『七人のおたく(1992)』 感想

時代の中で輝く作品

1980年代後半のある事件をきっかけに、オタクを題材にした一般作品にはみんなピリピリしていた時代がありました。なのでこの作品も傑作の評判を聞きつつも、見る勇気がなかなか出ずに今日に至り。
でもそろそろ時代も良い感じに回ってきたようなので視聴。
結果、評判通りの傑作だと感じ入りました。

オタクの中で孤立するオタク

オタクと言っても当然一括りではなく、いやむしろ本当にコアなオタクというのは
「自分はこれが好き」を追求しすぎたために周囲とうまくやっていけずに孤立するタイプがほとんどなのです

世渡り上手で浅くやっている社員の中で、夢を語りすぎて空回りしてしまうIT会社社長の田川孝(江口洋介)。
威勢だけは良いけれど肝心なところで度胸が出ずサバゲチームからハブられてしまった星亨(南原清隆)などが特にそうです。


適当にうまくやってるオタクの中にさえ居場所を失ってしまった最もコアで孤独なオタクたちが、涙を堪えながら「それでも俺は好きな事をやる!」と前に進む
そんな作品です。

一番好きなシーンは、星亨と近藤みのる(内村光良)がジオラマを前に作戦計画を練るところ。現実的な田川と押し付けがましい星亨とは特に半目しあっています。
星亨はそれぞれの仲間たちを色々なキャラのフィギュアに見立ててジオラマに立たせます。


「田川はどうする」との近藤の言葉に星亨は、無言でキョンシーのフィギュアを選び、その顔面の符をビリッと剥がしてジオラマの端っこに置きます。
キョンシーは企業の操り人形のメタファーという近藤なりの皮肉でしょうが、わざわざ符を剥がす事により心の中では「お前もオタクなら自由であれ」と語っているわけです。

「好き勝手」ではなく「好きを貫く」

メッセージ性とエンターテインメント性の両立バランスもまた素晴らしく、一つの映画としての完成度も非常に高い。
老害と言われる事を覚悟しつつも、今の若いオタク世代にそもそもオタクって何だろうという事を改めて考えてもらうのに最適な映画だと思います。

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