おかず味噌 2020/02/09 22:06

ちょっとイケないこと… 第一話「尿意と我慢」

 登場人物「松永結衣」

 バイトの後輩。この春から大学生になり、どちらかといえば地味でイケてなかった高校時代を取り戻すため、男遊びを覚えようとしているのだが。根が真面目なことと実家暮らしのため、いまいち一歩が踏み出せないでいる。

 あなたに好意を抱いているわけではないけれど。だからこそ好きでもない相手と、その場のノリで、一線を越えてしまうことに、少なからず憧れのようなものがある。
「この前、バイトの先輩とヤッちゃって~」などと武勇伝を語ることで。さも自らもイケイケの女子大生に近づけるという、ややズレた貞操観念を持ちながら。
「大学生にもなって、処女とかないよね~」友人とのそんな会話に相槌を打ちつつ、実は自分がまだ『処女』であることは機密事項。

 美少女とまではいえないながらも、比較的整った容姿を持ち、スタイルも細身で、決して男ウケしないわけではない。だからこそ、不遇だった(あまりモテなかった)高校時代は己の恋愛に対する生真面目さこそが原因だと思い込み、不真面目な恋愛に爛れることで何かが変わると信じている。

 バイトの帰り道が偶然一緒になった、あなたからの「家に来ない?」という誘いに確実に下心を感じながらも。雰囲気次第ではそれも悪くないと半ば覚悟を決めつつ、あっさりと付いてきた…。


「ちょっと、トイレ行ってくる」

 何を話すでもなく、バイトの愚痴や趣味の話など、そんな他愛もない話題の最中。ふと僕は尿意を感じて、会話の中断を申し出たのだった。
 思えばバイト先を出る前からトイレには行っておらず、もう数時間が経っていたし、談笑に夢中になることで飲み物を飲み過ぎたせいもあるだろう。

「ごめんごめん、それで何だっけ?」

 僕が排尿を終えて戻ってくると、結衣は何か言いたげな様子だった。

「私も、トイレ借りていいですか?」

 あくまでさりげなさを装って、彼女は訊いてくる。男の家に来てトイレを借りたいというのは、女子として言い出しづらいものがあったのかもしれない。だから彼女は僕がトイレに行った後、そのタイミングを好機とみて、ごく自然にそう切り出したのだろう。そして同時に、彼女は思ったはずだ。

 当然トイレには行かせてもらえるだろう、と。

「だめ」

 僕は無情にも言い放つ。彼女は一瞬、何を言われたのか分からないという顔をして表情を強ばらせつつ、

「えっ…?何でですか?」

 やはり冗談っぽくそう切り返した。「いや、普通断ります?」というような、まだどこか余裕を残した様子だった。だけど僕には分かっていた。

 もう間もなく、彼女の膀胱が限界を迎えようとしていることが。

 僕の家に来てからもう二時間くらい経っただろうか。彼女は僕の差し出したお茶を飲み干している。まさかその行動がごく近い将来の自分を苦しめることになろうとは露とも知らず…。


 結衣はバイト上がりで、そのまま僕の家へとやって来た。バイト中も、バイト後も恐らくトイレには行っていない。行くチャンスがなかった訳ではない。バイト先でもコンビニでも、機会はいくらでもあったはずだ。それでもあえて行かなかったのは、単にトイレなんていつでも行けると思っていたからに違いない。

 そして何より、その時はまだ尿意なんて微塵も感じていなかったのだろう。まさか僕と一緒にいる間に催すことになろうとは考えもしなかったのだろうし。たとえ仮に催したとしても、その時はその時ですぐに対処可能だと思い込んでいたのだろう。

 だけど僕は、彼女がトイレを使うことを決して許さなかった。

「いや、トイレ借りますよ?」

 もうこれ以上、無意味なやり取りをするつもりはないというように。結衣は強引にトイレの方へ向かおうとする。排尿を禁じられることで今はっきりと尿意を自覚したらしく、それがもはや如何ともし難いところまで来ていることに気づいたらしい。

「ダメだってば!」

 だが僕は断固として、彼女の前に立ちはだかる。

「え~、何でですか?」

 彼女の表情が曇る。少し怒っているようにも見えた。

「そんなにトイレ行きたいの?」

 僕は意地悪く、彼女に訊ねる。

「はい、まあ…」

 そこでようやく、彼女は自らの生理現象を告白したのだった。
 それによって、僕のS気質にますます火が灯されるとも知らずに…。

「ずっと我慢してたの?」

「いや、そういうわけじゃ…」

 結衣は言葉を濁す。仮にも女子である自分が「おしっこを我慢していました」とは言いたくないらしい。だが僕は知っている。彼女の膀胱はもうパンパンなのだ、と。
 その証拠に彼女は小刻みに(注意して視なければ見逃してしまうほど僅かにだが)震えていた。本当は両手で股間を押さえ付けたいのだろうが、僕の前でそんな醜態を晒すわけにもいかないらしい。

「なんで、トイレ行っちゃだめなんですか?」

 拒否されなければならない理由問う彼女に対して、

「うちのトイレ、今水流れないから」

 僕は苦し紛れの嘘をつく。もしそうならば、困るのは家主である僕自身なのだが。

「えっ…」

 それでも、どうやら彼女は僕の嘘を信じ込んだらしい。しばし動きを止めたまま、何事かを考え込んでいる。

 無事に排尿を済まし終えたとして。水を流せないとあらば、便器内に溜まる液体も便所内に漂う臭気も、そこに留まり続けることになる。
 それを僕に見られ嗅がれてしまうこともまた、やはり彼女にとって耐え難い羞恥に他ならないのだろう。

「じゃあ、そろそろ帰りますね」

 僕の家でトイレを借りるのを断念したらしく、結衣は妥協案を提示する。本当なら今すぐにでも便器に跨って、制服ズボンとパンティを下ろし放尿したいのだろうが。尿意の解消を先延ばしにして、とりあえずはこの状況を打開しようと試みたらしい。

「ダメだよ」

 それでも僕は、彼女のそんなわずかな希望(もしどうしても間に合わないのならばせめて野外で。万が一漏らすにしても僕の前ではなく一人で)さえも打ち砕く。
 だが彼女にとってもその妥協案は譲ることのできない、乙女として最期の防衛線であるらしく。「もう夜遅いので」と建前を口にしながらも、おもむろに玄関の方へと向かうのだった。

――あと、もう一押しだ!

 そう悟った僕は、背中から結衣に抱きついた。

「ちょっと、やめてください!」

 当然の如く、彼女は抵抗する。僕の腕を振り払おうと自らの腕を振り回す。全ては女性としての尊厳を守りつつ、大人としての威厳を保ち、生理現象に抗うために。
 だがそこは男の力だ、そう簡単に振り解けはしなかった。

「離してください!本当に、トイレに行きたいんです…」

 ついに彼女は己の欲求に正直になり始めた。涙目になりながらも、悲痛な面持ちで懇願してくる。すかさず僕は彼女の腰に手を回し、下腹部を軽く押さえてみた。

 同時に、空いたもう一方の手で尻を揉む。これまでバイト中に眺めるばかりだった結衣の小振りの尻は柔らかく、細い体は壊れてしまいそうなほど頼りなかった。

「うっ…」と声にならない声を上げて、尚も彼女は焦燥に耐えようと必死に歯を食いしばっている。僕は下腹部にあてた手を徐々に下ろしてゆく。そしてズボン越しに、結衣の『おしっこ』の出る部分に触れる。

 その瞬間、彼女の体がびくりと震えたのが分かった。

 反射的に腰を突き出し「もういっそ恥じらいなど捨ててしまえ」と言わんばかりに股間に自らの手をあてがう。そこにはもはや普段の真面目で上品な彼女の姿はなく、ただひたすら尿意を堪えるだけの下品な女に成り下がっていた。


『おもらし』

 彼女の脳内には、そんな禁忌の『四文字』が大きく浮かんでいることだろう。
 大人になった自分とは無縁の、それどころか自我が芽生えた頃から現在に至るまでおよそ経験のない羞恥と隣り合わせという現実に、大いに戸惑っていることだろう。

 これまで自分が築き上げてきた立場、人間関係、プライドが。あとほんのちょっと股の力を緩めてしまえば、立ちどころに崩壊するという恐怖。そうした心理的感情と身体的活動の結果、彼女の体はもはや誰が見ても明らかなほど振動していた。

 彼女にはもうわずかな抵抗力さえも残されてはいなかった。出来ることといえば、ただ股を押さえる力を強めることのみ。間もなく結衣は限界を迎えようとしていた。

 僕は彼女を浴室に誘導する。さすがに廊下でされたとあらば後片付けが面倒だし。いくら結衣のものとはいえ『おしっこ臭』が部屋に充満するのは避けたかった。

 だがそれは僕の事情だ。彼女としては失禁する場所が廊下だろうと浴室だろうと、「人前で漏らす」という羞恥はどちらにせよ筆舌に尽くし難いものに違いない。

「制服が汚れるといけないから」

 僕はいかにも真っ当であるかのような(少しも真っ当ではない)ことを言いつつ、結衣の制服を脱がしにかかる。彼女は再び激しく抵抗した。
 下着を見られるのが恥ずかしいというよりは、「ズボンを脱ぐ」というその行為が「尿意を解放していい」という大義名分を与えることを恐れているみたいだった。

 僕は抵抗する彼女の手をかいくぐって(彼女は相変わらず股間から手を離すことができないでいたから、それは容易かった)ベルトを外し、ファスナーに手を掛ける。

「ジジィ…」と金属の擦れる音が聞こえて、ズボンのチャックを全開にする。
 暴れる彼女の手をうまく捕まえつつ、少しずつ重力の方向へと下ろしてゆく…。


 結衣は、黒のパンティを穿いていた。見たところさしたる装飾のない、前面上部に取って付けたような小さなリボンがあしらってあるだけの簡素なパンティだった。

「純白だったら良かったのに…」と少し思ったけれど、そう思い通りにはいかない。
 彼女は彼女の意思でこのパンティを選び(あるいは洗濯のサイクルの中で偶々)、今こうして僕の家に穿いてきたのだ。
 決して人に見せるためのものではなかったのかもしれない。だがそれもまたいい。偶然か必然か、彼女はこの下着を『おもらしパンティ』に選んでしまったのだった。

 黒パンティのクロッチ部分を指でそっとなぞってみる。やや湿り気がある。いや、そこはかなり大胆に湿っていた。

「ちょっと、チビっちゃった?」

 僕は意地悪く結衣に訊ねる。彼女からの返答は当然の如く得られなかった。
 だけど、そこは明らかに濡れていた。性的興奮によって分泌された液体ではなく、それは『おしっこ』によるものだった。

 僕は顔を近づけて、結衣のパンティの匂いを嗅いでみた。彼女は再び抵抗したが、もはや全てを諦めているようだった。鼻腔にツンとくる刺激臭、それは紛れもない『アンモニア臭』だった。

 何度も濡れた部分を指でこする。すると、じわじわと液体が溢れ出してきた。
 そしてある一定の境界線を越えたとき、「あっ…!」と結衣は断末魔のような声を上げたのだった。


――シュィィィ…!!

 パンティの下方から水流が生み出される。それは止めようとしても止められない、決して抗うことのできない奔流。

 結衣は『おもらし』をしていた。

――ジョオォォォ~!!!

 永く堪えていた末の激流は留まるところを知らない。今や彼女はすっかり脱力し、己の本能に身を委ねていた。パンティから垂れる雫は足元に水溜まりを作りつつも、すぐに排水溝へと流れてゆく。(ここが浴室で良かった、と僕は心から思った)

 本来不浄であるはずの濁流。だがそれも彼女の体内で醸成されたものだと知ると、不思議と清浄なものに思えた。愛おしい、とさえ感じた。
 湧き出すそれを手のひらで受け止めてみる。結衣の『おしっこ』は生温かった。

――チョロロロ…。

 やがて、結衣の『おもらし』が終わる。
 徐々に急流は断続的となり、人生最大の羞恥と共に彼女は『失禁』を終える。
 俯く彼女は何も言わず、僕としても掛ける言葉は見つからなかった。

 辺りに立ち込めるアンモニア臭と、まだわずかにパンティから滴る雫。
 やがて消えてしまうそれらを、僕はただ五感で享受していた…。


――続く――

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