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2021年 06月の記事 (20)

しゅれでぃんがー 2021/06/21 21:06

まどか☆マギカ考

 魔法少女物に革命を起こした『魔法少女まどか☆マギカ』。今回は、その物語構造を分解することで理解を深めていく。ネタバレなので見る予定がある人は読まない方がいいだろう。














モチベーションの円環の理

 この物語の開始地点は、巴マミの魔法少女化から始まる。その変身理由は「延命」。死なないためには契約するしか無かった。これは外的モチベーションであり、本人には別に魔法少女になりたいという意思は無かった。「ならなければ死んでいた」。だからなった。

 そこから鹿目まどかと暁美ほむらが魔法少女となる。鹿目まどかはたしか、巴マミに助けられてなっていたように記憶している。魔法少女になった理由が「誰かの役に立ちたい」だった気がするので、一応、内的モチベーションでの魔法少女化ではあるかもしれない。巴マミの行動に触発されたというのは少なからずあるだろうが、鹿目まどか自体には自発的に魔法少女になるという意思はたしかにあった。そんな鹿目まどかに助けられ、暁美ほむらも魔法少女化する。そのモチベーションは、最初は鹿目まどかと似通った部分があったのかもしれない。

 しかし、暁美ほむらの戦う理由はある地点において変質する。鹿目まどかからの託された思いを遂げるために戦う。戦う理由が自分のためではなく、「鹿目まどかを死なせない」という方向に変わった。彼女を生かすためならば手段を選ばなくなり、その為ならば巴マミや美樹さやかが犠牲になっても良いとすら思っているような節がある。外的モチベーションに憑りつかれた暁美ほむらは、まどか☆マギカの世界における舞台装置として。歯車の如く同じ一ヶ月を繰り返す。


 この物語の主役たちには、鹿目まどか以外に内的モチベーションを持つ者がいない。巴マミはやむにやまれず、美樹さやかは男友だちの為に。佐倉杏子はくわしい理由は分からないが、たぶん巴マミと似た理由ではないだろうかとアニメ中盤で描写されていた気がする。そして、外的モチベーションは自信を動かす意欲にはならない。巴マミたちは「人助けをしている」という自分に酔うことで戦い続ける理由を錯覚する。幼いヒロイズムに陶酔することで、「何のために戦うのか」「いつまで戦うのか」「自分たちはいずれどうなるのか」という思考から無意識的に目をそらす。端的に言えば、正義の味方的活動に現実逃避しているのだ。

 だが、そんな外的モチベーションは長続きしないし、簡単に崩壊する。巴マミは魔女の真実を知って自身の未来に絶望し(アニメだとそれでも魔女化はしていなかったので、彼女の自我自体はとんでもなく強固である)、美樹さやかは男友達が別の女友達とくっついてしまって自身の行いの意味と価値を見失い。佐倉杏子も、どうやら破滅願望があったらしく、ヒロイズムに酔って美樹さやかと心中した。いや、家族を失ってさらに新しく出来た友だちまで失って、自暴自棄になったのかもしれない。彼女たちは自身を動かしていた外的モチベーションが崩壊した時、失った自身の未来と自身の行く末に絶望して魔女となるのだ。内的モチベーションを持たない人間がことごとく魔女化していく。難しい構造を見事に回しているこの作品の物語構造は、じつに見事である。


 鹿目まどかも本来は魔女化しない魔法少女だったが、暁美ほむらがループすることにより魔女化してしまう運命を背負う。これにより、「鹿目まどかを死なせない」から「鹿目まどかを魔法少女にしない」という目的へモチベーションがシフトする。しかし、暁美ほむらの決意による行動自体が、鹿目まどかの運命をどんどん悪い方向へ転がしていく。この仕組みも見事である。暁美ほむらのせいで、鹿目まどかは魔女化した。しかし、そうさせたのは紛れもなく一番最初の鹿目まどかなのだ。まるでウロボロスの輪のように、負の運命は紡がれていく。円環の理とは洒落た言い回しである。このネーミングは巴マミが痛いということを印象付けるためだけの存在ではない。この作品全体を象徴するキーワードなのだ。


 最後、鹿目まどかは魔女化の輪廻を脱するが。以前何処かで、これは仏教における解脱であるという論を読んだとこがある。悟りを開いて魔女とは別の存在に変化したのだと。釈迦となった仏陀のような話なのだろうか。無限に続く暁美ほむらの時間遡行が産んだ、鹿目まどかが神となる結末。たしかに、これは救済の物語なのかもしれない。

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しゅれでぃんがー 2021/06/20 01:40

受動的物語の利点

 異世界転生系の根幹にすらなりえる要素である受動的物語の構造。それはどういうことなのか。

外圧的強制力

 転生でも、召喚でも構わないが。元々生きていた世界から別の世界に、強○的に移動させられた存在というのは。その時点で生活基盤、財産、生存権その他を一切合切失った状態となる。何もしなければ生きていけないし、召喚者が存在するなら召喚者の命令を聞かなくてはいけないかもしれない。このように、行動する理由を「生きるため」や「召喚者の命令」に依存することとなる。他者や状況、環境から強○される目的意識というのは、当事者、本人のモチベーションに繋がらない。なので、物語自体を結末へつなげるために、展開や転生者の人格、思考などを調整、ゆがめる必要が出てくる。結末と主人公のモチベーションが、直線で繋がらないからである。

 モチベーションの無い存在は、目的や着地点に対して積極的に行動しない。魔王を倒すために呼び出された、と言われても、本人に魔王と戦う気が無ければ日がな一日クエストやモンスター退治で小銭を稼ぐかもしれない。それに対して召喚者や王家なんかが尻を叩く展開もあるかもしれないが。こんな展開にしなければならない時点で、「魔王を倒す」という結末に対して物語が蛇行、平行移動をしている。これを展開の歪みと呼ぶ。こうならないために、都合よく町に魔王軍が攻めてきて転生者が戦う展開にしたり。王家が転生者に見返りを提示して餌で釣ったりなどするわけだ。だが、これすらも環境や他者からの利益の提示によってもたらされた、外的モチベーションなので。本人が積極性を得るには至らない、もしくは積極性を得るほどの説得力を得られない場合がある。主体的モチベーションを持たない主人公は、常に外的な強制力が働かなければ物語を回すことができない。


 しかし、異世界転生系ではこのデメリットを上手くコントロールしている。徹頭徹尾状況的、他者からの強制力で物語の大部分を回していく。これにより作者の都合の良いように物語の方向を調整することができ、話が進めば主人公がパーティーメンバーに愛着を持った、とか、世界自体に愛着を持つことで潜在的な善性や異世界で育まれた新たな関係性をモチベーションに昇華するというシステムで主体的モチベーションを後天的に付与する。戦う理由の無い存在に、なし崩しでモチベーションを植え付けるのだ。この仕組みなら序盤から物語の方向性がぶれないし、中盤から後半にかけても主人公に主体的モチベーションが生まれるから主人公が自発的にエンディングへ向かって歩き始める。

 見れば見るほど無駄が無く、転生さえさせてしまえばどうにでもなる。これが一ジャンルまで成長した「異世界転生系」の持つ技術の神髄である。どんな立場、年齢、思考を持つ存在であろうと、転生の過程でその物語に最もふさわしい主人公へとチューンナップされ、主体的に動かなくても世界自体が主人公を動かすようにイベントが起こり。その中で主人公はその世界全体へのモチベーションを獲得していく。もしくは、最初から最後まで「元の世界に帰る」という主体的モチベーションを胸に行動する。

 なにをどう転がしても上手くいく。それが、このカテゴリの強さなのである。

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しゅれでぃんがー 2021/06/18 21:26

主体と受動

 物語を回す原動力はなにか。結論から言うと、それは「モチベーション」である。じゃあ、モチベーションとは何なのか? 今回は、その話をしよう。


内側から湧き起こる衝動

 あれがしたい、あれが欲しい。あそこへ行きたい、あれになりたい。そんな、「~したい」という欲求。それがモチベーションである。自発的な衝動は欲求を解消、達成する行動へ繋がる。目標達成への行動、その過程が物語を形作っていく。

 少年誌を例にすると。週刊少年ジャンプの作品群では、ストーリー系の作品だと主人公はほぼ例外なくモチベーションの高い人間である。海賊王になりたい。火影になりたい。オールマイトみたいなヒーローになりたい。そんな憧憬が戦う、旅をする理由になっている。自身の内側に行動する理由があるので、物語が停滞することも無く。途中でどんな話に横道逸れても、「理想を達成するための道中」という理由にこじつけることができる。少年誌に掲載される基本的な主人公像というのは、主体性の高いキャラクターが多い。


 その反対として、受動的な主人公が多い業界もある。それは何処かというと、「異世界転生系」だ。このジャンルは受動的構造の一つの到達点とも言えるほど完成している。「ある日、まったく常識が違う環境、状況に突然放り込まれる」。ここには主人公がモチベーションを持つ要素が無い。環境の激変により、それまでの生活を変えざるを得なくなる。外部の状況の変化に、自身が変わることを余儀なくされるのだ。「~したい」ではなく、「~しなければならない」という思考、感情。これが受動的な物語の構造である。

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しゅれでぃんがー 2021/06/16 22:38

レレレッレビュー

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 淫魔殺しの伝説さんから発売されている二作品。美麗な絵に凝ったゲーム性と、エロシーンではピストン系の描写が基本的に動くというクオリティの高いゲームである。


 プラグインか独自開発課は分からないが、今回は戦闘システムが凝っている。カードの絵柄も過去作のモンスターイラストを上手く使っていて種類が多く、サークルとしてのアセットを有効利用している。エロシーンこそないものの、マップの戦える女性キャラにはちらほらと立ち絵が用意されていて抜け目がない。基本デザインこそツクール汎用キャラを使っているが、そこからリファインして描かれているので力が入っている。

 今回、主人公のキャラ画像もツクール汎用素材を使っている? イベントシーンでは描き下ろしてあるけど、キャラチップとフェイスグラを見るとこれは汎用のはずである。こういう使い方をしている作品というのは、だいたいが「主人公自体の顔やキャラクターは作品全体においてさして重要じゃない」という場合が多いのだが。これに気づいた時、前作から感じていたこのサークルさんの作品に対する違和感の正体がわかった気がした。


 タイトルに「淫魔殺し」とあるのに淫魔殺し自体が出てこない。前作では名前だけだったし、今作では顔グラ自体は出たけどちょっとだけである。淫魔が誰なのかも(なんとなく予想はつくけど)分からないし、この世界自体に何が起こっているのかすら曖昧である。その中で前作の主人公は、主人公なのにまるでモブのような印象で旅だったし。今作の主人公は良いとこまで行ったけど結局闇に消える。ラストバトルの勝敗を敵が無視してきた時点で、今回の主人公もこの世界にとっては有象無象の一人であり、現れては消えていくモブに過ぎないのだというのを思い知らされる。そう、「主人公が当事者ではない」という、操作しているのに手ごたえが無い感じ。これが、このシリーズに対する言葉にできない違和感の正体だったのだ。

 思えば、クリア後のキャラの名前が「観測者」になっているのもそのヒントではないだろうか。あくまでもゲーム世界の記録をプレイヤーは観測しているだけであり、その世界で起こる物事自体は結末が変わらない。このシリーズのこれまでの主人公たちは、観測者が物語を観測するためだけのモニターであり、乗り物でしかないのだ。だからクリア後の裏エンドは主人公が関係の無い時間軸で話が進む。主人公は、主人公の目に映る部分だけを観測者に伝える操り人形でしかない。


 前作に引き続き、調教シーンやぶっとんだエロシーンはとてもエロく面白い。新しい痴○が爆誕していた。イラマチオンまんほどのエロさは無かったが、画面の迫力は圧倒的だ。クリア後裏エンドの調教シーンは圧巻。拘束されてのあの流れはいやおうなしに興奮させられる。が。あの女子高生は結末まで読むとあの子自体が悪い子というわけではなさそうだったので。エロいよりは可哀想だなあという気持ちの方が強かった。本当にエロかったが。〇〇が割れた後の最後のCGの口元ね。目元隠れてるのがね。身動きが取れない状況でかきだすこともできず、割れては追加され……というシチュエーション。ほんとね。エロ過ぎるよね。ああいうの好きだから最高だった。

 なんであの子が調教対象に選ばれたのか。淫魔殺しの組織はもしかして悪い奴らなんじゃないか。なんてことを思ってしまう。痴女たちもえぐかったが、淫魔殺しの勢力も負けず劣らずぐろい。そして裏エンドの調教担当キャラにはキャラデザがあったのを見て、やはりこのゲームの主人公はキャラデザがもらえるほど重要キャラでは無かったんだな、と再確認。たぶん前作の主人公もキャラデザ要らない系のキャラだったんじゃないだろうか。今作から、開発のコストカットも兼ねて新しい表現として導入されたのかもしれない。


 風紀委員っぽい子のエロみたいなあと思ったけど、もちろんながらそんなシーンも無く(あるけどそういう感じじゃない)。プレイヤーが見たいエロというのが作中には基本的に無く、その世界の歴史、時間の流れ、道理に沿ったエロシーンしか配置されていない。エロゲーとして作ってはいるが、書きたいものというか、この世界自体に強固なシナリオがあって、ゲームはそれを読み解くためのツールとして作られている印象だ。読ませたい物語が、この作品にはあるのではないだろうか。ゲームの作り全体からそれを強く感じる。


 後味は悪いし、すっきりしない。でも、続きが気になる。だから私は続編が出たら、何のためらいもなく買うのであろう。話の続きが気になる、面白いゲームでした。エロゲーでこういう感想を抱く作品というのは本当に殆ど無いので楽しかったですね。


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しゅれでぃんがー 2021/06/13 13:24

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