」
「なるほど、流石は高貴で美しい女性は機知に富んでおられる。これは私に課せられた試練なのですね」
 有力な貴族や各国の代表者が集まる豪華な晩餐会。
 そこには一際目を引く。しかし、誰もその素性を知らない美女が参加していて、彼女は男たちの誘いを巧みにかわし、ある男への接近を試みていた。
 実のところ、この美女の正体はシュヴァリエ・デオンと呼ばれるフランス王家のスパイであり、実際は男性。それを生まれついての美貌を活かして怪しまれづらい女性に変装し、この晩餐会に参加するというある資産家に探りを入れることを任務としているのだった。
 件の資産家は、表向きは大きな商売を取り仕切る大商人にして、慈善事業にも力を入れる好人物だったが、その裏では金と権力を使い、美しい女性たちをさらって手籠めにする悪漢だという噂がある。実際に評判の美人などが謎の失踪や、親の借金の質草という名目で行方をくらましており、その裏にいるのがこの男だという疑惑があり、デオンはその確たる証拠を掴みに来たのだ。
「失礼します。ムッシュ。少し、あちらの殿方にしつこく言い寄られてしまっていて……」
「うん?これはこれは麗しいお嬢さんが、わざわざ私を頼ってくれるとは。君のような女性を困らせるだなんて、ずいぶんな不埒者がいるようだ」
 パーティーの中心からは少し外れたところに標的の男を見つけ、助けを求めるフリをして接触をする。
『お待ちください!せめて一杯、お酒を飲み交わすだけでも!』
「……この通りです。どうか、匿っていただけませんか?」
「はははっ、まるでなっていませんな。女性は何よりも優しく、包み込むように愛でるもの。情熱的なアプローチとただの迷惑な酒飲みの絡みは全くの別物。せっかく頼っていただけたのであれば、男としての度量の違いをお見せしなければ」
 実はデオンを探すような声を上げた男も、彼の協力者であり、全てはこの男に怪しまれないための工作だった。
 現に男は疑いもせずデオンを傍に置き、すっかり気をよくしている。
「ありがとうございます。さすが、旦那様は女性の扱いに慣れておられるようですね」
「それは当然ですよ。最も、我が妻には叱られてばかりですがね」
「既に奥様がいらっしゃるので?」
「私はしがない商人、互いの商売の利益のための政略結婚のようなものでしたがね。それでも楽しくやっております。いわゆるかかあ天下の状態で、自分の財布の紐も握らせてもらえませんがね」
「ふふっ、そうですか。ですが、旦那様ほどの度量をお持ちなら、奥様以外に仲良くされている女性もいたり?」
「妻が怖くてとてもじゃないですができませんなぁ。それに、口うるさいが可愛いところもある、私には過ぎた妻です。浮気などしようものなら、罰が下るというものでしょう。天におわす神と、他でもない妻のね」
「うふふふっ……」
 デオンは話を合わせながらも、何か有力な情報を引き出せないか、と揺さぶりをかけ続ける。だが、流石に中々ボロは出さず、無為に時間が過ぎていく。
 だが、男は妻一筋などと言いながら、デオンの体を盗み見るようにじろじろと。そしていやらしくねっとりと舐め回すように見ていることに、既に彼は気付いており、同性からそういった好色な目を向けられることに、任務とはいえゾクゾクとした寒いものを感じる。
 やはりこの男だ、という直感はあるが、証拠がなければ表沙汰にはできない。より直接的に情報を引き出すか、と考えていると、ウェイターが二人へとワインを運んできた。
 冷静な思考をしようとする中、酒が入ってはまずいと思いつつも、男はグラスを手に取ると乾杯を求めてくる。
 酒に弱いだとか、もう十分飲んだだとか、適当な言い訳はできたが、ご機嫌を取らなければ証言も引き出せないか、とデオンもグラスを手に取った。
「麗しい君に乾杯!」
「ふふっ、これは浮気にはならないのですか?」
「はっはっはっ、これぐらいは世渡りの内ですよ。この程度も許されなければ私の商売は破綻してしまう」
 笑い合いながらデオンは控えめにワインに口を付ける。そして、グラスを手にしたまま談笑を続けた。
 わざと相手には酒を勧めて酔いが進むようにして、なんとかその口を軽くしようと試みる。ところが、突然、デオンは手に持っていたグラスを取り落としてしまった。
「うっ……!?」
 視界がゆらぎ、ぐわん、と一回転するような目眩に襲われる。
 立っていられなくなり、ワイングラスと共にその場に崩れ落ちてしまった。
「これはいけない!君、私は彼女を休ませるから、部屋を用意してもらえないか?」
「かしこまりました!」
 男は介抱するようにデオンを支え、ウェイターに声を掛ける。
「うっ、あっ……!」
 デオンは突然の不調に、さっき飲んだワインか、あるいはグラスに何かが仕込まれていたのだと直感し、この男にやられたか、と危機感を覚えたものの、意識が朦朧としてもうまともに声も出せず、そのまま意識を失ってしまうのだった。

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