紅差し 2023/01/13 21:57

手記・千乃美月の粘膜催○《あなたと出会った頃のことから、現在(いま)のことまで》

音声作品「千乃美月の粘膜催○《先輩の壊し方編》

の、おまけデータとして同梱しようと用意してた、特典SSです。

同梱しなかったのは「ヒロインの台詞や大学生活のことが書いてあるので、ヒロイン=自分(もしくは自分流のヒロイン)として音声を楽しんでくれた人には蛇足になるかも」というのが理由です。

逆に「ヒロイン像が明確になってきても問題ない、美月とヒロインの顛末を知りたい」と思ってくださる方は、このままお進みいただければと思います。

「まだ音声買ってないんだよね〜〜」という方にはめちゃめちゃネタバレになりますが、これだけ先にお読みいただいても大丈夫です。


リスナーさんそれぞれのお好きな形でどうぞ!







先輩は、不快な女だった。

俺が大学二年の春。
金曜一限・東欧文化史というろくに生徒の集まらないコマの教室に、
先輩はチャイムぎりぎりに入室し、俺の隣の席に座ってきた。

講師がプリントを配る中、先輩は突然ゴソゴソと鞄を漁り始め、落ち着きなく辺りを見回し始めた。
その様子を察して俺が無言でシャーペンを差し出すと、先輩はぱっと視線をこちらに向けてお礼を言い、たまらない表情で微笑んだ。
「ペンケース丸ごと忘れちゃって」と囁いた声の柔らかさが、未だに耳に残っている。


それから先輩と俺は、自然といつも隣の席に座るようになった。
授業が始まるまでの数分間で他愛のない雑談をして、先輩はもう四年生で週に二日程度しか大学に来ていないこと、だけど児童文学が好きで、絵本出版社出の講師が担当するこの授業を趣味で受けにきているのだということを知った。

俺が教会の息子で、児童養護施設へのボランティア活動が多い兼ね合いで同じように児童文学や絵本に造詣が深いことを告げると、先輩はぱっと明るい顔をして、あれは知ってるか、これは知ってるかと一つ一つ尋ねてきて、俺は何だか笑ってしまった。

それから、俺の姿を見つける度に微笑んで手を振る人懐っこさとか、
作文は苦手だと難儀しながらも授業の感想レポートを書く一生懸命さとか、
週に一度、数分間接するだけで伝わってくる先輩の人間性に、俺は、ゆっくりと惹かれていった。



大学二年の夏、前期の試験が終了した頃。
俺たちは講師の展示会の手伝いに呼ばれて、丸一日を神保町の画廊で過ごした。
先輩はすっかり単位を取り終えたものの、就活の方が大変なのだと苦笑していた。
であれば俺と先輩はもう大学で話す機会はなく、わざわざ連絡を取り合うでもない繋がりは、今日で終わる。

それは嫌だと思った。
これからもわざわざ連絡を取り合って会いたいのだと告げようとした瞬間、
いかにも気の強そうな顔立ちをしたスーツ姿の男が、先輩の元に駆け寄ってきた。
男は、どこどこの最終面接に通っただのと興奮した様子で話し、先輩も立ち上がって喜び、二人はしっかりと手を握り合っていた。

何が何だか訳がわからないまま呆然としていると、先輩は普段通りの柔らかい笑みでその男を「恋人」だと俺に紹介し、俺のことを「一緒の授業を受けてた後輩」だとその男に紹介した。
だから先輩のことを、不快な女だと思ってしまった。



先輩は、単位を取り終わって就活が大変だから大学に来なくなる……なんて事はなかった。
意識的に構内に目を配ると、先輩はよくスーツ姿で就活センターに籠もっていて、その傍らにはいつもあの男がいた。余裕ぶった声色で、ああしろこうしろと上から目線で講釈を垂れているようだった。
混み合う学食で、知らずしらず俺の後ろのテーブルに座った二人が京都旅行の話をし始めた時もあって、吐きそうな気分になったことを今でもよく覚えている。


結局俺と先輩はそれっきり関わることはなく、先輩が卒業してから、俺は恋人を作った。
これは先輩とは雰囲気が正反対の、社会人の落ち着いた女性で、
何ら問題なく交際を続けていたが、電気を消してセックスしている最中、不意に、どうしてこの人に惹かれたのかに気づいてしまった。
先輩とよく似た声をしている。
それに気づいた翌朝、その人とは別れた。


全部、学生としてはありがちな話で、何てことはない。
俺は両親が残していった教会でひとり暮らしながら大学院へ進学し、休日はボランティア活動に従事する平穏な日々を送っていた。



それが、去年の12月に、突然近所のスーパーで先輩と再会した。
あの男と並んで食材でいっぱいのエコバッグを手に提げ、先輩は昔と変わらない屈託のない笑顔で
「最近向こうのマンションに引っ越してきた」
「千乃くんの教会ってこの町にあったんだ」
と話しかけてきて、俺はとっさに横の掲示板に貼られていた、地区のクリスマスバザーの知らせを指さした。
「教会でも催しがあるからよかったら遊びに来てください」と。



先輩は、バザーには一人で来た。
彼氏はどうしたのかと聞いたら「こういうのはちょっと苦手みたいで」と苦笑して、言った直後にハッとして「ごめん」と平謝りしてきた。その迂闊さに、出会った日の光景がフラッシュバックして笑ってしまった。
先輩はそれから自治会の人間に挨拶をしたり、小学生に混ざって松ぼっくりのリースを作ったりしていて、女児にああだこうだ指示されながら屈託なく笑う先輩のその柔らかそうな唇に、俺は陰茎をぶち込んでやりたいと思った。


それから先輩は、何度もボランティアの手伝いに来てくれるようになった。
俺はいたって普通の態度で接した。そのうち、昔以上に先輩が俺に心を開いていってくれるのが、手に取るようにわかった。
だって俺は曲がりなりにもカウンセラーとして対話のプロになっていたし、先輩と彼氏のSNSをずっと観察していて、二人の価値観はどこか噛み合ってないことを知っていたから。
(価値観が噛み合ってないのに一緒に居続けているということは、二人の間にそれ以上の愛情があるのかもしれないが)


先週は、養護施設の女の子が泣いて帰ってきた。
仲の良い男子と遊んでいた所を、クラスメイトに「付き合ってるんだ」と冷やかされたらしい。
男の子と二人で遊んだら変なのか、友達になれないのかと泣く女の子に、先輩は
「そんな事ないよ、お姉さんと千乃くんだって友達だよ」
と慰めの言葉をかけていた。


ボランティアが終わった後、いつもみたいに俺の部屋で談笑をして、俺が最近催○療法を学んでいることを告げると先輩は訝しんで笑ったので、物は試しと遊び始め、俺は懇切丁寧に段取りを踏んでいった。
暗示をかけられた先輩の意識はあやふやになり、再び覚醒した時には、つい今しがたまで俺と交わした会話のことを全く忘れ去っていた。





今日も俺の部屋で、俺はまた、先輩に催○療法の実践練習に協力してほしいと頼んだ。
次第に先輩の瞳には揺らぎが滲んで、手足は脱力していた。
キスをした。特に抵抗がなく、舌を差し入れた。先輩の唇からは僅かに甘い声が漏れた。
しばらくして、先輩の肩がビクリと跳ねたので慌てて体を離すと、先輩は不思議そうに辺りを見回し、「私いま何してたっけ?」と告げた。


———————————


ノートにガリガリと万年筆を走らせていた手が、そこで止まった。
頭を整理する為に書き始めた筈が、逆に気が高ぶってしまっていると気付き、美月は筆を置いた。
机上ではキャンドルライトの小さな灯りがゆらゆらと揺れている。
深く息を吐き、傍らのスマートフォンを手に取る。

女からは『今日もお疲れ様でした、来週も多分お手伝い行けるよ〜』といつもの調子のメッセージが入っていた。
SNSを開けば、その女の恋人の、会社の先輩からどこぞの予約困難店の焼肉をご馳走になっただのと下らない価値観を掲げる投稿が目に入った。



***



美月は目の前の女を見下ろしながら、呟く。

「彼氏さんとは、最近どうですか?
 学生の時は、相当仲良さそうに見えましたけど」
「まぁ、ぼちぼちかな〜……
 何年も付き合うと、流石に落ち着いてくるよね」

「……あんまり、良い回答じゃないですね」
「あーー……」

女は息を震わせ、小さな声で呻いた。

「向こうがもう冷めてるのかも、って思うことがよくあって……」
「どんな風に」
「うぅん……単純に、昔よりも優しくしてくれなくなった、っていうか……
 家事も全く手伝ってくれなくなっちゃったし……。
 いや、実際、向こうは仕事忙しくて疲れてるんだから、それは私の気持ちの問題だよね。
 良い人だよ。だから一緒に居るんだし」

恋人の不満を口にしたかと思えば、すぐに撤回して擁護する。
波風立たないように。喧嘩にならないように。この女は普段からそうやって全てを飲み込んで、あの下らない男に愛情を与えているのだろう。


(かわいい、先輩)


まるで哀れな子羊のような女の髪に触れそうになった瞬間、
女は突然「あっ」と声を上げて、美月の顔を見た。

「この話、前にもしたっけ?
 最近は職場の同期の子と仲良いみたいなんだけど……
 その子のインスタの投稿で気づいたんだけど、
 二人で残業して朝まで帰ってこなかった事があってね……」
「マジですか。それ、ちゃんと何してたのか聞きました?」

まるで女友達の他愛ない会話のように。
美月の言葉を受けて、女はへらっと曖昧に苦笑した。

「聞けない、怖くて。本当にずっと仕事してたのかも、しれないし……。
 でも、浮気って本当よくないなって思った。
 されたのかもって思っただけで、心臓がギュッとして……」

そう苦笑いする女を見下ろし、美月は深く息を吐く。
女の白い下腹部を、指先でぐっと押さえつけた。


「じゃあ、いま僕と先輩は、何してるんでしょうね……っ?」


美月のその言葉と共に、現実の出来事に意識が引き戻され、女の目がぎょっと見開かれた。

「っあ……?え?なにこれ待っ……て?
 はぇ、ぁイク、イくイくイくっっ!♡♡」

根本まで深く挿入され、子宮口をトントンと刺激され続けていた肉体の快感を女の脳がやっと知覚する。
訳もわからないまま腰が跳ね、びしゃりと潮が吹き出した。

「ぁ、はぁっ……!♡
 はっ……はっ……ぇっ?あれっ……?」

「家事を手伝ってくれないのは『疲れてるだろうから仕方ない』とか、
 女と朝帰りしたら『仕事してたのかもしれない』とか。
 あなたいつもそうやって彼氏のこと庇ってばかりですけど、
 僕からしたらその行動が発生してる時点で
 ただのクソ男としか思えないんですよ」

「え……?せ……んの、くん……?」

「そう。今あなたと繋がっているのは、僕。」

女の手を取り、自分の頬にそっと這わせる。
美月はチラリと目線を上げ、本棚の奥に立てかけてあるスマートフォンがこちらを向き、二人の姿を録画していることを確認する。
まるで恋人同士のように、甘く深く繋がっている二人の姿を。

「せんぱい。
 好き、って言って。
 僕を彼氏にする、って、言って」

「はっ……、す、き……?♡
 ぼくを、かれしに……する……♡」

「あは、間違えた。
 千乃くんを彼氏にする、だった(笑)」

鎌首をもたげ、びくびくと脈打っている陰茎を再度女の割れ目に沈ませていく。
美月の体の下で女の悲鳴が上がった。快感で蕩けたあやふやな叫び声だった。

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