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うんすじの記事 (18)

おかず味噌 2020/02/25 00:12

ちょっとイケないこと… 第四話「前戯と共感」

(第三話はこちらから)
https://ci-en.dlsite.com/creator/5196/article/214847


 足元の水溜まりを踏まないように気を付けつつ、下半身を不格好に固定したまま、彼に導かれるがままに部屋へと戻り、そのままベッドに押し倒される。

 ありがちな展開(なのかは分からないけれど、映画やドラマなんかではそう)だ。幾度となく想像し、妄想してきた想定の行程。

 ただ予定と少しだけ違うのは、私の手を引く彼の力が終始遠慮がちであったこと。勢いに身を任せることで、むしろ私自らの意思で仰向けになったこと。そして何より私の体が『おしっこまみれ』であることだった。

「ベッド、汚れちゃう…」

 申し訳なさから私は呟く。

「洗えば、大丈夫だよ」

 心配ない、と彼は言う。そんな未来の問題より、あくまで現在に期待するように。

 彼は服の上から私の体をまさぐり、それから強引に唇を重ねる。私は目を閉じて、彼のキスを受け入れる。

 呼吸を止めて一秒、ならぬ三秒間。(体感としてはもっと)彼はそっと唇を離す。こうして私の「ファーストキス」はあっさりと奪われたのだった。


 済んでしまえば実にあっけないものだった。どうして頑なに守り続けてきたのか、なぜ私にそうした機会が訪れなかったのか、不思議なくらいに…。

 キス自体は不快なものではなく、かといって快楽を感じられるものでもなかった。それでも頭の奥が痺れるような気がした。日常と地続きの非日常の扉を開くような、そんな気分だった。

「初めて」の余韻に浸っている中、彼は再び私の唇を奪ってくる。二度目の口づけ。(「セカンドキス」なんて言葉はあるのだろうか?)私はまたもそれを受け入れる。やや余裕が生まれたためか、今度は少しばかりの快感を得ることができた。

 さらに。唇を重ねたまま、彼はわずかに上体を浮かせて私の胸に触れる。
「おっぱい」と呼ぶには控えめな、それでも腰との対比でそれなりに大きく見える、私の自慢の部位の一つ。だけど、そこに秘められた事情があることを彼は知らない。

 このまま服を脱がされずにいたならば、あるいは明かされずに済むかもしれない。だがもはやそんな段階ではない。私は今夜また一つ、彼に秘密を晒してしまう。

 紛れもない私のコンプレックスの一つ。私を初体験から遠ざけていた一因。
 日常生活ではさほど気にならないその特徴も、いざ男女が裸を見せ合う場となれば異端として。行為の発端を妨げる要因になり得るのだった。

 彼はそんな私の先端を見て、何を思うのだろう。まさか笑ったりしないだろうが、内心でどう思われるかまでは分からない。私はそれが怖かった。


 続いて彼はベッドと体との隙間に手を差し込み、私のお尻に触れてくる。そちらに秘めたる事情こそないものの、今だけは少々状況が異なる。

 私は、ついさっき『おもらし』をしたばかりなのだ。ほんの数分前のことなのに、それは遥か昔の出来事のようにさえ思える。だけど粗相の証拠は確実に残っていて、股間から広がる染みはショーパンの後方まで浸食しているのだった。

 濡れた着衣の上から、お尻を揉まれる。彼は私の失態をどう思っているのだろう。大学生にもなって二度も『失禁』した私に対して、果たして何を思うのだろう。

 彼が私をベッドに誘ったということは、少なくとも嫌悪を抱いてはいないらしい。それもそのはずで、私が自らの体を穢すことになった原因はそもそも彼にあるのだ。
 彼がトイレに行くのを阻止しなければ。私は悲惨な目に遭うことも、陰惨な性癖に目覚めてしまうこともなかったのである。

 だがそれにしても。なぜ彼は二度も(二度目については私にも大いに責任がある)私の生理的欲求を邪魔しようと試みたのだろう。 
 その悪戯自体に何の意味もなく、彼の悪名を高めるものでもないのにも関わらず。ただ私を醜悪に貶め、ともすれば心に傷を負わせかねない悪行を働いたのだろう。

 鼓膜を揺らす残響に耳を傾ける。決壊の間際、彼は私の耳元で呟いた。
「いいよ」と。三文字のその承認は私がトイレに行くことを許可するものではなく、あくまで『穿いたまま』出すことを彼は了承したのだ。

 そこでふと、ある違和感に思い当たる。

――もしかして、○○さんも…?

 静観しつつも、共感の予感を抱くのだった。


 一頻り尻を揉みしだいた後、彼はついに私の服を脱がせにかかる。と見せかけて、着衣状態のまま私の膝を掴んで開脚させる。

――このまま、挿入するつもりなの…?

 疑問というか、怪訝が一瞬脳裏を掠めたものの。まさかそんなはずはないだろう。
 私が穿いているのはデニム生地のショーパンだったし、その下にはショーツだって身に着けている。下着は手で破れるだろうが、さすがに服まで破くのは不可能だ。

 脚を開かせたまま、彼は私の股間を注視する。私は身動ぎし、微かな抵抗を示す。

 正直言ってやめてほしい。そこは盛大に濡れて、色が濃く変わってしまっている。それに臭いだってするだろう。私の最も恥辱に塗れた部分。であるにも関わらず…。

 彼は私の局部に顔面を埋めてきた。ついさっき『おもらし』したばかりの恥部に、今や本能の溢れる陰部に、理性を司る頭部を押し付けてきたのだった。

「やめて、ください!!」

 はっきりと私は拒絶する。彼の行為に対してというよりも、主に私自身の問題からそれを拒もうとする。けれど…。

 今さら脚を閉じようしたところで、もう遅い。すでに彼の頭は私の股の間にあり、両脚で挟み込むことで、よりガッチリと固定する格好となる。

 まさに恰好の餌食ともいうべき、ショーツでいうところのクロッチに当たる部分を生贄の如く彼の眼前に捧げ、忸怩たる汚染を食餌のように彼のお膳に捧げることで。私は、彼に『おしっこの匂い』を直接嗅がれてしまう。

――フンス…。スンスン。

 彼が鼻を鳴らし呼吸するのが、息の音と温度で伝わってくる。

「結衣のココ、おしっこクサいね!」

 おどけた口調で彼は言う。

――やめて、言わないで…。

 既知の事実を改めて口に出されることで。顔から火が出そうな羞恥を覚えつつも、これまでとは比にならない情痴に私は身を焦がすのだった。


 そこからさらに、彼はとんでもない行動に出た。

 ただ嗅ぐだけでは飽き足らず。そこに溢れるものを知った上で、それを物ともせず。彼はショーパンに舌を這わせ、私の『おしっこ』を舐め取ったのだ。

「やっぱり苦いね」

 彼は苦笑する。その反応によって、ようやく私自身の疑心に確信を得る。

――やっぱり、○○さんも『おもらし』が好きなんだ。

 あくまで自分がするのではなく、「女の子が漏らす」という行為に興奮する性質を彼は持ち合わせているのだ。

「もしかして、○○さん『も』おもらしが好きなんですか?」

 勇気を出して彼に訊ねてみる。直後、後悔に襲われる。同調を表わすその助詞は、女子としてあるまじき私の所思を強調してしまったのにも等しかった。

「えっ?結衣も好きなの?」

 案の定、彼に指摘される。私的な性癖について、正直に告白するしかなかった。

「はい、まあ…。この前、○○さんの家でしちゃってから」

 消え入りそうな声で私は呟く。かつての自分に別れを告げ、追悼を捧げるように。

 それまでの私は正常だったのだ。孵化を待つ雛の如く未体験に浮かされながらも、決して異常な性癖など持ち合わせてはいなかったのだ。
 だが今となっては。奇禍に感化されることで、思わぬ変化が私に付加されていた。

「実は俺、あの時めちゃくちゃ興奮したんだ」

 彼もまた自白する。私から訊いてもいないのに勝手に自爆する。

「そうなんですね。でも、ヒドイですよ~」

 あくまで自分のことは棚に上げつつ、私は彼に抗議する。

「ごめんね。まさか本当に、おもらし『してくれる』なんて思わなかったからさ」

 徐々に彼の本音も漏れ始める。互いに少しずつ打ち解けるように…。

「あの後、大変だったんですよ?」

 家(ウチ)に帰ってからのことについて、彼に打ち明ける。

 いい歳して夜中に一人汚れた下着を洗うというその惨めさが彼に分かるだろうか。
 あるいはそれさえも、彼にとっては興奮の材料なのかもしれない。

「本当ごめんね。俺、結衣が帰ったあと我慢できなくて…」

 彼もまた、事後のことについて自供する。

「つい、一人でしちゃったもん!」

 秘めたるべき行為を「イケないこと」を包み隠さず供述する。

――私と同じだ!

 口にこそ出さないものの、私は内心で共鳴する。
 私も下着の事故処理を終えた後、部屋に戻ってから自己処理に耽ったのだった。

「変態ですね」

 私は彼を断罪する。だがその断定は自刃の如く、自身にも向けられた弾丸だった。


 彼はいよいよ、ショーパンに手を掛ける。ホックを外し、ファスナーを下ろして、私の下半身からズボンを抜き取る。私は腰を浮かして、それを手助けする。

 黒タイツに透けたショーツが露わとなる。『おしっこ』にまみれた、濡れた下着。彼はそれさえも、私の一部として愛してくれるのだろうか。

 残念ながら今日の私の下着は彼の興奮を大いに高めるものではないかもしれない。普段通りの、飾り気のない、ごく普通のショーツ。「もしかしたら」と思ったけれど、下着にまで拘る気にはなれなかった。(そもそも私は勝負下着なんて持っていない)

 私が穿いていたのは、奇しくもあの日と同じ、黒のショーツだった。濡れたことで若干色が濃くなっているものの、染みはそれほど目立たない。それを不幸中の幸いと捉えるべきか、あるいは「残念でした」と斜に構えるべきだろうか。

 彼はそこでさらに私の予想の斜め上をいく行動に出た。ショーツには目もくれず、私の脚を舐め始めたのだ。

 黒タイツ越しの太腿から膝にかけて舌を這わせ、それはやがて足首にまで達する。続いて彼は私の足を手に取り、足の甲から指、指の股、足の裏さえも舐めに掛かる。

 まるで別の生き物であるかのように徘徊する彼の舌にくすぐったさを感じながら、妙な征服感を満たされつつも。またしても未知なる羞恥を私は覚えるのだった。


 まだシャワーも浴びていないし。『おしっこ』の汚れについては言うまでもなく、ごく当然に汗だってかいている。新陳代謝による今日一日分の穢れ。その味と匂いを彼に覚えられてしまう。

 再び股間が湿る感覚を自覚する。そこはもはや彼を受け入れるための領域であり、彼のモノを迎え入れるための聖域なのだった。

「もう、入れて欲しいかもです…」

 私は懇願する。本来ならば女性側から口にするべき台詞ではないのかもしれない。それでも確かな勝算と、僅かな打算を込めて私は言う。
 男性にとってはその言葉こそが前戯の完了を告げる合図なのだと、準備万端だと、その相互確認に他ならないと分かっていたからだ。

「結衣、四つん這いになって」

 彼にそう指示される。その方が脱がしやすいから、と彼は言う。仰向けの体勢から私は一旦起き上がり、ベッドに膝をついて彼に言われた通りの姿勢を取る。

 高く突き上げられ、突き出さされた、黒タイツ越しのお尻。
 彼の手が私の腰に掛かる。そのままショーツ諸共脱がされるのであったが…。

 この期に及んで、私は怪訝と懸念を感じるのだった。


『ウンスジ』

 それは不慮の事故によるものではなく、完全なる自己責任により描かれたものだ。

『大』をした後ちゃんと拭いているにも関わらず、なぜかショーツを汚してしまう。あるいは力を入れた際に、思いがけず括約筋が緩んでしまったのかもしれない。
 拭きの甘さか、お尻の緩さか。どちらの理由にせよ、肛門付近の許されざる痕跡を余すところなく知り得てしまったのだった。

 ふいに私は思い返す。本日の「排泄状況」を…。

 今朝はトイレに行った。さすがデートの最中、事前に催した尿意を抱えておくには無理があったからだ。その後『おもらし』へと至るまで『おしっこ』はしていない。
 そして。『うんち』については今日はしていない。便意を感じなかったからだし、私のそれは不定期に訪れる。

 私は一安心する。少なくとも彼に『ウンスジショーツ』を晒す心配はない、と。
 そんな風に、私の気が緩みかけたところで…。

――バチン!!

 突如、お尻に衝撃が走る。不意打ちに私は「あんっ!」と声を上げてしまう。
 直後、彼が私のお尻の頬を平手打ちしたと知るのだった。

「何するんですか!?」

 私は抗議する。それに対して、

「『おもらし』したお仕置きだよ」

 彼は加虐的な笑みで答え、そこからさらに私のお尻を二、三度叩く。その度に私は「やんっ!」とか「ふんっ!」とか、いやらしい声を漏らしてしまう。

 ようやく「お仕置き」を終えた彼は、私の股間ではなくお尻に顔を埋める。
 まだまだ続けられる彼の「前戯」に、別の事情から私は眉をひそめる。

――もし何かのきっかけで、お尻を汚していたらどうしよう…。

 さすがの彼も『おしっこ』に関しては寛容であり許容範囲内なのかもしれないが、それが『うんち』となれば話は別である。
 彼の興味を萎えさせ、あるいは行為を中断させてしまうかもしれない。

――大丈夫、今日はまだ『大きい方』をしていない。

 それでも。あの日の不始末と同じように、不信は完全には拭い去れなかった。


 そんな私の不安をよそに彼は肛門を舐めにかかる。俗にいう「クンニ」とは違う、お尻の穴を舐められるという行為。その不快さと不可解さに胸騒ぎを覚えながらも、私はただ彼に身を委ねるしかなかった。

 彼のお尻舐めは予想以上に長く続いた。穴の周囲を丹念に舐め回したかと思うと、両手で割れ目を押し広げて、やがて彼の舌は穴の中へと差し向けられる。

 私は何度目かの抵抗をした。だけど私に出来るのはお尻を左右に揺することのみ。彼はそんな抵抗など意にも介さず、私の肛門の味を堪能する。

 長時間そうされていたことで、やがて私の中にある変化が訪れる。
 それはお腹の奥底から来る焦燥であり、乙女として催してはならない衝動だった。

――どうしよう。『おなら』出ちゃいそう…。

 あるいはその失態も『おもらし』のそれと比べればずっとマシなのかもしれない。だが私の粗相を受け入れてくれた彼の前では『放屁』の方が羞恥に他ならなかった。

 今や敏感になりつつあるアナルを刺激されながら、私は欲求を必死で堪えていた。


――続く――

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おかず味噌 2020/02/20 01:12

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おかず味噌 2020/02/14 01:22

ちょっとイケないこと… 第二話「後悔と洗濯」

(第一話はこちら)
https://ci-en.dlsite.com/creator/5196/article/207275


――あの日は、最悪な日だった。

 思い出したくもない。バイト帰り、興味本位で立ち寄った彼の家。そこで私は…。
 あえて口に出すのも憚られる。私は、彼の前で『粗相』をしてしまったのだった。

 果たしていつぶりだろう?およそ記憶になんて残っていない。幼少期、私がかつて『オムツ』をしていた頃以来だ。当時のことであれば別に恥ずかしくもない。私にはまだ自我が芽生えておらず、善悪の判断も羞恥の決断も出来なかったのだから。

 だけど私は、大学生にもなって『おもらし』をしてしまった。
 羞恥の判断も出来る年頃に。善悪とかそれ以前に。

――○○さんが悪いんだ!

 彼は私がトイレに行くのを阻止した。そう、私はきちんとトイレに行き、きちんとそこでしようとしたのだ。そしてそれは本来なら間に合うはずだった。それがまさか『穿いたまま』してしまうことになるなんて…。

 あの瞬間のことは忘れようにもない。ショーツの中がじんわりと温かくなる感触。止め処ない水流が決壊と同時に溢れ出し、最初は不快でどうしようもないのだけど、ある境界を越えるとなぜか心地よく思えてくる。イケないことをしているみたいな、これまで味わったことのない感覚。それはとても不思議な体験だった。


 あの日、帰宅した私がまず最初にしたことは濡れた下着を手洗いすることだった。
『おもらしショーツ』をそのまま洗濯機に放り込むわけにもいかず、バッグに入れて持ち帰ったそれを夜中に一人、洗面台で洗った。

 彼のおかげ(?)で制服が濡れなかったのは不幸中の幸いだった。ノーパンのままズボンを穿いて、かろうじて私は自宅に辿り着いたのだった。

 音を立てずにそっと玄関のドアを開けて中に入る。家中の灯りが消えていることを確認して、忍び足で廊下を歩き、一直線に洗面所に向かう。
 家族が皆寝静まっていたのは僥倖だった。いくら身内といえど、こんな無様な姿を晒すわけにはいかない。ましてや、まだ中学生である弟に見咎められるなんて…。

「お姉ちゃん『おもらし』しちゃったの?」なんて訊かれた日には、姉としての私の威厳が崩壊してしまう。

 だけど私はそれより恥ずかしい姿を、家族でもない他人に見られてしまったのだ。
 裸を見せるよりももっと恥ずかしい行為。いや、それとは少し違う羞恥。

 数十分前の出来事を思い出すと、私はまだ『おしっこ』を出し終えていないような奇妙な感覚に襲われた。膀胱はとっくにカラであるはずなのに。全てをショーツ内と彼の家の浴室のタイルにぶちまけてきたはずなのに。まだまだ出し足りないような、もっと出したいような、すっきりしないような感覚だった。


 バッグの中からビニール袋にくるまれたショーツを取り出す。それはびしょ濡れになっている。鼻を近づけて嗅いでみると、強烈なアンモニア臭が鼻腔を刺激した。

 私は改めて、自分が『おもらし』をしたのだと知った。
 どこかでそれは夢じゃないかと、目が覚めてトイレに行けば済む話と思っていた。
 だけどそれは、紛れもない現実だった。

――明日からどんな顔して、○○さんに会えばいいんだろう?

 少し先の未来のことを考えると、気が重くなった。それはもはや絶望とさえいっていいほどに…。

 一応彼には「誰にも言わないでください」と口止めはしたし、まさか後輩の失態を言いふらすような人ではないから大丈夫だと思うが、それでも万一ってことはある。
 それに(それこそまさにあり得ないことだが)彼が『おもらし』の口止めを口実に私の体を要求してきたとしたら。どちらにせよ私は彼に弱みを握られたことになる。

 考えれば考えるほどに、想像すればするほどに、問題は幾つも山積みではあるが。まずは目の前の問題から一つずつ片づけていかなくてはならない。
 とにかく今の私にできることは、家族が目を覚まさぬ内に汚れたショーツを洗い、少しばかり部屋で干した後、何食わぬ顔でそれを洗濯機に突っ込むことだった。


 早速水を出して洗おうとしたとき、ふと思い立って私は作業を中断する。

 思えば(当たり前のことだが)こうして自分の穿いていたショーツを眺める機会はそうそうない。いつもはお風呂に入るときに爪先から脱ぎ捨てて、そのまま洗濯機に投げ込んでいる。汗をかいたときだって、生理のときだってナプキンはしているし、それほど汚れるものでもないだろうからそれで良かった。

 だけど今こうして自分の下着を。本来最も汚れる場所に触れる衣類を観察すると、実に様々な発見があった。

 黒いショーツは『おしっこ』で湿っている。だけど、その濡れ方は洗濯後のように均一ではない。ゴムの付いた上の部分はほとんど濡れておらず、一番濡れているのは当然、股に当たる部分だった。

 クロッチの部分をよく覗き込んでみる。そんな事をしている場合ではないのだが、何か抗えない強大な力にそうさせられているように、自作の『シミ』を注視する。
 ただ『おしっこ』が滲んでいるだけと思っていたそこは、微かに白く汚れていた。

「何だろう?」と思って触れてみると、ヌルヌルと粘り気のあるものが指に付いた。
 細く糸を引くその液体は、私の愛液だった。私はアソコを濡らしていたのだ。

 一体いつから、そんな状態になっていたのかは分からない。あるいは何かの反動で(いわゆる人体の神秘というやつだ)思いがけず溢れてきただけなのかもしれない。もしくは彼の家に誘われたことで、何かを期待する気持ちが私にあったのだろうか?

 そうだ!私がトイレに向かうのを邪魔する際、彼はどさくさに紛れてズボン越しに私の股間を弄ったのだ。あのせいで、あくまで生理現象により濡れてしまったのだ。だとすれば、それは私のせいではない。

 それでも。なぜ下着に愛液が付着しているのか、その理由に心当たりがあった。
 またしても私は思い出す。あの瞬間の感覚を…。


 決壊を迎える直前、限界を越える寸前、ふいに股間が湿る感触を覚えた。
 私は、ついに『チビった』のだと思った。(実際、彼にはそう思われてしまった)だけどその液体は尿とは異なり、私の陰部に温かくまとわりついたのだった。

 まさしくそれは、濡れるという感覚だった。私は『おしっこ』を我慢しながらも『おもらし』の誘惑によって、アソコを濡らしてしまったのだ。

 何ということか。あろうことか私は羞恥によりヴァギナを開かせてしまったのだ。
 それに気づくと、記憶の想起によって、再び股間が熱を帯びるのが分かった。

 私は制服に愛液が付いてしまわないように、股の部分を指でそっとつまむ。だが、時すでに遅し。ズボンを離した瞬間、冷たい感触が確かに伝わってきた。
 そして。制服ズボンを濡らすその液体は今、目の前のショーツのクロッチ部分にも白く染み込んでいるのだった。

 さらに、私の下着の汚れはそれだけに留まらなかった。

 続いてショーツの後方、お尻に触れる部分を凝視してみる。割れ目に当たる部分にカピカピになった茶色い粉のようなものが線状に付着している。そこに鼻を近づけて嗅いでみると、思わずむせてしまいそうなほど強烈な臭いがした。


 それは、紛れもない『うんちの臭い』だった。
 私は、『おしっこ』のみならず『うんち』さえもショーツに付着させていたのだ。

 おそらく、朝トイレに行って排便をした時にきちんと拭けていなかったのだろう。
 私は『大』をした後、大体二、三回は拭くようにしている。ペーパーに付いた便を確かめ「もうこれくらいでいいだろう」と水を流し、トイレを後にする。(ちなみに集合住宅である私の家に、ウォシュレットなんて気の利いたものはない)

 たまに肛門付近にショーツがひっつくような感触もあったが、汗だろうと気にしてなかった。それがまさか、こんなにも『ウンカス』をこびりつけていたなんて…。

『おもらし』の後始末をする際、彼に下着の裏地を見られなくて本当に良かった。
 パッと見ではよく分からないだろうが。凝視されれば確実に私の『ウンスジ』が、ショーツに刻み付けられた痕跡がバレてしまうところだった。

 それに。お尻を触られなくて良かった。仮に割れ目をなぞられたなら、彼の指に『うんち』を付けてしまう可能性だってあった。ましてやお尻を嗅がれでもしたら、『うんちクサさ』を彼に知られてしまう恐れだってあった。


 ふと我に返る。イケない、いつまでも悠長に観察を続けている場合ではない。
 家族は皆寝静まっているとはいえ。いつトイレのために、あるいは小腹を空かせて起きてくるか分かったものじゃない。急がなければ…。

 蛇口を開けて水を出す。ジャーと小気味の良い音。命令を与えられ、感情もなく、水を流す装置。そこに後悔や羞恥があるはずもなく、調整された勢いで溢れ出す。
 漏れ出したわけではなく、垂れ流してしまったわけでもない。私のそれとは違う。だからこそ、堂々としている。

 黒ショーツを水に浸す。やがて、きれいな水によって『おしっこ』は押し出され、押し流されてゆく。ジャブジャブと手で揉んで洗いながら、ショーツから滴る液体を眺めていると、それは何だか『おもらし』しているみたいだった。

 既視感を覚えつつ、体験を再現し客観視しているような奇妙な感覚に襲われる。
 私はこんな風に『おもらし』をしたんだ、と再びアソコがじんじんと疼いてくる。それと共に、わずかに尿意を催してきた。私は尿道に力を込めてみる。

――このまま、しちゃおうかな…。

 どうにも理性が緩みかけている。けれど片付けが余計に大変になることを考えて、私はその衝動を堪えるのだった。

――よしっ、もういいだろう。

 水を止め、ショーツを固く絞る。確認のために今一度、匂いを嗅いでみる。
『おしっこ臭』はすっかり消えていた。洗剤の香りこそしないものの、それはもはや濡れた洗濯物とほとんど変わらない。私は洗面所の明かりを消した。


 ひと仕事終えて部屋に戻る。濡れたショーツを乾かすためテーブルの上に広げる。制服を脱いでベッドに横になる。ブラは付けているが下は穿いていないため下半身は丸出しになっている。
 だがここは数少ない私のプライベート空間であり、深夜に家族が入ってくることもないだろうから構わないだろう。

 これからシャワーを浴びて寝るか、朝になってからシャワーを浴びるかを考える。
 今日は大学帰りにそのままバイトに行った。その疲れもある。それに汚れた下着を洗ったことで、まるで自分自身も清められたかのような錯覚もあった。

 手を頭の後ろに組んで脚を伸ばす。目線を下方に向けると、生え揃った自分の毛が見えた。浴室以外でこうして自分の陰毛を眺めるのは、何だかヘンな感じがした。
 シャワーを浴びているときのそれは濡れてしなしなになっているが、今のそれは(やや湿り気を帯びながらも)乾いていて、ふんわりとボリュームを保っている。

 陰毛に手を伸ばす。柔らかくも髪の毛とは少し違った感触。それを撫で付けつつ、私は夢想に耽る。

――いつか、この場所に触れてくれる男性がいるのだろうか?

 不安にも似た焦燥を抱いている。根拠不明な情報ではあるけれど、若者の初体験の年齢は年々下がってきているらしい。大学生にもなって処女、というのは恥ずかしいことなのだろうか?

「そんなことはない」と言う人だっているだろう。個人差があるものだし、焦る必要なんてない、と。だけど当事者にとってみれば、平均的という指標こそが重要なのであって、それが悪魔のように囁き、私を急かせるのだ。

「遅れている」と…。


 私の処女膜は未だきつく閉じられている。守りたくもないのに、固く守られてきたその部分が、まだ顔も知らない誰かによってこじ開けられる瞬間を想像する。

――やっぱり、痛いのかな…?

 少しだけ怖くなる。だがそれも、自分が周囲から取り残される怖さに比べれば全然平気なものに思える。

 いつの間にか私の指は陰毛を弄るのを止めて、さらにその奥にあてがわれていた。
 男性を迎え入れる場所。『おしっこ』の出る場所。その周辺をなぞってみる。

 きつく閉じられているはずのその部分は、微かな湿り気と温かみを帯びている。
 そして指の動きに合わせて、次々と液体は溢れ出してくる。

 時に乱暴に、時に優しく、アソコを自分の指で愛撫する。己の意思の赴くままに、私の指は気持ちいい場所を熟知している。

 次第に息が上がり、動悸が激しくなってくる。イケないことと思いつつも私の指はもう止まらない。
 膣内を出し入れし、クリトリスを転がす。そのスピードは徐々に速くなる。

――もう、イキそう…。

 私は両脚に力を込めて絶頂が訪れるのを待つ。やがて私の指はペニスへと変化し、その持ち主を想像する。それは自然と彼の姿になった。

「もう、イちゃいそうです…」

 小声で私は呟く。「いいよ」と優しげな彼の声がそれに応える。

――『おもらし』しちゃった結衣に、お仕置きしてください!!

 後から思い返すと、赤面してしまいそうな台詞を脳内で叫ぶ。
「俺も、もうイキそう」情けないような、彼の声が聞こえる。イク時は一緒がいい。そして…。


 ビクンと体が跳ねる。膣が収縮し、私の指(ペニス)をきつく咥え込む。そして、熱い精液が私の中に発射される。「ドピュ!ドピュ!」と。だがその感触は想像上のものでしかなかった。

 ふいに私は尿意を感じた。トイレに行くほどではないものの、そこに力を込める。

「私、また『おもらし』しちゃいそうです!」

 声を抑えつつも、けれど理性を失った私の宣言は予想以上に大きく響いた。

――ジョロ…。

 私の『放尿』は頼りない放物線を描き、そのままベッドへと染み込んでゆく。

――気持ちいい…。

『おしっこ』するのがこんなに気持ちいいだなんて、初めての感覚だった。これまでオナニーの経験は何度かあるけれど『おもらしオナニー』をしたのは初めてだった。

――こっちも、弄っちゃおうかな…。

 やや腰を浮かせて、伸ばした指はアソコを通り越し、その先のアナルに触れる。
 普段弄ることのないそちら側。そこが、そういうことをするための穴でないことは知っている。(あるいは上級者はこっちも使うらしいが…)

 紛れもない排泄専用の穴。ショーツのお尻部分に羞恥を刻み付けた、その元凶。
 ぷっくりとした出口を指で弄ぶ。本来、出す専門の方。

 あまり深く入り過ぎてしまわないよう気をつけながらも、第二関節まですっぽりと飲み込まれる。指にまとわりつくヌルッとした感触は腸液だろうか、それとも…。

――また、出ちゃいそう!!

 溢れ出す衝動を予感する。

――チョロ…。

 またしても私は『おもらし』をしてしまう。肛門を犯しつつ、別の出口から液体を迸らせてしまう。
 間違っていることなのに。イケないことなのに。それなのに『アナルオナニー』を止めることはできず、未知なる快感に私は酔いしれるのだった。

 すっかり放心した状態のまま、自ら描いた放物線の残像を脳裏に焼き付ける。
 私が『おしっこ』の染み込んだシーツの後始末に頭を悩ませたのは、それからもう少し経ってからのことだ。


――続く――

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おかず味噌 2020/02/09 22:07

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