猫虎屋 2023/02/08 00:28

王女とバスタオル杯

ソフィ王女のファンになったのは、帝国との大規模戦闘で氷の国の代表として凛々しく指揮を執る姿を見たときだった。
一介の一兵卒に過ぎない自分には、近づくことすら許されない。まさに高嶺の花。

だが彼女は見た目に反して自由を好む人で、王女という枠に囚われずに冒険家としてもソロで活動していた。
なんとかお近づきになる機会はないかと探っていたが、肝心なところで尻込みしてしまって、一緒にパーティを組んだことすらない。もちろん向こうはこちらのことなど認識すらしていないだろう。
そんなこんなで悶々としているうちに、びっくりする情報が飛び込んできた。
ソフィ王女がバスタオル杯に出るというのだ。

彼女は本当にこの大会の趣旨を理解しているのだろうか?
賞金こそ高額なれど、負ければ容赦なく犯されるという厳しいペナルティが課される試合である。お金に困っているわけでもないソフィが出るなんて、なにかの間違いかと思った。
だが確かに試合名簿にはソフィの名が記されており、出ることは確実である。
彼女が他の男に犯されるなんて。なんとか阻止したかったが、自分にはどうにもできない。唯一できるとしたら、○す側に回ることだけだった。

大会は全員5試合ずつ行われ、1度敗北するたびに1回犯される。
つまりは最大で5回犯される可能性があるということで、その役目を担う"ボールボーイ"は5人ずつ選出される。
ボールボーイの志願はオークション形式で入札が行われ、金額が高いほど順番が先になるという仕組みだ。
もし5人目になってしまったら、対象プレイヤーが全敗しない限りはその順番が回ってくることはない。

一兵卒の安月給にはなかなかに厳しい15万Gという大金を出したのだが、結局順位は3位だった。ソフィの順列1位落札額は80万Gだというのだから到底手の届かない金額である。
だが他の選手を見ると、中には200万だの300万だので争った例もあるらしく、とりあえず3位に食い込めただけでも幸運と言うしかない。あとは3敗してくれるのを願うしかない。


ソフィは1戦目で勝利したが、2戦目と3戦目は敗北。その時は自分はあえて席を外していた。そして4戦目で辛勝し、5戦目を迎える。勝つか負けるか。ソフィのファンなのに、彼女の敗北を願うという歪んだ構造に皮肉を感じたが、背は腹に変えられない。これで負けてくれないとお預けどころか15万払い損である。

「ゲームセット!敗者、ソフィ・R・ファルク!」
高らかに笛が鳴らされ、敗者が決まる。その瞬間、全身に血が沸き起こるの感じた。
この時のためにずっと我慢してきたのだ。この瞬間のために。

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