しゅれでぃんがー 2020/10/31 22:55

日記 目分量

 私は目分量、というのが好きではない。自分がコーヒーに入れるミルクの量とかシュガーの量くらいなら適当でもいいと思うが。それ以外のことを「経験で覚えろ」とか口頭であいまいな数を伝えられたらすごくうんざりした気分になる。


 仕事で、はつりの現場というのがあって。はつり、というのは家の壁や床を削岩機みたいなの(はつり機と呼ぶ)で割り、瓦礫をバケツに詰めて延々トラックへ運んだりする。1.5t車の荷台がいっぱいになるので、毎回それぐらい運んでいるのかもしれない。おかげで元々貧弱だった私の体は、ある程度の筋肉と姿勢の良さを手に入れるまでに至った。

 まあ、そんなことはいい。はつった床に新しくセメントを敷いて、新しくコンクリートの床を作るのだが。そのために、撹拌機で粉末セメントと土と水とバラス(細かく砕いたコンクリートみたいなの。砂利ぐらいの大きさ)を混ぜ合わせる。私はこの作業が好きだけど嫌いだった。セメントを練るのは楽しいし、次の日、敷いたセメントが固まって床になってるのを見るのも好きだ。意味も無くその上を歩いたりする。楽しい。しかし、セメントを練るための配分、配合量について。親方の説明があいまいなのだ。

 水の量はだいたいこれぐらい、と見せられるが。こんなもん毎回同じ量入れられるわけがない。なので、毎回水の量が一定にならないから仕上がりが硬かったりしゃばかったり(しゃばい=水が多すぎてびしゃびしゃ)する。硬いなら水を足せばいいが、しゃばかったら取り返しがつかない。それでも一応次の日になれば固まるのでセメントというのは凄いのだが。しゃばくなったのをからかわれるのが心底気に食わなかった。

 セメントは袋三分の一。三分の一、なんて目分量で入れられるわけがない。砂は丸々一袋、バラスはだいたい五分の一袋。全部の説明にだいたい、が付く。こんなものが説明になるわけないのに。このあいまいさは、私は生きていて一番に匹敵するぐらい嫌いなものである。ちゃんと作らなければならないのに、説明が全部ふわふわしている。これは、仕事として最低限の説明水準を満たしていない。それなのにへらへらしている相手に、私はいつもイライラしていた。だが、一応お金貰ってるので滅多なことも言えない。なので自然と私はセメント練りをやらなくなっていた。


 先日、左官屋さん(セメントを扱う工事を主とする職人さんのこと。何故左官と呼ぶのかは知らない)がセメントを練ってるのを現場でちらっと見かけ。その時、粉末セメントをなにかおたまみたいなので掬って入れていた。調べて見ると、セメント用のひしゃくらしい。これだ、と思ってその日の帰りに買った。これを使えば、三分の一とかいうわけわからん分量を毎回よくわからないまま入れるんじゃなく、ひしゃく大匙〇杯とだいたいの分量が毎回同じに収束させることができる。あいまいな分量に終止符を打つことができるだろう。

 今日、はつり現場だったのでひしゃくを持って行った。ステンレス製っぽい、スプーン部分に対して持ち手が斜めについてて袋の中身を掬い上げやすい形状をしているひしゃく。効果は抜群だった。今まであれほど仕上がりがばらばらだったセメントが、毎回ほぼ同じ出来上がりになる。やはり、計量することは本当に大切である。


ホースの水出し37秒+粉末セメント大匙7杯+砂一袋+バラス適当にちょろっと


 今日、レシピがこれで確定した。これでまた一つ仕事におけるストレス要因が解決である。今までは正直、老人に働きかけても無意味だろうとタカをくくって何もしてこなかったが。案外、変えられるものはあるのかもしれない。今後も不満に感じたところは、自身の発想と努力で変えられそうならひっそり色々していこう。

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