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おしっこの記事 (9)

おかず味噌 2020/12/20 16:00

クソクエ 勇者編「伝説の黄昏」

(前話はこちらから↓)
https://ci-en.dlsite.com/creator/5196/article/404020

(女戦士編はこちらから↓)
https://ci-en.dlsite.com/creator/5196/article/311247

(女僧侶編はこちらから↓)
https://ci-en.dlsite.com/creator/5196/article/357380


 小高い「丘」の向こうに「煙」が立ち上っている――。

 数月前に「一人」で下った坂道を、今は「数人」で越えようとしている。
 思えば「あの日」からもうそんなに経つなんて。「年月」というものは、それほどまでに足早に過ぎて去っていくのだと。けれど「呑気」な彼もさすがに、今ばかりはそう悠長に構えてもいられなかった。

 町を出た頃には、まだ「昼前」だったというのに――。すでに「陽」は傾き始めていて。一日の中で最も強いその「光」は「丘」を、「草原」を、「茜色」に染めている。
「天」にまで届くかのように伸びた「黒煙」。その「根本」の「場所」に、その「方角」に、彼は「心当たり」があった。「畑焼き」の「時季」でもないというのに。あるいはそうであったとしても、それならば「白煙」が上がっているべきであるというのに。
「空」に昇り、やがて「雲」へと連なるその「一筋」はけれど。「水蒸気」を主とした「白い煙」ではなく、「不吉さ」を思わせ「非常事態」を報せる「黒い煙」であった。

――間に合ってくれ…!!

 そう「願い」を込め、彼の足取りは急いてくる。「焦燥」に追い立てられながらも、けれど「即席パーティ」の歩みは「緩慢」なままで。彼と「彼以外」との「距離」は自然と開いていく。いくら「温厚」な彼もやや「苛立ち」を感じ始め、それならばいっそ自分だけでもと、「故郷」への早過ぎる「帰還」を目指すのであった――。


 彼がその「凶報」を知ったのは、「今朝」のことだった。

 すっかり「冒険者としての生活」に慣れた彼であったが、それでもかつての「習慣」は容易に抜けないものらしく。「農夫」に比べて「朝の遅い」冒険者たちの中で、彼は誰よりも「早起き」だった。
「ギルド」の「三階」に「間借り」している彼は「いつも通り」に目覚めると、まずは「冷水」で顔を洗って「支度」を済ませ、それから「相棒」と共に「森」へと向かった。
 そこで「数時間」たっぷりと「汗」を流した後。ようやく「町」が活気づき出した頃、「いつも通り」彼は「ギルド」の「ロビー」を目指したのだった。

「おはようございます、勇者様」

「受付」の「エルフ」に挨拶される。初めて彼が「ギルド」を訪れた時、彼のことを散々「笑った」のが「彼女」である。だがその彼女も今では、彼のその目覚ましいばかりの「成長」と、何よりも彼自身の「勤勉さ」と直向きに「努力」し続ける「その姿」を見て――、すっかり彼を「認めて」くれるようになった。あるいは彼のことを「勇者」と、「最初」にそう呼ぶようになったのは紛れもない「彼女」であった。
「名」は知らない。他の「受付嬢」と同じく「胸」には「プレート」が提げられているみたいだが、いつも受付で「テーブル」ばかりを見つめている彼にとっては知る由もない「情報」だった。
 彼が彼女の前で、そうして「俯いて」しまうのは――、彼の生来の「自信の無さ」が故ではなかった。というよりむしろ、「幼馴染」である「ナナリー」の顔さえ「直視」することが出来なかった頃とは違い――、今ではほとんど誰に対しても「面と向かって」「堂々と」会話をすることが出来るようになっていた。それだけでも彼にとっては、かなりの「成長」である。

 だがそんな彼も「彼女の前」だけでは――、どうしてだか「あの頃」の彼に「戻って」しまうのだった。遠目から見ても「美人」とはっきり分かる「女性」。差し出される「腕」のその「肌の色」は「白く」、まるで「透き通っている」かのように「繊細」で。「村一番の美少女」であるナナリーもそれはそれで「可愛らしかった」が、「エルフ」である彼女のその「洗練」された「美しさ」にはやはり遠く及ばず。「造り物めいた」彼女の「近く」に寄るだけで、あるいは「言葉」なんて交わそうものならばもはやたちまち。彼の「動悸」は激しくなり、「呼吸」は浅くなり。今ではあらゆる「魔物」に「対峙」したとしても決して「動じる」ことのない彼であるが――、だが彼女を「目の前」にすると「震え」が止まらなくなるのであった。
 あるいはそれを「恋」と呼ぶのだと――。けれど「未熟」な彼はその「感情」を未だに知らないでいた。

「早朝」(といっても、もはや「昼前」近い)の「ギルド」は「冒険者」も「疎ら」で、「清潔」な「ロビー」は「新鮮な空気」に満たされており、それを思いきり「吸い込む」ことで、彼は「清浄」で「静謐」たる「心持ち」になれるのだった。
「受付」に向かう前にまず、彼は「日課」としている「掲示板」の「確認」のためそちらに立ち寄ることにした。
「掲示板」とは――、日々「発注」される「クエスト」が「一覧」になったものだ。
「内容」と「報酬」、「参加人数」などの「情報」が簡潔に記された「貼り紙」が所狭しと並べられ、「冒険者」たちはそれを見て自らの「レベル」に、あるいは「労働対価」に「見合った」ものを探し、「今後の予定」を立てるというわけである。

 その中には――、
「屋敷の『掃除夫』募集!!」
「隣町まで『お遣い』を頼みたい!!」
 などといった「簡易」で「誰でも出来そう」なものから――、
「新魔法開発の『助手』を求む!!(『魔法使い』のみ)」
「『稽古相手』募集!!(依頼者と同じ『武闘家』が相応しい)」
 などの「適正要件」があるもの。あるいは――、
「素材収集のため『スライム型モンスター』を『三十匹』討伐!!」
「登城にあたって、道中の『護衛』を求む!!」
 といったまさに「冒険者ならでは」のものもある。そして――、
「『パーティメンバー』募集!!和気あいあいとした『仲間たち』です!!」
「『パーティメンバー』募集!!我、強き者を求む…」
 というような「冒険者自ら」による「依頼」も中にはある。

 同じく「冒険者」でありながら、「勇者」であるところの――、だが未だ「駆け出し」である彼もまた日々「無数」に「発注」されるそれらを眺めて。これまでは「初心者」に「相応しい」、「報酬」が「少額」である代わりに比較的「ラク」な――とはいっても、あくまで「戦闘能力」を「要求」されるものばかりなのだが――「クエスト」ばかりを「受注」してきたのであるが。
――そろそろ、もう少し「強敵」と「戦って」みたいな…。
 と、「腕試し」とばかりに「修行の成果」を「確かめる」が如く。次なる「依頼」は、出来ることならば「大型の魔物」などを相手にするものを、と求め出した頃であった。
――でも、そのためには…。
 ちょうど、まさしく彼が望んだような「大型モンスター討伐依頼」の「クエスト」が目に入る。けれど彼はそれを見て「渡りに船」とばかりにすぐに「歓喜」したのではなく、あくまで「冷静」になってからその「貼り紙」をよくよく読んでみた。そこには――。

「参加人数『三人』」

 と、はっきりそう書かれていた。もはや分かりきっていたことだがそれでも、やはり彼は「落胆」を隠し切れなかった。
 再び「別のクエスト」を見つける。だがそこにも――、
「募集人数『最低三人』」
 と、当たり前のようにそう記されている。「依頼者」の指定する「条件」は「絶対」である。たとえ彼がどれほど「強かろう」とも――、あるいは「勇者」であろうとも――、「人数要件」を満たさなければもはやそれまで。そもそも「契約成立」にすらならないのである。そして「クエスト」の「難易度」が上がれば上がるほど(「達成」の可否も鑑みて)「最低人数」を「条件」に付するという傾向はより「顕著」になってくるのだった。

――「パーティ」か…。

 彼は心の中でそう呟いて。改めて「メンバー募集」の「貼り紙」に目を向ける。
「『戦士』を求む!!(それなりに『経験』を積んでいる方のみ)」
「『回復役』募集!!(出来れば『女性』で…)」
 だがどれも、彼が「条件」に当てはまるものは見つからなかった。そしてその中には。

「アタシは『女戦士』。一緒に『ワクワク』するような『冒険』に出ようぜ!!っていうのはつまり、『強い敵』を『ぶっ倒そう』って意味で…。アタシの剣の腕があれば、いつか『魔王討伐』だって夢じゃないと思ってる!!だから!!熱き想いを持った『勇者』をアタシは求めている!!そして――」

 というように、「皺くちゃの紙」に「思いの丈」を「長文」で「書き殴った」だけのものもあった。他の「募集」が――、それぞれ「工夫」はあるものの、あくまで「条件」だけを「簡潔」に述べたものであるのに対して。それはあまりに「ごちゃ付いてる」というか、「熱意」だけは十分に伝わってくるものの。「用紙」の隅々に至るまで「びっしり」と「文字」で埋め尽くされている様は、やはり「読みづらい」ことこの上なかった。
 それでも――。彼はその「純粋さ」と「正直さ」の溢れた「文面」に、思わず顔を綻ばせるのだった。

――こんな人と「パーティ」を組めたら、楽しいだろうな~

 彼は「夢想」しつつも、けれど「自分なんか」が願い出たとして――、果たして、断られないだろうかという「不安」も同時に浮かんでくるのだった。
「文中」には「『勇者』を求む!!」とある。だがその「勇者」というのは「職業」や「役割」を表わすものではなく、あくまで「尊称」としてのものなのだろう。
 他に、こんな「貼り紙」もあった――。

「ワタクシは『女僧侶』でございます。未だ『修行中の身』故、何かと『ご不便』をお掛けすることと存じ上げますが。共に『旅』して頂ける方が居られれば幸いです」

 と、「言葉遣い」こそ「丁寧」であるがそれだけ。「数文」が書かれているのみで、「内容」としてはあまりに「スカスカ」。求める「職業」も「人数」も、「条件」すら何も記されてはおらず。比較的「真新しく」、「キレイ」である「羊皮紙」の「大半」は「空白」になっており。先程の「熱意」に溢れた「募集」を見た後では、尚更に「淡泊」に感じるというか、むしろ「やる気がない」という印象すら与えられるのだった。
 だが、それでも――。

――こんな「上品」な人と旅するのも悪くないかも…。

 やはり彼は「夢想」してみたが、そこでふと――。彼の「視界の端」に何やら「不吉」なものが「映った」ような気がした。

――今、何か「見慣れた文字」を目にしたような…。

「既視感」の「正体」は分からずも――、彼は「記憶の糸」を手繰るように、慌てて片端から「掲示板」に貼られている「クエスト」に目を通した。
 そこで。彼はようやくついに、「それ」を見つけたのだった。

「『ノドカ村』、『ゴブリン』の『軍勢』に『襲撃』されり!!『救援』を求む!!」

 後に「はじまりの村」と名を変える、けれど「現代」においてはまだその名で「呼称」される――。まさしく「勇者伝説」の「始まりの地点」であり、それは紛れもない彼自身の「故郷」でもある「村の名」だった。

「思考」が追いつくまで、それなりの時間が掛かった。そして「理解」に至るまでには、さらなる時間が必要だった。
 少なからぬ「驚き」と「戸惑い」によって見開かれた目で、彼はそこから必要最低限の「情報」を読み取ろうとした。

「募集人数」「募集内容」「適正職業」――。違う、そんなことじゃない!!
「報酬」――。そんなこと、どうだっていい!!

 彼が本当に「知りたいこと」とは、つまり――。
「一体『いつから』それが貼り出されているか?」だった。

 彼は「昨日」も「ギルド」に立ち寄り、この「掲示板」を見た。その時は確か、こんな「クエスト」は「発注」されていなかったはずだ。だけど分からない。
 それこそ日々「星の数」ほど量産される「依頼」の中で。彼がそれを見落としていたとしても、何ら不思議ではなかった。

――まだ「間に合う」のだろうか。それともまさか、もう「手遅れ」なんてことは…。

「真剣な眼差し」で「貼り紙」を見つめる彼を――。同じく「熱い視線」で傍から眺める者があった。

「勇者様。何か気になる『ご依頼』はありましたか?」

「この世」にはない、「神」のみが弾くことを許される「楽器」のような――、とても「繊細」で「美しい」響きのする「音色」だった。すかさず彼が「声の聴こえた方向」を振り返ると――、そこにはいつもの「エルフ」が立っていた。

「私で良ければ、『内容』について『ご説明』させて頂きますが――」

 彼女がそう言い掛けたところで――、彼は彼女の「腕」を「がっしり」と掴んだ。

「あっ…勇者様、困ります…!!こんなところで…、そんな『大胆』な…!!」

 彼女は何か「よく分からないこと」を口走ったが、だが彼は聞く耳を持たず――。

「この『クエスト』、いつから『発注』されているか分かりますか!?」

「普段」ならば、彼女に「話し掛ける」ことすら「緊張」でままならない彼なのである。ましてや、その「身」に――、たとえ「腕」ではあるとはいえ「触れる」ことなどもはや「想像」しただけで。
 けれど今の彼にとっては、そんなことは「些事」に他ならなかった。それよりももっと、「彼女のこと」よりずっと、彼には気に掛かることがあったのだった。

「えっ…?あ、え~と…ちょっと待って下さいね!(なんだ…違ったんだ…)」

「語尾」はよく聞き取れなかったが、それについてはさておき――。彼女は一旦「受付」に戻って、そこで何やら「帳簿」のようなものを繰り始めた。

「あった!これだ!!」

 すっかり「敬語」を使うことを忘れてしまっている彼女であったが、そんなことより。

「え~と…。うん、『二日前』と書いてありますね!!」

 彼女の「返答」を聞くなり、彼は「絶句」した。目の前が「真っ暗」になるような、それは紛れもない「絶望」の色だった。

「『依頼者』の方から『更新』もされていないみたいですし…」
――そろそろ、取り下げないと…。

 彼女は「焦る」様子もなく、「平気」でそんなことを言う。それが彼には全く「理解」が出来なかった。
「更新がされていない」ということは――、その「余裕」がないからではないのか?
 そもそもこの「事案」は「依頼」として貼り出されるようなものではなく――、もはや「最優先事項」として「緊急性」をもって「周知」されるべきものではないのか?

「まあ、でも『報酬』も『低い』ことですし…」

 ここにおいても、彼女はまだそんな「呑気」なことを言っている。普段は滅多なことでは「怒らない」彼も段々と「腹が立って」きた。彼をいじめていた「同年代」たちも、あるいは今の彼と「同じ気持ち」だったのだろうか。だとしたら――、少しばかり彼にも「省みる」ところはありそうだった。

「それに第一、この『クエスト』は――」

「ダメ押し」とばかりに彼女は言う。彼を「諦めさせる」ために、他にもっと「依頼」はあるのだからというように――。

「最低参加人数『五人』ですよ?」

 彼は全身から力が抜けてゆくのを感じた。自らの「努力」と「やる気」ではどうにもならない「厚い壁」が、再び彼の前に「立ち塞がる」のだった。

――ここでもやっぱり、「人数」が「道」を「阻む」のか…。

 彼は「唇」を噛み締め、「拳」を握り締めた。彼の「体」は小刻みに「震えて」いる。「恐怖」によるものではない。それは「悔しさ」だった。これまで彼が、いかに周囲に「蔑まれ」ようとも、「嘲り」を受けようとも、決して感じたことのない――。それは「怒り」にも似た「感情」だった。

「勇者様、どうされました…?」

 彼のその「反応」から何かを察したらしく、「エルフ」は怪訝そうに訊ねてくる。

――そんなに、この「クエスト」に「魅力」を感じていたのだろうか…?

 これまで数多くの「依頼」の「手続」を行ってきた彼女である。その彼女からすれば、別にこれといって「オイシイ依頼」ではないように思える。
「報酬額面」についてもそうだが、第一この手の「クエスト」は「依頼者」が「存命」であるという「保証」もなく。たとえ「達成」したとしても、きちんと「支払い」がされるのかすら怪しいものなのである。

――「ノドカ村」。
――「農耕」を「中心」とした、あまり「栄えている」とはいえない村だったはず…。
――近年「増加傾向」にあり、「凶暴化」しつつある「魔物」。
――それによって、一つ二つの村が「地図から消えた」らしいが…。
――あくまでそれも「よくある話」なのだ。

 そこでふと、彼女は「何か」に思い当たる。

――今、何かが「引っ掛かった」ような…?

「ギルド」において、あまり聞かないその「村の名」を――。けれどつい最近、どこかで見掛けたような気がする。
 彼女は「クエスト一覧」を一旦横に置き、受付後方の棚から「あるもの」を取り出した。それは、「ギルド」に「登録済」の「冒険者名簿」だった。

「職業別」に並んだ「分厚い」それの中から、けれど「一名」しか居ない「職業」である「彼の名」を見つけるのは容易かった。

「勇者」――。

 そこにはそう記されている。「特別」であるその「称号」は、「職種」ごとに色分けされた「縁取り」においても。やはり「特別」であることを示すかのように「金色」で表されている。
「名前」「性別」「現在レベル」「達成クエスト数」。それらの「情報」の中には――、まだ「数月」しか経っていないというのにも関わらず、彼のこれまでの「足跡」が刻み付けられている。
 そして。ようやく彼女はそれを見つけた。彼の「出身地」の「欄」。そこには、今まさに「戦火」にある「村の名」があった。「ノドカ村」と――。

――そういえば…。

 続けて彼女は思い出す。それは「二日前」のこと。ある「村人」が「ギルド」を訪ねてきた時のことを――。

――「勇者」に「お願い」したいことがあるのです…!!

「町の者」からすれば、「ぼろ布」ともいえる「格好」をした「老人」は確かにそう言ったのだった。「勇者」とそう呼んだにしては「敬称」すら用いられず、あくまで「友人」であるかのように。「依頼」ではなく「上奏」でもなく、あえて「お願い」という言葉が用いられたのだった。
「勇者」としての「義務」――、それは人々の「救済」である。唯一の「仕事」である「魔王討伐」にしてみても、やはりその「目的」は全てそこに繋がるものであり。だからこそ「勇者」というのは、「人々の声」を広く聞き届けなければならないのである。
 だが、それはあくまで「ギルド外」においての話だ。「ギルド」に持ち込まれた以上、いかなる「願い」であろうともそれは「依頼」という形を取ることとなる。あるいはその「対価」が「僅少」であったとしても、それはまた別の問題であり。「クエスト」における「発注者」と「受注者」とは、常に「平等」に扱われるべきなのである。
 あるいは相手が「勇者」であろうと、そこに「例外」はない。「職業柄」はともかくとして、「他の職業」と同じくあくまで「職能」の「譲受」となる。

「ともかく落ち着いて。こちらの用紙に『必要事項』をお書き下さい」

 だから彼女はいつものように――、同様の「手続」を踏むことを求めるが如く。少しも「取り乱す」ことはなく。むしろ「落ち着き払った様子」で、滞りない「手順」を繰り返すのであった。
 渋々ながらも、差し出された「用紙」を受け取った老人は。「文字もろくに書けない」様子ながらも、それなりに時間を掛けつつ「記入欄」を埋め終えると――。

「いつ頃、『勇者』は来てくれるのでしょうか…?」

 あくまで「勇者」を「指名」した上で、そう訊ねてくる。彼女は――、

「分かりかねます。『志願者』が見つかれば、すぐにでも『受理』されますよ!!」

 励ますようにそう答えつつも。けれど「報酬の欄」を見て、やはり「望み薄」であることを察したのだった。

「報酬」――、村で獲れた「作物」を「一生分」。

 あまりに「漠然」とした、あるいは「童子の児戯」じみた「ご褒美」である。「量」は示されていないし、そもそも「報酬」とは「貨幣」で支払われるのが「暗黙の了解」なのだ。そこはもちろん「依頼者」が「自由」に「設定」できるのだが――。兎にも角にも、これでは「志願者」が現れるのはもはや「絶望的」だった。

「では、承りました」

 それでも――。やはり彼女はいつも通りに言う。「定型句」を用いることで、自らの「仕事」を全うする。
「受付の役割」とは本来「クエスト」の「仲介」であり、あくまでそこまで。「交渉」や「助言」はそもそも「業務外」なのである。「発注者」について多少の「相談」や、それこそ「彼」のような「駆け出し」に対してはそれなりに「斡旋」を行うものの――、何もそれは「義務付けられたもの」では決してない。
 だから――。たとえ「クエスト」に「志願者」が現れなかったとして。その「責任」はやはり「依頼者」に「帰属」するのであって、単なる「仲介者」に過ぎない彼女とっては「無関係」なのである。
 それに――。「多忙」である彼女としては出来るだけ早く、このどこか得体の知れない「翁」に、すぐにでもお引き取り願いたかったのだった。

「どうか、お願い致します…」

 力なさげに老人はそう言って、深々と頭を垂れた後。何やら「小袋」のようなものを「テーブル」に置いて、去って行った――。
 いささか「不審」を覚えつつも、けれど最後の最後に至っての「老人の行動」は彼女を
「感心」させたのであった。

 いわゆる「前金」というヤツだろう。「報酬」とは別に「受注者」に支払われる(無論、「ギルド側」も一部の「マージン」を頂戴するのであるが…)、いわば「手付金」のようなもの。仮に「クエスト達成」とならずとも「返金」の必要はなく。あるいはもし「達成」したとして、万が一「発注者」の「雲隠れ」などによって「正規の報酬」が支払われなかった時などに「最低保証」となり得るものなのだ。
「依頼実績」の少ない「発注者」において、その「名」の代わりとしてあくまで「資金」を「担保」に置くことで――、「受注」をさせやすくするというわけである。

 ただの「世間知らずの田舎者」とばかり思っていたが――。「年の功」とでもいうべきか。やはりそれなりの「作法」はわきまえているらしい。
 彼女は早速、その「小袋」の「中身」を改めようとした――。あるいはこれで分からなくなった。この内容如何によっては、すぐにでも「受注者」が現れるかもしれない。
 だが彼女がそれに手を伸ばし、それを持ち上げようとしたところ――。そのあまりの「軽さ」に、再び彼女は拍子抜けしたのだった。
「袋」を開いて、「中身」を確かめる――。「まさか」というか「やはり」というか、そこに入っていたのは「銀貨」でも「銅貨」ですらなく、「穀物の種」であった。

――これが…「手付金」??

 驚きと同時に、彼女は呆れ返る。ほんの一瞬でも信じた自分が「莫迦」だった。こんなものは「前金」でも何でもない。第一、「金」ですらないのである。
 それでも。彼女は思わず「溜息」をつきながらも、その「小袋」の扱いに困り果てながらも。だが決してそれを「無駄」にしようとは考えなかった。

 その日の「業務」を終えた後、彼女は町の「市場」に向かった。彼女のその「可憐」ともいえる「装い」にはおよそ「不似合い」な、「小汚い袋」を小脇に抱えたまま――。
 彼女はそれを「換金」することにした。無論、「通常レート」であれば「二束三文」にしかならないものである。だがそこは、彼女の持ち前の「世渡りの巧さ」と、何より彼女自身の「女性的魅力」を最大限に活かした「取引」であった。

 結局、彼女は「老人」の置いていった「穀物の種」を――、本来の「売買」ではおよそあり得ないほどの「貨幣」に換えて。もちろんそれをそのまま「懐」に入れることもなく、あくまで「前金」として「ギルド」に預けた後、「例のクエスト」の「報酬欄」に「手付金あり(銀貨〇枚)」と書き加えたのだった。

 だが。彼女がそこまでしてやったというのにも関わらず。「依頼」に「志願者」が現れることはなく――。彼女としても、日々「無数」に持ち込まれる「発注」や「受注」に「忙殺」されて、いつの間にか「例のクエスト」に関する記憶は「忘却」されていた。

 彼女は今「全て」を思い出した。彼の「故郷」のこと。二日前に持ち込まれた「依頼」のこと。あるいはその「老人」は――、彼の「馴染みの客」であったのかもしれない。
 だからこそ、あの「翁」は彼のことを「勇者」と呼びつつも、どこか「親しげ」な響きを醸していたのかもしれなかった。
 やがて彼女は「全て」を語り出す――。「依頼」のこと、「老人」のこと。だがそこに「当時」の彼女自身の「感想」が含まれることはなく。それに、彼女が行った「厚意」についても口にすることはなかった。(なんだか、気恥ずかしかったからだ…)

「その人、僕の『おじいちゃん』です」

「勇者」は言った。それを聞いて、彼女はまたしても驚いた。

――あんな「小汚い老人」が…?まさか、「勇者様」の「御祖父様」だなんて…。

 しかも、その上「育ての親」だという。

――では果たして、「勇者様」の「御両親様」はいずこに…?

 だがそれについては、あえて訊ねなかった。きっと、それなりの「事情」があるのだろう。それにしても――。

――「粗相」はなかっただろうか…?

「不始末」は?「不手際」は?「無作法」は?「失礼」は?「失禁」は?(いや、これは違うか…)彼女は途端に「不安」と「後悔」に駆られる。

――この「エルフ」、まさに「一生の不覚」…!!

 何たることだろう。いつか、あわよくば「勇者」の「伴侶(小声)」になるとして。その「第一歩」を、彼女は踏み違えたのである。

 そんな「エルフ」の「後悔」を、けれど彼は知る由もなく。彼は未だに自らの「無力」に打ちひしがれていた。
「依頼者」は――、他ならぬ彼の「祖父」だったのだ。幼い彼をここまで育て上げ、数々の「教育」を施してくれた存在。「ナナリー」を彼にとっての「姉代わり」だとするならば――やはり「血の繋がり」こそ無いものの――「祖父」は彼にとって「親代わり」となるべく、紛れもない「家族」であった。

「『ナナリー』…」

 これは「小声」で「彼女の名」を呟いた。そうすることで「かつて」の「村での日々」が、まるで堰を切ったように溢れてくる。
「忘れた」わけではもちろんない。むしろ、その「風景」は――、その「日常」は――、今も彼の中に確かな「居場所」としてあり続け、「一人きりの夜」に「温もり」を与えてくれるものであったのだった。

 そこで、彼ははっと気づかされる。そしていざその「考え」に至ると、どうして今まで「思いつかなかった」のか不思議なくらいだった。
「村の皆」が「助け」を求めている。厳然たる、その「事実」。たとえ「ギルド」においては「クエスト」という形であったとしても――、今の自分にはそれを満たす「資格」は無かったとしても――。であるならば、何も決して「受注」という「手順」を踏む必要はないのである。
 恐らく彼の「祖父」は、今頃彼がそれなりに「仲間」に恵まれていると「期待」して、「募集人数」を「多め」に見積ったのであろうが。たとえ「一人」であろうとも、彼の「為すべきこと」は少しも――、「全く変わらない」のだ。

 彼は駆け出した。誰も「受ける」ことのないであろう「クエスト」のその「貼り紙」を「掲示板」から引き剥がし、それを引っ掴んだまま。すぐに「ギルド」を後にするべく、彼の「故郷」を目指すべく、その場から走り去ろうとしたのであった。

「勇者様、お待ちください!!」

 だがそこで、またしても「エルフ」に声を掛けられる。いついかなる時でも「冷静」であり、決して声を荒げたりしない彼女であるが。けれどここにおいては、そうした彼女の「立場」を排した上で、あくまで彼に「加担」するのだった。

 彼女としては、まさに「汚名返上」「名誉挽回」の「チャンス」だった。彼の「祖父」であったことを知らなかった故の「狼藉」。あるいは「受付」としての「仕事」においては正しかったのかもしれないが――。

「『仕事』は『程々』に、『プライベート』にこそ『充実』を――」

 自らの「信条」をそう定める彼女としては、彼の「恩人」となるどころか、後々になって彼に「恨まれる」ようなことだけは避けたかったのである。

「ここは私にお任せを!!すぐに『志願者』を募って参りますので!!」

 完全に「業務外」であることを、彼女は平然と言ってのける。けれど、もはやこれは「ギルド」の「受付」としての「台詞」などではない。彼女のごく「個人的」な「感情」による、「女」としての「矜持」による、紛れもない「彼女自身」の「言葉」であった。

「でも…、今日まで誰も見つからなかったんですよね?」

 そうだ、だからこそ「この依頼」は今の今まで「掲示板」に貼り出され、あるいは彼がそれに気づくことさえなければ、もはや「永遠」に忘れ去られていたのだろう。そのような「クエスト」に今さら「志願者」が現れるとは、彼は到底思えなかった。

「『半刻』ほどお待ちを――」

「期限」を設定した彼女は、もちろん「その場凌ぎ」「時間稼ぎ」でそんなことを言ったのではなく。もちろん、そこには確かな「心当たり」があったのだった。

「半刻後」――。彼は彼女の集めたくれた「パーティ」と共に、町を出た。
 彼にとっては「初めての仲間」。だが「感慨」に浸っている間はなく、「急造」である「彼ら」を従えて、彼は「戦火の故郷」へと向かったのであった――。

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おかず味噌 2020/11/06 16:00

ちょっと悪いこと… 第二十八話「私の視点 ~因果と応報~(7)」

(第二十七話はこちらから↓)
https://ci-en.dlsite.com/creator/5196/article/382971


彼は「入口」に肩をもたれながらこちらを――、「お漏らし」した私を――見ていた。そこが「女子トイレ」であるにも関わらず。
 彼の「顔」には――、どのような「表情」も浮かんではいなかった。だからそこから「感情」を読み取ることは難しかった。
 それでも――。私は「震えて」いた。「ローター」のせいでも、体が「冷えた」せいでもない。もっと「奥底」から沸き上がるそれは――、「恐怖」だった。

「ごめんなさい、私やっぱり…」

 何かを問われる前に、まず「言い訳」をする。言いながら――、私の「下半身」からはまだ「おしっこ」が「ポタポタ」と滴っていた。
 それから「数秒」の――私にとってはもの凄く「永く」感じられた――「沈黙」の後、彼はようやく「声」を発した。

「また、『お漏らし』しちゃったんだね?」

「呆れた」ように、私に問う。

「はい…。また『我慢』出来ませんでした…」

 もはや「定番」となった「やり取り」を交わす。すっかり「慣れた」はずの「会話」も、けれどやはり改めて口に出されると――、何度だって「羞恥」はこみ上げてきた。
 すると突然、彼は私に「近づいて」きた。「大股」で私の元へと歩み寄り、そのまま私を「個室」へと追いやり、それから手早く「カギ」を掛けた。

 果たして彼が「怒って」いるのか、あるいは「興奮」しているのか、私には判らなかった。いや、これは恐らく――。

――ドン!!

 と、彼は私のすぐ横の「壁」に手を突いた。初めてされた、これがいわゆる「壁ドン」というやつだろうか。と、「呑気」なことを私は思った。

「結衣、言わなかったっけ?」

「低い声」で彼に「問い詰め」られる。私はそれに「答える」ことが出来なかった。

「今日は『外でお漏らし』するって、言ったよね?」

 そうだ、そもそも「私から」言い出したことなのだ。それなのに――。

「言いました。でも、やっぱり『恥ずかしくて』…。それに――」

「他の人に『迷惑』掛かるから…」と、消え入りそうな声で私は呟いた。
 私の「真面目さ」は最後の最期になって「私自身」を――、私の「素行不良」を――、決して「赦して」はくれなかったのだ。

「そう思うなら、ちゃんと『我慢』すれば良かったじゃん!」

 彼は私に「無理難題」を押し付ける。

「だって…」

 私だって、ここまで「精一杯」、もはや「限界」まで「我慢」したのだ。だけど――。

「あんなに床『びしょびしょ』にして――」

――「清掃」の人の「迷惑」までは考えなかったの?
 言われてみれば確かに――、そこまでは頭が回らなかった。そこは「トイレ」であり、すぐ目の前に「便器」があるにも関わらず。それなのに私は「間に合わなかった」のだ。いや、あるいは仮に「間に合っていた」としても、果たして私はきちんと「便器」でそれをしただろうか。

「自分でスカート捲って、見せてごらん!」

 彼に言われた通り、私はロングスカートを「たくし上げ」――、「お漏らしショーツ」を見せつける。「ぴったり」と「お尻」に「股間」に「貼り付いた」ままのショーツ。「生温かさ」も徐々に「冷やされ」、何だかとても気持ちの悪い「感触」――。

 すると彼はおもむろに、私の「ショーツ尻」を撫で回し始めた――。

「こんなに『濡らし』ちゃって…。そんなに『我慢』してたの?」

 彼は私の「お漏らし度合」を観察する。しっかりと触って、「濡れ具合」を確認する。彼の手が「触れる」度に、ショーツが「くっついたり」「剥がれたり」を繰り返す――。

「はい…」

 彼は私の「お尻」を「愛撫」する。「ゆっくり」と、それからやがて「陰部」へと向かう――。

「『汚い』ですよ…?」

 彼は答えない。あくまで「無言」のまま、もはや「おしっこ」で濡れることも厭わず、やがて「ショーツの中」へと「指」を滑り込ませる――。
 彼の指が「固いもの」に触れ、それを取り出す。私の「中」に秘められた「ローター」だった。

――ヌポンッ…。

 微かな音を立てて、「役目」を終えたそれが引き抜かれる。すっかり私の「体温」に馴染んだそれを、彼は指で摘まんで私の「眼前」に持ってくる。

「見てごらん!」

「物体」の「表面」が何やら「光って」いる。「濡れている」せいだろう。何しろそれは「発射口」付近にあったものなのだ。だから当然のことだった。だが――。
 彼の「指」は「ローター」から「何か」を「採取」する。「親指」と「人差指」を一度くっつけて、それから離す。

――ヌチャ…。

「粘着質」な音。彼の指は「糸」を引いていた。「ヌラヌラ」と光るそれは「おしっこ」じゃない。その「液体」は紛れもなく――、私の「発情」の「証」だった。

「これは何?」

 意地悪く、彼は問う。分かっている癖に、あくまで彼は私の口からそれを言わせたいらしい――。

「『本気汁』です…」

 どこでそんな「言葉」を覚えたのだろう。自分でも分からなかった。言ったそばから、思わず「赤面」してしまう。

「そっか、結衣は『お漏らし』で『興奮』しちゃったんだね」

 彼に「知られて」しまう。「粗相」による「欲情」を悟られてしまう。

「俺も――」

――「興奮」してきちゃった…。
 少し「ツラそう」に、彼もまた「自白」する。見ると、「ズボン越し」でもはっきりと分かるくらい「隆起」していた。彼の「そこ」もまた「ツラそう」だった。
 彼に「請われる」前に、自らの「意思」で私は動く――。果たしてそれは「慈愛」から来るものなのだろうか、あるいは「母性」にも似た感情なのだろうか、あるいは私自身の単なる「興味」によるものなのか――。
 私は彼の方を向き直して、彼の前でしゃがみ込む。「ベルト」に手を伸ばしてそれを緩めて、次に「ファスナー」を下ろす。さらに「はっきり」と「下着越し」に彼の「モノ」が「顔」を出す。私は下着すらもずり下げた――。

 わずかな「抵抗」を感じつつも、ついに彼の「イチモツ」が姿を現す。「飛び出した」ことで、それは「上下」に揺さぶられた。
 こうして「まじまじ」と見てみると、やっぱり彼のは「大きかった」。「どっしり」とした「重さ」のような――、「くっきり」とした「陰影」のようなものが浮かび上がっている。「ペニス」について、最後に見た「記憶」を呼び覚ます。それは「弟」の「モノ」だった――。

 純君の「可愛らしい」それとは大きく異なっている。まず「サイズ感」が違う。そして「形状」さえも。こんなことを言うのは純君に申し訳ないが――、彼のように「皮被り」ではなく、それは「ズル剥け」の「おちんちん」だった。
 一見して「醜悪」なその「塊」は、けれど私に「本能的」な「欲求」を呼び起こさせる。それが私の「そこ」に「差し込まれる」のことを――、はっきりと「予感」させる。

 だがその前に。まずは口での「愛撫」を試みる。しっかりと口を開いて――、口の中に彼の「ペニス」を誘う。「口内」が彼の「モノ」で満たされる。
 相変わらず「ヘンな味」だった。だけどそれはほとんど「無味無臭」だった。ここでも「純君」を引き合いに出してしまうけれど。「純君の」には「包茎」ゆえの「恥垢」が付いていたのに対して、「彼の」にはそうした「汚れ」のようなものはなかった。
「不快さ」は全くなく、ただ「先っちょ」から「溢れ出す」ものを「すする」と、微かな「苦み」を感じるのみだった。

――じゅるる、じゅぼぼぼ、ぶちゅるんっぱ!!

 盛大に「音」を立てながら――、「愛しさ」さえも感じつつ――、彼の「おちんちん」を「しゃぶる」。「三回目」の「フェラチオ」。少しは「巧く」なっただろうか――。
「裏すじ」にも「舌」を這わせ、「玉」も「竿」も丁寧に均等に舐める。その「動作」が「正しい」のかは分からない。あくまで「見様見真似」というか――、「手探り」のまま「愛撫」は続けられる。そして――。

――モゴッ!!!

 突如として、彼は「ペニス」を私の口に深く「差し入れる」――。同時に私は「呼吸」を奪われてしまう。

――「息」が出来ない…!!

「生命の危機」すらも感じる。私は彼の脚を強く叩き、「降参」とばかりに「タップ」する。だが彼は私を「離して」はくれなかった。
「嗚咽感」がこみ上げてくる。「吐き出したい」けれど、彼の手はしっかり私の「頭部」を「固定」し、わずかな「自由」さえも「許して」はくれなかった。

――ボフッ!!!

「ペニス」と「口」との間に微かな「隙間」が空き、そこから「嗚咽」じみた「汚い音」が漏れる。「腹部」が「脈動」し、同時に自然と「下腹部」に力が込められてしまう。

――ジョボロロ…!!!

 気がつくと、私は再び「失禁」していた。全てを「出し切った」と思っていたけれど、それでもわずかに残っていた「おしっこ」が「漏れ出た」のだった。
 すでに「お漏らし」によって「濡れたショーツ」に「受け止める」力はもはやなく、「押し出される」ように「おしっこ」が流れ出す――。

――ピチャピチャ…。

 足元のタイルに跳ね返り「パンプス」を濡らす。そして、ようやく私は「解放」されたのだった――。

「また、『お漏らし』しちゃったね」

 またしても「羞恥」の言葉が掛けられる。未だ「呼吸」の整っていない私を、彼は強引に「立ち上がらせる」。私に「向き」を変えさせ、彼は私の「後ろ」に立つ――。
 彼は――、私の「お尻」に顔をうずめた。またしても「お漏らし」をしたばかりの、「直後」の「ショーツ」に顔を押し付ける。
 彼の鼻が「割れ目」に当たる。「頬骨」が「口元」が、確かな「痕跡」へと誘われる。

「うん、すっごく『おしっこクサい』!!」

「水から上がった」みたいに、「浮上」した彼は言う。私の「匂い」を彼に「知られて」しまう――。

「言わないで…ください…」

 私は「恥ずかしさ」を吐露し、「拒絶」を口にする。だけど本当は――、それほど「嫌」ではなかった。

「ほら、ここ。『濡れてる部分』とはっきり分かれてるよ?」

 今度は「目」で――、「視姦」される。「お漏らしの跡」を「観察」されてしまう。
 彼に言われて見ると、確かに「染み」は「顕著」だった。
「水色のショーツ」は、主に「下半分」だけが「濃く」なっていた。だが思ったよりその「範囲」は広く、「お尻部分」はもはや「全滅」に等しかった。きっと二度目の「失禁」のせいだろう。
 今日、この「色」を「選んだ」ことを――、私は「正解」だと思った。
「淡い色」であることによって「小便染み」が「くっきり」と浮かび上がっている。微かな「黄ばみ」すらも「はっきり」と――、私の「ショーツ」は「証拠」を表わしている。あるいは「黒」なんかだと、こうはいかないだろう。

 彼は再び、私の「ショーツ」に顔を近づけた。だけど今度は「うずめる」のではなく、あくまで少しばかり「距離」を取った状態で「舌」だけを伸ばす――。
 そして。まるで「テイスティング」するみたいに、彼は「私の味」を確かめる――。
 それについての「感想」を――、彼は口にしなかった。

 彼は私の「ショーツ」を脱がせ始めた。
「腰」に手を掛けてまずはずり下ろし、そして私の脚から引き抜く。「片足」ずつ上げて、私もそれに「協力」した。
 そうして。「お漏らしショーツ」を、彼に「剥ぎ取られて」しまう。私から奪い取ったそれを彼は両手でしっかりと「握り」ながら、「雑巾」のように「絞る」――。

「ボタボタ」と、「ショーツ」に「吸収」された「おしっこ」が「溢れ出す」。
 それはまるで「お漏らし」のように――。

――こんなに…。

 目の前で「疑似的お漏らし」を見せつけられ、私の「剥き出し」の「股間」は「熱く」なる。ささやかな「微風」も、けれど私を「冷ます」には足りなかった。

 そして、彼はおもむろに私の「唇」を奪った。彼の「舌」が「口内」に侵入し、私の「舌」に「ねっとり」と「絡んで」くる。ついさっき、私の「ショーツ」を――、「尿」を味わったはずのそれと――、私は自分の「おしっこ」と「キス」をしていた――。

――苦い…。私の「おしっこ」、苦いよ…。

 それに「クサい」。紛れもない「アンモニア臭」。それこそまさに、私の「おしっこ」なのだ。「香り」と「味」を確かめてしまう。彼は――、そして「純君」も――、こんなものを「飲まされて」いたのか。
 私は少しばかり「反省」する。いかに「興奮」の末とはいえ、たとえ「愛」があろうとも――、こればかりはどうしようもないくらいの「不快感」に違いなかった。

「もう、そろそろ…」

 私は「告白」する。「曖昧」な言葉で、けれど「明瞭」に申し出る――。

「待って。しっかり『ほぐして』からじゃないと!」

 そう言って彼は私の、


「お尻の穴」を舐め始めた――。


――やっぱり「そっち」なのか!!
 私は「絶望」に打ちひしがれる。彼の「興味」は分かっていた。だけど今日は――。

「今日はその…『後ろ』じゃなくて、『前』の方が…」

 尚もめげずに、私は「こっち」を「懇願」する。
 だが、私の「願い」が聞き届けられることはない。あくまで彼はすでに「照準」を定めている。私の「尻肉」を拡げ、その奥にある「穴」ばかりを攻め続ける――。

――また、「うんち」が付いたりしてないだろうか…。

 細やかな「心配」も、けれど今はそれどころではない。それにきっと大丈夫なはずだ。そして、そんなことよりも――。

 このままでは「埒」が明かない。多少「不埒」であろうとも、ここまで来ればもはや「背に腹は代えられない」。今度こそ「はっきり」と、より「直接的」な言葉で言わなければ――。

「『オマンコ』に、入れて下さい!!」

 私はついに言ってしまう。その「響き」に掻き立てられる「焦燥」のようなものを感じながらも――、今やすっかり慣れ親しんだものになりつつあった。

「『オマンコ』、して下さい!!」

 その「単語」を、今度は「動詞」へと「活用」させる。そんな「用法」は本来ないのだが――、それを言うならそもそも「辞書」に載っていない「俗称」なのだ。

 ようやく私の「懇願」を聞き入れる気になったのだろうか。彼の「執拗」な「執着」が留められる。「お尻の穴」から口を離し、その口で彼は言葉を発する。だが――。

「でも、結衣の『アナル』。『ヒクヒク』してて、すごく可愛いよ?」

「可愛い」と褒められることに「慣れていない」私は、この期に及んで「取って付けた」ようなそんな「賛美」にさえも、分かりやすく「狼狽」してしまう。
 そうなのかもしれない。だが、たとえそうだとしても――。

 彼は昨日、確かに「約束」してくれたのだ。明日は「オマンコ」に「入れる」、と。
 あるいはそれもまた言い出したのは私の方であり、私が勝手に盛り上がってしまっていただけなのかもしれない。それでも、彼は「いっぱい突いてあげる」と、「どちらを」とは言わないながらも、話の流れから「そちら」であることはもはや「確定」だったのにも関わらず。それなのに――。

 これでは「約束が違う」ではないか。確かに、先に「約束」を「違えた」のは私なのかもしれない。「外でのお漏らし」――、私は「寸前」になってそこから「逃げ出して」しまったのだ。だがそれにしたって、この「反故」はあまりに――。

 私は次に何を言うべきかも分からず「返す言葉」を失ってしまったことで、「理解」が得られたと思い込んだ彼は「アナル舐め」を「再開」する。
 そこで彼は、何かに「気づく」――。

「あれっ?もしかして結衣、今日『うんち』した?」

 ついに「指摘」されてしまう。今朝「したこと」を知られてしまう――。

「ちょっと、『うんちクサい』よ?」

――またちゃんと「拭けなかった」の?
――それとも、こっちもちょっと出ちゃった?

 彼は私の「羞恥」を煽る。だけどそちらについては求めていない。あくまで、私が今「望んで」いるのは――。

「しました!朝、してきちゃいました…!!」

 私は答える。「嘘」をつくことはいくらでも出来たはずだ。だけど彼が「指摘」するからには、何かしら「証拠」のようなものを感じ取ったのだろう。
――どうして…?
 私は確かにちゃんと「拭いた」。にも関わらず「付いて」しまったのだ。だから私は「洗い」、きちんと下着を「替える」までしたのに――。
――それなのに、まだ「付いて」しまうのか。
 私は自分で自分が嫌になる。どうしてここまで私の「お尻の穴」は「緩い」のだろう。いや、それはそもそも「彼のせい」なのだ。彼が「そっち」でしたりするから。
「あの晩」、きちんと「性器」でしていれば――、私は今頃そんな「悩み」を抱えることも――、もはやとっくに「処女」さえも「捨てる」ことが出来ていたはずなのに。

「あれっ?『トイレ禁止』って言ったよね?」

 彼は目ざとく、私の「瑕疵」に言及する。確かに「禁止」はされたし、私も甘んじてそれを飲んだ。今朝「トイレ」に行く際、私だってわずかに「迷い」はしたのだ。だけど。

――だって、こっちは「漏らす」わけにはいかなかったから…。

「おしっこ」だけなら「秘めて」おきたいところだった。だけど「うんち」は――、それだけは、どうしても――。
 そんな「乙女」の「事情」など、彼は知る由もないのだろう。いや、あるいはそれを分かった上で尚、あえて「そちら」の「羞恥」さえも私に与えるつもりなのだろうか。

「どうして、しちゃったの?」

 彼は問う。「理由」を――。「どうしてなのか」と。
 私は――、答えたくなんてなかった。だけど、「答える」しかなかった。

「だって、『うんち』は漏らすわけにはいかなかったから…」

「内心」の言葉を――、「心境」をそのまま吐露する。「正直」に私は答える。

「そっか、『うんち』は『我慢』出来なかったんだね?」

 そうじゃない。いや、そうなのか?いや違う。あくまでそっちは私の望む「お漏らし」ではないというだけの話だ。「我慢」は出来たはずだ。だけど――。
 もし朝しておかなかったら、今頃――。私は「そっち」さえも「漏らして」しまっていたのだろうか。「尿意」と「便意」の「ダブルパンチ」によって、「挟み撃ち」に遭っていたのかもしれない。「ローター」の「刺激」はあるいは「うんち」さえも「催させた」のだろうか。

「『お仕置き』しなきゃね!」

 彼は言う。果たして何に対する「お仕置き」なのだろうか。私が「禁」を「破った」ことによるものなのだろうか。だけどそれなら、私にだって言いたいことはある――。

「もう止めて!!!」

 私の声が「個室」に響き渡る。彼は「動き」を止めた。

「どうして…、どうして『そっち』ばっかり…!!」
「私は『普通』にしたいのに!!」
「『今日こそは』って思ってたのに…。それなのに!!」

 次々と、「本音」がこぼれ出す。私は思わず「泣き出して」しまいそうだった。あまりの「情けなさ」によって――。

「ごめん…」

 彼は謝ってくる。さすがに「行き過ぎた」と思ったのだろうか。それでも――。

「でもやっぱり俺――」

――結衣の「お尻」に「興味」あるんだ!!

 私の「お尻」が――、「魅力的なんだ」と「熱弁」を振るう。まるで「そこ以外」は「魅力的ではない」と言われたみたいだった。私の「処女マンコ」になど「興味はない」と告げられたみたいだった。
 それでも、私の「反応」が芳しくないのを見て取って、彼は――。

「今日は、こっちでしようか!」

 いじらしく、私の「そこ」を指で弄りながら言う。完全に「片手間」とも思える、雑な「愛撫」だった。にも関わらず、私の「そこ」はまるで「水を得た魚」の如く、今も尚盛大に「涎」を垂らし、わずかな「刺激」すらも余さんとするように「キュッ」と彼の指を愛おしそうに「締め付ける」のだった。自らの「体」でありながら、私にはそれが許せなかった。「パブロフの犬」のように、「人参をぶら下げられた馬」の如く「条件反射的」に、「エサ」に抗えない「家畜」になったような気分だった。

「おっ!こっちはもう『準備万端』みたいだね~!!」

「おどけた」口調で彼は言う。「ほら、入れるよ」と、「真意」はそちらにはないにも関わらず、彼は「ペニス」を押し付けてくる。
 ようやく、私の「悲願」が叶えられる。それなのに――。

 だが、もう遅かった。もはや私の「プライド」は「ズタボロ」だった。かつて、あれほどまでに「望んで」いた「喪失」を、けれど今ばかりはどうしても「死守」したいような気持ちになっていた。あるいは「処女」としての、最後の「意地」なのだろうか。

「もう…いいです!!」

 私は彼に言い放ち、気がつくと「個室」を「飛び出して」いた――。


続く――。

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おかず味噌 2020/09/21 16:00

ちょっと悪いこと… 第十九話「彼の視点 ~追憶と願望~(1)」

(第十八話はこちらから↓)
https://ci-en.dlsite.com/creator/5196/article/344433


 休日の午後。駅前で「結衣」と待ち合わせる――。

「フリーター」である僕にとって「休日」とは必ずしも「土日」を表わすものではなく、「サービス業」においてはむしろ「週末」こそがまさに「稼ぎ時」であり、逆にいわゆる「サラリーマン」などにとっての「平日」が「休日」となることが多い。

 だが、今日は「土曜日」だ。

 一週間の内、最も「忙しい」日である「週末」に、どうして本来「融通が利く」はずのこの僕が「休み」なのかといえば――、それは普通に「休み希望」を出したからである。毎月末に掲出される「シフト希望表」に、今月唯一「×」を付けたのが「今日」だった。
「平日」は「授業」があるためまとまった時間が取れず、だからこそ「週末はロングで入れてほしい」と希望している「学生バイト」の「彼女」もまた、同じく「今日」は「×」を書いていた。
 何もそれは「偶然の一致」などではない。僕たちはお互い示し合わせて、わざわざ「休み」を取ったのだ。「空白」だったカレンダーに、僕と彼女は「予定」を書き加えたのである――。

 と。ここまで聞いていると、僕と彼女がさも「付き合っている」と「誤解」を持たれるかもしれない。だが結論からいえば、僕たちは決して「恋人同士」などではない。
 ここで言う「彼女」とは、あくまで「三人称」としてのそれであり、そこには「俗語」としての「特別な意味」は含まれていないのである。
 この「関係性」について「結衣」がどう思っているのかは分からない。だが僕としては少なくとも、どちらかが「告白」しもう一方がそれを「了承」したわけでもなく、互いの「気持ち」について「確認」し合ったわけでもなく、だとすればそこはやはり「友人」として取り扱うべきだろうと思っている。

 だが、もちろん「ただの友人」ではない。「男女」の「友情」について、果たしてそれが「成立」するかはさておき。そこにおいてしばしば「言及」される、「恋愛感情」や「肉体関係」の有無について。僕たちは、すでに「一線」を越えてしまっているのだ。
 本来の「友人関係」においてはあり得ない、「肉体関係」を許した「男女関係」。「好意」については問わず、あくまで「行為」を「目的」とした「共生関係」。
 いわゆる「セフレ」というやつだ。
 最初はほんの「出来心」だった。「下心」と言い換えても良いだろう。「たまたま」バイトを「上がる時間」が一緒になり、僕たちは「帰り道」を共にすることになった――。


「家に来ない?」

 そう誘ったのは僕の方だった。「誘う」のは大体決まって「男性側」なのだ。そういうものだろう。「もうちょっと話したい」と僕は言った。幸い、「話題」はそれなりに盛り上がっていた。だが別にこれといって「話したい」ことがあったわけではなかった。「理由」は何だって良かったのだ。

 普段「バイト」で会う時、結衣が僕に「好意」を抱いている風には見えなかった。会えばそれなりに話をするが、かといって彼女が「積極的」に僕と話したがっているかといえば、そんなことは決してなかった。だが少なくとも「嫌われている」感じはしなかった。あくまで「バイトの先輩」として、ささやかな「興味」と「無関心」の間にいるのだと、僕は「推察」していた。
 僕としてもそれは「同様」で、彼女と「付き合いたい」などと考えたことは一度もなかった。あくまで彼女は「バイトの後輩」であり、それ以上でも以下でもなかった。
 だがそこは「男の性分」である。何も「感情」としての「結びつき」については望まないまでも、やはり「体の結びつき」についてはやぶさかではない。
 彼女は決して「美人」と呼ばれる部類ではなかったけれど。「身なり」は綺麗で小ざっぱりとしていて、細くて「スタイル」が良く、さらにそこに「女子大生」という「属性」が付与されることによって、何かしら男性の「劣情」を駆り立てるものが備わっていた。決して「派手」ではなく、むしろどちらかといえば「地味」な方で。だがそれがかえって、彼女の隠された「魅力」のようなものを「探求」させる「興味」を僕に抱かせた。

 結衣は「逡巡」しているらしかった。僕の「誘い」を受けるべきか否か、それについて考えているようだった。だが結局、彼女はそれに応じた。僕の家に来ることを「了承」したのだった。

 そこで結衣は「粗相」をした――。

 彼女の「ズボン」から迸る「水滴」を――、彼女の「股間」と「床」とを繋ぐ「水流」を――。僕は今でも「ありあり」と思い浮かべることができる。
 小学校「低学年」以来の「お漏らし」。人生においてそうそう見ることのない「女性」の「失敗」。「女子大生」の「失禁姿」。それは僕の「網膜」に強烈に焼き付けられ、胸に刻みつけられたのだった。

 普段の彼女はどちらかといえば「クール」な方で。「仕事」についても覚えが良く、何でも卒なくこなしている「イメージ」だった。その彼女が今「あるまじき失態」を晒しているのだ。
 結衣は「俯いて」いた。「苦痛」を堪えるように唇を噛み締め、ただ「時」が過ぎ去るのを待っているようだった。いつもの「明るい」彼女とは正反対の「暗い」表情は、「羞恥」と「後悔」が入り混じっているような、そんな「複雑」な「心境」を表わしていた。

 僕の「性癖」が「発露」したのは、まさにその「瞬間」だった――。

 僕は思わず「射精」してしまっていた。思いがけず、トランクスの中に「精液」が「飛び出して」いた。僕はいまだかつて、それほどまでに激しい「興奮」を覚えたことはなかった。僕の手は一度も自分の「股間」に触れることなく――。「触れずに射精」した経験も、それが「初めて」のことだった。

 それでもやはり、僕は少なからず「混乱」していたのだろう。想定外の「射精」によって「賢者タイム」が訪れていたせいもあるかもしれない。
 結衣が「後始末」をする間、僕はただじっと部屋で待っていただけだった。帰り際、「手土産」とばかりに「お漏らしパンティ」を入れるための「ビニール袋」を渡し、結局その日は「何もせず」僕は結衣を帰してしまったのだ。
 束の間の「非日常」から「日常」へと立ち戻り。「一人」取り残された夜の中で、結衣の「おしっこ」の「残り香」だけが微かに浴室に立ち込めていた――。

「二度目」の機会は、すぐに訪れた。

 その日は「たまたま」休みが合ったのだ。「バイト以外」で、「外」で結衣と会うのはそれが「初めて」のことだった。誘ったのはやはり「僕の方」だった。
 あの「一件」以来、「バイト先」でお互い顔を合わせるのが当然のように「気まずかった」。彼女は僕を「軽蔑」したかもしれない。トイレに行かせなかった僕を、あるいは「恨んで」いるのかもしれない。
 だがよくよく考えてみると――。「原因」はどうであれ、あくまで「失態」を犯したのは彼女なのだ。だとすると、むしろ「軽蔑された」と思っているのは彼女の方なのかもしれない。

 僕は思い切って、結衣に話しかけてみた。「あの夜」のことはあえて口に出さず、何も「気にしていない」風を装って、彼女に「接触」を試みたのだった。
 結衣の「反応」は「普通」だった。彼女自身、その「事件」を「忘れた」というように、「今まで通り」の彼女だった。
 ちょうど「休日の過ごし方」が「話題」に上ったとき、僕は何気ない調子で結衣を「デート」に誘ってみた。

「デート」。果たしてその言葉が適切であるかは分からない。やはり僕たちの「関係性」から鑑みるに、あるいは「恋愛」を想起させるその「英単語」を用いるべきではないのだろう。だが昨今は「女子同士」であろうと――、たとえそれが「友人関係」であろうと――、平気でその「言葉」が使われたりもする。だから、お互い「プライベート」のその「予定」は、もはや「デート」と呼んで差し支えないだろう。

 だがそれでも。やはりそれは単なる「デート」ではなかった。少なくとも僕にそのつもりはなかった。ただ「会い」「語らい」「遊ぶ」のではなく、僕には明確な「目的」があったのだ。(あるいは「目的」自体は違えど、世間一般の「デート」においてもそれは同じなのかもしれない)
 僕の「目的」とは――、結衣にもう一度「お漏らし」をさせることだった。
 そして――。

 結衣は再び、「二度目」の「お漏らし」をしたのだ。

 その日の彼女は「黒タイツ」を穿いていた。事前に僕が「指定」した「格好」だ。
 かねてより、結衣のその「スタイル」を、恐らく「美脚」に違いないその「脚線」を。より「効果的」に、より「魅力的」に、あるいはより「エロく」見せる「服装」について考えを巡らせていた。「制服姿」の彼女を見るたびに、密かに「妄想」していたのだ。
 脳内での「議論」の結果、出された「最適解」が「それ」だった。それはいわば――、あえて「隠す」という「手法」である。
 前日、結衣との「メッセージ」のやり取りの中で僕はそれを「発表」した。彼女は例の如く、「え~」とか「なんでですか?」とか「どうしようかな~」など、多様な「困惑」と「疑問」の台詞を送ってきていたが、やはり「まんざら」でもないらしく。翌日、僕に言われた通り、結衣は「黒タイツ」を穿いてきた。

 やや「目の荒い」――確か「デニール」がどうとか言うのだったか?――「黒タイツ」に包まれた結衣の脚。程よく「引き締まり」、けれどあくまで「女性らしさ」は失わず、それは僕の想像した通り「いやらしかった」。
 会った瞬間、一目見た途端、出来ることなら今すぐに脚を「揉みしだき」、タイツを「引きちぎりたい」という衝動に襲われた。それでも僕がそうしなかったのは――もちろん「大衆の目があったから」という前提もあるが――結衣にそれを「穿いたまま」でいてもらいたかったからだ。

 別に僕は結衣の「おしっこ」それ自体に興味があるわけではなかった。仮に彼女が「着衣」でなく「尿意」を解放したならば――それはただの「放尿」に過ぎない。それでは駄目なのだ。(それはそれで、全く何も感じないかといえばそんなことはないのだが…)
 僕の興味の対象は――、あくまで「お漏らし」なのだ。自らの「意思」ではなく、「故意」によるものではないその「行為」に、僕は「好意」を抱き「恋」焦がれていたのだった。「理性」で律しても尚、「欲求」に抗えない姿。全てを「さらけ出し」、あるいは本能を「むき出し」にしてしまったが故の「終着」。その「羞恥」にこそ僕は「執着」し、最大限の興奮を覚えるのだった。

 結衣の脚が「おしっこ」で濡れて光っている。「幾筋」もの「線」が「放射状」に描かれている。白い「カンバス」にではなく黒いタイツに、「道」を指し示す「コンパス」の如く――。散々「着衣」を濡らして尚「吸収」し切れなかった「液体」が、足元に「水溜まり」を形成する。「あの夜」と同じ、紛れもない結衣の「お漏らし」によるものだ。

「結衣、めっちゃ可愛いよ」
 そう言って僕は彼女を抱き締めた。自らが「汚れる」ことも厭わずに、むしろそれさえも興奮の「材料」に変換するように――。
「ズボン越し」に結衣の腰に当たる僕の「ペニス」は、痛いくらいに激しく「勃起」していた。けれど今日はまだ何とか「射精」には至らずに済んだ。固くなった「モノ」を結衣の尻に押し当て擦り付けながら、「腰の浮く」ような「衝動」をかろうじて堪えていた。

 僕は結衣をベッドに押し倒した。「ついに」というか、まさに「これから」という感じである。廊下から部屋に移動する間、彼女はわずかの「抵抗」を見せつつも、最終的には僕に「されるがまま」だった。彼女は何も言わず、ただ僕に「従う」だけだった。
 押し倒す直前、結衣は若干の「拒絶」を示した。だがそれはあくまで「おしっこまみれ」の体で、ベッドを「汚してしまう」ことを忌避するだけのものだった。僕はシーツを洗濯することを覚悟の上で、構わず「選択」を続けた。

 僕は結衣に「キス」をした。彼女の「唇」は微かに震えていた。その「ぎこちなさ」から、あるいは「初めて?」という予感がよぎったが、まさかそんなはずはないだろう。これまで彼女と会話した中で、あくまで「間接的」にではあるが、「経験済み」であることがそれとなく「示唆」されていた。きっと「何度か」経験はあるのだろう。

 結衣の体を「まさぐり」ながら――、「夢にまで見た」とは言い過ぎであるが、少なくとも「日々高まらせていた」欲求を「解放」した。だが、「前戯」とさえ呼べない「児戯」を繰り返すだけのそれでは、欲望が「満たされる」ことは決してない。まるで「砂漠」に「水」が染み込んでいくように、いつまで経っても「渇き」が潤されることはなかった――。

 僕は結衣の脚を広げた。そこで再び彼女は少しの「抵抗」を見せた。それでもやがて「観念」したらしく、「閉じる力」を緩めるのだった。
 結衣のショーパンの「股」の部分には、はっきりと「小便染み」が出来ていた。やや色の褪せた「デニム生地」は、そこだけ色が「濃く」なっていた。
「発生源」が「解放」されたことで、より強い「臭い」に室内が満たされた。ツンと鼻を突くような「アンモニア臭」。反射的に、本能的に思わず鼻を摘み、顔をしかめたくなるような強烈な「芳香」――。
 だが僕がそれに「臆する」ことはなかった。むしろ「積極的」に鼻を鳴らし、大きく「呼吸」をして、結衣の「おしっこ臭」が多分に含まれた「空気」を吸い込んだ。

「おしっこクサいね」

 僕は分かりきった、当たり前の「感想」を言った。彼女の顔がみるみる内に「羞恥の色」に染まっていくのが分かった。

 僕は「ショーパン越し」に結衣の「股間」を舐めてみた。膝を抱え、「間」に顔を「うずめた」。舌を出し「ぺろり」と「縫い目」の部分をなぞった。その「味」は――、「しょっぱい」ような「苦い」ような、けれどどこか「甘い」ような不思議なものだった。
 それは結衣の「おしっこの味」だろうか、それとも蓄積された「汗の味」なのだろうか、あるいは「ジーンズ」本来の味なのかもしれない。
 僕の「暴挙」ともいえる予想外の行動に、彼女は驚いているみたいだった。「まさか舐めるなんて…」と思っているのだろう。だが「意外」というならば――、それは僕自身だって同じだった。
 まさか自分がここまで「お漏らし」というものに、もはや「理性」すらも失くして「のめり込んで」しまうなんて思ってもみなかった。ただそれを「させ」、「見る」だけでは飽き足らず、「嗅ぎ」「舐める」ところまでいくだなんて――。

 僕はきっと「変態」なのだろう。女性の「体」のみならずその「付属物」である「分泌物」に――むしろ「本体」よりも激しい興味を引かれるのだ。
 僕は「虜囚」だった。「非日常」という「牢」に囚われ、もはや「正常」という名の「法(LAW)」を犯した、「異常」へと成り下がっていた。
 結衣は僕のそんな「性癖」に気づいてしまっただろうか。もしそうだとしたら、彼女は「ドン引き」したかもしれない。もはやこの先の「展開」は望めないだろう。
 あくまで「羞恥を与えるため」の「意地悪」であるならまだしも――。(それもそれで「ギリギリ」というか、かなり「グレイ」に近い部分であるが)それどころか、まさかその「行為」自体を「プレイの一環」と捉えるなんて、とても「まとも」ではない。

「今夜きり」。僕は結衣との「逢瀬」をそう覚悟した。もう「会ってくれない」かもしれない。「職場」で顔を合わせても「避けられる」かもしれない。あるいは――彼女に限ってそんなことはしないと信じたいところだが――僕の「変態性」について「バイト仲間」に言いふらすかもしれない。
 そうなってしまえば、僕はもうバイトを「辞めなくては」いけなくなるだろう。年下の「学生」に手を出し、ましてやその「変態的行為」によって「拒絶」されてしまうなど。どこをどう切り取ったって「羞恥」に違いない。そこにおいては彼女の「失態」も、あくまで僕に「無理やり」そう「仕向けられた」ものとして「正当化」されることとなる。
 僕は結衣に「羞恥」を与え、人としての「尊厳」を奪ったつもりが――、むしろ僕の方が「追い詰められる」という「絶望」の淵へと立たされていた。だがそれも「自業自得」だ。あくまで「悪い」のは僕であり、「イケない」ことをしたこれは「代償」なのだ。

 けれど。次の結衣の「言葉」によって、僕は「救われる」ことになる。「異常」なのは決して「僕だけ」ではないのだと――。

「もしかして、○○さん『も』お漏らしが好きなんですか?」

 結衣は訊いてきた。それは「問いかけ」という形を取ったものだったが、そこに含まれていた「同類」を示す「副助詞」はむしろ、彼女自身の「主張」を表わしていた。
 彼女は何もその「一文字」を「強調」したわけではなかった。むしろ「流れる」ように「意図せず」、ごく「自然」に口から出た言葉みたいだった。だが、だからこそ「言外」にそれは語られていた――。
「~も」ということは、つまり「そういう事」である。

「えっ?結衣も好きなの?」

 僕は思わず、そう訊き返していた。同じ「副助詞」を用いて――、もはやそれは自らの「性癖」を「認めて」しまったことと「同義」だった。

 そこから――、僕たちの「暴露大会」は始まった。
 結衣は「告白」した。この前の「一件」以来、彼女自身もまた「お漏らし」という行為に「囚われている」ことを。意味もなく「我慢」を重ね、時には「ピンチ」に陥ったこともあることを。(ある時は――、「限界」が迫ったまま「帰宅」し、もしその日「弟」がたまたま家に居てくれなければ「決壊」を迎えていたという)
 そして、実は「今日」も「我慢」していたらしい。確かに「デート」の最中、僕が「禁止」するまでもなく、結衣は一度も「トイレに行きたい」とは言い出さなかった。つい先刻、「僕の家に来てから」を除いては――。
 その時、すでに結衣は「覚悟」を決めていたのだろう。再び「お漏らし」をすることを。僕の目の前で、あの日の「再現」をすることを――。

 僕も「告白」した。結衣の「お漏らし」を見て、「発芽」したことを。さすがにその場で「射精」してしまったことは黙っておいたが、それでも何度かその「光景」を思い浮かべて自らを「慰めた」ことを。「最初」は「そんなつもりはなかった」ことを言い訳しながらも、もはや今日は「そのつもり」だったことを。彼女に「お漏らし」を「させる」つもりだったことを。

「変態ですね」

 僕の「自白」を聞いて、結衣は「軽蔑」を口にした。だが半分「笑い」まじりの「冗談」じみたその言い方は、決して「断罪」を表わすものではなかった。それに、あるいはその言葉は「彼女自身」に向けられたものであるのかもしれなかった。
 そうして、僕たちは互いの「罪」を「白状」し合った。

 僕はいよいよ「ショーパン」に手を掛けた――。

 さきほどの「告白」は「性的同意」を示すものではなかったけれど。それでも僕の始めた「続き」を彼女が「拒否」することはなく、むしろ腰を浮かして「脱がせる」のに「協力」した。
「湿った」ままで「脱がしづらい」ショーパンをなんとか脚から引き抜くと――、「黒タイツ」に包まれた結衣の脚がより「露わ」になり、今まで「見えてなかった部分」さえも「明らか」になった。
 本日の結衣の「パンティ」は「黒」だった。それを見て、僕は少し「がっかり」した。「まるで分かっていない」と思った。この「色」では――、せっかくの「黒タイツ」と「被って」しまう。「コントラスト」はなく、「同色の布」の中にただ「埋没」してしまうだけなのだ。

「黒タイツ越し」に透ける「パンティ」――、その「色」は「白」と相場は決まっている。あるいは「ファッション性」についていえば、「正解」といえないのかもしれない。まるで「下腹部」及び「臀部」だけが「浮き出た」ような、ある種の「滑稽さ」を思わせるその「格好」は「ダサい」以外の何物でもない。
 だが、あくまでそれは「見せる」ことを前提とするからであり、むしろ「見せない」「見られない」ことが当たり前の「その部分」において、「外見にこだわる」というのは少々「的を外している」感が否めないのである。
 そして、「隠れている」からこそ――、そう「思い込んでいる」からこそ――「気を抜き」、あるいは「手抜き」とさえ呼べないほどの「油断」が意味を持つのである。

 いや。そもそもそこに「意味」も「理由」もないのかもしれない。打ち立てた「論理」はその全てが「詭弁」であり、「偏向」じみたものに過ぎないのであろう。あくまで僕の「個人的」な「好み」であり、「異論」については様々に認める「構え」である。
 だが、兎にも角にも。僕が結衣のその「パンティ」を見て、少なからず「残念」に思ったことは確かだった。とはいえ、それですぐに「萎えて」しまうほど、僕は「傲慢」な人間ではなかったし。それに逆に考えてみれば――、彼女が今「穿いている」下着に「別の意味」を見出すことも可能であった。

 結衣は今日「お漏らし」を「させられる」ことを「想定」していたらしい。「暴露大会」においても、さすがにそこまで語られることはなかったが、無意味な「我慢」をしていたということはつまり、きっとそういう事なのだろう。
「着衣」での「お漏らし」において、「パンティ」を濡らし「汚して」しまうこともはや必然である。だとすれば、彼女はそれを「分かった」上で、あくまでこの「黒い下着」を――、「お漏らしパンティ」に選んだということなのだろう。
 それは「黄ばみ」を懸念してのものか。あるいは単に、後に「処分する」ことを知りつつ「いらない下着」を「犠牲」にし、「生贄」に捧げたのだろうか。
 どちらにせよ「不憫」でならない。その「下着」は今日穿かれたその瞬間から、「汚される」ことが決まっていたのだ。

 下着というものはそもそも、ある程度は「汚れる」ことが「確定」された「運命」にある。むしろ自らがそれを「被る」ことで「衣服」を「守る」その「役目」にこそ、「存在意義」があるのだ。
 誰だって「下着」は汚れてしまうものだ。だからこそ毎日「穿き替える」のである。
 普段の結衣にしたってそれは「例外」ではなく、「お漏らし」には至らないまでもそれなりに、多少の「シミ」は免れないだろう。「チビり」による「小便染み」、「発情」による「愛液濡れ」、そして――。

「拭き残し」による「ウンスジ」だって付けているかもしれない。

「まじめ」で「勤勉」な彼女の性格から「まさか」とは思うが、「みじめ」な「糞便」をパンティに「付着」させたまま、日々を送っているのかもしれない。そして、それは「今」だって――。

 なぜだろう?その「想像」に及んだとき、僕の中でまた何か、新しい「別の扉」が「開かれる」ような「予感」があった。とはいえ、まだそれは「コツコツ」とドアを叩く――、「ノック」をするだけのものに過ぎなかったが。そこには僕のまだ知らない「入口」が確かに待ち構えているのだった――。

 その後の「行為」は、いわば「手順通り」に進められたが。僕にとってはその「全て」が、あるいは壮大な「焦らし」であるように思えてならなかった。
 あえて「陰部」に「直行」するのではなく、まずは「おしっこまみれ黒タイツ」の「脚」を「舐め始めた」ことはもちろんのこと。「お漏らしパンティ」越しに、結衣の「秘部」に顔を埋めたことも――。
「もう、入れて欲しいかもです…」
 と。舌での「愛撫」によって堪えきれなくなり、やがて彼女の方からやや「遠慮気味」に「挿入」を「懇願」してきたときも。僕の「興味」と「ペニス」はむしろ、彼女の「別の穴」へと向いていた。

 ついに、結衣の「下着」を脱がしに掛かる――。
 そこにおいて、僕は結衣に「協力」を求めたのだった。


続く――。

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おかず味噌 2020/08/16 20:04

クソクエ 女僧侶編「失禁と放尿 ~聖女の秘めたる信仰~」

(「女戦士編」はこちらから↓)
https://ci-en.dlsite.com/creator/5196/article/311247


――天にまします、我らが「父」よ…。

「彼女」は「祈り」を捧げる。目を閉じ、口を引き結んで。掌を合わせ、「膝をつく」のではなく「しゃがみ込んで」。頭を「垂れる」のではなく天を「仰ぐ」ようにして――。

――なぜ、貴方様はこのような「試練」をワタクシにお与えに…。

「彼女」は思う。この世に「生」を受け「生きる」上で、何と「艱難辛苦」の多いことだろう、と。「祈り」は通じず、「願い」は叶わず、いかに「信仰」を重ねようと「救い」が訪れることはない。
「神の巫女」であるはずの彼女としても、さすがに。「主」の実在を疑いたくもなってくる。なにしろ、彼女の「たった一つの願い」さえ、聞き届けられることはないのだから。

――あぁ、神よ。ワタクシは一体どれほど「耐え忍ばなければ」ならないのでしょう。

 すでに「祈り」は十分過ぎるほどに捧げている。そろそろ、いい加減――。


「あ~もう!!『うんち』出てよ~!!!」


「アルテナ」は叫んだ。神聖なる「教会」などではなく、「御不浄」なる「個室」で。「祭壇」に向かってではなく、「便器」にしゃがみ込んだまま――。

 肌を覆う「濃紺」の祭服――いわゆる「全身タイツ」のような「格好」。その「形状」、あるいは「特性上」、「排泄」をするためには一度「全て」を脱ぎ去らなくてはならない。「信仰」の「象徴」である「十字架」の修飾された「前掛け」を取り、背中の「留め具」を外して、「首元」から「足先」まで一気に脱ぐ。途中、彼女の豊満な「凹凸」にそれなりの「抵抗」を感じたが、それでもその慣れた「一連の儀式」にはさしたる「滞り」もなかった。
 脱いだ「衣服」は全て、個室の「壁」に掛けられている。「外」から見れば、「誰が」入っているのか、「行為の最中」であることは一目瞭然なのだが、それも致し方ない。

「聖職者」だって「排泄」はする――。

 それは「真理」でも何でもなく、ただ厳然たる「事実」なのである。あるいは、たとえ「女神」といえども――。
「祭服」を取り去った彼女はもはや「聖女」などではなく、そこにあるのは単なる「ごく普通」の「一人の女性」の姿であった。ただ一つ、彼女のその「美貌」がまるで「女神」と見紛うほど「美しい」ことを除けば――。

「女神」は現在、「衣服」はおろか「下着」さえも身に着けてはいなかった。「下穿き」については「最中」であるがゆえ「当然」なのだが、彼女は「胸部」を隠すための「布」さえ纏ってはいないのだ。
 それはなぜか?「問い」に対する「答え」は自明である。それはつまり――、彼女が「元々」それを身に着けない「習慣」であるからだ。

 先述の通り、彼女の「普段着」は全身をすっぽりと「覆い隠す」濃紺の祭服である。「前掛け」の大仰な「刺繍模様」を除けば、他に「装飾」の類は一切なく、その「装い」は実に「地味」一辺倒のものである。
 その「質実さ」は、「華美であれ」とする本来の「服飾」のあり方とはむしろ真向から「対立」するものであり、そこには彼女がその「身」と「人生」を賭して歩む「信仰の道」における、まさしく「神の教え」の一つが大いに息づいている。すなわち――、

 隣人、色を好むべからず――。

 というものである。いまだ「修行の道」の途上である「修道女」の彼女にとって、いわゆる「恋愛」は「ご法度」であり、たとえ自分に「その気」がなくとも――、むしろないのであればこそ余計に――、不用意に「異性」に「劣情」を抱かせるような「格好」ないし「行動」は「慎む」べきである、という「教え」である。
 だが他のものはともかくその「教え」についてだけは、彼女はいささかの「疑問」を呈したくもあった。
「信仰」とはつまり、日々の「祈り」によって遂げられるものであり。「祈り」とはつまり、「願い」の「可視化」に過ぎない。では何について「願う」のかといえば――人によって様々であろうが、大きく「一言」で括るならば――それは「愛」についてである。
「家族愛」、「兄弟愛」、「隣人愛」。「愛」においてはまさに多様なものがあるが、それらをやはり「一言」でいうならば、それは「人類愛」である。
 つまりは「人」が「人」に向ける「思い」、「感情」、「労り」、「労い」、「優しさ」、「慰め」、「慈しみ」、「親しみ」、「想い」。それこそが「愛」なのだ。
 であるならば、いわゆる「男女間」における「愛情」についても、それは当て嵌まるのではないだろうか。いやむしろ、本来全くの「他人同士」である「関係性」から、「逢瀬」と「接触」と時を経てこそ培われるその「愛」こそまさに、人類における「真の愛」ではないだろうか。

 アルテナはそう思っている。そして現に、そんな彼女にも「真なる愛」を真摯に捧げる「紳士」。つまりは「想い人」と呼ぶべき「存在」がいる。
 その「彼」はどこか頼りなく、ときに危なっかしくて、いつも彼女を「落ち着かない」気持ちにさせる。「庇護欲」を駆り立てられるような、あるいは「母性」すらも感じさせるような、まるで「童子」のような見た目でありながら――。
 けれどその「瞳」に宿る「意志」は強く、ひとたび「剣」を振る彼に「背中」を預け、あるいは「前衛」を任せれば、その「矮躯」には到底「不相応」な「敵」を次々と「なぎ倒して」ゆく――。
 そして、やがて「戦闘」を終えれば、また「いつも」のどこか頼りなく、「無邪気」で「幼い」だけの「少年」に戻っている――。
 そんな「彼」の「意外性」ともいえる「ギャップ」に。「はっとさせられた」経験は、一度や二度では到底及ばない。まるで彼の「掌」で思うように「転が」され、彼の「一挙手一投足」に「右往左往」させられ、いまだ知り得ない彼の「内心」に「一喜一憂」させられてしまうことが、彼女にとっては「もどかしく」もあり、けれど同時にそれ自体が「幸福」でもあった。
 つまり「一言」でいうならば――、

 アルテナは「勇者」に「恋心」を抱いていたのだった。

 とはいえ、それは「秘めたる想い」。いつか「打ち明ける」その時まで、「胸の奥」に厳重に「鍵」を掛けて「閉まっておくべき願い」。(やや、想いが「溢れ出して」しまう時もあるけれど…)
 あるいは「未来永劫」、「門外不出」のものであろうとも。「永遠」に「その時」が訪れることがなくとも。それでも彼女はただひたすらに、その「想い」を日々「醸成」し続け、その「はちきれんばかりの胸」に抱え込んでいるのだ。


 さて。やや「脱線」し掛けたが、ここで今の「状況」に話を戻すことにしよう――。

 そもそも彼女がなぜ、いわゆる「異世界」、「別時代」において「ブラジャー」と称される「婦人専用下着」を身に着けていないのか、だ。
 それについて語るにはやはり、彼女の「着衣」に話を戻さなければならない。
「質素であれ」とする彼女の「祭服」には、けれどその「見た目」において裏腹の「問題」を孕んでいる。それは彼女のその服の「形状」が――、あまりに「ぴったり」とし過ぎている、ということだ。
 それもあるいは「彼女でなければ」、さしたる「問題」ではなかったのかもしれない。たとえば彼女にとって「大先輩」にあたる、「老境」の「シスター」であったならば。それとも「年齢」は彼女とほぼ似通った「年の頃」である「若い修道女」であったとしても。もし、その者の「凹凸」がそれなりに「平坦」であったならば、やはり「問題」には至らなかったであろう。
 つまり。いわゆる彼女の「女性としての膨らみ」が、平均的な「婦人」のものと比べてあまりに「穏やか」でないことにこそ、その「問題」は起因するのだ。
「有り体に言えば」――、より「直接的」に、「控える」ことなくいうならば――、

 アルテナの「身体」は、とても「いやらしかった」――。

 眉根の垂れ下がった、そのどちらかといえば「保守的」な見た目に反して、その「肉体」はあまりに「攻撃的」であり「暴力的」ですらあった。
 全身を布で覆い隠しているにもかかわらず、いやむしろ「覆い隠している」からこそ余計に――。その「女性的な膨らみ」はより顕著に、まるでその「存在」を「誇示」するように「顕現」するのであった。
 ただ立っていても、その「丸み」は容易に窺え。あるいは「前屈み」になったりしようものならば、さらにその「部分」は「強調」され、「男性」の「視線」を「釘付け」にするのにもはや何の「遠慮」も感じられなかった。
 あるいは共に旅をする「仲間」である、「パーティメンバー」の「一人」。あまりに「過激な格好」であり「露出過多」であるところの「女戦士」と比べてみても。その「胸」も「尻」も、およそ「ひと回り」は「豊かさ」を余分に持ち合わせていた。

 彼女自身、自らのその「身体」が時に「疎ましく」思うこともあった。「欲」を禁じるべき「精神」をその身に宿しておきながら、けれどその「肉体」はまさに「欲望の権化」であるという「矛盾」。たとえ彼女に「その気」がなくとも、自らは決して意図せずとも、「男性」の視線をしきりに集めてしまうという「背反」。
 さすがに「神の巫女」である彼女に対して、あまりに「不躾」な「熱線」を送る「殿方」こそ少ないが。けれど街中においては確かに感じる、いわゆる「チラ見」という疎らな視線。
「対象」である彼女自身がそれに気づかないわけもなく。その「視線」の出所である「雄」の姿を視界の端に捉えてしまう。そして、それこそ「見なければ」いいのにも関わらず、どうしたって目に入ってしまう。一皮剥けばまさしく「獣」であるところの彼らの「衣服」のある部分――、いわゆる「ズボン」の「一点」が大きく「膨らんで」しまっているのを。

「男根」を「勃起」させている姿を――。

「町」にはあらゆる「職業」の者が行き交っている。「商人」、「鍛冶屋」、「戦士」、「武闘家」、「魔法使い」など。そうした者の中には「一目」でその「職業」と判る「格好」をしている輩もいる。
 自らの「肉体」をまるで「武器」や「防具」の一つと捉え、それを「誇示」して歩く者。「上半身裸」な者のみならず、あるいは「全裸」に近い者だって少なくはない。
 そんな「無骨」な「野郎」達が――、胸を張って堂々と闊歩する「もののふ」達が――、「修道着姿」の彼女を目にするなりどこか「気まずそう」に、場合によってはやや「前屈み」になるのである。
 だがそれは致し方ない事だ。男性の「本能」による「習性」であり、あるいは正常な「反応」に過ぎないのかもしれない。だから彼女は、そうした「欲求」を「前面」に押し出す彼らを、いちいち咎めたりなどしない。むしろこんな「肉体」をしているにも関わらず、こんな「格好」をして平然と歩いている自分にこそ「非がある」のかもしれない、と彼女は思うようにしている。

 だが「魔法使い」達については別だ。
 彼らの「格好」はそのほとんどが「厚手のローブ」である。その「装備」については「魔力」における何らかの「恩恵」を受けるためのものであるのだろうが、それのみならず彼らは自らのその「非力」な体を覆い隠すために、そうした「服装」を好んでいるのだと、アルテナは勝手にそう思っている。
 あるいは「男性」「女性」問わず、どちらでも「装備」できるその「防具類」は、まさしく彼らの「男性的魅力の無さ」の裏付けであると、やはり「偏見」じみた考えを彼女は抱いている。
 だがそんな「彼ら」もまた、ひとたび彼女をその視界に捉えた時の「反応」は実に「男性らしい」ものだった。
 分かりやすく「動揺」し始め、意識的に「視線」を逸らそうと試みる。それでもやはり「本能」と「欲求」には抗いきれず、結局何か「別の方向」を見る振りをしつつ、「チラチラ」と疎らながらも「執拗」な視線を向けてくるのだ。
 だがそれについては、彼女は「赦して」いる。理由はやはり前述の通りである。問題はその後――、彼らのその「反応」についてだ。

 彼らもまた「半裸の男達」と同じく、やや「前屈み」になり始める。あるいは自らのその「反応」を「恥じる」ように、少しでも「目立たせない」ようにするために、「腰を引く」ことで「膨らみ」を相殺しようと考える。けれどそれは、いささか「ヘン」ではないだろうか。

 すでに「描写済み」のように、「彼ら」は主に「ローブ」などを身にまとっている。それは十分に「下半身」に「余裕」のある衣類であり、「戦士」や「武闘家」たちのように「半裸」であるわけでも、「動きやすさ」を重視するがゆえの「剥き出し」の格好でもない。にも関わらず――。

 彼らもまた「腰を引く」のだ。

「普通」にしていればただそれだけで。たとえいかなる「劣情」を抱こうとも、あらぬ「妄想」に耽ろうとも、「外」から見れば「それ」は分からないはずなのに。(あるいは彼らが「異世界」「別時代」における「魔法使い」の「正装」である「『チェック・シャツ』をズボンに『イン』」する格好でもしているならば、話は別だが――。)
 それなのに――。さして「巨根」であるわけでもないだろうに(それもまた彼女の「偏見」である)、必要以上に「股間」を隠そうとするのである

「服装」と「体勢」。それでさえもはや「過剰」であろうに。けれど、その上彼らはさらなる「隠蔽」を試みようとする。
 それは彼らの持つ「武器」であり同時に「防具」でもある、「ある装備」によって行われる。

「杖」、「ステッキ」――。

「魔法」を行使する者にとってはまさしく「必需品」であり、「剣」や「盾」を持たない彼らにとっての「代替品」。己の「非力」さをカバーするものでありながら、「実力」を発揮するためにこそ用いられるもの。
 その「形状」は実に様々で――。アルテナが「所持」しているような、「霊験」あらたなかな「神木」の「幹」や「枝木」をそのまま用い、上部に「宝玉」などをはめ込んだだけの「無骨」なものもあれば。
「既製品」ともいえる、「丈夫」で「シンプル」な素材に「奇跡」の類を付与することで「デザイン」された、「コンパクト」で「スタイリッシュ」なものもある。
 そのどちらにせよ、軒並み「小柄」である彼らにおいてその「装備」はやや「長大」に過ぎ、その「矮躯」に対してやや「持て余している感」がある。
 その「杖」を用いて彼らは――、

 自らの「股間」を隠そうと試みるのだ。

「神聖」なる「巨木」、あるいは「華美」で「荘厳」なそれを、自らの「陳腐」で「醜悪」な「小枝」を隠すことに用いる。まさに「神」を、「奇跡」を軽んじ、「冒涜」する行為に他ならない。

 そして――。彼らは「隠す」だけでは飽き足らず、自らの股間に「挟み込む」ように「装備」したその「棒」を用いて、あるいは「魔術」とも呼べる「儀式」を始める。

「逞しく」「立派」であるそれに、自らの「チンケな棒」を擦り付けるのだ――。

 まるで「古代」の「魔女」さながらに。「箒」ではなく「杖」に跨るようにしながら。「太く」頑強な棒に、自らの「細く」ひ弱な棒にあてがう。
 そうして「奇跡」とは程遠く、「祈り」にさえ及ばない、ただ目先の「願い」を叶えることだけに腐心する。
 果たして、その「行為」の一体どこに「救い」があるというのだろう。決して「本懐」には至らず、あくまで「代替」に過ぎないだけのその「行い」に。あるいは届くことのない「女体」の「夢」を描くのだろうか。それとも、「死骸」となっても変わらず「選ばれし存在」である「神の子」と、決して「選ばれる」ことのない「愚息」とを比較して、ある種の「憧憬」を重ねるのだろうか。

 一見して「豪快さ」や「無謀さ」とはおよそ無縁であるように思える「彼ら」は、けれどその場においては実に「大胆」に振舞う。
 周囲の者、あるいは「対象」である「アルテナ」に。「気づかれていない」とでも思っているのだろうか。自身は「無遠慮」に「視線」を向けておきながら。まるでそれが「不可逆」のものとでも思い込んでいるのだろうか。
 もしそうだとしたら――、あまりに「浅慮」である。「想像力」が欠如している。
 あるいは彼らの脳内に描き出される「光景」は、彼らにとって実に「都合よく」書き換えられ、「不都合」は排されているのかもしれない。

 次第に彼らの「息」は上がり、「愚息」からもたらせられる「快感」によって。「猫背」気味の彼らの「背筋」はピンと伸びて、ただただ「欲望」のみに従う「子羊」となる。あまりに「無恥」で「無様」である、そんな彼らの姿を見てアルテナは、

「お漏らし」をしてしまうのだった――。

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おかず味噌 2020/07/18 22:07

ちょっとイケないこと… 第十八話「姉と弟」

(第十七話はこちらから↓)
https://ci-en.dlsite.com/creator/5196/article/344430


「あの夜、お姉ちゃんがパンツを洗ってるのを見てから――」

 私から追及されてもいないのに、純君は唐突に自供を始める。

「どうしてもお姉ちゃんの穿いてるパンツが気になって――」

 私が沈黙を貫いているのをいいことに、彼は滔々と語り出す。

「洗濯機に入ってた、お姉ちゃんの洗ってないパンツを――」

 私にとって知りたくない事実を、彼はのうのうと打ち明ける。

「えっ…!?ちょ、ちょっと待って、それってどういう――」

 私は驚愕のあまり、とうとう弟に訊き返してしまうのだった。


「『一回だけ』じゃ、なかったってこと…?」

 私は緩んだ括約筋を引き締め直し、体勢を立て直してから、改めて彼に問い直す。

 今度は純君の方が黙り込む番だった。まさか遮られるとは思わなかったのだろう。彼はバツが悪そうな表情をしながらも、ひどく面倒臭そうにベッドから起き上がる。

 私は正面の純君から目線を逸らしてドアの方を見る。彼に脱がされたショーパンがまるで抜け殻の如く取り残されている。その右ポケットの中に一時的に収納された、私があの夜穿いていたショーツを想う。洗濯されたことで今や清浄となった衣類を。

 そもそも今の状況は純君が姉のショーツを隠し持っていたことが元凶なのである。だけどそれはあくまでも「洗濯後」のものであって、まさか「洗濯前」のものにさえ彼が興味を抱いていたなんて。私はもはや幾度目かの頬が紅潮する感覚に襲われた。


 まあ、それはそうだろう。むしろ、当然ともいえる。

「洗う直前」つまり「脱いだ直後」の方がより直接的に情報を得られるのであって。それに比べれば「洗った直後」のショーツなど、単なる布切れに過ぎないのである。

 だけどそれは私にとってやや都合が悪い。なぜなら洗面台で手洗いをしている時に私は知ってしまったのだ。私の下着がいかに汚れてしまっているのかということを。

 私自身とっくに確認済みなのだ。あの夜見た私のショーツは汚濁にまみれていた。それは『おしっこ』によるものだけでなく、汚物による染色が幾つも付着していた。

 純君は気づいただろうか。いや、外部から見ただけなら分からないかもしれない。だが欲望に負けて思わず拝借してしまうほど興味津々である対象物の観察において、より肝心といえる内部まで確認せずに済ませるなんてことが果たしてあるだろうか。


「ねぇ、お姉ちゃんのパンツは今も汚れてるんだよね?」

 間もなく純君の口から回答が得られる。彼自身の秘めたる願望を告白するように。それを訊くということはつまり彼は気づいてしまったのだろう、姉の羞恥の秘密に。

 とはいえ、私がノーパンのまま弟の部屋を訪れたことはすでに周知の事実である。それはどこかのコンビニのゴミ箱に投棄され、とっくに消失してしまったのだから。私が今日穿いていたショーツは粗相の証拠と共にもはや完全に隠滅されたのだった。

 だから純君が言っているのはやはり、それもまた想像の産物に過ぎないのだろう。私がショーツを穿いているのだと仮定して、それが汚れているに違いないだろうと。だけどその妄想には実体が伴っている。私の下着の実態を彼は知ってしまっている。


「『おしっこ』とか、女の子だけの『汚れ』とか…」

 すかさず純君は指摘してくる。これでもかとばかりに私的な『シミ』を炙り出す。

「う、『うんち』…、とかも付けちゃってるんでしょ?」

 彼は余さず確認してしまったのだろう。姉のショーツに刻印された数多の汚辱を。

「そ、そんなわけ…ないでしょ!!」

 即刻、私は否定する。だけど本当は分かっている。あの夜、私自身もそれを見た。後方部分にくっきり描かれた茶色の一本道。肛門付近にべっとり付いた『うんち』。拭き残しによるものか、力んだ拍子に予期せず漏れてしまったものかは分からない。それでも割れ目に沿ってばっちりと、我ながら「ばっちい」と思える恥辱の一本筋。

 紛れもない、私の『ウンスジ』。

 粉みたいにカピカピになった『うんちのカス』。決して他人には知られたくない、私自身の管理不行き届き。普段の不摂生と不衛生の不可抗力による不潔なる副産物。


 それでも私はまだ諦めない。この期に及んでも尚、往生際悪くあがくことにする。

 私がショーツ内に『ウンスジ』を刻み付けていたのはあの夜だけのことであって、あの日はお腹の調子がたまたま悪かったというだけで、日常的にそうとは限らない。

 かといって人前に堂々とさらけ出せるものかといえば、あくまでも話は別だけど。少なくとも、常習的に汚物まみれのショーツを身に着けているわけではないはずだ。

 だから仮に純君に観察されたとしても、きっと大丈夫なはず。どこまでも彼の想像、恐らく不潔だという予想と、不浄であって欲しいという願望に他ならないのである。

 だけど、そこで再び彼は無情にも言い放つのだった。


「僕、知ってるよ」

 性懲りもなく純君は同じ台詞を繰り返す。揺るぎない証拠を掌握しているように。

「だって、お姉ちゃんのパンツすごく『クサかった』よ?」

 彼は回想する。私のショーツの醜悪なる芳香について、嗅覚による感想を述べる。

 突き付けられた現実はショックなんて一言では到底言い表せるものではなかった。破滅と絶望、恥辱と屈辱、嗜虐と被虐、それらが複雑に入り混じる感情なのだった。

 純君の中では「よくパンツを汚す姉」という実像が出来上がっていることだろう。女児でもあるまいし。十九歳とはいえもうとっくに大人であるはずの女子大生の姉が二度も粗相したのみならず、日常的にショーツ内に汚物を隠し秘めていたなんて…。

 もはや姉としての威厳どころか、女性としての尊厳すら完全に無くしてしまった。

 私は観念した。全ての事実を受け止め、包み隠さず事情を打ち明ける覚悟をした。


「そうだよ。お姉ちゃん、よくパンツを汚しちゃうの…」

 それについては「よく」なのか「たまに」なのか「ごく稀に」なのか分からない。日常的なショーツの状況を知る上で、あの夜だけでは明らかに情報が不足している。だが少なくとも、彼が洗濯機の中から発掘した私のショーツもそうだったのだろう。

「ちゃんと拭いてるつもりなんだけどね…」

 打って変わって弱気になりながら私は言う。まさか拭いてないなんてことはない。いつも排泄を済ませた後、トイレットペーパーで入念に拭いている。それなのに…。

「どうしても、付いちゃうの。パンツに『うんち』や『おしっこ』が…」

――私、緩いのかな?

 私は苦笑しながら純君に訊ねる。だけど彼に答えようがないことは分かっている。

「ねぇ、さっき私のお尻の穴を舐めたとき…」

――『うんちクサく』なかった?

 またしても純君に問い掛ける。それについては、さすがに彼も答えられるだろう。


「大丈夫…だったと思うよ」

 自信なく彼は答える。どうやら『うんち臭』を直接嗅がれることは免れたらしい。最底辺ともいえる質問を投げ掛けた私にとって、それは最低限の安堵なのであった。

「こんなお姉ちゃんで、ごめんね…」

 私はもう何度目かの、すっかり慣れきった謝罪をした。

――こんな、恥ずかしいお姉ちゃんで…。
――こんな、だらしないお姉ちゃんで…。
――こんな、汚らわしいお姉ちゃんで…。

――ごめんなさい。

 私は幾度となく心中で弟に詫びるのだった。


 さすがに純君も萎えただろうか、まさか姉の呆れた日常を知ることになろうとは。たとえ彼自身が秘密を暴いたにせよ、ここまで不潔な真相が待ち受けていようとは。

「じゃあ、『続き』してあげるね…」

 私は純君の顔を直視することも出来ぬまま、震える手で弟のおちんちんを掴んだ。もうとっくに時効を迎えたであろう契約を、尚も実直に履行しようとしたのだった。

 すっかり怒張を失い、萎縮し弱々しくなり掛けているはずの彼のペニスはけれど。

 今までにないくらい固く「勃起」を持続していた。

 鼓動さえも伝わってくるようだ。それほどまでに強く、己が存在を誇示していた。


――どうして…?

 ふと疑問を抱く。だけどその答えを私はすでに知っている。それはある種の趣味。マトモとはいえない、的外れな性癖。あくまで真っ当とは言い難い、間違った悪癖。

 まさか可愛い弟にそんな性質があったなんて、私はその事実を認めたくなかった。だけどこの異常なる状況が、彼の発情による反応が、明確なる解答を象徴している。

 純君は姉の汚濁に愛着を感じているのだろう。私の『おしっこ』や『うんち』に、それらが付着した汚物まみれのショーツに尋常ならざる執着を抱いているのだろう。

 あるいはその趣向は○○さんと同じなのかもしれない。私に粗相をさせた張本人。彼もまた私の『おもらし』に高揚を覚えた一人なのだ。そして今では私自身さえも。


 私は、私と彼と純君に共通項を見出していた。本来、人が目を背けたくなる事象。だが動物である以上、避けて通れない現象。排泄行為や排泄物自体に抱く性的倒錯。

 まさしく「変態」といって差し支えない性癖。大っぴらに出来ない秘めたる事情。

 私と○○さんのみならず、つまり純君もまた「こちら側」の人間だったのである。

 こうしてまた一つ、私たちは姉弟揃って他人に言えない秘密を共有したのだった。

「お姉ちゃんの『おチビりパンツ』…」
「お姉ちゃんの『おもらしパンツ』…」
「お姉ちゃんの『ウンスジパンツ』…」

 やがて純君は呪文のように唱え始める。それは紛れもない呪詛の言葉なのだった。まるで呪術に掛けられたかの如く、私はすっかり彼の術中に嵌ってしまうのだった。


 私は再び純君の上に騎乗し、気丈な口調で劣情を煽情することで絶頂に誘導する。

「お姉ちゃんの『おチビりパンツ』、臭かった?」
「うん、すごく!!」

「お姉ちゃんの『ウンスジパンツ』、嗅ぎ嗅ぎしたの?」
「うん、たっぷりと嗅いじゃったよ!!」

「『おなら』は…?『おなら』も臭かった?」
「とぉ~ても!!」

「じゃあ、お姉ちゃんの『汚パンツ』想像しながら『お射精』できる?」
「できるよ…!!いっぱい出ちゃいそう」

「純君も『お精子』を『おもらし』しちゃうんだね」
「うん、いっぱい『おもらし』する!!」

 姉の誘惑に対して、あたかもそれを待ち望んでいたかのように純君は従順になる。


「お姉ちゃんも、もう漏れちゃいそう…」

 快楽と共に徐々に高まりつつある膀胱の貯蔵量に、私は間もなく放流を予告する。

「いいよ。そのままいっぱい出して!!」

 純君は優しく私の要求を承認し、姉による『放尿ショー』を固唾を呑んで見守る。

「おふぇいひゃん、おもらひ、ひひゃう」

 私は再びペニスを頬張る。それとは別に下腹部に思いきり力を込める。そして…。


――ジョボロロ~!!!!!

 私は『おもらし』をした。純君の上で、彼の顔めがけて『おしっこ』を放出した。一度目、二度目は○○さんの眼前で。三度目の正直とばかりに、今度は弟の顔面に。

 一度目、二度目と大きく違うのは、私が下半身に何も穿いていないということだ。遮られるもののない私の『尿』は、重力の影響を直接受けてほぼ一直線に落下する。そして、直下にある純君の顔に『おしっこ』が集中豪雨のように降り注ぐのだった。

 私は自ら望んで『排尿』したし、きちんとショーツを脱いだ上で膀胱を解放した。それを『粗相』と呼ぶのか、『放尿』と呼ぶのかについては諸説あるところだろう。

 だが己の意思かどうかはこの際関係なく、それが不意であろうと故意であろうと。指定外の場所でする『排尿行為』は、紛れもない『おもらし』に違いないのだった。


「ひっぱい、でひゃう…。ひぇんひぇん、とまらないよ~!!」

――ジュビビビ!!!ジュバ~~!!!!!

 思いの外、私の『おもらし』は長く続いた。全然溜まっていなかったはずなのに、予定外に『おしっこ』はたっぷり出た。私は恥を捨てて、小水の勢いに身を委ねる。

――ジョロ…。チョポ…!!ポタ…ポタ…。

 そして私が『放尿』を終えようとした時、今度は口の方で奔流を感じるのだった。


――どぴゅん!!!ドクドク…。

 純君のペニスが激しく脈打つ。ドロドロした感触と生臭い芳香が口一杯に広がる。野性味に溢れた、あるいは野菜のような青臭さを思わせる、男性器による生理現象。

 純君は精液を『おもらし』した。

 いや、そんな後ろめたい表現は適切ではないだろう。純君は立派に果たしたのだ。姉としてはむしろ「頑張ったね!」と手放しで褒めてあげるべきなのかもしれない。たとえそれが決して褒められたものではない、イケない行為の結末であるとしても。

 純君は「射精」をしたのだった。

 私の口腔に欲望の塊を解き放った。雄としての本能を見事に成就させたのである。


――ビュル…!!ピュル…!!

 まだまだ続々と精製される純君の精液を、私はゾクゾクしながら口で受け止めた。彼が私の粗相を受け入れてくれたみたいに。私の愛情を受け取ってくれたみたいに。

 ようやく純君の射精が終わる。後に残ったものは、口内を満たす残骸のみだった。本来、膣内へと放たれるべき液体。空気に触れればたちまち死んでしまう儚い存在。すぐに息絶えようとしている生命はけれど、まだもうしばらくは生きているらしい。

 口の中で彷徨う、哀れな魂。受精を目的とする、純君の元気いっぱいの子種たち。

 私は迷うことなく、それを飲み込んだ。喉の奥に引っ掛かる感触を覚えながらも、能動的に精汁を飲み終えた。清濁併せ吞むかのように。善悪すらも飲み下すように。

 純君の精子は苦かった。それもまた何かの雑誌で読んだ性経験のその通りだった。

――精子は不味い、だけど愛する人のものならば…。


 顔騎状態のまま、私は暫しの感慨に耽る。それからゆっくり純君の上から降りて、射精を終えたばかりの彼と顔を見合わせた。

 純君の顔も髪も濡れていた。それはまさしく私の『おしっこ』によるものだった。

 私はベッドにゴロンと寝転がる。シーツもまた、私の『おしっこ』で湿っていた。

 弟の横顔をチラリと窺う。彼は仰向けのまま天井を見つめて微動だにしなかった。その視線の先にあるのは限りない充足感と幸福感か、あるいは果てしない罪悪感か。脱力したような双眸に映る底知れぬ感情を、私には想像することしかできなかった。


「純君の『白いおしっこ』苦かったよ」

「お姉ちゃんの『おもらし』だって…」

 穏やかにお互いの感想を報告し合う。私と彼だけに伝わる「共通言語」を用いて。

 やがて、どちらからともなく笑い出す。どうしようもない照れ臭さと気まずさに、思わず自然と笑いがこみ上げてくる。

 私と純君は一頻り笑い合った。深夜の室内に姉弟の笑声だけが静かに染み渡った。笑い合う姉と弟。それはありふれた、ごく普通の微笑ましい姉弟の風景なのだった。


――続く――

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