【近況報告/雑記】作業環境が最高になってきた話/配信に有用な整音アイテムのご紹介
近況報告 ~そして無職へ~
男子三日会わざれば無職になっているご時世ですが、
皆さまいかがお過ごしでしょうか。
私はサラリーマンからプー太郎へジョブチェンジしました。
実は夏ごろから本職自体はお休みしていたのですが、今月、正式に無職の肩書を得ました。いやぁ、『手当』とか『給付金』、非常に甘美な響きでありますね。
さて、本職を離れたことで随分と時間に余裕ができました。
非常にありがたいことに、そんな時間を埋めてくれるかのように音声編集のご依頼をいただいております。本当にありがとうございます。
ここ最近の活動ですが、以前告知した『ヤンデレメ○ガキ大家さん 逆転編』のような全年齢向け作品から、いつものごとく成人向け作品、お世話になっているサークル様の編集アシスタントなど、ひと月あたり2~3件の案件に参加させていただきました。
編集屋として復帰してからは、本当に皆さまに支えられっぱなしです。身の周りの環境がガラリと変わったように思います。
おかげ様で作業環境も着実にアップデートが進んでおります。
アップデートにより、より早い作業や、高度な編集――とくにサラウンド化、音の奥行をつけることなど――が可能になりました。
頼もしき仲間たちのご紹介
10月は以下の頼もしきソフトウェア(プラグイン)たちが仲間入りしました。
- iZotope/RX 10 Advannced ... ノイズリペアのすげーやつ!
- iZotope/RX PostProductionSuite 7 ... RX 10 Advancedを含む叡智の結晶
- Sound Particles/Space Controller Studio ... 音の奥行などを操作できるすげーやつ!
- Avid/Pro Tools STUDIO 2022 ... 実家
- その他プラグインたくさん
こうじょうけんがく
さて、ここでは私が新たに導入したソフトウェア(プラグイン)のご紹介と、
編集の過程――ことノイズ除去においての――のお話を少し。
『RX』ってなんじゃらほい
まず初めにアップデートしたものが、ノイズ除去にまつわるソフトウェアです。
ご存じの方も多いかもしれませんが、
昨今の「ノイズ除去」なる作業は、iZotope RXなるオーディオリペアツールを用いて行われる場合がほとんどです。
復帰に伴い、このRXくんを"RX 10 Advannced"という最上位のものにアップグレードしました。さらに最新版へアップデート。
RX PostProductionSuite 7という、人類の叡智とも言えるプラグインの数々が詰め込まれたバンドルパックを購入したので、さらに編集の幅が広がりました。
5年前に一番安い廉価版版を使っていた身としては非常に感慨深いものがありますね。
RXはレコーディングスタジオやMAスタジオ、放送業界のデファクトスタンダードとも言えるオーディオリペアツール――まぁノイズリダクションツールですね。
最近では配信者さん、声優さんの口からRXの名が出ることもしばしば。
(iZotope RX10 Advancedの編集画面。この厳めしい画面と四六時中にらめっこしているのが我々です)
配信における自動リアルタイムノイズリダクションから、ポストプロダクションの厳格な手動ノイズリダクションまで、ノイズについてはこれ一本あれば大体なんでもできるといった評価と称賛を受けるチートアイテムですね。
さて、音声作品を制作する工程において、我々編集屋は最終工程にほど近いところでバトンを受け取りますが、
編集工程のほとんどはRXと乳繰り合っている時間です。
ご依頼いただいてから納品するまでの期間中、実に2/3程度の時間をノイズリダクションに費やしていると言っても過言ではありません。
厳密には、ノイズリダクションのみならず、子音の発声ミスを誤魔化したり微妙に怪しいイントネーションを捻じ曲げたり、音量バランスを整えたり……などの作業をこのRX上で行っているわけであります。
これらを含めた一連の作業のことを私は「整音」と呼んでいますが、みんなも概ね同じ意味で整音って言ってるよね?。
しかしまぁ、整音作業が作業の7割程度を占めるということであれば、
ソフトウェアに課金して少しでも時間を短縮するのが怠け者の美徳というものですよ。
エアコン? ファン? 関係ねぇ。
以下はRX Standardから使用できる機能「Spectral De-noise」というモジュールを利用して、エアコンやPCのファンなどのノイズを取り除いた図です。
「Spectral De-noise」は機械学習による分析でノイズを判断し、除去してくれるというトンデモモジュールです。
【Before】
図は、「これはテストです」という声を繰り返して発音した波形データの周波数成分(スペクトラム)です。RXくんは、波形を音の成分ごとに処理できるよう可視化してくれています。
図中上が高音域、図中下が低音域です。
大きな音ほど、濃い黄色で表示されています。
小さな音ほど薄い色で表示され、黒は無音を表します。
さて、炎の柱のような音の集まりが「これはテストです」を発生した文(センテンス)1つ分ですが、次の文が再生される前にオレンジ色ないしはほぼ白色の膜のようなものが表示されているのがわかりますでしょうか。
これがノイズです。無音であるべき箇所に入り込んでしまった招かれざる客です。
概ね、PCのファンの音や換気扇の音が混じっていますね。
(実際には吐息や息継ぎなどの音も収録されています。低音域に位置しているオレンジ色のスペクトラムの多くは声のリリース成分だったりもします。)
今は小さな音ですが、編集の過程で無視できないほどの大きな音になりかねない、脅威であります。
これを……
【After】
モジュール、「Spectral De-noise」のカスタムプリセットを適用してあげただけで、
文と文の間がかなり静かになりました。
しかも、文の劣化がほとんど見受けられません。
もはや時短革命ですね……。
(普段はもっと細かくパラメータを調整し、可能な限り無音化しています。)
ほかにも、こういう
リップノイズ(クリックノイズ)を
ワンクリックで、こんな風にほぼ跡形もなく消し去ったり。
Advanced版では、さっきのAfter画像よりも
ワンクリックでさらにシビアなノイズ除去が可能なモジュールがあったり。
非常に捗っています。ノイズ除去にかかる工数が1/3程度に激減した程度には。
RXくん……もう結婚しませんか……。
配信者のみなさま、そのノイズ、RXでとれるよ。
余談ですが、こんなご相談がありました。
「配信でノイズが多いんだけど、どうすりゃ改善できるの?」
最近ではYouTubeの配信でも声を丁寧に聞かせるような配信も増えましたね。ASMRとか。
技術的な話は置いといて、結論から申し上げますと 「それ、RXで取れるよ」 です。
さっき紹介した「Spectral De-noise」や、「Voice De-noise」というモジュールをOBSに挿し込むだけです。
すでにご存じの方も多いかもですが、一応手順をご紹介しますね。
OBSの『音声ミキサー』より『マイク』>『フィルタ』を選択
フィルタウインドウ画面左下『+』ボタンをクリックし、『VST 2.x プラグイン』を選択
{Please select a plug-in}のダイアログボックスを選択し、『RX〇 Voice De-noise』や『RX〇 Spectral De-noise』を選択
(〇にはRXのバージョン名が入ります)
これだけです。ね、簡単でしょう?
ほかにも、『Mouth De-click』モジュールでリップノイズを低減したり……
様々なノイズに対する処方箋が、RXに含まれています。
是非、配信者の皆様も導入を検討してみてください。
先月までセールしていたのですが、多分またブラックフライデーでセールすると思う(知らんけど)。
そのノイズ、RXでとれるよ。
配信者のみなさま、適当に挿すだけで声が綺麗になるNectar3というプラグインがですね。
同じくiZotope社のNectar3というプラグインも非常に良いものです。
RX PostProductionSuite 7にバンドルされていたので愛用しています。
Nectar3というのは、ボイストラックに対して機械学習によるアプローチで最適な仕上がりを提供するというトンデモプラグインです。
機械学習を用いずとも、以下の私のつぶやきにあるように、プリセットを充てるだけで非常に美しく整音された声が出力されます。
https://twitter.com/mumumu_atto/status/1585603267048132608
(なんでセンシティブなんだよ)
こちらも配信者さんに非常におすすめ。同じようにOBSにインサートすることができます。
処理も重くないので、遅延も小さく、非常に有用なものです。
確かRX Standardとバンドルで売られていたはず。
こちらもご検討されてはいかがでしょうか?
奥行とか疑似サラウンドとか
最近は音の奥行とか、いわゆる(疑似)サラウンドにおける制作手法を取り入れたり。
そういった小手先に拘っていたりします。
(※音量注意! イヤフォンやヘッドフォンをつけてお聞きください)
これは販売予定のとある作品から抜粋したものです。(掲載許可済)
女の子が離れていく足音をリアルに再現し、ドア越しの奥の方でレンジを操作している感じ、分かりますでしょうか?
サラウンドをモニタリングする環境はうちにはなく、
サラウンド対応といった案件も特にないので、私の自己満足で拘っているだけですが、
離れていく音の奥行感や、実際に発生するドップラー効果などを考えながら効果音をつけていたり。
あとは、電子レンジの音をあえて機械音ではなくアナログなベルにしてみたり。
セリフだけでは分からないような動きを、効果音を通して説得力を持たせたりする工夫をしばしば。
https://twitter.com/mumumu_atto/status/1586624384089092096?s=20&t=KZ76PftQ9UH8TWPex4toiw
(赤宮の生声が流れます、ご注意を)
https://twitter.com/mumumu_atto/status/1587293534708977664
(同上)
https://twitter.com/mumumu_atto/status/1586311478327791616?s=20&t=6XvI--qlWI6SwVEA24zZng
こういう些細な拘りで、「音屋に任せるとこんなにやってくれるんだ!」ってことを示していけたらなぁと考えています。
とまぁ、お世話になっている音屋の大先輩からインスピレーションを受けてやってみている次第で、手探りで模索していたり。
どうです? 依頼する気になりました?
おわりに
さて、つらつらと誰に向けて書いたのかよく分からない情報を綴って参りました。
とくに配信者さんやVtuberさんなどのお客様も増えてきたように思いますので、
何かの役に立てればなぁと思い、記事にした次第です。
編集の工程でどんなことが行われているのか……なども、この業界ではほとんどブラックボックスであり、依頼する際も気になっている方が多いのではないでしょうか。
赤宮はクリーンで純潔でオープンスケベなので、私の知っている情報ならいくらでも皆様に提供いたします!
配信機材の相談から、音声編集の依頼、猫がたくさん出現するスポットなど、なんでもお話してくださるとうれしいです。
12月納期のご依頼はまだまだ募集しています! 是非にご検討を!
追伸
ついでに、アンケートをば。
依頼したいけど「正直音の良し悪しなんてわからんよ」という声もあるかと思うので、
『20分程度のトラックを無料お試し編集しますよ』という俗っぽいサービスを検討していまして……
よければ投票お願いします。
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