霜月ナル 2023/01/21 04:17

続・洗脳悪堕ちヒロインを正気に戻す力を得た代償として(以下略)【メ○ガキ美少女戦士編】※修正しました

思った以上に反響があったので続編、書いちゃいました。
今回のヒロインのデザインは下記の感じです

通常

悪堕ち


続・洗脳悪堕ちヒロインを正気に戻す力を得た代償として永遠に洗脳悪堕ちヒロインを正気に戻し続ける事になった男の話【メ○ガキ美少女戦士編】


 
 星宮姫子は何処にでもいる根暗で背の低い女の子。シングルマザーの家庭で育ち、母親は生活費を稼ぐために早朝から深夜まで仕事に出ていて育児放棄気味だったり、学校で虐められたりしているけど何ら特別ではなかった。
 そう、あの日までは……

 朝起きて、既に仕事へ行った母が作った朝食を食べて学園に登校し、クラスのトップカースト女子に『根暗で教室の雰囲気が暗くなるわねぇ』とか色々ネチネチ言われたり、貯めたなけなしの小遣いで購入したお気に入りのペンが筆箱からなくなっていたりと何時もと変わらない日……のはずだった。
 授業が全て終り、姫子はいつものように図書室で隠れるように本を読んで時間を潰している。お金が掛からないし集中して読めば時間があっという間に過ぎていく。読むジャンルは雑多で辞書から小説まで何でも読むが、好きなのはライトノベル。特に普通の少女が特別な力に覚醒して、悪を倒すような話が好きだった。そしてその主人公を自分に置き換えて妄想する。普通の少女が実は正義のヒロインで、変身して悪を蹴散らしていく。

「……こんな力がホントにあったら良いのに」

 溜め息をついて本を閉じる。いつの間にか時間が過ぎ、日が落ちかけていた。校門の閉まる時間が近づいていることに気がついた姫子は荷物を片付けて学園から自宅に向かう。彼女の自宅はここから歩いて30分ほどで着くが、街の都心部からは外れているため人通りは少なく明かりも街頭だけだ。普段は暗くなる前に帰っているが、今日は何時も以上に集中して本を読んでいたため学校を出るのが遅れてしまった。暗い夜道をビクビクと怖がりながら歩く姫子。すると、何かにぶつかって尻餅をついてしまう。恐る恐る顔を上げてぶつかったモノを見ると、そこには――

「グルルルル……」
「き、きやぁぁぁぁぁ!ば、化け物!?」

 現実には存在しないはずの異形が仁王立ちしていた。体は闇のように黒ずみ、腕が肥大化して鋭い爪を伸ばしている。顔は獣のような爬虫類のような、どっちつかずな形をしておりギラギラとギザ歯が覗き、よだれを垂らしていた。
 驚いた姫子は逃げようとするが、腰が抜けてしまい立ち上がることが出来ない。化け物はジリジリと彼女へゆっくり近づく。逃げられないことが解っていて、わざと怖がらせるようにしているのだ。

「いや、誰か助けて……」
「――グギャァァ!」
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 化け物が姫子を襲ったその時、彼女が首から提げていた宝石が光り輝く!光は瞬く間に彼女の体を包み込み、その姿を変えさせていく。髪は赤髪のツインテールへ変化し、眼が隠れていた前髪が開かれる。服は肩が出ているセーラー服のようなレオタードにスカートが付いたものへと変わり、腕に肘までの白のグローブ、太もも辺りまでの白いニーソックス、首にチョーカー、額に宝石の着いたサークレットが装着。あっという間に変身を終えた姫子は自然とポーズをとり化け物を睨み付ける。

「夜空の星のように輝く正義の戦士『セーラーガール・ステラ』!あんたの脳天に流れ星落とすわよ!」

 自然と決めゼリフを放つ姫子、いやセーラーガール・ステラ。変身したことで性格が変わったのか、普段の姫子から考えられないほど雰囲気が変わり、化け物を見下すように笑う。手には小さなステッキが握られ、それを突きつけていた。

「なんだか状況がわからないけど、この力があればあんたを倒すなんて簡単だってことだけはわかるわ!」
「ぐぎぎ……!」

 自分が馬鹿にされていることがわかり、怒りを露わにする化け物。発達した筋肉を隆起させ戦闘態勢にはいった彼は素早くステラへ襲いかかる!

「――よっと」

 しかし、ステラはひょいと軽やかに舞い、化け物の上を飛び越えて攻撃を回避。渾身の攻撃を躱された化け物は蹈鞴を踏み、倒けてしまう。それを見たステラは口に手を当てて笑う。

「あはは!見かけ倒しのザコねぇ~♪ザコ、ザ~コ!」
「ぎぎぎ……!」
「あれ、理解できる頭はあるんだ~?凄いね~、筋肉詰まってるのかなぁ?」

 化け物は彼の肌が白ければ真っ赤に染まっていただろう程の怒りに震えていた。立ち上がると目にもとまらぬ速さでステラへと攻撃を繰り出すが……

「ふがー!」
「よっ、ほっ、っと、あれれ~全く攻撃が当たらないよ~?」

 繰り出す攻撃全てがあっさりと躱されていく。かすり傷すら与える事も出来ず、振るった爪は空を斬る。躱される度に煽られイライラが募り、攻撃が荒くなる。化け物はステラによって手玉に取られていた。数分もしないうちに化け物の体力が限界を迎え、肩で息をする無様な姿を晒してしまう。

「え~?もう終わりなのぉ?ほんっと、筋肉だけのクソザコなんだぁ~!」

 もはや声を上げられないほどに疲労している化け物。その姿を見たステラはがっかりした表情を浮かべる。そして手に持つステッキを掲げ力を込めた。

「じゃあ、もう終わりにしちゃうね」

 ステラの周りに幾つもの光が生まれていく。1つ1つに凄まじい力が込められており、掠っただけでも化け物にとっては致命傷なレベルだ。あまりの力に恐怖し、後退る。先程までとは立場が逆転していた。

「さよなら、ク・ソ・ザ・コ・さん♪――スターライト・メテオ!」

 技名を叫んでステッキを振り下ろすと、一斉に光が化け物へと撃ち出される。化け物は回避することが出来ず、あっという間に光に呑まれて消えていく。――光弾が止むと、化け物がいた場所には塵すら残っていなかった。

「あ~あ、つまんなかった」

 戦いを終えて肩をすくめるステラ。辺りを見回し、他に化け物の仲間がいないことを確認すると変身が解け、元の姿へと戻っていく。次の瞬間、メ○ガキ化してた精神も元に戻り、姫子はワナワナと震え始めた。

「な、なな……何なの、今のぉぉぉぉぉ!?」

 普段は出さないような大声を上げながら、自宅のアパートへと走って向かう姫子。正義のヒロインへと変身したこともそうだが、あのメ○ガキとも言うべき状態への変化。根暗な姫子と同一人物だとは思えないほどだった。
 ――これは姫子自身知らないことだが。変身した事による性格の変化は、彼女が心の奥底で抑圧している願望や本音等が表に出た事によるものだ。普段虐めている奴らを見返したい、強い自分になりたい、助けてくれない大人への反抗心。そういったものが色々混ざり合ったのが、正義の戦士「セーラーガール・ステラ」へと変身した際に現れたのだった。

「はぁはぁ……」

 息が絶え絶えになりながらも自宅へ着き、制服を着替えずに床へ倒れ込む。姫子は先程の戦いを思い出し、メ○ガキ化した自分の恥ずかしさに両手で顔を覆い悶える。

「うぅぅぅ~!?『あんたの脳天に流れ星落とすわよ!』とか『ザコ、ザ~コ!』って何なのさ~!あんなセリフを私がホントに言ってたのぉぉぉぉぉ!?」

 ゴロゴロと床を転がり呻く。幸い戦っていたところは誰にも見られていなかったが、もし見られていたら憤死していたことだろう。とはいえ、普段の姫子とは違いすぎて誰も彼女とは思わないだろうが。――しばらく悶え続けていた姫子だったが、ようやく落ち着いたのかピタリと動きを止める。

「でも、気持ちよかったなぁ……私にあんな力があるなんて、夢みたい」

 変身した時の開放感、敵を圧倒する身体能力と不思議な力。夢に見た正義のヒロインになれたのだ。恥ずかしさはあるが、同時に嬉しくもあった。

「――もしかして、私がこの街を守るために授かった力なのかも」

 あの化け物が一体だけとは考えられない。また別の個体が現れて人を襲うかもしれないし、そもそも背後に悪の組織がいる可能性もある。そして、姫子には戦う力がある。力を得た昂揚感の所為か、普段なら考えもしない事を思いつく姫子。放課後は時間がたっぷりある。どうせ母は深夜遅くまで帰ってこない。

「よしっ!明日から放課後はパトロールだ!」

 ――翌日から姫子は放課後に図書室へ行くのではなく、街へパトロールへと繰り出すようになった。そして化け物を見つけたり、人が襲われているのを発見した時は変身して戦い、街の平和を守っていく。やがて、正義の戦士「セーラーガール・ステラ」の名はSNS上で都市伝説のように広まっていった。その噂話を聞いたり、ネット上で見かける度に姫子の心は昂揚感に満たされる。もう、いじめや家での寂しさなど吹き飛んでいた。

「ぐげぇ~!?」
「はん!アンタみたいなのがセーラーガール・ステラ様に勝とうなんて到底無理なのよ、このざぁこ!」

 化け物、ステラが「下級妖魔」と呼称する個体は弱く、時には複数同時に現れることもあったが簡単に蹴散らせるほどだった。力を扱うことにも慣れ、光弾を飛ばしたり敵の目を眩ましたりと活用できるようになった。常勝無敗のセーラーガール・ステラを止めるモノは誰もいない……はずだった。

「ふん、もう終わり?あ~あ、もうそろそろ四天王とか幹部級が出てもいいのに――」
「おや、お呼びかな?」
「誰っ!?」

 声のした方へと振り向くと、そこには下級妖魔など比ではない威圧感を放つ黒い大男がいた。明らかに幹部級の敵だ。ステラは油断せずに警戒し、ステッキを構える。

「おじさん、何者?」
「私は17年前、セーラーガールによって滅ぼされた魔王の弟、『アスタロト』!以後、御見知り置きを……」
「17年前、ですって?」

 恭しく礼をするアスタロト。ステラは彼の言葉に疑問が浮かんだ。アスタロトが言うことを信じるなら過去にもセーラーガールがおり、同じように平和のため戦ったということだ。

「そう、17年前に尊敬する我が兄バエルはこの地球を支配するため活動していた。だがそれを阻む存在、セーラーガール・カエルムが現れたのだ!」

 アスタロトは語る。バエルとセーラーガール・カエルムの戦いは人知れず行われ、カエルムが優勢だったが、ある日彼女を罠にかけ捕えたという。これでバエルの勝利が確定したかと思われた時、土壇場でさらなる力を覚醒させたカエルムがバエルを倒したのだという。そして、アスタロトは復讐のためにこの17年間、カエルムによって壊滅状態になった戦力を蓄え、彼女を倒す機会を伺っていたのだ。

「しかしカエルムは現れず、新たなセーラーガールが現れた。そう、貴様のことだ。正直、貴様のことは邪魔で仕方なかったが……ククク」
「な、何よ気持ち悪い」
「いや、運命とはあるものだなと思ってな……」
「???」

 首をかしげるステラだったが、敵の目の前だと思い出し気を引き締める。ステッキに力を込め、いつでも攻撃できるようにする。それを見たアスタロトは感心したように笑う。

「ほぉ……短期間でそこまで力を使いこなしているとはな。賞賛に値するぞ」
「ふん、おじさんに褒められても全然嬉しくないし」
「そうか、だがその程度では私は倒せん!」

 瞬間、アスタロトから凄まじい闘気が噴出する!思わずステラは後ずさってしまうが、気を強く持ち敵を睨み付けた。

「いくぞ――」
「なっ、速い!?」

 一瞬でステラの懐に踏み込んだアスタロトは拳を放つ。間一髪でそれを避けるステラだったが風圧だけでコスチュームが裂け、浅く傷が刻まれる。今まで無傷で戦いに勝ってきたステラにとってそれは初めての負傷で、鋭い痛みに顔を顰めてしまう。その隙を見逃さずアスタロトは連撃を繰り出す。

「――くっ!?」
(速すぎて完全に躱せない!?)

 紙一重で攻撃を避け続けるステラだが、完全に避けきれずに傷が増えていく。そして、ついにはコンクリートの壁際へと追い詰められてしまった。

「しまった――!?」
「ふぅぅぅぅぅん!」

 アスタロトの渾身の一撃が、逃げられないステラの腹にめり込む!凄まじい衝撃がステラの体を突き抜け、背後の壁に罅が入る。

「――おげぇぇぇぇぇぇっ!?」

 遅れて激痛がステラを襲った。アスタロトの拳が離れると、衝撃で破けたコスチュームから見える腹部は赤く腫れ上がっているのが見える。次いで吐き気が迫り、我慢できずにステラは胃の中のモノを全て吐き出してしまう。幸い、普段からまともに食事を取っていなかった所為か、吐き出したのは殆ど胃液だけだった。

「ククク、無様だなセーラーガール・ステラ。その程度でイキっていたとは笑わせる」
「う、うるさい……まだ、これからだし」
「強がるな、常人なら消し飛ぶほどの一撃だ。流石のセーラーガールでもただでは済まないだろう」

 アスタロトの言うとおり、ステラは意識を保つのがやっとな状態だった。殴られた腹部がズキズキと痛み、骨の一部も折れているのか呼吸するだけで激痛が走る。生きているのが不思議な状態だ。アスタロトの言うとおり、セーラーガールでなければ即死だった。

「――ふむ、ならばトドメを刺そうか」
「……いや、やめて……来ないで」

 拳を振り上げるアスタロトを見て、ステラの体が恐怖に震える。逃げなければならないのに足がすくんで動かない。――そして無情にもアスタロトの豪腕が振り抜かれた。

――ゴォンッ!!!

轟音の後、静寂が場を包み込む。アスタロトによってステラの頭が潰されたと思われたが……

「あ……あぁ……」

 アスタロトの拳は、ステラの顔のすぐ真横を撃ち抜いていた。彼女はガクガクと体を震わせ、呆然としていた。そして、彼女の意思に反して股間から黄色い液体が流れ出す。――ステラは死の恐怖で失禁してしまっていた。

「――あ」

 小便を漏らし終えたステラはあまりのショックで気絶し、その場に倒れ込む。地面に広がる小便溜まりでコスチュームが汚れてしまう。正義の戦士とは思えない、無様な姿だった。アスタロトは倒れたステラへ近づき、頭を掴み軽く持ち上げる。

「無様に気絶したか……よし、アジトへ連れて行くとしよう」

 気絶したステラを肩に担ぎ、アスタロトはその場から去って行く。後には砕けたコンクリート壁だけしか残らなかった……

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