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flower spiral 2020/12/12 21:57

宣伝SSを完成したところからアップします。その③

来年初頭に発売予定の成人女性向けシチュエーションボイス作品、アルトボイス男子・桐野千歳の前日譚を少しずつアップします。
その③をアップしました~!


・宣伝ボイス(ちょびっと様)
紹介の所から商品予告のリンクがあります!

・販売予告
アルトボイス男子 桐野千歳 flower spiral https://www.dlsite.com/girls/announce/=/product_id/RJ309044.html


下に載せていきます。はやくエッティなシーンまで書きたい……(今書いてます)


・アルトボイス男子 桐野千歳、前日譚③


「……申しわけありません。この本でしたら、完売してます」

「あぁ、やっぱりそうなんですね。仕方ないな。そのうち再販されるかもだし、待つことにします」

店員さんは少し考えるそぶりをしたあと、真剣な顔で僕をみつめてきた。

「あのっ……もしよろしければ、私が買ったぶんをお譲りさせてください」

「え……?いや、それは申しわけないですよ。元はといえば、予約し忘れたことがいけなかったので……」

「大丈夫です!私、この作家さんの絵と話がすごく好きで、新しい本が日本で出版されたのがうれしくて……応援したくて。だから、一冊でよければ、お譲りできます」

「いいんですか?」

「はい、本当に遠慮しないでください。私、この本、三冊買ってるんです!」

「……三冊?」

「はいっ、観賞用、保存用、布教用です……!」

「三冊……」

まさかそんなにたくさん買っていると思っていなくて、思わず吹きだしてしまった。

「あ、あの……?」

「笑っちゃって、すみません……。店員さんは、この作家さんが、すごく好きなんですね。同じ本をたくさん買ってもらえて、しかも布教までしてもらえるなんて、作家冥利につきますよ」

「そう言ってもらえると安心して、これからも三冊買えます……」

ほっとした様子の店員さんに、僕はまた笑ってしまった。
さすがに何度も笑うのは失礼すぎるなと思って、口元を手で覆ってから謝る。

すると、彼女は「大丈夫ですよ」と言って、優しく微笑んでくれた。
本当に気にしていないのだとわかる彼女の柔らかい表情に、好感を覚える。

「本ですが、自宅から持ってきますので、明日以降でしたら、ご用意できます」

「ありがとうございます」

「それではこちらの用紙にご連絡先を……あっ、でも私が購入たものだから、ここでやりとりするのはいけませんよね。オーナーに説明して許可をもらってきます」

「あ、待ってください」

感じの良い子だな、もう少しゆっくり話をしたいなと思った僕は、鞄から名刺ケースを取り出した。

「本を譲っていただく、お礼を渡したいから、できれば店員さんがお休みの時にお会いして、受け取りたいです。名刺を渡しますので、連絡をいただけませんか?」

「そんな……!お礼なんていいです……」

「いえ、させてください。買うのを忘れていて説得力はないかもしれませんが、読むのを楽しみにしてたんです。この作家さんの過去作も気になってて、よかったら貴女がオススメのものを教えていただけませんか?次はその本を買います」

「本当ですか!?私でよければいくらでも教えます!全部おすすめなんですが、私が一番好きなのは――あ、もう絶版になってる絵本でした……。えっと、どうしよう。まだ売ってる本で、どれがいいかな……」

「ふふっ……急いでないので、本を譲っていただくときに教えてください」

「わかりました……!それではこの名刺、いただきますね」

「よろしくお願いします。後、この絵本を先に買わせてください」

「はいっ、ご購入ありがとうございます!この絵本、芸能人さんのおかげで、すごく売れてるんです。おもしろかったからって、新刊も買いに来てくださった方も多くて完売したから、うれしいです」

店員さんは本をいそいそと包みながら、笑顔で話を続ける。

「この絵本も、胸にじーんって響く素敵なお話なんですよ。この作家さんの物語はシニカルなキャラが多いけど、優しいところもあって、そのさじ加減が絶妙なんです!」

興奮気味に力説したあと、彼女は我に返り「ごめんなさい」と肩をおとす。

「私、本の話をすると夢中になってしまって……。ネタバレするといけないので、気をつけます」

「店員さんの解説、すごく興味がありますよ。今度お会いして、色々お話を聞くのを楽しみにしています」

「っ、わかりました!よろしくおねがいします……!」

「……ネタバレしても大丈夫なように、今日買った絵本は、すぐに読んでおきますね」

「は、はい……」

客相手に話しすぎたと思ったのか、店員さんは恥ずかしそうに目をふせる。
ころころと変わる表情が魅力的で、僕は彼女への興味がさらにわいた。

(本だけじゃなくて、この子と話をするのも、楽しみだな……)

その日の夜、納品が近い仕事をしていると、携帯に彼女から連絡が来た。

「今日、本をお譲りするとお約束した書店員です。今週の金曜日があいています。桐野様のご都合はいかがでしょうか?お手隙のときに、ご連絡いただけるとうれしいです。よろしくお願いいたします」

真面目な性格が伝わってくる文面に、口元がゆるんだ。
早く金曜日になったらいいのに、なんて考えている自分がいる。

それは最近、ルーティンワークをこなしているだけの僕にとって、新鮮な気持ちだった。

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flower spiral 2020/12/11 00:05

宣伝SSを完成したところからアップします。その②

来年初頭に発売予定の成人女性向けシチュエーションボイス作品、アルトボイス男子・桐野千歳の前日譚を少しずつアップします。
その②をアップしました~!


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アルトボイス男子 桐野千歳 flower spiral https://www.dlsite.com/girls/announce/=/product_id/RJ309044.html


下に載せていきます。




・アルトボイス男子 桐野千歳、前日譚②




現在、フリーランスのグラフィックデザイナーをして、生計をたてている僕は、先生の言葉を指針にして、自分らしく好きなように生きている。

世間が言うところの、女性が好みそうな可愛くて甘いお菓子が好きだし、仕事も女性向けのデザイン関連が多い。

今日、会うことになった取引先の仕事もそう。
女性向けの商品に力を入れ始めた地方の酒造メーカーで、企画営業を担当している男性が、上京するから僕に会いたいと言ってくれたのだ。

待ち合わせは上品な和食を売りにしているお店だった。

「ここの懐石料理、見た目だけじゃなくて味も美味しいんですよ。どれでも好きなものを頼んでくださいね」

「ありがとうございます。たくさんあって迷うな……。じゃあ、これにします」

「あぁ、それ茶碗蒸しが旨いんですよ。私はこの秋限定のやつにします」

食事をしながら、今後の仕事の話をする。
僕がパッケージデザインをしているシリーズの商品が売れ行き好調らしく、彼は上機嫌だった。

「今回の商品も完成したら、桐野さんに送りますね」

「いつもありがとうございます。今から飲むのを楽しみにしていますね」

営業の人と別れた後、特に予定もなかったので、腹ごなしに寄り道をすることにした。

(せっかく都心に来たし、何か買って帰ろう)

作業中に食べる甘いものが欲しい。ここら辺で、まだ行ったことがないパティスリーはないかな?

携帯で検索をして、気になる店をみつけた。

(和風チョコ専門店か……)

凝った形と種類の多さに、オーナーの気合いを感じる。
ここで買おうと決めて、店に向かう途中――洋風レトロな可愛い外装の本屋が目にはいった。

(へぇ……個人店かな?ちょっと気になるな)

ドアを開けて中に入る。
レンガの壁紙が張られている店内には、動物を模した木製の玩具と一緒に、たくさんの本が並べられていた。
二階はギャラリーになっているらしい。

この本屋のターゲット層は、僕のようなデザイナーや美術生なのだろう。
店の奥へ行くと、一角に海外作家の絵本や画集のコーナーがあった。

(この本屋、すごいな)

店員さんの趣味なのだろうか。大型書店に負けない品ぞろえに目を奪われた。
手作りのポップに綺麗な字で、絵本のオススメポイントがかかれている。

「あ……!」

その中に見覚えのある絵本の表紙を見て、僕は思わず声をもらした。
それは先月、芸能人がSNSで紹介しているのを見て、興味がわいた作家だった。

新作が発売したら、この絵本と纏めて買うつもりだったのに、最近忙しくて、すっかり忘れていた。
とりあえず、この絵本だけでも忘れないうちに購入しておこう。

(新作は普通の本だけど、もし売ってたら、このコーナーに作者繋がりで置いてる可能性が高いよね? でも、ないな。どうしよう)

一応、店員さんに聞いてみようか。
レジに行くと、二十代前半くらいの女性の店員さんが、椅子に座ってパソコンを操作していた。


「あの、すみません。本を探してるんですが……」

「はい、どちらのものでしょうか?」

「これです」

カウンターから出てきた店員さんに携帯の画面を見せる。
すると、彼女は「あっ」と声をあげて、眉をさげた。

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flower spiral 2020/12/05 18:21

宣伝SSを完成したところからアップします。

来年初頭に発売予定の成人女性向けシチュエーションボイス作品、アルトボイス男子・桐野千歳の前日譚を少しずつアップします。

・宣伝ボイス(ちょびっと様)
紹介の所から商品予告のリンクがあります!

・販売予告
アルトボイス男子 桐野千歳 flower spiral https://www.dlsite.com/girls/announce/=/product_id/RJ309044.html

SS,全部完成してからと思ったんですが、出来たところから載せます!
後日、全部まとめて修正(あれば)して、Pixiv様でも読めるようにします~!

SSは千歳視点で、ヒロインと出会って恋人になるまでのお話なので、
エッティなシーンは物語の後半しかないです。
よろしくお願いいたします!

下に載せていきます。




・アルトボイス男子 桐野千歳、前日譚



「優しいお姉ちゃんが一緒でよかったなぁ。ほら、お嬢ちゃん。卵、落とさないように気をつけてな」

子供の頃、妹と一緒におつかいに行くと、いつも女の子に間違われた。
「僕はお兄ちゃんです」と言うと、お店の人は慌てて謝ってくれる。

皆、悪気があって僕を女の子と間違えていたわけじゃない。
だから、僕は否定しつつも、なんだか申しわけない気持ちになっていた。

男らしくなれば、きっと女の子に間違われないようになる。
子供ながら真剣に考えた僕は、同級生の男子たちを見本にして、言葉遣いを乱暴にしたり、行動を荒っぽくする努力をした。

――その結果、妹まで僕の真似をしてガサツになった。元の妹に戻るまで大変だった。

今では笑い話なっているけど、あの時は『女の子に間違われたくないんだ』と言えなくて、両親と祖母を困らせてしまった。

母が行儀見習いで通わせてくれた書道教室の先生に出会わなければ、僕は今どうなっていたのだろう?

『男らしさ』を求めて、興味のないものを好きになろうとして、自分に嘘をつきつづけていたのだろうか。

書道教室に通い始めてすぐ、先生が僕に話しかけてくれたことを今でも時々、思い出す。

「千歳くんが好きなことってなんだ?」

「妹と一緒に、お散歩して、綺麗な花や可愛いものを探すのが好き。今、田舎の川で拾った綺麗な石でペンダントを作ってるんだ」

「そうか。君は妹を大事にする良いお兄ちゃんだな」

「でも、僕……お姉ちゃんに間違われるんだ。男らしくなくて、かっこよくないから……」

「先生からみた千歳くんは、とてもカッコいいぞ」

「本当……!?」

「あぁ、本当だ。だが、他の人が君を女の子と間違えてしまうことも『理解』はできる。本当の君は礼儀正しくて、優しい子だからな」

「……」

「千歳くん。『男らしい』という言葉を気にしすぎてはいけない。この世界には、たくさん人がいて、それぞれ君に対する印象が違う。
だから、他人にどう思われるかを気にして生きていたら、とても疲れてしまう」

「先生……」

「今から気を張らずに生きていく練習をしておいたほうがいい。君が大好きなものを大好きていていいんだ。それは誰にも迷惑をかけない」

子供の僕に、わかりやすい言葉で、対等に話をしてくれた先生。
先生の言葉は僕の心を軽くしてくれた。今でも、僕が一番尊敬できる存在だ。

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flower spiral 2020/12/01 21:38

宣伝ボイスの試聴、始まっております!

ちょびっと様、ありがとうございます!
段々と作品が形になってきて、嬉しい…….
個人サークルですが、たくさんのクリエイター様にお力をお借りして、
制作ができております。
感謝しております!

フォローしてくださった方、
作品予告をお気に入り登録してくださった方も、ありがとうございます!
ほんまに嬉しい…….
心こめて制作していますので、今後も情報のチェックしていただけると嬉しいです。
よろしくお願いいたします。

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flower spiral 2020/12/01 00:30

表紙とおしながき、完成しました!

サークル主です。
めっちゃ眠いので予約投稿して寝ます。

ご依頼していたタイトルロゴ込みの表紙と
おしながきを納品していただきました!
※イラストとデザインは、それぞれ別の方です。
宣伝ボイスの公開が始まる前に先出しさせていただきます!

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