●広翼の孔雀41●

鬼灯は覚悟を決め、背後のドアに鍵をかけると、壁にもたれかかって座り、両足を開いた。
ステテコを脱いでひざ下まで下げ、褌を緩め、ほぼ反応している状態の自身を取りだし、自らの掌に唾を塗り付けて恐る恐る自身に触れる。



「んんっ・・・!」



触れた瞬間電撃のように快感が走り鬼灯は思わず呻いた。
今更止めろと言われても、それは不可能に近いほど堪えがたい衝動が身体を突き上げてくる。
そのまま上下に軽く擦ってみたが、それだけで大声が出そうなほどに感じてしまう。
鬼灯は着物の襟を噛んで声を押さえ、ふうふうと吐息を漏らしながら必死に自らを慰める。



自身の先端からはトポトポと先走りの淫液が流れ、上下に擦る手の潤滑油となり、そのヌルリとした感触が快楽となって鬼灯を追い詰めてゆく。



「ふっ、ふぅ、ふうぅっ・・・!」



少し試しに激しく上下に擦った瞬間、一気に射精感がこみあげ、鬼灯は懐紙を用意する間もなくそのまま絶頂に至ってしまった。



「っ・・・・・!」



ふうふうと息を吐きながら、終わった後の自分の有様に愕然とする。
太腿は白液に濡れ、帯や下腹の着物の上にも白液が飛び散り、全部をふき取るのは非常に面倒そうだった。
鬼灯は懐紙を取り出したが、限られた枚数で全てをぬぐえるかと懸念したが、目に入る分は全てふき取った。床にも数滴垂れており、鬼灯は忌々しい思いを抱きながらそれも懐紙でふき取る。



鏡がないのでなんとも言えないが、とりあえず目に入る範囲の始末はすべて終えた。鬼灯は汚れた懐紙を再び懐にしまい、下着をすべてキチンと履きなおし、カートを手に立ち上がった。
その瞬間、顎から胸元に一線、水滴が落ちる感覚を覚え、急いで手でぬぐってみると、まぎれもなくそれは白液だった。
鬼灯は懐紙を取り出す間もなく、着物の袖を捲って下の長襦袢で顎と首筋をぬぐい、身なりを整える。
これでなんとかなるだろう、と鬼灯はため息を吐き、カートに手をかけて資料室の鍵を解除し、ドアを開けてはっと顔を上げた。



「あ、おはようございます・・・」



そこには、同じくカートを押している一人の獄卒がいた。おそらく資料室に入りたかったのだろうが、鬼灯が鍵をかけたので入ることができず、手持無沙汰で困っていたのだろう。



鬼灯は気まずさで俯き加減で、すみません、と一言いい捨て、その場を逃げるように去る。



しかし、資料室を後にして、すぐに後悔が襲ってきた。どうして後ろめたい態度をとってしまったのだろう。あそこは堂々とした態度をとらなくては余計に怪しまれるというのに。
それに、部屋の入口で自慰をしたのは間違いだった。あれでは入った瞬間、男なら誰でもわかる匂いで、何をしていたのか勘繰られてもおかしくない。



そして何より、半ば体の欲に押し切られる形で自らを慰めたが、せっかく射精したというのに、未だ身体には激しい情欲が渦巻き続けているのである。



そして、獄卒とすれ違うごとにどんどん身体の熱はたまってゆき、鬼灯は再び我慢しがたい衝動に駆られ始めた。



(こんな術に負けてはいけない・・・しかし、一体なんだ、何が原因なんだ・・・)



獄卒とすれ違うたびにどんどん加速してゆく性的衝動を理解できず、鬼灯は煮え切らない気持ちになる。
それも男女問わずだ。



(見られると欲情するのかもしれませんね・・・)



そう想像しながら、鬼灯はようやく次の裁判が行われる変成庁へとたどり着いた。



鬼灯が通りすがった後、獄卒たちがこう話し合う。



「今日はますますエロかった!やっぱりあの動画は鬼灯様じゃないのか?」



と・・・・。


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