母の浮気/102
しばらくして、母は正気を取り戻したようである。
「良太ぁ……」
息子の顔を抱き寄せるようにすると、唇や頬にチュッチュッとついばむようなキスをしてきた。キスの小雨を受けた良太は、少しの間、されるがままになっていた。
「ああ、気持ちよかったぁ……」
母は満足したのか、そう言って、
「じゃあ、お風呂から出て、出かけましょうか」
と続けた。本音を言えば、良太は、どこにも出かけずに、家でだらだらしながら、シたくなったらするという生活をしたかったけれど、母が完全に出かける気になっているので、そういうわけにもいかず、言われた通りにするしかなかった。良太は、母から離れた。
二人それぞれ体を洗って、浴室を出て、軽く食事を取ったあと、
「じゃあ、出発進行!」
母の運転する小型車の助手席に、良太は乗った。
母の予定では、映画を観たあとに、昼食を取って、軽くドライブするというものである。母から、映画館は隣町まで行った方がいいかと問われたけれど、良太は、駅前にあるところでいいと答えた。
「お母さんといるところ見られても、いいの?」
「別にいいよ」
良太もお年頃なので、親と歩いているところを見られるのは以前は嫌だったのだが、少なくとも母と歩いているところを見られるのは嫌ではなくなった。自分でも不思議である。映画館に着いて、隣り合って歩いていると、周囲から母に向かう視線が多いことに気がついた。
体の線がはっきりと出るような服装では無いけれど、匂い立つ色気は隠しようもないようである。良太は、そんな女を連れて歩き、それだけはなく、ばっちりと関係していることに誇らしい気持ちを抱く一方で、無遠慮な視線を向けられていることについて不快感も得た。
映画は、洋画のラブコメディで、まあまあ面白かった。上映の最中、良太は、隣に手を伸ばして、母の太ももを撫でるようにしてみた。すると、母から手が返されてきて、その手がズボン越しに肉棒を撫でてきた。
そんなことをして、またされていると、朝発散した欲求が再び溜まってきて、かなうならば、映画館のトイレにでも入って、母を犯したかったが、母は映画を楽しんでいるし、そもそも、公共の場で母と交わるまでの勇気は無いので、この欲求は夜、晴らさせてもらうことにして映画を見続けた。
「ああ、面白かったぁ」
映画を見終わると、母は心から楽しそうな声を出した。前から見たいと思っていた映画だったそうである。
「じゃあ、今度は、お昼、食べに行こうっ!」