スタジオひん曲がり 2020/01/27 23:11

活動歴半年未満の音声サークル主がスタジオ収録を利用してみた。

新作の収録にあたり、是非とも依頼したい声優さんがバイノーラル非対応だったため、
なんとかバイノーラル音源の収録ができないかとスタジオ録音を利用しました。
個人的な体験記としてスタジオさん(今回はぴのぴさんのところにお世話になりました。)の許可をいただきましたので覚書を記していきたいと思います。
自分がスタ録について調べた時に段取りがわからなかったので、
僕の経験が誰かの収録の参考になることを期待しつつ。

1.スケジューリング
2.ご挨拶
3.スタジオスタッフ
4.収録
5.リテイク
6.データ受領
7.感想

1.スケジューリング
まず「声優さん」「スタジオ」「依頼主(僕)」の3者のスケジューリングをします。

バイノーラルマイク収録が可能なスタジオというのは調べる限りそのほとんどが首都圏にあり、収録日になんとしても声優さんに来てもらわなければならない、というところに結構気を使いました。関東在住の声優さんならリスケジュールも比較的融通効きそうですが、遠方からいらっしゃる声優さんはそれが難しいです。体調は大丈夫そうか、都合が悪くなってたりしてないか、キャンセルは恐ろしいので連絡を密にしておりました。交通機関が乱れたら終わりですので、てるてる坊主もたくさん用意します。

2.ご挨拶
予定時刻にスタジオに着いたらスタジオのスタッフ(ディレクターさん&エンジニアさん)そして同時刻に着いている声優さんにご挨拶&名刺交換です。

僕の名刺はペンネーム表示ですし、大した情報も記載されておりませんが、それでも名刺交換があると、良い「はじめまして、よろしくお願いします」ができる気がします。

3.スタジオスタッフ
スタッフさんは今回エンジニアさんとディレクターさんの二人でした。
ディレクターさんは収録の進行を統括します。
具体的にはキューランプを出したり、NGを出したり、NGの内容を分かりやすく声優さんに伝えたりしてました。
エンジニアさんはパソコンに音声編集ソフトを起動させてセリフ番号がどこに収録されたかなど細かく記録していきました。僕からはわかりませんでしたが音量レベルなど多分もっと高度なこともしていたと思います。また、ディレクターさんからの指示に従って収録した音声をピタっと再生させたりしてました。神業かと思いました。「1026(セリフ番号)流してもらえますか?」って要求に対して1秒後にはさっと再生させてました。
依頼主(僕)は何してたかっていうとディレクターさんがスルーした部分にNGを出したり、ディレクターさんが「ここどうですか?」という内容に関して応答してただけです。

スタジオ収録はこのようなスタッフ抜きで借りることもできるようですが、弊サークルレベルの収録ではまったくもってお勧めしません。「スタッフは必須である」とまで感じました。上に書いてあるエンジニアさんとディレクターさんの仕事が僕一人でできるわけありません。スムースな収録のためにはここはケチるとこじゃないです。

4.収録
今回の収録は25000字超えの作品でしたので、ネットで事前に調べて5時間を収録時間に設定しました。結果的にはギリギリ~ちょっと時間オーバーくらいでした。5時間ずっと録っているわけではなく、全体を4~5くらいに分けて休憩をはさみながら収録が進みました。ディレクターさんとエンジニアさん、そして僕がヘッドホンをしながらオペレーションブースに座ります。声優さんは防音ドアで仕切られた収録ブースでやっぱりヘッドホンで自分の声やディレクターの指示を聞きながら収録します。収録ブースの様子はカメラで確認ができ、立ち位置などが怪しい場合はディレクターが指示して修正します。
声優さんは台本を読み続けます。詰まったり読み間違えたりしてもそのままテイク2を録ってどんどん録音していきます。読み方がわからない語句があったらその場で質問、ディレクターor僕が答えました。

「防音設備の整った環境で」「高性能マイク(今回はKU-100)を使って」収録するので、耳バカの僕でも、すごく高音質の収録ができたように思います。

5.リテイク
NGの出し方は2通りあって、その場で止める方法と、あとでまとめて出す方法です。その場で止める際は収録中にディレクターが「今のところ728(セリフ番号)もう一回お願いします」みたいに指示します。
あとでまとめて出す方法はさっき述べた全体を4~5に分けたパートが終わったら「お疲れ様です。ちょっとお待ちください」と声優さんに伝えて、ディレクターさん、エンジニアさん、僕でイントネーションや読み間違え、ニュアンス違いなどを洗い出してリストアップします。リストアップするときに聞き直したり、ノイズの有無を3者で確認したりするので、この時間も実質声優さんには休憩時間になります。で、リストアップが終わったらディレクターさんが声優さんにNG内容を伝えます。
これを全パート分繰り返し、収録およびリテイクは終了となります。

宅録と違い、収録日を逃したらリテイクは不可能ですので、NGはすべて洗い出さなければならないプレッシャーがあります。ただ「その場で修正できる」というのは個人的には宅録で何度もリテイクを出す申し訳なさを解決できる素晴らしいメリットです。ちょっとしたニュアンスの違いもその場で明確に伝えられますし、時間内であればイメージが再現できるまで何度も収録ができます。

6.データ受領
収録した音声データをUSBなりなんなり各種メディアに移して受領します。アップローダに上げるという方法でも対応できるそうです。

必要な知識は特にないですが、「ビットレートはどうしますか」という質問にこのポンコツサークル主は「??」となってしまいました。このあたりの勉強は事前にした方が恥をかかないです。

7.感想
全体を通した感想としては
「今後の収録はすべてスタ録にしよう」と思うくらい素晴らしいものでした。
1~6で個別に記載したポジティブな感想が、今までの収録で感じた自分の苦手な部分をすべてカバーしてくれたので。
ただここまで書いてきたこと、「ディレクターさんが」という主語が多かったと思います。今回担当してくれたディレクターさんと僕は感性が90%くらい一致していました。収録していて「あ?」と思ってリテイクだそうとチェックしていたところ、ほぼすべてディレクターさんが先にNG出してました。したがってほぼお任せしているだけで、僕の考えている理想の作品が出来ました。これは事前に打ち合わせをしたわけでもないので、たまたまディレクターさんと僕の感性が似通っていたんだと思います。依頼する人によってそうでない場合は食い違いが出てくると思うので、それは事前なり、その場でなり、折り合いをつけるコミュニケーション力が必要とされます。
また収録の雰囲気は非常に重要です。今回はほぼ順調に進みましたが、それでもやっぱり誰もに疲れが見えてくる場面はありましたし、これがもっと煮詰まるとお互いイライラしたりすることもあると思います。ディレクターさんは冗談を言ったりして声優さんをすごく気遣っていました。そういう思いやりってとても重要です。
煮詰まったときに
「なんだこの煩いディレクターは」
「この声優ミスってばっか」
「偉そうな依頼主だな」
とか誰かのせいにしようと思わずに、みんなでいい作品を作ろうっていう意識がないと、
収録現場は地獄になると思います。今回声優さんは謙虚な方でしたし、ディレクターさんも上述のように気遣いのできる方でしたのでそれぞれがそれぞれをしっかりリスペクトして、楽しく収録が進みました。幸せな5時間でした。

あと自分の発表前の台本を目の前で読まれるというのは筆舌に尽くしがたい恥ずかしさがありますが、台本の間違いに気付いたり、よりよい表現に訂正が出来たり実はいいことづくめです。これまで作った作品は孤独との闘いでした。「これエロいの?」「この表現ウケるの?」とか独りで悩みながら作ってましたが、「どうですか?」「アリですね」とか相談しながら収録できるのですごく新鮮で楽しかったです。もちろんシナリオライターのプライドとして未完成の台本を持っていくのはNGですが、チームで作品を作っている感じが、なんというか、救われた思いがしました。

以上です。
スタジオスタッフのお二人、まだ内緒ですがCV担当してくれた声優さん、
本当にありがとうございました。

何か質問があれば答えられる範囲でお答えします。
適当な連絡先などにどうぞ。

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