●広翼の孔雀50●

「はあ、はあ、はあ、はあ・・・」



鬼灯は自室に入り、ドアを閉めた瞬間、そのまま頽れてしまった。
体中がドクドクと激しく欲情し、誰かに触れてほしい欲求が高まりすぎて、皮膚を破って出ていきそうだった。
部屋に来るまでにも何人かの獄卒とすれ違ったが、皆鬼灯に性的な思考を流してくる。



『鬼灯様、今日は下に長襦袢着ていないのかな?ってことは素肌に着流し?超エロ!』
『なんだか尻のかたちがいつもよりもよく目立っているなあ・・・男にしてはちょっと肉付きがいいよな、触ったらきもちよさそう・・・』
『なんだか、饐えた匂いがするなあ・・・鬼灯様からは、いつも白檀の香りと蓮の花の香しかしないのに・・・なんだか妖しいぞ・・・』
『あれ?今日は熱でもあるのかな?いつもは真っ白な顔なのに、今日はちょっとほんのり紅い。なんか妖艶だなあ・・・』
『ああああ、着物ひん剥いてみてええーーー!』
『鬼灯様の身体って、触ったら冷たいのかな?あったかいのかな?どっちにしてもゾクゾクするぜ・・・』



などと、怒涛の感情が鬼灯に流れ込み、その度に官能の水位が上がり、身体の我慢が効かなくなる分水域まで達していた。



(こ、こんな異様な術になど負けるかっ・・・!)



しかし身体はすでに強烈に発情状態で、身体も抱かれる体になってしまっている。こんなときに王がいれば、驚天動地の珍事ながら、鬼灯から進んで抱かれてやるものを、今に限って不在だ。



「とりあえず風呂に・・・」



鬼灯は着ているものを全て脱ぎ去り、洗濯機に突っ込むと、裸で浴槽に向かってまずシャワーを頭から浴びた。
身体を冷やす意味も込めて冷水をわざと浴びたが、一瞬ヒヤっとしたものの、身体の中に燻る官能の炎は鎮火することなどかなわず、鬼灯は行き場のない情欲を持て余す。



ここは風呂場で、鬼灯以外の誰もいない。こんな術に負けてしまう自分が腹立たしかったが、鬼灯は再び自らの雄に手を伸ばした。



触れただけでビリビリと快楽電流が走り、鬼灯は背中をブルリと震わせる。
本当は感じたくないが、身体が先に暴走してしまい、鬼灯の意思とは反対に快楽を求めて身体が動く。



「んっ・・・んん・・・」



タイルの上に膝立ちになり、鬼灯は左手で体を支え、右手で自らを慰め始めた。



しかし次の瞬間、風呂場の扉が勢いよく開けられたかと思うと、鬼灯が怒鳴る間もなく数人の獄卒たちが侵入してきた。
二人の獄卒が鬼灯の両腕を締め上げ、一人の体形の良い獄卒が両腕を鬼灯の首に絡ませる。



(裸締めで、落とす気かっ・・・!)



そう思ったときにはもう遅かった。首と相手の腕の間に手を差し入れる間もなく絡みつかれ、首を締め上げられる。



(い、いけない、落ちる・・・っ!)



両腕を掴まれているので暴れることもできず、鬼灯は切羽詰まってくる息苦しさを感じ、次の瞬間には闇に堕ちた。




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