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異種えっちの記事 (3)

猪熊夜離 2022/10/07 23:23

魔界の歌姫となったレオナが生き残った人間のためバーン様に種付け懇願する話

 人類の希望、勇者ダイ一行が大魔王バーンに敗れ去って早一ヶ月。地上はバーンによって砕け散り、かつては太陽の光が射さない暗い地底世界だった魔界にも陽光が降り注ぐようになった。

 地上にいた生物は尽く根絶やしにされた。僅かに生き残ったものも魔界の屈強な生物たちによって数を減らし続けている。このままではいずれ地上なる世界が存在した痕跡は一つ残らず消え去ってしまうだろう。

 地上に文明を築いてきた人間も例外ではない。魔王軍と戦えるだけの力を持った人間は先の戦いで落命した。無力な人間は滅亡を待つだけとなった。

 そんな絶望の世界でパプニカ王国第一王女レオナ姫は固い決意を胸に秘め魔王城の最も奥深い場所――大魔王バーンの寝所を訪れていた。

「これしかないのよね」

 呟く声はか細く震えを帯びている。緊張のため顔は強張り青白い。これから起きることを想像するだけで足がすくんでしまう。恐怖のあまり逃げ出したくて仕方ない。それでも震える身体を奮い立たせて一歩一歩前に進んでいく。それは彼女が自らの意志で選んだ道なのだった。

 魔界に来てからのレオナは裸同然の姿で暮らしている。バーンと戦っていたときも一国の姫にしては軽装で十四歳の瑞々しい太ももを惜しげもなく披露し、翻ったミニ丈のスカートからは高貴な下着が見え隠れしていたものだが、今は輪をかけてひどい。

 上は乳首以外隠せていない極小ビキニ、下は性器と肛門だけがかろうじてガードできている紐パンTバック、前垂れのおかげで布地が食い込む割れ目を見られずにすんでいるが後ろはノーガードのため白桃のようなヒップがモロ出しだ。

 『まるで』とか『のようだ』とかつけるまでもない。今のレオナは人類が屈服した証としてバーンに飼われる卑猥な踊り子だった。

 魔王城でのレオナは大魔王バーンの恐ろしさを語り伝えるのが仕事だ。如何に彼が強く、無慈悲で、そんな存在に逆らうことが無謀だったかを知らしめるために生かされている。衣装は姫の無力さを強調する視覚効果として選ばれた。

 普通の姫であれば羞恥に固まり泣き出してしまうかもしれない。だがレオナという少女は温室育ちのお姫様ではなかった。こんなことで弱気になったりはしない。むしろ大魔王などと大層な二つ名を名乗りながら、やることは意外に俗物だと内心呆れていた。

 そんな彼女でも、これから行うことには大きな葛藤がある。

(私は今日……大魔王に犯されに行くんだ……)

 その事実はレオナの精神を苛んだ。自分で決めたことではあっても怖いものは怖かった。

 レオナはバーンの寝室前で立ち止まると、一度深呼吸して気持ちを落ち着けてからドアをノックした。

「入れ」

 中から声が返ると同時に扉を開く。部屋の奥には天蓋付きのベッドがあり、そこに大魔王がいた。ゆったりとしたガウン一枚だけのリラックスした格好だが、寛いでいても存在そのものが威圧感を放っている。

「失礼いたします」

 レオナはまず一礼してから部屋に足を踏み入れた。

「何の用だ」

 バーンは部屋に入ってきたレオナに一瞥くれる。それ以上の興味はないようだ。

 レオナは側仕えの身でありながら魔王城で自由に行動することを許されていた。無力な人間の少女が自分の寝首をかけるはずがないという実力に裏打ちされた自信が、レオナに敗軍の姫らしからぬ自由度を与えていた。

 また、レオナが動き回ってくれたほうが彼女の姿を大勢の目にさらし、己の勝利を主張できる算段もあった。

 バーンの思惑どうあれ、レオナは彼から与えられた自由を大いに行使した。魔界で生きている人間をかき集めて保護するためだ。

 城の中を自由に歩けるレオナが一箇所だけ自分の意思では近づいて来なかった場所がある。それがバーンの寝室。こんなところへ来る用事など絶対ないと思っていた。

 それなのに……。

「本日は私の処女を献上するために参りました」

 レオナは床に座ると三指ついて頭を下げた。

「ほう」

 唐突な申し出にバーンも多少は興味を惹かれたらしい。レオナは彼の視線を頭頂部に感じながら続けた。

「私、パプニカ王国第一王女レオナは、これより大魔王バーン様に純潔を捧げ、今後も夜伽の相手を務めさせていただきます」

「……そうか」

 一瞬の間を置いてから、それだけ言って再び沈黙してしまう。バーンはレオナの言葉にさして関心がないようだった。

(私の身体なんてその程度なのね)

 自分を性的対象としてすら見ていないことに屈辱を覚えるが、ここで激昂したり泣きわめいたりするわけにはいかない。自らを律し言葉を続けた。

「今宵より、この身をご随意にお使いください」

「ふむ……」

 レオナの言葉を受けてバーンは思案するように顎に手をやった。そして少し間を置くと、ようやく口を開いた。

「それで? 何が望みだ」

 レオナが自分から抱かれに来るなどあり得ないと確信している声だった。

「余の夜伽を務める代わりに姫は何を要求する。まさか余に惚れて寵愛を受けに来たわけでもあるまい」

 自分で言っておいて突拍子もなさが面白かったのかバーンはくっくっくと笑った。

 確かにバーンの言う通り、レオナはただ彼に抱かれにきたわけではない。バーンに惚れる? 死んだ方がマシな悪趣味ジョークだ。笑えない。顔を伏せていてよかった。きっと憎悪に歪んだひどい表情をしているだろうから。

「ふん、くだらんことを考えてるようだが言ってみろ。暇つぶし程度にはなるだろう」

「バーン様のお力で魔界にいる人間の身の安全を保証してもらいたいのです」

「姫の個人的な趣味を手伝えということか? そんなことをして余に何の得がある。人間などという脆弱な種は、弱肉強食の魔界では滅びるのが自然なこと。これも運命と思って受け入れてもらおう」

「そこを何とか。伏してお願いいたします」

 レオナは床に強く頭を押しつけた。王族に生まれた彼女にとって本来、土下座などという行為は終生無縁なものだったはず。それも頭を下げている相手が、仲間を殺した仇敵とあっては屈辱もひとしお。それでもレオナは個人の怒りや復讐心よりも優先すべきもののために頭を下げ続けた。

 想い人を目の前で失い、苦楽を共にした仲間が儚く散っていく様を見せつけられ、それでも今日まで後を追うこともせず生きながらえているのは、恥辱にまみれても生き残った人間のために働くと決意したからだ。

(土下座くらい、いくらでもしてあげるわ。私の身体は私だけのものじゃないのよ。私にしかできない方法で人類の生き残りを守らなきゃ)

 勇者亡きあと、残った人々を守ることができるのは自分しかいない。思い上がりではなく事実だった。わずか十四歳の少女の双肩に人間という種の存亡が丸ごと乗っかっている。

 魔界の環境は非常に厳しい。バーンが言った通り力なき者は淘汰されるのが決まりだ。そんな場所に生き残った人々を放置すれば、どんな末路を辿るか想像に難くない。人間同士の助け合いだけでは限界がある。圧倒的な強者の庇護に入る必要があった。

 そのための取引材料なら自分の純潔を差し出すぐらい安いものだ。

(私が我慢するだけで人間たちは守られるのなら……)

 しかし、そんなレオナの心を知ってか知らずかバーンの反応は冷たい。

「断る。そんなことをしても余には何も益がない」

 そこでバーンは一度言葉を切り、冷笑を加えた。

「第一、レオナ姫は自分の処女一つに余を動かし、死ぬのが道理の下等な種族全体を生かしておくだけの価値があると本気で考えているのか。だとしたら思い上がりではないか」

 お前の身体にそこまでの価値はない。物の見事に切って捨てられたレオナはかっと身体が熱くなる。レオナは己の容姿が優れていると自覚していた。それは生まれ持った才能であるし、王家の姫として美しく気品豊かに育つよう磨かれてきた成果だ。

 だからこそ自分の美を――身体をこんなときに使わないでどうすると考えた。

(いいわ。そっちがその気なら、私もそのつもりでいこうじゃない)

 大人しく頼み込んで済むならそれに越したことはなかったが、挑発してくるならレオナもやり方を変える。

 彼女は顔を上げると、キッと強い眼差しをバーンに向けて立ち上がった。

 そして自ら着衣に手をかけていく。紐同然とは言え、一応は身体を隠していた布が次々に床へ落ちる。Tバックに手をかけた時は一瞬だけ躊躇ったが、迷いを見せてはならないと一気に引き下ろした。片足ずつ抜いて正真正銘の全裸になる。

「……ほぅ」

 全裸になったところで、ようやくバーンは小さく感嘆の声を漏らした。だが彼の瞳に宿るのは欲情でなく好奇心。やけくそになった王女様が次は何を仕出かすつもりかと見ている。だがそれでいい。どんな感情であれ引き出せたなら無関心よりはマシだ。

 レオナはそう自分に言い聞かせて羞恥に耐えた。

(覚悟はいいわね……やってやるわよ!)

 レオナは先程までの殊勝な態度から一転、バーンを睨みつけた。

「さっきから何だかんだと理由をつけてるけど怖いんでしょ」

 突然の言葉にバーンの瞼がピクリと動いた。それを内心で喜びながらレオナは、もっと生意気に、もっと恐れ知らずにと自分に言い聞かせながら続けた。

「そうよね。偉大なる大魔王様が閨ではレベル1の下級モンスターだなんて知れたら威厳ガタ落ちだものね。男の人は身体の大きさとアレの大きさが必ずしも釣り合わないと言うし、身長ばかり伸びていたとしても仕方ないわよね」

 レオナ姫は間違いなく処女である。しかし年頃の少女らしく恋愛や性的な事柄への興味があった。王宮で働く女性たちから男たちには内緒で、こっそりその手の話を聞いていた。

 耳年増なお姫様の誕生である。

 さすがに聞き捨てならなかったか、さしものバーンも口をへの字に曲げた。彼は自分に絶対の自信を持っているため見下されることが我慢ならない。その点を突いて彼の心をかき乱す。

 ここまでは狙い通りと勝ち誇った笑みを浮かべるレオナだったが、すぐに表情を引きしめる。まだ獲物が釣り針にかかっただけ。釣り上げる瞬間まで気を抜けない。

「安心しなさい。寝室の外では言わないでおいてあげる。大魔王バーン様は人間の女の子一人、性的に満足させる自信がなく据え膳を突き返すくらい、おちんちんが小さいって」

 王家の子女にあるまじき言葉遣いだが効果はあったようだ。

「貴様……」

 案の定、バーンの表情が怒りに染まる。予想通りすぎて笑みさえこぼれてくる。これで準備完了だ。

「違うっていうなら証明してみせなさいよ。やり方くらいは分かるんでしょ?」

「よかろう。ならば望みどおり抱いてやる。だが後悔するなよ、姫よ」

「望むところよ!」

 売り言葉に買い言葉。レオナは勢いよく啖呵を切った。

 だがその直後、彼女の視界は大きく揺らいだ。

「きゃっ?」

 まるで見えない巨人の手に捕まれたようにふわりと体が宙に浮く。気づいた時には背中からベッドに叩き落とされていた。痛みはないが突然のことに驚き、思わず悲鳴を上げてしまう。

「ちょ、ちょっと! いきなり何するのよ?」

「姫が自分から誘ってきたのではないか。それともベッドより床に這いつくばって犯される方が好みか? その|年齢《とし》でませすぎではないかな?」

 ベッドの上で飛び起き抗議するレオナに対し、バーンは悠然とした態度で見下ろすのみ。自分が優勢であることを信じて疑わない態度に腹が立ちつつも、彼が言う通り寝室にまで押しかけ抱いてくれと頼んだのは自分なのだ。レオナは深呼吸して気を落ち着ける。

「……いいわよ。ただし、その前に約束してちょうだい」

「約束だと?」

 怪訝そうに聞き返すバーンに、レオナは毅然と言い放つ。

「さっき言ったでしょ。私の処女を捧げる代わりに人間を――」

「分かった、分かった」

 皆まで言うなとバーンは鬱陶しそうに手を払う。

「それより余のイチモツはどうかな。果たして姫を満足させられるだろうか」

 言われて視線を下げれば、目の前にそびえる巨塔に息を飲んだ。初めて男性器を見るレオナ姫は他と比較できない。それでもバーンのペニスが平均を遥かに上回るサイズであることは察せた。

 予想を大きく上回るサイズと禍々しい形状に圧倒される。こんなものが自分の中に入るのかと不安になってくる。

「あ……う……」

 言葉が出てこない。ただ呆然と見つめることしかできなかった。

 そんな初心な反応を楽しむバーンは腰を突き出し、見せつけるように肉棒を揺らす。

「どうした? 怖じ気付いたのか」

「そんなことないわよっ! この程度っ! 余裕よっ!」

 咄嗟に虚勢を張ってしまう。怯えていることを悟られたくない一心だった。

 そんな気持ちを見透かしたように、バーンは薄く笑った。

「そうか、では始めるぞ」

 そう言うとバーンはまだ柔らかいペニスをレオナ姫の眼前に突き出す。

「まずは口淫で奉仕せよ」

「……わかったわ」

 促されるとレオナはゆっくりと身を屈め、両手でバーンのペニスを掴んだ。そして先端を口に含む。生まれて初めて味わう味と匂いに顔をしかめながらも、そのまま口内に収めていく。

 亀頭部分を咥え込みカリ首を舌の上で転がすと、口の中でさらに大きくなっていくのを感じた。

(大きい……顎外れちゃいそう……)

 喉の奥に突き刺さりそうな凶器じみた太さと長さに苦戦しながらも懸命に舌を這わせる。

 (苦い……変な味が広がってくる……)

 初めて口に含むペニスの味と肉っぽさに嫌悪感を覚えるが吐き出すわけにはいかない。

(今はバーンの機嫌を損ねないようにしないと……それにしても……本当におっきいわね……でもこれぐらいじゃ私は負けないんだから)

「じゅぽ、ちゅぱ、れろぉ」

 唾液を溜め、わざと大きな音を立てつつ、舌で裏筋をなぞり上げ、頬を窄めて吸い上げる。時折鈴口を舌先で穿ったりと変化をつけることも忘れない。

 すると目に見えてバーンの反応が変わった。

「ぬぅ……!」

 頭上から呻き声が聞こえたのだ。

 上手くいっていることを悟ったレオナは心の中でほくそ笑む。

(どうかしら? 気持ちいいでしょう? 侍女にやり方を聞いただけだけど、これで合ってるみたいね)

 調子に乗ったレオナはさらに責めを強くしていく。

「ふぅーっ、んちゅっ、ちゅるるるうっ!」

 バーンが反応を見せるところを探り当てては重点的に責める。

 唾液をたっぷりと絡ませ舌先を押し付けるようにして根元から先端へと扱きあげる。

 口内で何度も往復させ吸い付きながら吸引する。

 緩急をつけながら上下に動かし刺激を与えた。

 その度に口の中に広がる苦みに眉を顰めながら、早く終わってほしいと願いつつ必死にしゃぶりつく。

 次第に口の中に収まりきらなくなったモノの先端からは先走り汁が溢れてきた。それを飲み下しながら頭を動かし続ける。

「はぁぁ、はぁん……ちゅぷっ、んくっ、んんっ、ちゅううっ! じゅる、じゅるるっ、んじゅるるるる」

 最初はバーンのペニスサイズに面食らい、咥えられるか不安がっていたレオナだったが、続けるうちに最強の大魔王が自分の口淫奉仕で悶えていることに優越感を覚え始めていた。

 それは彼女が元来持つ負けず嫌いな性格のせいもあったろう。彼に抱かれることを選んだ女にしかできない、自分だからできる方法でバーンに一矢報いている気分になった。

 だから彼女は気づかなかった。バーンの手が自分の頭に伸びてきていることに。

「うむむっ?」

 突然髪を掴まれ頭を股間に押し付けられた。驚いたレオナは思わず身を引きかける。だが後頭部を押さえつけられ喉奥深くまで男根を突き立てられてしまった。

「ふぐっ! ごほっ! おぼぉっ! ぐぼっ! ぶぼぉ! じゅぷっ! んんんっ! おぶじゅっ! じゅぶっ! んぶぅっ!」

 激しく咳込みながらも逃れようともがく。だが掴まれた頭はビクともしない。

 そうこうしているうちにも口内で肉棒はどんどん膨らんでいく。最初の時点でもギリギリだったサイズが現在は完全に容量オーバー。顎関節がギチギチ悲鳴をあげている。

「おぼっ! うごっ! あぎゅっ! じゅぷぷっ! んぐぅうう!」

 姫の嗚咽も無視して肉棒はどんどん喉を抉ってくる。

「この程度で余を上回ったなどと思われては心外だからな。少し本気を見せておくとするか」

 その言葉と同時に更に膨張する肉棒。まだ大きくなるというのか。

「んぎぃいいいっ!」

 喉が焼けるように熱い。あまりの苦しさに涙が流れ視界が滲む。しかしそれでもレオナ姫は決して歯を立てなかった。口でシテあげる際は、殿方のシンボルを歯で傷つけるようなことがあってはならないと、王宮の侍女たちに聞いていた。

 バーンの肉体に人間の噛みつき攻撃など効くとは思えないが、息苦しさで朦朧とする意識の中では記憶に刻み込まれた教えが優先する。

(苦しいけど我慢よ……このまま耐えていれば終わるはず……いいえ、今度はこっちが攻めてやるわ!)

 レオナは苦痛に耐えながら反撃の機会を窺う。

 イラマチオを受けながらも、唾液と先走りにぬめった亀頭を吸い上げ、不快な味がする幹を音を立てて舐めしゃぶった。

「ぢゅぶぶっ! ごぶっ! ぐぶっ! ごぼぶっ! ぐぶっ! うぶぶっ! ふぐっ! おごっ! んおおぉぉぉぉぉぉぉっ!」

 射精を促すように舌を蠢かせ、卑猥な音を奏でた。だがいくら頑張っても一向に終わりは見えない。それどころかますます大きさを増していくような気さえしていた。

(嘘でしょ? もうこれ以上無理よぉ)

 限界を超えた大きさのペニスは凶器だ。こんなものを受け入れたら死んでしまうかもしれない。本能的に身の危険を感じたレオナの脳裏を恐怖が掠める。

(怖い……でも、ここで止めてしまったら馬鹿にされてしまうかも……そんな真似できないわ!)

 こちらが限界を迎える前に射精させようと、あえて下品な水音をたてながら口淫を続ける。

「じゅるるるるるるっ、じゅっぶ、じゅぼぉっ、れろぉっ、じゅぶるるりゅる、じゅぅぅぅぅぅぅぅ~ッ! じゅ、じゅる、ぐぷぷぅ~ッ!」

 その甲斐あって射精感が込み上げてきたのかバーンの腰が動く。ぐいぐいと肉棒で喉奥を突いてきた。逞しく反り返った野太いペニスが上顎を擦り上げる。

「なかなか巧いではないかレオナ姫。ダイの奴にもこうしてやったのか」

「んっく、んんっ、んん~っ!」

 質問したくせに頭を放そうとはしないバーン。レオナは答えるのを諦め、懸命に口と舌を動かす。少しでも早く終わらせるために。

「じゅぽっ、ずぞぞっ、ずっぽ、ずっぷ、じゅぽおぉ~っ! ずちゅ、んじゅううぅ~! じゅぶっ、ぶびょっ、ずびゅっ」

 もしもダイがバーンを破り世界に平和が訪れていたら、自分と彼が結婚してこういうことをする未来だってあったかもしれない。世界を救った勇者が姫と結ばれてという物語を夢見たことはある。しかし、すべては叶わぬ夢となった。

「次は他でもしてもらおうか。その胸でな」

 バーンは年齢の割によく育ったレオナの胸を顎で指し示す。それを上目遣いで見ながら彼女は咥えていた肉棒を吐き出した。ずりゅっと唾液まみれのペニスが口から抜けると、それまで堰き止められていた空気が一斉に雪崩込んでくる。

「休んでる暇はないぞ。姫の献身的な奉仕で余も些か昂ぶっておる。射精させるなら今がチャンスと思うがな。前戯で一度くらいイカせないと挿れてからが大変だぞ」

 イカせられるものならイカせてみろ、とバーンは挑発するように言った。

 そんな余裕のある態度にムッとして言い返す。

「ふん、確かにアンタの言う通りね。さっきからおちんちんピクピクさせてるのが分かるわ。これって大魔王様が未経験の女の子に咥えてもらって気持ちよくなってるってことでしょ」

 バーンは自分の弱みや動じた姿を見せたがらない。それでも身体の反応で全く何も感じてない訳でないことは分かる。手応えがあるならそれで十分。もっと攻めてやる。

「いつまでも減らず口を叩く娘だ。では始めるがよい。胸でのやり方はしってるな」

 レオナの反撃もどこ吹く風といった態度でバーンは次の命令を下す。

 言われるまでもないとばかりに頷く。そして今度は怒張を胸の谷間に挟んだ。この部屋に入ってきて初めて見たときでも恐怖を感じさせる大きさだったそれは、人間の体内を内側から食い破る○問器具としか思えないサイズ、形状に進化していた。

 こんなモノを挿れて気持ちよくなることなどあるのだろうか。苦痛でのたうち回り絶命してしまうのでは? さしものレオナも額に嫌な汗が浮かぶ。

 それでも彼女に選択肢などありはしない。怖気づきそうな己を叱咤し左右の手で胸を持ち上げ、ペニスに押しつけながら上下に擦った。

 パーティメンバーにマァムという巨乳娘がいたため目立たなかったが、レオナのスリーサイズは上から83、53、85。十四歳という年齢やまだまだ成長期であることを考慮すれば抜群のプロポーションである。

 しかしバーンの巨根相手では荷が重いかレオナの胸では、双丘に包まれている部分よりも飛び出してしまっている部分のほうが多い。

 大人の拳ほどもある巨大な亀頭が胸に収まらず王女様とご対面している。赤黒い肉塊から漂う生臭さに思わず顔をしかめてしまった。こんなモノを先程まで自分はしゃぶっていたのか。そして、これからも……。

「どうした。手が止まっているようだが」

「なんでもないわ」

 余計なことを考えていたせいで動きが鈍くなったようだ。慌てて作業を再開する。両手で乳房を寄せると、その柔らかさを主張するかのようにむにゅうっと形を変える。ただ挟んで擦り上げるだけではなく、胸を寄せたり離したりして乳圧を変えながらペニスをマッサージした。

「くっ……」

 柔らかく温かい感触に包まれる気持ちよさにバーンの口から吐息が漏れる。

 自分の胸が強敵の性欲を刺激していることに気をよくして、レオナは動きを速めた。乳肉をぎゅっと寄せ上げ圧迫を強める。さらに左右交互に動かして竿全体を扱きあげた。

(これでどうかしら。少しは感じてくれていればいいのだけれど)

 上目遣いに見上げるとバーンと目が合った。彼の目は「なかなかやるじゃないか」と言いたげだった。

 少し自信を取り戻したレオナは、あぶれたペニスの先端を口に含んだ。小さな口を目一杯広げて頬張る。

「んむむぅ……んちゅっ……はぁ……はぁっ……」

 大きすぎるものに口腔内を圧迫され上手く呼吸ができない。それでも亀頭を咥えて固定すると、激しく胸乳を擦りつけた。

「んむっ……んじゅっ……ちゅるっ……んんっ……じゅるっ……んむぅぅっ……れるるっ……んふ……んっ……ぷはっ……んくっ……はぁっ……はぁっ……おちんちん、びくびく悦んでるわよ……れろっ……んっ……ちゅっ……はぷっ……ちゅぅっ……んちゅぅぅ……れろっ……んん」

 レオナは口を開けると胸の谷間にローション代わりの唾液を垂らしていった。よく濡らした肉棒はぬちゅぬちゅと卑猥な音を立て、音だけでも快感を誘発する。

「そろそろ出すぞ。全部飲め」

 バーンの声を合図にレオナはラストスパートをかける。

「出しなさい……あたしの口に……精液……いっぱい……出しなさい……一滴残らず……受け止めてあげる……」

 そう言って顔を前後に動かし、口内で肉棒を扱いていく。カリ首のあたりまで引き抜くと一気に喉奥まで押し込み、また引き抜いていくと唇と舌を巧みに使って裏筋を舐め上げた。同時に胸を揺すぶりペニスの根本を刺激することも忘れない。

「――――フンッ!」

 ビュルッ! ドピュゥ! ぶぴゅるるる!

 大量の白濁液が噴き出してくる。レオナは命令された通り全て飲み干そうとするが、バーンの射精は次から次に終わることなく続いた。

「んぐっ……ごくっ……ゴク……ン……こく……コク……ぅ……」

 量が多く粘度も高いため全て飲み込むことはできなかった。嚥下できなかった精液が口の端から漏れて彼女の顎や首、胸を汚す。

「大魔王の高貴な子種だ。一滴も無駄にすることは許さん。飲みきれなかったものも全部舐めとれ」

 命じられた通りレオナは自身の身体を汚す精液を指ですくい取り、口に運んだ。バーンの満足度を高めるため、これ見よがしに舌の上で転がし味わうように咀嚼してから飲み込んだ。

「いい子だ」

「けほっ……ふぅ……当然よ」

 褒められて悪い気はしない。レオナは得意げな表情でバーンを見上げる。

「だがこれで終わりではないぞ」

 そう宣言すると彼は再び屹立した男根を誇示するように見せつけてきた。一度出したばかりだというのに萎えるどころか先ほどより大きくなっているような気さえしてくる。魔力だけでなく性欲も無尽蔵か。

「次はどうすればいいのかしら?」

「まずは仰向けになれ」

 言われた通りベッドに仰向けになる。裸で横たわるとシーツの感触と冷たさが直接肌に伝わってくる。

 これからされることへの不安で心臓が高鳴っていく。

「股を開け」

「……はい」

 おずおずと脚を開き秘部を晒す。既に濡れそぼっているそこは、愛液で照り輝いていた。

「まだ触ってもおらんというのに、もうこんなにビショビショではないか」

「これは違うのよ、生理現象というか……」

「何にせよ好都合だ。よもや姫も余に前戯などしてもらえると思ってる訳ではあるまい。そのようなまどろっこしいこと大魔王はせぬ」

 言うやいなやバーンが両脚の間に侵入してくる。こうやって組み敷かれると両者の体格差を嫌でも感じてしまう。レオナの背丈は彼の腰辺りまでしかない。大人と子供。そう。これから二人の間で行われる行為は、体格差を考えれば大人が子供を○すに等しい。

 裂けてしまわないだろうか、私の身体は大魔王のセックスに耐えられるだろうかとレオナは直前になって顔を青くする。怖いのは自分が怪我をすることより、人間では彼のセックスに付き合えないと悟ったバーンが、レオナの身体では対価に釣り合わないと判断することだ。

「いいぞレオナ姫。気丈な姫の顔もいいが、怯えるそなたも実に面白い」

 怯えてなどないと去勢を張る間もなくバーンの先端が押しつけられた。

「あっ……熱っ……熱いぃ……!」

 膣の入り口に触れた瞬間、あまりの熱さに驚き思わず腰を浮かせてしまう。他の部分は平熱なのにそこだけ高音などということはあり得ない。そうと知りつつもレオナは剥き出しの粘膜で触れる大魔王のイチモツで焼けた火箸を押しつけられるような熱さを感じた。

 そのままゆっくりと王女の処女地に人外の巨大なペニスが押し込まれていった。

「やっ……あぁぁぁぁぁぁ! そんなの……入らないわ……」

 狭い膣内を押し広げながら剛直が奥へ奥へと進んでいく。圧迫感が凄まじい。腹を内側から殴られているような感覚だった。

「がぁぁぁああああああ、あ゛あ゛ぁぁああ! あっ、は、入っッ…………っ……」

 バーンの怒張がじわり、じわりとレオナの隘路を侵す。永遠にも感じる時間たっぷり彼の大きさ、太さ、硬さ、女を屈服させる卑猥な形を覚え込まされながら挿入され続けても、まだまだ彼のペニスには余裕があった。

「ひぎっ……おっきくて、苦しい……あぁっ、ダメぇ……これ以上奥は無理よぉ……」

 小柄な身体が壊れてしまいそうなほど規格外のサイズを持つ肉棒を突き入れられ、レオナは涙を流しながら訴えた。しかしバーンはまるで意に介さずピストン運動を開始する。

「あんっ、ひゃうっ、あぁんっ……いやぁ……動かないで……あううぅ……抜いて……お願い……ああぁぁんっ……!」

「これ以上は入らないと泣き言を言うから途中で動いてやってるのだ。少しは余を愉しませてみよ」

「そんなぁ……うぐぅ……くひぃぃっ……! ああぁぁぁんっ!」

 巨大な肉槍が何度も抜き差しされる度に内臓ごと持っていかれそうな恐怖に襲われた。股ぐらからメリメリと身体の真っ二つに裂ける音が聞こえてきそうだ。

 それでも女体とは驚異的な柔軟性を持っているもので、絶対に無理と思ったバーンのペニスを迎え入れ、あまつさえ痛みや苦しみ意外の感覚まで生み始めた。

「なに、これぇっ……ぁっ……ぁっ……いやっ……んンっ」

 苦痛だけだったはずの抽送に甘い疼きが生まれていた。下腹部にジワジワと広がる切ない快感の波に翻弄される。

「どうだ? そろそろ気持ち良くなってきたのではないか?」

「そんなことないわよぉっ! こんなの全然気持ちよくなんかないわ……ぁん! ただ痛いだけよっ! 早く終わらせてぇ! ああぁあん! いやっ! もう動かさないで! 壊れるぅぅうう!」

「動かなければ終われぬではないか。その程度も分からぬ小娘がよくも寝所で余をリードできるなどと思い上がったものよ。特別に破瓜の痛みは回復魔法をかけてやろう。どうだ。苦痛が収まると大魔王のイチモツに貫かれる快楽だけが残るであろう」

 そう言うとバーンは言葉通り回復魔法で傷ついたレオナの局部を癒してやった。

 おかげで激しい摩擦によって傷ついていた秘裂はすぐに元の滑らかな状態に戻った。だが代わりに別の問題が発生した。

「ひっ……やだっ、きもちいっ……きもちいよぉっ……」

 回復魔法により痛みが引いたことで、挿入に伴う異物感や違和感が消え去り、敏感な粘膜を擦られる感覚だけが鮮明になったのである。

「どうしてぇぇ! さっきはあんなに痛かったのにぃぃいい! こんな、こんなことおかしいわっ!」

 痛みは恐怖を生む。だが同時に抵抗する意志の原動力でもある。

 苦痛や辱めでレオナは屈しない。むしろ己を痛めつける相手への反骨心を燃やすのだ。

 しかし、バーンとの性行為で感じるものが快楽だけだったらどうすればいいのだろう。

 最初は確かに激痛を感じていたはずなのに、今や完全にそれが消え失せてしまっている。それどころか膣内は熱く蕩けるような感触に変わり、逞しいペニスと繋がってしまった悦びに打ち震えていた。

「気持ちいいのか?」

「違うわっ! 感じてなんていない。これは何かの間違いよ」

「そうか。ならば確かめてみようぞ」

 そう言ってバーンが腰振りのピッチを上げる。途端にレオナの声が甘く艶めかしくなった。

「はっ♡ ああぁああっ♡」

「感じているではないか」

「ちがっ……ちがうぅ……これは何かの手違いなのよぉぉおおぉおお♡♡♡」

 否定の言葉とは裏腹に彼女の膣からは大量の愛液が流れ出していた。それは王女の肉体が犯されていることを悦んでいる何よりの証拠だ。

 性行為が気持ちいいことは知っていた。だから大人はヤリたがるのだと。だがそれは愛する人同士だから生まれる幸福を伴った快楽、願いを聞き入れてもらう代償として仇敵に身体を売る自分が感じるはずないと性に初心なレオナ姫は信じていた。

 だが――。

「違わぬだろう。こんなに濡らしておいてよく言うわ」

 グチョッ♡ グッチョッ♡ ヌポッジュプッ♡♡♡

「あっ、ふぁぁぁあああ~~~~~~♡♡♡ やめなさい……ンああぁっ! こんなのダメよ! ダメダメっ!」

 バーンが本格的に腰を振り出すとフェラチオやパイズリで感じていた優位性などあっという間に吹き飛んだ。

 骨盤ごと華奢な身体を押し広げる太さ、子宮まで簡単に届いて圧迫してくる長さ、内側のビラビラを捲り上げられるカリ首の強靭さ。どれをとってもレオナが覚悟していたセックスとは次元が違う。

「どうした? 先程までの威勢の良さはどこへ行ったのだ?」

 バーンは手を伸ばしレオナの乳房を鷲掴みにした。大いに将来を感じさせる少女の膨らみ。頂点では乳首がコリコリに勃起している。玩具のように手の中で捏ねるバーンは、愉悦混じりの獰猛な笑みを浮かべた。

「くぅぅっ……やめなさ……あううぅうん……はぁ……はぁ……離し……離して……ひぁあ……触らないで……もう許して……ああぁぁ……」

 愛撫と呼ぶには強すぎる刺激を受け、レオナは苦しげに悶えた。小さな口から漏れる声も弱々しくか細い。まるで肉食獣に嬲られる草食動物の悲鳴のようだ。実際彼女は今、無力な少女に過ぎないのだから仕方のないことである。

 胸乳が変形して型崩れするほど荒々しく揉まれる。普通なら痛みを感じる愛撫からでも少女の身体は快感だけを抽出してしまう。直接心臓を掴まれたように胸が苦しい。感じすぎて動悸がする。

 恨み骨髄な相手とのセックスなのに、身体はもっと触って欲しいと訴えている。相反する感情で頭がおかしくなりそうだった。

(こんな奴の好きにされたくないのにぃ……)

 せめて声だけは上げまいと歯を食い縛った。しかしそんな抵抗が長く続くはずもない。すぐに陥落させられてしまう。

「ああぁぁん! おっぱい揉まないでぇ! そんなに強くしないで! あああぁぁぁ~~~♡♡♡」

 胸を責められながら弱いところを突かれるとどうしても声が抑えられない。何度再チャレンジしても無駄だった。レオナが我慢できていると思っている時はバーンが手加減してくれている間だけ。彼が頃合いを見計らって本気ピストン再開するとレオナは赤子の手をひねるように鳴かされてしまう。

「やぁぁっ! おくっ、奥突かないでっ! いやっ、あんっ! いやんっ、そんな、イカされちゃう! あっ! あっ! あっ! ああっ! やめてぇぇえええ~~~♡」

 太くて長い肉の槍が狭い胎内を掻き分けていくたび、腰が砕けてしまいそうな衝撃が走る。それをどうにか堪えようと無意識のうちに下半身に力を入れれば、かえって余計に男根の存在を意識してしまい逆効果になるばかりであった。

「ここが良いのか?」

「ひぎぃ♡ そこだめぇ♡ 感じすぎちゃうぅ♡ 感じすぎちゃうからぁ♡」

「素直に余で感じれば良いではないか。どうせ抱かれなら苦痛より快楽に沈むほうがよかろう」

 一番奥を突き上げられ、たまらずレオナは悲鳴を上げる。未成熟な身体がビクンッと跳ね上がる。

 長大な男根が愛液の飛沫を飛ばしながら、わずか十四歳で大魔王に身体を売ることになった少女のロイヤルおまんこを出入りする。

 押し込まれるときにはお腹の中を全部満たされる錯覚に襲われ、逆に引き抜くときは内蔵ごと持っていかれる心もとなさがやってくる。

(こんなの想像以上よ♡ 想像もしてなかったくらい強い♡ 女の子の大事なところ、そんなにいじめられたらぁ♡ 壊れちゃうぅ♡ 感じすぎて私が壊れちゃう♡)

「口と胸を使った奉仕では頑張ってもらったからな。これは余からの褒美だ。極上の快楽でイキ狂うといい」

「いやぁあああ♡♡♡」

 太い肉杭の先端が子宮口をグリグリと抉ってくる。それだけでも気が狂いそうなほど気持ちがいいのに、さらに両胸の乳首を抓られると電流のような快感が走った。

「だめっ、イクっ、イッちゃう♡ もう無理ぃっ♡」

 最奥に巨大な亀頭を押しつけ、内蔵を圧迫されるたびズーン、ズーンと響くような衝撃が脊髄に走った。その振動が脳を揺さぶって思考を麻痺させる。なぜ自分はこんなところで、こんな相手に、こんなことをしていたのか何一つ分からなくなってくる。

「くふっ、ひぃ♡ だ、だめぇ……♡ そんな、ぐりぐりしちゃぁ……や、やめてぇ……♡」

 涙ぐんだ声で哀願するも聞き届けられない。むしろ行為は激しさを増すばかりだ。

「あぐっ、ううっ、ふぐぅううううう~~~♡♡♡♡♡」

「すっかり快楽に蕩けきって余の虜ではないか。どれ、もっと気持ちよくしてやろう。感謝するが良い。この大魔王バーンが女を満足させるために動いてやることなどないのだからな」

「やっ……♡♡ だめっ、やっ……♡♡ イくっ♡♡♡ イっ……ぁ、ああっ♡♡」

「ここか? ここを突かれると気をやりそうなのだな」

「は、はいっ、そこっ♡ そこっ♡ そこっ♡ きもちいっ♡ うあああっ! だっめぇぇぇっ! こんなのっ……こんなのすぐっ、すぐにいっちゃうっ♡♡ はぁっ……あああああっ……♡♡」

 この男の前では我慢しなければいけなかったはずなのに、はしたない姿を見せてはいけなかったはずなのに……なぜ、そう感じていたのかレオナは思い出せない。今はただ与えられる快感だけがすべてだった。

「ふふ、いいぞ。好きなだけ達するがいい。遠慮はいらぬぞ。そなたの感じるままに乱れてみせろ」

「だめっ……だ、だめっ! そんなっ……、私っ……こんなっ、こんなにいやらしい声っ……んああああっ! だめなのにっ! バーンの前で乱れたら……それなのに、こんなのって……気持ち良すぎて……あっ、らめええっ! わたしっ、い、いくっ……いくのっ……ああっ!」

 耳元で囁かれるだけで全身に甘い痺れが広がる。軽く乳輪を撫でられただけで痙攣が全身に広がる。身体中が性器になったみたいにどこを触られても感じてしまう。もはやまともに思考することなどできなかった。

(気持ちいい、きもちいい、キモチイイっ♡ どうしてこんなことになってるのっ? なんで私はこんなに感じてるのぉおおっ!)

 初めて味わう感覚に戸惑いながらも溺れていく。本能的な恐怖とそれを上回る期待感とで理性がぐずぐずに溶けていった。

「あっ、や……も、もぅやぁぁっ♡ イ、イっちゃうっ♡ あっ、ああっ、だめっやだ、イっちゃう♡♡♡ イッたらいけない相手なのに……負けてはダメなのに……だめだめだめだめっ♡♡」

「そろそろ限界だろう。楽にするがよい」

 言われたことの意味を理解する前に、いきなり今まで以上に激しく突き上げられた。それで残っていた思考も我慢も一切が消し飛んだ。

 得体の知れない衝動に突き動かされ、レオナは自分から腰を振り、仇敵の男根をキリキリと締めつけた。まるで膣内射精を促すかのように。

 レオナの意思を汲み取ったかのようなタイミングでバーンが膣内に射精する。子宮口にぴったり押し当てられた先端から、灼熱の体液が迸った。

 ドピュゥウウッ! ビュルルルッ、ビューーッ!

「いやぁぁあああ~~~~~♡♡♡♡」

 全身が総毛立つほどの快感にレオナは絶叫した。膣壁が狂ったように収縮し、子種汁を飲み干していく。熱い白濁液に膣内を埋め尽くされた。

「ダメよっ……私っ……あっ、だめぇ……だめええっ! バーンが相手なのにっ……あああ、いくーっ! いくの……止まらないっ……いくっ……ふぁぁぁ♡ ま、まだでてっ♡」

 ドクンドクンと脈打つたびに精液が溢れてくる。その度にまた新たな快感が生まれてしまう。

「くくっ、どうだ?」

 身体を倒してきたバーンに耳元でささやかれる。聴覚からも強い雄に支配され、レオナはおとがいを反らせた。

「ふぁあああ♡♡♡」

 耳の中に息を吹きかけられ、ゾクゾクとした感覚が背筋を駆け上る。

 背中を弓なりにしならせ、生まれて始めて味わう男根によるエクスタシーの余韻に浸る。

 憎い相手との望まぬ性交でも身体は反応してしまう。

(こんな屈辱……絶対に許さないんだから……)

 そう思いながらも身体はまだ疼いている。イキっぱなしになる身体は自分でも制御できない。それが悔しくて仕方なかった。

 レオナは何とか気力を振り絞ってバーンを睨みつける。

「ふん、なかなか良い表情になってきたではないか」

「……勝手に言ってなさい。アンタなんか怖くないわ。こんなの初めてで身体がびっくりしただけよ」

 精一杯強がってみせるが余裕はないことを見透かされているのだろう。こちらを悠々と見下ろしている。

「ほう? ならば試してみるか?」

「きゃっ!」

 繋がったまま強引に抱き起こされる。自重でより深くまで剛直を飲み込んでしまい、たまらず悲鳴を上げた。

 そのまま膝の上に乗せられ対面座位の体勢を取らされる。体重によって深々と突き刺さった肉棒に下から串刺しにされてしまう。

 いつの間にか両腕は背中に回されがっちり固定されていた。抵抗しようにも力が入らない。この体勢はまずい。直感的に逃げる選択をしたレオナは足掻いてみる。しかし、それは逆に自分を追い詰めることになってしまった。

 少しでも身動ぎすると一分の隙もなく己のナカを埋めている男根が擦れ、秘所が甘く痺れてしまう。

「ひっ! あっ♡ あっ♡ だめっ♡ だめぇっ♡♡♡」

「余は動いておらぬぞ。姫が自分で動いた分であろう。この体勢で余が動けば――」

 バーンが軽く腰を揺すった。動くという言葉にも値しない、身動ぎするような揺らし方だけで、イッたばかりで敏感になってるレオナの膣内は鋭い快感が走る。

 たった一度の性交で強い雄の象徴に躾けられてしまった王女の子宮は、切っ先でツンツンされただけで入り口をぱっくりと開き、迎え入れたくなどない相手のペニスを美味しそうにちゅうちゅう吸い始める。

 このままではマズい。そう思っていてもどうすることもできない。せいぜいできるのは弱々しく身をよじるくらいだが、そうすると自分の弱点を自ら突いてしまう結果になり――結局、逃れられずにイカされてしまった。

「んん゛んっ♡♡ ふぅぅぅぅぅうううう♡♡♡♡ はふぅ……くふぅぅ……っ」

「まったく。気丈な姫に似つかわしくない、男に屈服することを最上の悦びとする淫乱まんこよ。よもやそれを知っていて、余に屈したくてあのような挑発を繰り返したのかな?」

「あっ、あうぅっ? や、やだ……こんな、こと……あ゛ん♡ あ゛っ♡ あっ♡ ち、違うわ……勝手なことを、言わな……いでぇっ♡ 私は淫乱なんかじゃ……あっ♡ あっ♡ だめぇ♡ この格好はダメッ……もう揺らさないで……私のナカでおちんちん擦れて……この抱っこされながら抱かれる格好、私の気持ちいいところ全部当たって……あたま、ビリビリ痺れて……いやあああっ♡♡♡」

(なんで……なんで私がバーンなんかのおちんちんで、言いなりになるのよぉっ♡)

 こんなのおかしい。そうは思うものの、一度教え込まれた強烈な快感からは逃げられない。強い雄と弱い雌。心の気高さなど何の役にも立たない動物的な交わりが両者の格付けを決定的なものとした。

 悔しいと思う心とは裏腹に蕩けきった雌穴は愛する男を迎え入れるかのようにキュウッと締まり、ペニスを抱きしめるように密着していた。本能に根ざした勝負で負けた肉体は、本能の赴くまま自分に勝った男の種を欲しがる。

 そのことが男の征服欲を刺激することになるらしい。

 バーンは腕の中に抱え込んだレオナ姫の身体がビクビクと痙攣するのを楽しみつつ、ゆっくり時間をかけて抽挿を繰り返す。

 たっぷりと時間をかけ、彼女の理性を完全に溶かしてから最後の仕上げに入るつもりのようだ。

「ああぁあぁーーっ♡♡♡ ひっくっ♡ ああっ♡ はあぁーーっ♡♡♡」

 王女は強すぎる快楽攻めに喉を引きつらせて喘ぐ。人の身には過ぎた魔物との……それも大魔王との性交でしか得られない悦びに高貴な姫の肉体は支配されていく。

「ああぁっ♡ あっ♡ あっ♡ あぅうーーっ♡ いいっ♡ これっ♡ いいぃっ、ひぃあぁーーっ♡ こ、こんなのぉ……っ♡♡♡ んひぃっ♡♡ 耐えられない♡♡ あはぁあぁーーっ♡♡♡」

 ずちゅりという粘ついた音とともに逞しい剛直を抜き差しされる。それだけで甘美な電流が流れ全身を駆け巡る。

 胎内の最奥部にある女体にとって最も敏感な部分を亀頭でぐりっと押し潰されると、脳天まで貫くような衝撃が走った。

「ひぐぅうっ♡♡♡」

 激しい悦楽に意識が飛びそうになる。視界がチカチカして頭が真っ白になった。それでも気を失わせてはもらえない。限界が訪れそうになると新しい刺激がやってきて、近づいていたはずのゴールが遠く彼方に引き上げられる。

 波にさらわれそうになっても休む間もなく次の波がやってきてレオナの意識を押し戻した。何度も何度も押し寄せる津波のような喜悦に翻弄されるしかなかった。

「――ぁあんっ♡♡ ふわぁあん♡♡ ふぁぁ、あぁぁーーーっ♡♡♡」

 もう何も考えられない。気持ち良すぎて苦しいくらいだった。それなのに身体は貪欲にさらなる高みを目指していく。もっと気持ちよくなりたいとばかりに膣肉が新しい愛液を分泌し、ペニスの滑りを良くする。ぬるぬるをまとったペニスが膣奥まで届くと、精子を求めて降りてきた子宮口が歓迎するのだ。

(こんにゃの、むりぃ♡ 勝てないっ、こんな凄いおちんちんに勝てるわけないっ♡♡ お腹のナカ熱いのでいっぱいになってぇ……動くたびにイっちゃううぅ~~っ♡♡♡)

 イキっぱなしで息も絶え絶えになりながらも必死に耐えるレオナ。彼女は己でも意識しないうちにバーンの背中に腕を回し、まるで恋人や夫婦が優しく抱いてもらうときのように自分から仇に抱きついた。

 姫は遅れて自分の行動に気づいた。だが全く己でも理解できないことに離れ難さを感じてしまった。この腕を離したくない。強い男の胸から出たくないと思ってしまった。

 散っていった仲間への裏切りではないかとレオナは弱気になる己を恥じる。だが気を強く持ち、王族の義務に生きる覚悟を決めたとて彼女が十四歳の少女に変わりはない。本来なら魔界で大魔王に抱かれる人生などありはしない。王城で大事に育てられるべき年齢なのだ。

 そんな子供が魔界で人族の代表として人間の保護活動を続けてきた。周りに誰も頼れる者はなく独りで。孤独、不安、緊張。普段通り振る舞っていても精神は既に疲弊してボロボロだった。

 先に身体が屈したことで心の隙間も顕著になった。ただ、それだけのこと。

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猪熊夜離 2022/09/29 02:08

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猪熊夜離 2022/09/21 02:05

そして少女はオークに…(風音日和/そらのおとしもの)

前編

堕ちた空の女王(イカロス/そらのおとしもの) - 猪熊夜離 - Ci-en(シエン)


本文

 目を覚ました風音日和が最初に見たのは見知らぬ天井だった。ぼんやりとした意識の中、自分の置かれている状況が分からず、しばらくベッドに横たわったまま考えを巡らせた。ここはいったいどこなのだろう? 自分の家でないことは確かだ。日和の家は木がむき出しの天井をしていないし、背中に感じるゴツゴツとした違和感も普段寝ているベッドの感触とは違う。

「私、イカロスさんと一緒に本を読んでいて……」

 それでイカロスのカードが急に光りだしたのだ。その先は残念ながら思い出せない。光に包まれて気を失ってしまったようだ。

 今いる場所はどこかの建物の一室だと思う。軽く首を巡らせてみた範囲では、それほど広くない部屋に小さな机と椅子があるだけで、他に家具らしい家具はない。壁紙も床板も剥き出しの木でできている。外の様子は全く分からないが、窓から光が差し込んでくるので今は昼間のようだ。

 部屋の様子が分かると次に気になったのは誰が自分をここまで運んできたか、だ。歩いてベッドに入った覚えはない。その人が善い人ならよいけど、なにかの見返り目的で日和を自分に家の連れ帰ったとしたら……。

(イカロスさんはどうなってしまったんだろう。近くにはいないみたいだし)

 一緒にあの光を浴びたはずなのに見当たらない。バラバラに連れて来られたのだろうか。

 不安な気持ちが押し寄せてくる。いてもたってもいられずベッドから飛び起きたところで、ちょうど部屋の扉が開き、人が入ってくるのが見えた。

 その人は外国の昔話にでも出てきそうなおばあちゃんだった。白い髪と顔に深く刻まれた皺。いかにもお年寄りといった風貌だが、背筋はピンと伸びていて、その姿勢の良さが見た目以上に若々しく見せている。服装は質素なものだったが、それがまたよく似合っていた。中世ヨーロッパ風ファンタジーの登場人物が来ていそうなダボッとして身体の線を隠すデザイン。

 老婆は手に木のお盆を持っている。その上には湯気を立てるカップが置かれていた。おそらく日和に持ってきてくれたのだろう。

 老婆は日和と目が合うと、少し驚いたような表情を見せた後、目を細めて優しく微笑んだ。そしてゆっくりとこちらに近づいてくる。その表情を見て、少なくとも悪い人には見えないと思った日和は少しだけ緊張を解いた。

「気がついたかい」

 老婆はお盆を机に置くと、日和の背中を支えてくれた。骨ばった手に助けられて身体を起こす。

「あ、ありがとうございます」

「いいんだよ。それよりもあんた名前はなんていうんだい?」

「私は風音日和です」

「カザネ・ヒヨリね。いい名前だ。これでも飲みなさい」

「ありがとうございます」

 老婆が差し出してきた木製のカップを受け取る。使い慣れない感触は日和に自分がゲームの世界に迷い込んだようだとうい感想を与えた。そしてゲームという単語で気を失う直前に見ていた広告を思い出す。

(あのゲームも昔のヨーロッパのような世界観だったけど、まさかね……)

「それにしても、あんなところに倒れてるなんてびっくりしたよ。何かに追われてたのかい?」

「……いえ、特に何も追われていません」

「そうかい? それならいいんだけどさ。それにしてヒヨリみたいな若い娘が一人で旅をしているなんて珍しいねぇ」

 どう説明したものかと日和は思案する。果たして不思議な光に包まれて気がついたら知らない場所、知らない世界で目を覚ましたのだと言っても信じてもらえるだろうか。最悪、この娘は頭がおかしい、厄介はゴメンだよと放り出されてしまわないか。

 そんな日和の心配をよそに老婆は話を続ける。

「ここらは気のいい田舎者しかいないけど、森で倒れてたら魔物の餌になるからね。とりあえず家に連れ帰ってきたのさ」

「魔物がいるんですか?」

 老婆の眉間に怪訝さを示すシワが寄った。

「魔物の存在くらい小さな子供でも知ってることじゃないか」

「そうなんですか……」

 日和は己の無知を誤魔化すためカップの液体を飲んだ。お茶のような風味だが現代の嗜好品に慣れている日和の舌には薄く感じた。

「なにか隠してるのかい。もし困り事があるなら洗いざらいぶちまけてみな。なんの力もない田舎のババアじゃ大したことはできないが、少しくらいは貸せる知恵もあるかもしれないよ」

 どうしようか。日和は迷った。優しそうな人だとは思う。だけど本当に信用できるのかはまだ分からない。ここで正直に話して、やっぱり出て行けと言われたらどうしよう。そんなことを考えていると自然と口が重くなる。

 その様子を見ていた老婆が口を開く。

「なんだい、そんなに言いにくい事なのかい? それとも私には話せないようなことか?」

「そ、そういうわけじゃないんですけど……あの実は私、記憶がなくてですね」

 記憶喪失を装えば常識が欠落していても不思議ではない、なにも知らないので一から教えてほしいと頼んで情報収集できると日和は考えた。しかし老婆の反応は芳しくない。

「嘘をお言いでない。どこからどう見てもあんたは健康そのものに見えるよ。だいたい記憶が無いっていうのなら自分の名前だって分からないはずだろうに」

 老婆の言うことはぐうの音も出ない正論というやつだ。

 自分の名前だけは奇跡的に覚えていたことにするか。ご都合主義過ぎて逆に怪しい。今度こそ信用できない人間は家に置いておけないと言われてしまいそうだ。

 それからしばらく、ふたりの間に沈黙が横たわった。見ず知らずの人間とふたりきりで黙ることに日和は居心地の悪さを感じたが、老婆の方はそうでもないらしい。彼女は考えこむように目を瞑っている。

 これ以上待っても日和から話すことはないと思ったか、老婆は新しい質問を用意した。

「もしかして、あんた『違う世界』から来たんじゃないのかい?」

 その言葉に思わず日和の肩が跳ねる。

(どうしてそれを!)

 驚くと同時に確信する。やはりここは自分の知っている世界ではないのだと。

「そうかい、やっぱりそうだったんだね」

 すべて得心したと老婆は頷いた。そして今度は彼女が話し出す番だった。

「私が若い頃に曾祖母から聞いた話さ。たまにだが違う世界から落っこちてくる人がいて、その人たちはマレビトと呼ばれている。そしてその人たちは特別な力を持ってるって話さ」

「私が、その……マレビトですか?」

「状況から察するとね。あたしも話に聞いただけで実物を見たことないから詳しくは知らないんだ。あたしにマレビトの話をしてくれた曾祖母も、とっくの昔に亡くなっちまってる」

「私が元の世界に戻る方法は知りませんか?」

 一縷の望みをかけて聞いてみたものの、返ってきた答えは予想どおりだった。

「残念だけど私も聞いたことがないね」

「そうですか……」

 再び部屋に静寂が訪れる。もう一口だけお茶を飲もうかとカップに口をつけたが、中身は空になっていた。それを見た老婆が空のカップを受け取り机に戻す。

「マレビトは不思議な力を持っているそうだ。その証に身体のどこかに紋様が浮かび上がるとも言ってたね」

 老婆の言葉が気になって日和は自分の身体を確かめた。目立つ手足にないとしたら服で隠れている場所。日和は胸元や腹部に目をやる。

「こんなところに」

 そして自分の下腹部に見たことがない紋様を見つけた。へそより指数本分下。それはまるで日和の子宮の位置を示しているようだった。

「差し支えないなら見てもいいかい」

 場所が場所だけに女同士でも「はい、どうぞ」と言うのは躊躇われた。だが自分だけでは判断できないので仕方ない。羞恥心を抑えて日和は服をめくって見せる。

 老婆は日和の前に屈み込む。そのままじっと少女の身体を観察し始めた。

「まさか生きてるうちに本物と会えるとはね。長生きはするものだよ」

 はぁ~~~と長い息を吐き出しながら老婆は感嘆したように言った。そのまま拝みだしそうな雰囲気だった。

「これはどんな意味を持っているんですか?」

「さぁね、そこまでは知らないよ。ただこの模様があるってことはヒヨリの話が本当で、あんたがマレビトってことなんだろうね」

「じゃあ、これで私は魔法とか使えるようになったりするんでしょうか?」

 異世界転移物でおなじみの魔法。もし使えたら便利だろうなと日和は思った。

「どうだろうね」

 老婆の言葉は歯切れが悪い。適当な希望を口にしてぬか喜びさせるより、言葉は慎重に選ぶタイプなのだなと日和は老婆の性格が分かってきた。

「これから私はどうすればいいですか?」

「マレビトなら教会で保護してもらえるはずさ。だけど田舎の村には常駐してる聖職者もいないからね。今日明日のものにはならないよ。巡回司祭が次に回ってくるのは二ヶ月先さね」

「そうなんですか……それまで私はどうしたらいいんでしょう」

「しばらくはここにいればいいさ。遠慮はいらないよ。もし教会の連中が気に食わなかったら、ずっといてもいいからね」

 ありがたい申し出だったが、いつまでも世話になるわけにはいかないだろう。老婆の暮らしぶりは裕福に見えない。負担にはなりたくなかった。それに自分はこの世界について何も知らないのだ。

 元の世界への帰還を最優先に考えるが、いつ叶うか定かでない以上この世界で生きるための常識は知っておきたい。せめて地理や社会情勢など最低限の知識は必要だ。教会なら教育を受けた人が集まっているだろうし、学校のようなものも開いているかもしれない。

「司祭様とお話できるまでの間よろしくお願いします」

 日和は期限を区切って言った。

「よろしくヒヨリ。私はリーザだ」

 老婆が差し出してきた右手を日和は掴む。日本でも親しみ慣れた農作業する老人の手だった。

「それから」とリーザは肩越しに自分の背後へ目線を飛ばした。

 リーザの動きに視線を誘導された日和がドアの方に目を向けると身体は物陰に隠し、ドアの隙間からこちらの様子を窺う少年がいた。

「あれは私の孫でアルフォンス。アル、こっちに来て挨拶しな」

「え? あ、うん!」

 呼ばれて慌てて出てきた少年は、さっきまで隠れていたことを咎められないか不安げな様子だった。その様子を見て、なんだか犬みたいだなと思った日和は思わず笑みを漏らす。

「はじめまして、俺はアルフォンス」

「私はカザネ・ヒヨリです。今日からしばらくお世話になります」

 アルフォンスは緊張して見えた。それも無理はない。見知らぬ人間がいきなり同居することになれば誰だって警戒するだろう。それが異性であればなおさらだ。年頃の男の子として、女の子の前でカッコ悪いところは見せられないと気を張っているのかもしれない。

 そんな孫の態度をリーザはおかしそうに笑い飛ばした。

「村には若い娘が少ないからね。可愛い女の子を前にして一丁前に緊張しているのさ。無愛想に見えても許してやっておくれ。しばらくしたら打ち解けるだろうよ」

 どうやら嫌われているわけではなさそうだ。それなら仲良くなる機会もあるだろうと日和は安心した。

 その後、家の中を軽く案内してもらった後、寝室をあてがわれその日は眠りに就いたのだった。

 

      ○○○

 

 月日は飛ぶように過ぎていった。日和がリーザの家で世話になって二週間が経った。

 村での生活は思っていた以上に馴染めた。リザが仲立ちしてくれたおかげで急な余所者の登場でも村人との間に軋轢は生まれず、もともと空美町が現代日本では牧歌的な田舎の町だったこともありカルチャーギャップは少なくて済んだ。とは言え電気も水道もなく、お風呂は水浴びをする程度という生活には面食らった。たっぷりのお湯に身を沈ませるなんて、この世界では王都の貴族でもない限り一生経験しない贅沢なのだと教えられた。

 村の人々は親切で余所者の日和にも優しく接してくれる。みんな日和の境遇に同情的だった。自分の意志と関係なく無理やり連れて来られて帰れないなんて、奴○と一緒じゃないかと言う人もいた。

 それもこれも自分の見た目が関係していると日和は気づいた。

(みんな私のことを子供だと思ってるんだろうな。私、もう十四歳なんだけどなぁ)

 日本だったら中学生の年齢である。なのに村人は、まるで日和がもっと幼い子供かのように接してきた。

(確かに背は低いし童顔だし胸も薄いし、子供に見られてもおかしくはないかもしれないけど……)

 この世界の成人年齢は十五歳らしいから、もうすぐ私も大人だと言ったら村の人は一様に驚いていた。中には信じられないといった顔をする人までいる始末だ。幼い子供だと知れたら騙されると思ってサバを読んでるんだろうと言われた。

 他の世界から来たことより、マレビトという存在より、まさか年齢を信じさせることの方が大変だとは日和も思わなかった。

 村人に混ざって畑仕事を手伝ったり、料理を作ったり、村の子供たちと一緒に遊んだりと忙しい日々が続いた。身体を動かしている方が余計な心配をしなくて済むし、農作業は元いた世界でも慣れているので苦にはならなかった。

 村の生活にも慣れたころ機会を窺っていたのか、リーザが「そろそろいいか」と言って日和を森に連れ出した。この世界に飛ばされてきたとき倒れていた場所だ。

「こんな村では身体を悪くしても医者になんてかかれないからね。森に生えてる薬草を手分けして採ってきて薬を作っておくのも大事な仕事なんだよ」

 そう言って彼女は森の奥へと進んで行く。日和は黙ってついて行った。しばらくすると開けた場所に出た。そこには森全体を見下ろすかのように立つ巨木があった。

「この木の根元にヒヨリは倒れてたんだよ」

 言われて日和は木の根元に視線を落とす。だが人が倒れていた痕跡も強い光を発するような装置も残されていない。特に不思議なところはない森の一角に過ぎなかった。

「ここで倒れていたヒヨリをアルが発見して家に連れ帰ったんだ。あの子ったら壊れ物でも扱うように、おっかなびっくりヒヨリを抱えてね」

 当日のことを思い出してリーザが愉快そうに笑う。顔に刻まれたシワがより一層くっきり深くなった。きっと彼女の脳裏にはその情景が鮮明に浮かんでいるのだろう。

「アルフォンスくんが私を?」

「ああそうさ。あの子は昔から優しい子でね、困っている人間を見捨てられないんだよ」

 そう言うリーザの声は誇らしげで孫への情が表れていた。自分の家族を誇るように語る老婆の姿はとても微笑ましいものだった。

 日和も彼の優しさには感謝したくなった。見知らぬ場所で行き倒れていた自分を見つけ、家に連れ帰ってくれたアルフォンスの親切がなければ露頭に迷い、土地勘のない場所で森の奥深くまで迷い込んでいたかもしれない。

 それからしばらくの間、リーザとふたりで森の中を散策した。目的としていた薬草はすぐに見つかったので、ついでに食べられる野草や木の実なんかを探して回ったりもした。それらは後で食事の材料になるのだそうだ。

「あたしも過去のマレビトが最後どうなったか全部知ってるわけじゃない」

 リーザはぽつりと呟いた。それは独り言のようでもあり、たったひとりの聴衆に聞かせるための演説のようでもあった。

「だけど人生ってのがままならないものだってことくらいは分かってる。教会に行っても望むとおりにならなかったときのことは考えておきな。うちはヒヨリなら歓迎するからね」

 教会がマレビトを保護してくれると言っても、どんなことをしてくれるかまでは分からない。彼らも元いた世界に返す方法は知らないかもしれない。マレビトが特殊な能力を与えられる話も気になる。まだ日和は自分の能力を知らないが、もし教会やこの世界に有益なものだった場合、果たしてすんなり手放してもらえるだろうか。

 教会で飼い殺しなんてこともないとは言えない。

(もしかしたら元の世界に戻る方法なんてないのかも……)

 そんな考えが頭をよぎって不安になった日和は無意識に服の上からお腹をさすった。そこはちょうど子宮の位置にあたるところだ。あの日以来この位置に紋様が浮かんだままだった。これが自分をこの世界に招き寄せ、縛りつけているのだと思うと嫌な想像が働いてしまう。それを抑え付けようとして、最近この位置に手をやることが多くなっていた。

(私は一体どうなるんだろう……)

 不安に駆られた日和の足が止まった。その背中にそっと手が置かれる。振り向くとリーザが穏やかな笑みを浮かべていた。

「大丈夫さね。なにがあってもあたしらがついてるよ」

 不安を気取られたのだろう。リーザの手が紋様に添えた日和の手に重なった。

「もう日和はあたしたちの家族さ。ずっと家にいていいんだからね」

 その言葉で嬉しくなると同時に日和は自分が求められている役割を察した。きっとリーザは自分とアルフォンスが結婚することを望んでいるんだろう、と。アルフォンスとはまだ出会って二週間しか経っていない。ひとつ屋根の下に暮らし家族同然に付き合ってはいるが、まだ恋心と呼べるほどの気持ちは芽生えていない。それに日和は元の世界に想い人を残してきているのだ。

 たとえ日和の一方的な片想いだとしても、元いた世界に戻れないならこちらで新しい相手を見つけますなどと、簡単に気持ちが切り替えられるものでない。

(桜井くんのことが好きなままアルフォンスくんとなんて、彼に対しても失礼だよね……)

 だが断れば家の中の空気が悪くなることは避けられない。もし教会の保護があてにならず、アルフォンスとの結婚を断って針のむしろ状態になるなら、村を出て新しい生活を始めることも考えねばならなかった。そんな日和の気持ちを知ってか知らずか、リーザの手つきはまるで我が子を慈しむ母親のようだった。そんな彼女の手を振り払うことは今の日和にはできなかった。

 

 

      ○○○

 

 

 この世界での態度を決めかねていた日和に事件が起きたのはリーザと森に出かけてから、さらに二週間ほど経ったころだった。

 このころになると日和は昔から村の一員だったように人の輪に溶け込んでいた。司祭がやって来るまで残り一カ月。相変わらず一家は日和に好意的でアルフォンスが彼女に向ける視線も日に日に糖度を増す。それを無視することは難しくなっていた。

 困ったことに一家だけでなく村全体が日和とアルフォンスの仲を『そういうもの』と見做すようになっている。日和は畑仕事で村人と顔を合わせるたび、彼らに外堀を埋められていく気がした。一家も村人も悪い人たちじゃない分だけ強く言い返せない。

 日和は村人の視線から逃れるため率先して森での薬草採取を請け負うようになった。

 そんな折、ある出来事が起こった。

 せっかく森まで来たのだからと日和は泉で水浴びすることにした。幸いにして季節は夏で汗ばむような陽気が続いている。水浴びするにはうってつけだ。もちろんタオルなどないので裸で入るしかない。最初は衝立もない湖に裸で浸かる行為は恥ずかしさもあったが、何度も繰り返すうちにすっかり慣れてしまった。

 いつものように全裸になって服を木の枝に掛ける。裸になると下腹部の紋様が嫌でも目に入った。

(本当にこれ何なんだろう)

 異世界転移なんて現実離れしたことが起こるくらいだ。神様からの授かりものだと割り切って考えるのが一番なのだろうけど、如何せんこの紋様の形に見覚えがあるだけに素直に喜べなかった。

(なんだか子宮の形に似てるような……)

 そう思い至った瞬間、顔が真っ赤になった。

 ただでさえ紋様の表れた場所は子宮の位置を連想させるのに形まで似てるなんて。これは果たして偶然だろうか。

 日和は慌てて頭を振って邪念を追い払ったものの、一度意識してしまったせいかどうしても気になって仕方がなくなった。水に浸かってる間も紋様がある場所を重点的に撫でてしまう。そんなことをすれば当然変な気分になってしまうわけで――。

「……んっ」

 身体が反応して思わず声が漏れる。慌てて口を塞ぐも時すでに遅し、静かな湖畔にその声はよく響いた。思いがけず自分の口から漏れたエッチな声に日和は後ろめたさを感じた。誰かが来る前に退散しようと急いで服があるほうで歩き始めたとき、水音とは違う乾いた気が折れるような音を聞いた。

「誰?」

 日和が音のしたほうを向くと、真っ赤な顔をしたアルフォンスと目が合った。彼は目を泳がせながら言い訳の言葉を探しているように見えた。

「あ、あの……」

 気まずい沈黙が流れる。互いに次の言葉が出てこない。先に口を開いたのはアルフォンスのほうだった。

「ごめん! だけど見えてないから。あんまり。ちょっとしか。本当に少しだけだから」

 そう言うとアルフォンスは踵を返して走り去ってしまった。残された日和はしばらく呆然と立ち尽くしていた。やがて脳が再起動すると、羞恥心が怒涛のように押し寄せてきてその場にへたり込んでしまった。

(見られた! 桜井くん以外の男の子に!)

 異性に裸を見られたドキドキで日和の体温は急上昇する。首元まで水に沈めても真っ赤になった肌はなかなか熱が引いてくれなかった。

(私の大事なところ、見られてたよね? どこまで見えたんだろう。まさか全部……)

 そう考えると顔から火が出そうだった。きっと今の自分の顔は耳まで真っ赤になっているだろう。

(これからどんな顔して会えばいいんだろ)

 しばらく悶々としていたが、結局答えは出ないまま夜になってしまった。水に長く浸かりすぎて冷えた身体を擦りながら日和は家に帰る。先に戻っていたアルフォンスとはお互い顔を合わせないよう避けていたが、夕飯の時はさすがに逃げ回るわけにいかなかった。

 同じテーブルについてもアルフォンスの顔をまともに見れなかった。明日からどうやって彼と接すればいいのか分からなくて頭がぐるぐる回る。きっとアルフォンスも気まずいだろう。いっそ彼が忘れてくれればいいのだが、それは都合よすぎる期待だ。

 ふたりの様子をアルフォンスの両親は心配そうに見ていた。一方、リーザは孫と日和が互いを異性として意識する姿に笑顔が止まらなかった。ふたりの間に何が起きたかまでは知らないが、単なる同居人より一歩進んだことは間違いなかった。

 夕食後、逃げるように部屋に駆け込もうとする日和を追いかけ、アルフォンスが声をかけてきた。彼は申し訳無さそうに視線をさまよわせている。

「あのさ、ヒヨリ」

「なにかな……?」

「その……見たのは本当に一瞬だったんだ」

「うん」

「でもやっぱりその、ちゃんと謝らないとって思って」

「いいよ別に」

「いやそういうわけにはいかないだろ」

 正直なところ日和は、恥ずかしい瞬間を話題に出したくなかったし、忘れたふりをしてくれたらなとも感じた。まだ一ヶ月は一緒に暮らさねばならないのだ。お互い、なかったことにしたほうが波風立たないと感じるのは、日本人的な感性なのかもしれない。

 それでも自分が悪いことをしたなら謝罪すべきというアルフォンスの信念も理解できた。良くも悪くも真面目すぎる正確なのだろう。日和は少しでも彼の罪悪感が消えるなら謝罪を受けようと思った。

「大丈夫だから。お互い気にするのはやめよう」

 そう告げるとようやくアルフォンスの顔に笑みが浮かんだ。つられて日和にも笑顔が浮かぶ。ぎこちないながらも和解できたようだ。それが分かると自然と肩の力が抜けた。

 それから日和は部屋で着替えるとベッドに潜り込んだ。今日は色々あって疲れたのでさっさと寝てしまうに限る。そう思うのだが目を閉じると泉での出来事が頭をよぎった。

 忘れようと考えれば考えるほど鮮明に記憶が蘇ってくる。

(どうしてあんなことになっちゃったんだろう。これからはもっと周りに気をつけないと)

 今さら悔やんでも仕方がないことだ。明日になればまたいつもの日常が戻ってくるはずだから、今日のことはなるべく早く忘れることにしよう。そう思っても日和の心は晴れず寝付けない。

(少し夜風にでも当たろうかな)

 寝床から這い出した日和は少し外を歩こうと廊下に出た。だがアルフォンスの部屋から明かりが漏れているのを見て足が止まった。耳を凝らすと薄く開いたドアから「ヒヨリ、ヒヨリ……」と自分の名を呼ぶ彼の声まで聞こえてくる。

「はぁ……っ、ヒヨリ……、好きだ……好き……」

 ドアの向こうから聞こえてきた告白に日和は思わず息を飲んだ。今までただの一度も聞いたことのない熱っぽい声色に心臓が早鐘を打つ。そんな風に情熱的な声で名前を呼ばれたことはなかった。彼の熱気が伝わってきて日和の身体も暑くなる。頭の中が沸騰したようにくらくらした。

 気づけばふらふらと吸い寄せられるように部屋の前まで来ていた。ドアの隙間から中を覗き込む。昼間、泉でアルフォンスが自分の裸を見ていたのとは逆に、今度は日和が彼のしていることを覗く番だった。

 ベッドに座り俯いているアルフォンスの顔は見えない。ただ右手だけが忙しなく動いているのが分かった。その手の動きに合わせてベッドがギシギシと音を立てている。彼が日和の名前を呼ぶ声はますます切羽詰まったものになり、右手の動きも時間を追うごとにテンポアップした。

 まるで何かに取り憑かれたかのように一心不乱に手を動かす姿は異様だった。こんな姿のアルフォンスを見たのは初めてだ。やがて右手の動きが最高潮に達するとひときわ大きくビクンッと震えた。泣くのを我慢してる子供のような切ない顔で彼はなにかを握りしめる。

 そして、ゆっくりと右手を開くと、その手に付着したものをじっと眺めた。アルフォンスの手は白濁液まみれになっていた。

(あれって男の人の……?)

 中学生ともなれば保健体育の授業くらい受けている。実物を見るのは初めてだが、それがなんであるか日和にも分かった。男の人が赤ちゃんを作るために出すもの。教科書には確か精子という名前がついてたっけ。

(ああやって自分で擦って出すんだ)

 初めて見た男性器から日和は目が離せない。一連の動作を終えたアルフォンスの表情はどこか物憂げで、それでいて満足気でもあった。そんな彼の顔を見ていると日和の下腹部が熱を持った。

(なにこれ!)

 鼓動が収まらない。顔が熱い。身体の奥が疼くような感覚があった。

(こんなの知らない)

 身体の異変に戸惑いつつ、なんとか気を落ち着かせようとするがうまくいかない。呼吸の仕方さえ分からなくなりそうだった。自分の身体なのに制御できない恐怖が襲う。気を落ち着けようと深く呼吸すると、生臭いとも獣臭いとも形容できそうな嗅いだことのない臭いが鼻を突く。

 その臭いを嗅いでいると日和は自身の下腹部に甘い痺れが走るのを感じた。ちょうど紋様のある辺りが治りかけの傷口のように、じくじくとした。自分の身体に何が起きているのか怖くなって下腹部を触る。意を決して服をまくり上げ確かめようとしたが、そこでアルフォンスの視線がこちらに向いた気がした。

 気づかれたと思いとっさに身を隠した。幸いにしてすぐに彼の視線は逸らされた。恐る恐る顔を覗かせて様子を窺うも、もうアルフォンスの様子はいつもと変わらない。汚れた手を近くに置いたボロ布で拭っている。

(ここにいたら気づかれるかも)

 そう思った日和は慌てて自分の部屋に戻った。ドアを閉めて鍵を掛けるとそのまま床にへたり込む。

 生々しい光景を見てしまったせいで日和の心臓はバクバク鳴りっぱなしだ。さっき目撃した映像が目に焼き付いて離れない。それどころか繰り返し思い出すことでどんどん鮮明になっていく。

 そんな状態で眠れるはずもなく悶々とした一夜を過ごすことになった。

 翌朝、寝不足気味のまま朝を迎えた日和はぼんやりした頭で朝食の準備を手伝った。いつもならてきぱき動けるはずなのに、今朝に限って動きが緩慢だった。その様子を見て心配したアルフォンスの母アルマに声を掛けられた。

「大丈夫? 具合が悪いなら無理しないほうがいいわよ」

「大丈夫です」

 心配をかけまいと日和は努めて明るい声を出す。だが寝不足から来る弱々しさは隠せなかった。昨夜はずっと興奮しっぱなしだったのだから無理もない。

 それでも何とか作業をこなしているとリーザが起きてきた。

「なんだか顔色がよくないね」

 リーザの言葉に祖母の後から食堂に入ってきたアルフォンスも心配そうにこちらを見る。なんだか居たたまれない気持ちになって日和は目を逸らせた。

「体調悪いのかい?」

「いえ、平気です」

「そうかい?」

 リーザはまだ納得していないようだったがそれ以上追及はしてこなかった。

「あの子と喧嘩したならガツンと言っていいのよ。どうせアルが悪いんだから。女の子の扱いが何も分かってないから失礼なことでも言ったんでしょ」

 アルマはカラカラ笑いながら言う。昨夜の夕食から続く微妙な空気を払拭しようとするかのように。

 日和は朝食を手早く片付け、いつものように仕事を始めることにした。今日は村はずれの畑まで収穫に行くことになっている。家から距離があるので早めに出たいと言い訳して逃げるように立ち去ったことを失礼だと感じたろうか。しかし今はとにかくアルフォンスと顔を合わせてられない気分だった。

 いつまでも逃げてばかりいられない、それは分かっているのだが……。

 応えられない相手からの一方的な行為が重荷になることを初めて知った。いっそこのまま逃げてしまおうかなんてできるはずもないことを考えてしまう。日和は畑に向かう足取りも重くなった。

 俯き加減で歩いていた日和の耳に村人の叫び声が届いたのは、もう少しで畑につくというときだった。

「オークだ! オークが出たぞ!」

 その叫びを聞いた瞬間、日和の身体が強張った。オークという魔物についてはリーザから話を聞いていた。人間よりも遥かに強く凶暴な生き物で、訓練された兵士でも討伐には多大な犠牲を払うという。そしてなにより若い娘がオークを恐れるのは、彼らが多種族の雌をさらって慰み者にするからだ。

「強いオークほど身体が大きい。そして身体が大きいということは、男のアレも大きいということさ。人間とは比べものにならないくらいにね。人間の女なんてオークに朝から晩まで抱かれたら」

 老婆の淡々とした説明を日和は赤面して聞いていたが、今はオークの襲来という現実に血の気を失い青ざめている。

 日和は畑の方から逃げてくる人の群れ――その背後に見える醜悪な形をした魔物の集団を目にした瞬間、来た道を駆け戻っていた。途中で何度も躓いて転びそうになったが、それでも足を止めずに走り続けた。逃げなくては。転んでる暇はない。足を動かし続けろ。

 己を叱咤して迫る脅威から少しでも遠ざかろうとした。息が上がり心臓が破裂しそうになる頃、ようやく家が見えてきた。一家の顔がチラついた。さっきまでは顔を合わせたくないと思っていたのに、今は会いたくて仕方ない。彼らなら今回も自分を守ってくれそうな気がした。

 あと少し、もう少しだけ走り続けろ。

 そう自分に言い聞かせて走る速度を上げる。だが次の瞬間、背後から巨大な影が覆い被さってきたかと思うと、大きな衝撃とともに地面に叩きつけられた。衝撃で呼吸が止まり目の前が真っ暗になる。意識が途切れそうになるのを必死に堪えながら目を開けると、目の前にあったのはあの醜い顔だった。

「――ヒッ!」

 オークの背丈は日和の倍ほどもあった。三メートルはありそうだ。しかも横幅もかなり広いので体重は五倍以上あるだろう。そんな巨体が自分を見下ろしている。それだけで恐怖のあまり失禁してしまいそうなほど怖かった。

 逃げようにも恐ろしい魔物を間近で見た恐怖で腰が抜け動けない。ガタガタ震えながら見上げることしかできない日和に向かって、オークはその丸太のような腕を伸ばしてきた。

 ギュッと目を瞑った彼女は胴体に窮屈さを覚えたかと思うと、地面から軽々と持ち上げられてしまう。

「ぐぇ……っ」

 内臓を押し潰されるような苦しさに思わず声が漏れる。どうやらオークに片手で掴まれているようだ。

「……や……め……っ」

 なんとか声を絞り出したものの力が入らない。息苦しさで視界が霞むなか、オークの手から逃れようと身をよじるが徒労に終わった。むしろ暴れるほどに酸素が不足していく気がする。

(ここで死んでしまうの……)

 まだ死にたくはないと思った。訳も分からず飛ばされた異世界で、元の世界に戻れず死んでしまうなんて嫌だ。もっとやりたいことがたくさんあったはずなのに。いま亡くなったら後悔ばかりが残る。

(誰か……)

 日和は助けを求め辺りを見回す。その視線が先ほどまで食卓を囲んでいた一家を見つけた。

「助けてください!」

 日和は声の限り叫んだ。自分を家族同然と呼び一家に迎え入れてくれたリーザなら、この窮地でも手を貸してくれるはずと思った。

 だが彼女たちはこちらに背を向け逃げようとする。

「どうして!」

 つい恨みがましい言葉が口をついて出る。どうして助けてくれないの。家族同然と言ってくれたのに。

「ヒヨリ!」

 自分の名前を呼ぶ声がした方を日和は見る。アルフォンスだった。彼は父親や村の男たちから羽交い締めにされ、引きずるように連れて行かれながら日和の名前を呼び続けた。その顔は悲痛に満ちていた。

「離せよ。ヒヨリを助けなきゃ」

「馬鹿なことお言いでないよ、この子は。自分の身を優先しな」

 アルマが息子に平手打ちでもしそうな勢いで激怒した。

「だってまだヒヨリが。みんなヒヨリはもうウチの子だって、家族の一員だって言ってたじゃないか」

「それはアルがあの娘に惚れてるように見えたから嫁に丁度いいと思っただけさ。助けてやった恩もあるし、少し優しくしてやれば断れないと思ったんだ。だけど、しょせんは他人なんだよ」

 孫を諭すリーザの声は、日和が聞いたこともないほど冷淡なものだった。

「女なんか生きてればまた探せばいいだろ。死んだらなんにもならないんだ。我が儘言わず、あたしらと一緒に逃げるんだよ」

 母と祖母の説得にもアルフォンスは納得しなかった。父親たちに抵抗してその場に残ろうとする。

 だがそれもすぐに見えなくなった。アルフォンスたちを迎えに一台の馬車がやって来た。まだオークに捕まってない村人は馬車に乗り込むと全速力で村を捨て逃げていく。

 絶望に打ちひしがれた日和は抵抗する気力を失った。だらりと力なく垂れ下がった手足を見てオークが勝利を確信したように笑う。

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