男優試験

ティナはヴィンセントの事務所で専属女優をしている。
なりたくてなったわけではないが、なんとなく流れでそうなってしまっていた。
専属男優はいまのところブラッドひとり。あとはカメラマンのレクト。
売上に対して人数が少なすぎるので、そろそろ新しい人材を雇うことになった。

「ということでティナ、専属男優を選ぶことになったんだが。」
ブラッドは事務所でくつろいでいたティナに話しかける。
「どうして私に振るの。」
あまり興味がなさそうである。
「関係ないことはないぞ。なんたってお前さんが選ぶんだからな。」
「私が？」
「そそ。なんたって専属男優だからな。一番共演する奴が選ぶのがいいだろ。身体の相性だってあるし。」
「そんなの知らない。」
「AV女優は星の数ほどいるが、AV男優はそれに対して驚くほど少ない。なんでだかわかるか？」
「なりたい人が少ないんじゃないですか」
「そんなことはない。希望者ならたくさんいるさ。でも務まらないのさ。結構ハードなんだぜ、この仕事。」
ブラッドが力こぶをしてみせる。彼は名うての男優の一人だが、それでもこなせる撮影の数は多くて週に3本くらいだ。
「どーだか」

「というわけで、20人ほどのAV男優候補が集まっている。どれも性欲とテク自慢のイケてる男たちばかりだ。これから一人ずつ相手して、ここから合格者を選んでほしい。」
「はああ！私がですか！？」
「あったりめーだろ。さっきそう言ったろ。容姿、テクニック、体力、絶倫かどうかなど、実践を通して総合的に判断してくれ。」

ダイエットジム

「あれ？トワちょっとふっくらした？」
「……！！？」
放課後にあんみつ屋で口をとろけさせていたトワは、セツナのその一言でスプーンを持つ手が止まる。全てはその言葉が始まりだった。
トワにも心当たりがないわけではない。お風呂上がりに体重計に乗るたびに、徐々にその数値が増えていっている。少しずつだが、しかし確実にその数値は増していった。
それは未だ成長を止めないバストサイズの拡大にも比例していたのだが、それよりも体重という現実的な数字として見せつけられるのが耐えられなかった。
「だ…ダイエットします……。」

＊

『過程をオミット！楽して確実に痩せるダイエットジム。レディース特典により、25歳未満の女性は三ヶ月間無料！』
そんな広告が飛び込んできたのは、まさに天啓だと思った。
普通のジムの会員費は意外と高額である。カードの買い過ぎで懐が寂しいトワにとって、三ヶ月とはいえ無料というのはあまりにも魅力的だった。それで効果が出なければやめてしまえばいい。とりあえずお試しのつもりでダイエットコース三ヶ月に申し込んだ。

「あれ？トワ、今日もジム」
「はい。パーソナルトレーニングの予約を申し込んでいるので……」
「最近毎日だね～。効果は出てるの？」
「ええと、結構筋肉は付いてるとは思うのですが、肝心の体重の方は……むしろ増えているような…」
「だめじゃん」
「もう少し頑張ってみます。それに筋力がついたせいか、今まで付けていたブラもきつくなってしまって…」
「そこまだ大きくなるの！？」

＊

トワの申し込んだレディース専用のダイエットプログラムは、1回30分のプログラムで、パーソナルトレーナーが1人つき、個室でトレーニングする。
そこでやることは極めてシンプルなことだった。
「トワちゃん、今日はこれがラスト？」
「は……はい。今日はこれで上がります。」
トワはいつも30分のプログラムを4本こなし、毎日2時間ほどトレーニングしている。今日はこれで4本目。
「じゃ、このままでいいよね。」

昼間の仕事

「そういえばさ、シルファって何の仕事してるんだっけ。」
「えっ！？…ええと、悪の味方を……ですけど…」
「そっちじゃなくてさ、普段の仕事。」
「そうそう。シルファさん、結構お金持ってますよね。香水とか、お洒落にも気を使ってますし。」
「さてはオメー盗っ人やってるナー！ミトラと同罪かー？」
「ち、違いますよ……。ええと、その。お客さんをお風呂に入れたりとか、身体を洗ってあげたりとか、その。」
「あー！わかった！介護の仕事ね。」
「なるほど。福祉系でしたか。それは立派な仕事ね。」
「えー、つまんなさそうだヨ～」
「まあ…その。つまらなくはないですけど、結構、疲れる仕事です……。」

二人旅

ツキミは最近ハルカとペアを組んで冒険の旅をしている。
ハルカのことを半ば強引に誘ったかたちだが、ハルカもなんだかんだで信用してくれているようだった。
冒険と言っても、世界に散らばる智の民を探すという途方もない目的の旅で、なかなか成果のほうは上がらない。
細々と魔物退治などもしていたが、得られる収入はわずかしかない。
それでハルカに秘密の方法を伝授することにした。それは白魔術の魔力を回復するとともに、資金を稼ぐこともできる、画期的な方法だった。

メイドさんのアルバイト