官能物語 2020/06/27 14:00

義弟と交わって/29

 その日は、それで浩二くんとは別れました。別れたと言っても、同じ屋根の下にいるわけですから、それを別れると言えるかどうかは微妙ですが、とにかく、その日の行為はそれで終わりました。

 そうして、わたしは、決心しました。本当に、本気で、もう彼とは終わりにしないといけないと。このままだと、いつかはバレてしまいます。本当は、一回目の過ちを犯したときに、それ一度きりで、終わっていなければいけなかったんです。わたしは今度こそと思って、決意を固めました。

 それからのわたしは、浩二くんをできるだけ避けるようにしました。浩二くんには悪いと思いますが、浩二くんによくすれば、それは、夫や子どもや義父母に対して悪いことになります。と言っても、それは、わたしの側の理屈で、浩二くんは違った思いを抱いていてことでしょう。

「真由さんのこと、奪うから」

 と彼は以前言っていました。だとしたら、わたしが彼にとった態度を、彼はどう考えたでしょうか。もちろん、彼の言葉が、ただのリップサービスであれば話は別ですが。なんにしても、彼の思いがどうであっても、わたしは、彼の気持ちに応えることなどできません。わたしの気持ちは、今の家庭を壊したくないというものであって、それは、同時に、彼の拒絶につながります。そうして、浩二くんと、できるだけ接触しないようにしていたところ、

「浩二と喧嘩でもしたのか?」

 ある晩、ベッドの中で、夫に問いただされました。さすがに、夫にも不自然に思われていたのでしょうか。わたしは、努めて平静に、

「喧嘩なんかしてないわよ」

 と答えました。

「どうして、そんなことを思ったの?」
「だって、お前ら、本当の姉弟みたいに、仲良かったじゃないか。それが、全然、この頃、目も合わせないし」
「あなたの気のせいじゃないの。わたしは、別に、接し方を変えたつもりはないよ。もしかしたら、浩二くんに、悩みでもあるんじゃないの?」
「悩み?」
「何て言っても、お年頃だから」
「女か?」
「分かんないけど」
「まあ、何かしら悩みがあるなら、相談に乗ってやってくれないか。この頃じゃ、おれよりも、お前の方が、あいつと話が合うみたいだからさ」

 夫は、年の離れた弟である浩二くんの方が可愛いのでしょう。わたしよりも彼のことを思いやっている様子に、ょっと嫉妬したわたしから夫は背を向けて、言いたいことだけ言うと、いつもの通り、寝てしまいました。夫とは、いつか彼に気まぐれに求められて以来、一度もありません。

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