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官能物語 2021/07/20 10:00

美少女のいる生活/21

「じゃあ、そろそろ寝るか」

 貴久が言うと、まだ10時前だったが、美咲は素直にうなずいた。
 貴久は、美咲の部屋には客用の布団を敷いてやった。

「次の休みの時にでも、ベッドを買いに行こう」
「わたし、お布団好きですよ。家でも布団でしたし。敷いたり畳んだりするのが好きなんですね」
「まあ、でも、ここフローリングだからなあ。床の上に布団ってどうなんだろうか」
「大丈夫だと思いますけど」
「気が変わったら、言ってくれ。じゃあ、お休み」
「お休みなさーい」

 彼女と別れ、寝室のベッドに横になった貴久は、ふうっと息をついた。一人で暮しているところに、もう一人を迎えたわけだから、それなりに疲れているのは当然である。しかし、それは一仕事終えたあとの心地良い疲れとでも言うべきものであって、不快なものでは全く無かった。これから毎日、このような疲れを得て眠りにつくのかと思うと、悪くない気分である。

 うつらうつらとし始めたときに、ドアにノックの音がして、引き戸が開かれたことに貴久は気がついた。

「美咲ちゃん?」
「怖かったらいつでも来ていいって言いましたよね」
「怖かったの?」
「全然」
「おいで」
「はい」

 貴久は、彼女をベッドの中に入れた。一人用ではあるが、ちょっと広めのベッドなので、二人で寝られないこともない。貴久は、少女を腕の中に入れた。

「大胆な子だな、まだ初日だぞ」
「だって、時間は待ってくれませんもん」
「なるほど、それはその通りだ」
「あの、貴久さん」
「ん?」
「わたしって、女の子としての魅力ありますか?」
「もちろんだよ。今だって襲いかからないように、最大限の自制心を発揮しているんだ」
「本当ですか?」
「本当だよ」
「ふふっ、よかった……あの、これだけは言っておきたいんですけど」
「なに?」
「わたし、貴久さんのこと、お父さんみたいだとか思っていませんから」
「ん?」
「父に甘えられなかった分、貴久さんにお父さん代わりになってもらって甘えたい的な願望、ありませんからね」
「そんなこと考えもしてなかったよ」
「じゃあ、よかったです」

 貴久は、こうして腕の中にしていてもなお、彼女のことを抱こうとは思えなかった。約束の日に本当に彼女を抱けるのかどうか、大いに疑問である。

「ていうか、その『お父さん』だけど、今回の件は、お父さんに話しておいた方がいいのかな」
「絶対やめてください。わたし、景子さんとの件について全く聞いてなかったんですから。今度はわたしがやり返してやるんです」
「あとから知られたら殴られそうだな、おれ」
「なら、わたしがやり返してあげます」
「ははっ、美咲ちゃんなら、やりそうだな」
「貴久さん」
「ん?」
「もっとくっついてもいいですか?」
「もっと?」
「はい、もっとです」
「いいよ、おいで」

 貴久は、彼女のしなやかな体つきと花のような清らかな香りを感じた。そうすると、途端に頭の奥がスパークするようになって、体の奥がうずくようになった。どうやら、ついさっきの思いを訂正しなければいけない必要性があることに、貴久は気がついた。

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官能物語 2021/07/18 19:00

美少女のいる生活/20

 貴久は反応に困った。それはそうである。以前に女の子から、自分が処女だなどと告白されたこともなければ、そんなことを告白される日が来るということなど予想だにしていなかった。しかし、大人として何かしらの反応を見せなければいけない限りは、

「これまでカレシいなかったっていうのは、本当だったんだ」

 ととりあえず無難――であると思われる――答えをすることにした。
 美咲はムッとした顔を作った。
 貴久はドキリとした。
 どうやら、何か応答を間違えたようである。

「わたし、今、すごく恥ずかしい思いをしています」
「そうだろうね。おれも自分が童貞だって言わなければいけないとしたら、恥ずかしいと思うよ」
「そういう告白を自分からしたことは?」
「童貞だったとき?」
「はい」
「いや、無いな」
「じゃあ、想像してみてください。どのくらい恥ずかしいか」

 貴久は想像してみることにした。それなりに恥ずかしい気がしたが、童貞だったときのことなど随分と昔のことである。その頃のことを想像してみようとするのは、ちょっと無理があった。

 美咲はその涼やかな目元を厳しくした。

「その恥ずかしさを思い出したとところで、もう一度、わたしのさっきの発言に対する答えを許可します」
「了解です」
「では、どうぞ」
「……おれのために取っておいてくれたんだな?」

 貴久は、おそるおそる少女の顔を見た。
 彼女は、真面目にうなずいた。

「いつにしますか?」
「『いつ』とは?」
「わたしの処女卒業の日です」
「この前、高校を卒業したばかりだろ」
「ごめんなさい、貴久さん、わたし今冗談に付き合っている気分じゃないんです」

 処女であることの告白などという行為が冗談では無いのだとしたら、今後いったい何を冗談と呼べばいいのか分からなくなるだろうと貴久は思ったが、口には出さなかった。

「それで、何、卒業?」
「そうです。つまりは、わたしと貴久さんが結ばれる日です」
「おれが、美咲ちゃんと」
「そうです!」

 貴久は、じーっと美咲を見た。
 どこからどう見ても可憐な少女である。

「やだ……そんなに見られたら照れちゃいます……」

 ちょっとノリがいいところが玉に瑕だが、そうは言っても、それほどの瑕では無いばかりか、その瑕さえも愛おしいと思わせる魅力がある。しかし、その魅力的な少女と自分が交わるという図は、どうにもイメージできなかった。

 というかしたくない。美しくない。何やら醜悪である。美女と野獣みたいなものだ。

 とはいえ、彼女が自分のことを好きと言ったからには、当然にそこまでの行為を含んでの「好き」なのだろうけれど、そういうのは、たとえそうなるとしても、もっと時間を置くものではないだろうか。エッチの、しかも、初体験のリザーブなど聞いたこともない。

「入学式がある週の週末でどうですか?」
「美咲ちゃん」
「『はい』か『いいえ』で」
「いいえって答えたらどうなるんだよ」
「その次の週末を推します」
「分かった」
「えっ……」
「えって何だよ」
「疑っているわけじゃないんですけど、何かごまかそうとしてませんか?」
「そんな男だったら、きみが処女を与えるに値しない男だろう。他のやつを探した方がいい」
「じゃあ?」
「もらいうけるよ。きみの処女を」
「ありがとうございます!」

 美咲は、契約が取れた営業ウーマンででもあるかのように、深々と頭を下げた。

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官能物語 2021/07/17 15:00

美少女のいる生活/19

「あっ……」

 美咲が小さく驚きの声を漏らす。

「男が可愛い女の子にすることって言ったら、決まってるだろ」

 貴久は、腰に回した腕に力を込めると、美咲をじっと見つめた。

「えっ……えっ……」
「目を閉じて、美咲ちゃん」
「ま、待ってください……まだ、心の準備が……」
「いいから」

 美咲は、素直に目を閉じた。
 貴久は、目を閉じて心なし唇を突き出すようにしている彼女の、そのおでこに、もう一方の手で軽くデコピンした。

「えっ!?」
「こういう目に遭うんだよ」
「ど、どういう目ですか。からかわれる目?」

 美咲はムッとした顔をした。
 貴久は少女の細い腰から腕を放した。

「わたしのドキドキを返してください!」
「ドキドキしてもらえるとは光栄だな」
「わたしが貴久さんのこと好きだってこと、信じてないんですか?」
「いや、信じているよ、モチロン」
「本当は?」
「ちょっと信じられない部分もある」
「ちょっと?」
「いや、かなり」
「シャワー浴びてきてください。そのあとに、お話があります」
「体のこと?」
「そうです」
「分かった」

 貴久は、勧められたとおりにシャワーを浴びた。そうして、どこかわくわくとしている自分を感じた。これから素晴らしいことが起こるような、そんな感覚である。こんな感覚は久しぶりだった。小学校の時以来かもしれないと思えば、随分と平凡な人生を歩んできてしまったものだと、げんなりした。

 シャワーから上がって、Tシャツと短パンを身につけて、ダイニングテーブルに戻ると、相変わらず露出が多い少女が、

「炭酸水飲みますか?」

 と訊いてきたので、一杯いただくことにした。炭酸水にレモンジュースを少し入れてくれたものを飲むと、シャワーをしたことと相まって、体が爽快になるようだった。

「さて、と。じゃあ、話を聞こうか」

 貴久は、ダイニングテーブルで彼女と向かい合った。彼女の表情は、これまでのものとは違って緊張しきっている。これはよほどの病状なのだろうと、貴久は考えた。そんな病状がどうして父親である友人にバレていないのか不思議であるが、まずは話を聞いてみてからのことだった。

「あの……」

 美咲は、口を開きかけて、すぐに閉じた。

「急がなくてもいいよ」
「はい……約束していただけませんか、貴久さん」
「分かった」
「まだ何も言っていませんけど」
「どんな約束でも守るよ。おれに無茶な約束はさせないだろうって、美咲ちゃんを信頼している」
「これから言うこと、誰にも言わないでもらえたらと思って」
「それはお父さんにも?」
「ち、父にですか!? もちろんです! 一番言っちゃダメな人です!」
「そうか……ショックを与えるからかもしれないからだね」
「ショック? まあ、ショックはそれほどではないと思いますよ。『そうなんだ、ふーん』くらいで」
「その程度のことなの?」
「わたしにとっては違います!」
「なるほど……」

 何のことやら貴久は、さっぱり分からなかったが、すぐに分かることになった。

「わたし、処女なんです」

 美咲が、思い切った声を出した。

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官能物語 2021/07/16 10:00

美少女のいる生活/18

 買い物袋を下げて部屋に帰ってくると、

「それじゃ、作りますね!」

 と張り切った美咲に、貴久はエプロンを与えた。

「クマのプリントがなくて悪いけど」
「我慢します」
「何か手伝えることは?」
「特に何も。テレビで相撲でも見ていてください」
「相撲は別に好きじゃない」
「じゃあ、ゲームするとか、本を読むとか、お好きに」
「了解」

 貴久は、もう何度も読んでセリフを完全に覚えてしまっている、アクション漫画を持ってきて読みながら、美咲が料理をしている姿を見ていた。さすがにこなれた動き方をしている。おそらく、料理だけではなく、家事全般できるのだろう。

 小一時間ほどで、料理は完成したようだった。

「終わりました!」
「お疲れ様」
「貴久さん、わたし、シャワー浴びてきてもいいですか?」
「もちろん」
「それで……着替えのTシャツお借りしてもいいですか?」
「ああ、いいよ。じゃあ、ちょっと待って、確かまだおろしてないのがあったはずだから」
「わたし何でもいいですよ」
「いや、これはこっちの問題なんだ。汗染みができていたり、加齢臭がするものを、女の子に渡したくない」
「結構、繊細ですね」
「お年頃なんだ」

 貴久は、まだ身につけていないグレーのTシャツを彼女に渡した。

「下はどうする? 短パンでも履く?」
「でも、これ大きいから、チュニックみたいになりません?」
「ならないと思うけど」
「やってみます」

 貴久は、彼女がシャワーを浴びている音が聞こえてくると、それにもまた奇妙な気持になった。自分がここにいるのに、シャワーの水音が聞こえるというのは、つまり、自分以外の人間がここにいるというそのことだった。当たり前。

 その当たり前に慣れないこともまた当たり前だった。二人で暮すことになってから、まだ半日ほどである。これに慣れる日が来るのだろうか、というか、これから彼女と一緒に暮していくということにどうにも現実感がなかった。

「さっぱりしました、貴久さんもシャワーどうですか?」

 そう言って現われた彼女は、下着の上に貴久のシャツを身につけた格好であって、白い太ももを惜しげ無くさらしていた。ややもすると、ショーツが見えそうなほどである。

「大丈夫そうですね」
「どこがだよ!」
「気になります?」

 美咲は、シャツの裾をちょっとめくるようにした。

「ストップ」
「冗談ですよ」
「キミはちょっとは警戒した方がいいぞ。随分とおれのことを信頼してくれているようだけど」
「警戒って、貴久さんに?」
「そうだよ」
「どうされちゃうんですか、わたし?」

 貴久は美咲に近づくと、少女の腰に自らの腕を回すようにした。

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官能物語 2021/07/13 11:00

美少女のいる生活/17

 夕食の買い出しに、もう一度出かけるということになって、貴久が美咲を伴って部屋を出ると、マンションの同じ階の住人に出会った。20代半ばほどの彼女は、一人暮らしの会社員のようであって、いつもはパンツスーツ姿でキメているけれど、今は春めいた薄手のブラウスにスカートという格好だった。

「こんにちは」

 愛想よく挨拶してくれる彼女に対して、貴久は、美咲のことを紹介した方がいいのか考えたが、彼女とはそれほど親しいわけでもない上に、話が複雑なのでやめておいた。もしも、彼女から、

「姪御さんですか?」

 などと訊かれるようなことがあれば、そうです、と適当をやろうかと思ったが、特に訊かれることもなかった。
 貴久は、一緒にエレベーターに乗って下まで行き、彼女を先に下ろした。

「ありがとうございます。失礼します」

 そう言って、立ち去る彼女を見送った貴久は、隣から軽く美咲に体をぶつけられた。

「どうした?」
「貴久さん、デレデレしてましたよ、さっきの人に」
「いや、してないだろ」
「してました」
「そうかなあ」
「鼻の下伸びまくってたじゃないですか。ちょうどあの人、景子さんくらいの年ですし。狙ってません?」
「おれは何も狙ってない。キミに狙われたんだ」
「でした、でした」

 マンション前の道はゆるやかな坂になっている。

「さっきは下っていったけど、今度は登っていこう。こっちにも、スーパーがある」
「はい」
「ビーフストロガノフって手間じゃないの?」
「材料だけあれば簡単ですよ」
「作るの見てようかな」
「どうぞ、どうぞ」

 坂を登り切ると空が開けて、その下に、大き目のスーパーがあった。貴久は美咲を連れて、店内に入ると、カートを押す役目を謹んで承った。カゴに、美咲が食材を入れていく。勝手に大がかりな料理だろうと思っていた貴久だったが、ビーフストロガノフの食材は、驚くほど少なかった。

「もちろん、本格的にやろうとすればもっと材料が必要なのかもしれませんけど、少なくとも今のわたしには無理です。精進します」

 美咲は正直なことを言った。店内を一回りすると、会計で財布を出して自分で払おうとしたので、

「ストップ、おれが払う」

 貴久はクレジットカードを出した。

「でも――」
「『でも』は無しだ。とりあえず、こういうことに関するルールを、ビーフストロガノフを食べながらでも決めないとな――あ、すみません、そのカードで会計をお願いします。はい、一回払いで」

 貴久がレジの女性に言うと、彼女はすぐにそれに従ってくれた。

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