石刻屋 2021/04/02 20:16

【解説】同人CG集等におけるクリスタを利用した文字入れの方法について 第1回

※この記事はクリエイター向けの情報記事です

概要

 同人CG集などに限らず、イラストとの組み合わせの表現として「文字」を入れることが、たびたびあるかと思います。
 擬音や短い言葉であれば描き文字として作ってしまう方法もありますが、長文になるとそのような手法はかなり労力がかかります。そこで多くの人は、ペイントソフトの文字入れ機能を利用することになるでしょう。
 文字入れのソフトはいくつかあるのですが、この場合では安価に入手できる『CLIP STUDIO PAINT』(以下、クリスタ)を使った例を解説していきたいと思います。
(なお、クリスタにはPROとEXの二つのバージョンが存在しますが、文字入れに関しては5000円で購入できるPROだけでまったく問題がありません)

文字入れの例

 では、実際どのように文字を入れることができるのか。
 クリスタにはかなり高機能の設定項目が存在しており、ただテキストを表示させるだけとは異なることが、以下の画像からわかると思います。

 この画像は現在、イラストレーターのみやこ様(ツイッターリンク)と制作している途中の作品のサンプルとなります。
 ストーリーを表現するうえでは、私がノベルゲームなどを嗜んでいたこともあり、このようにややノベルゲームチックな形式を採用しました。

 さて、クリスタの文字入れではいくつか機能的に注目すべき点があります。
 上記の画像からわかる点を挙げていきましょう。

縦書きがしっかりできる

 単純すぎて当たり前と思うかもしれませんが、これは重要な点です。
 たとえば無料の画像編集ソフトには『GIMP』なども存在しますが、これは言語としては日本語と相性が悪く、縦書きの文字入れをしようとするとテキストの形が崩れることが頻発します。
 クリスタの場合はしっかりと日本語を縦書きで表示できます。また、フォントサイズ・字間・行間・ルビなどの基本的テキスト機能のほか、縦中横(※後述)なども備えており快適です。

フチ取りができる

 これは重大で、テキストの視認性に深く影響する機能です。
 サンプルを拡大するとわかると思いますが、テキストには文字色のほかに、縁が黒色で塗りつぶされていることが確認できます。これによって、テキストが背景色と同化することを防ぎ、確実にユーザーが文字を視認できるようにしています。


 上の画像はフチをなくしたものですが、文字の強調されなくなっていることがわかります。背景色によってはテキストと同化してしまうことがあるため、フチ取り文字の重要性が一目でわかるかと思われます。

背景色の指定ができる

 これも文字の視認性に影響します。


 フチがあるので文字自体は読めますが、おそらく長文になればなるほど、背景色がないと目が疲れるのではないでしょうか。
 理由はいくつかあるのですが、単純なのは目が感知する情報量の多さによる影響でしょう。文字を読もうとしたときに、その背後にカラフルなものや意味のある絵が存在すると、われわれは気が散ってテキストに集中できないからです。
 背景色を設けると、イラストは目立たなくなり、相対的にテキストが強調されます。また、テキストの領域枠のはっきりと視認できるようになり、ユーザーが容易に文章を読めるようになるのです。

 さて、クリスタを使うとこのように文字入れできることがわかりました。
 しかし、実際どのように設定すればいいのか。
 まずはフォント項目から、一つずつ解説していきましょう。

テキスト設定

 設定を開くと、いちばん上に「フォント」があると思います
 それを見ていきましょう。

(※袋文字より下は、テキストボックス内を開いた状態で設定ボタンを押した時のみ表示されます)

フォント

 まずは字体の設定です。
 基本的にPCには、複数のフォントが事前にインストールされています。明朝体やゴシック体などは一般的な字体です。
 これは人によって好みがあるので、どれがいいとは限りません。ただし、私はやや小説調の文章を書くので、縦書きで読みやすい「UD デジタル 教科書体 N-R」を使用しています。

 ここで少し、フォントに関する補足をします。
 フォントによっては「P」が付いているものがあります。「MS Pゴシック」や「UD デジタル 教科書体 NP-R」などが該当しますね。知らない人は「何が違うのか?」と混乱するかもしれません。
 この「P」はプロポーショナルフォントを指しています。
 可変幅フォントとも呼ばれ、つまり文字の幅をモノによって変えるわけですね。
 それでは、実際に「MS 明朝」および「MS P明朝」で二つの差を見ていきましょう。

 比べると、明らかな違いがうかがえますね。
 まず、縦書きではプロポーショナルフォントのほうが読みづらく感じる人が大多数でしょう。なぜかというと、文字が非常に詰められて配置されるからです。画像で示したように、小文字の「っ」などは凄まじい文字の詰め方をされています。
 いっぽう、非プロポーショナルフォントのほうは整然としていて読みやすいと感じるのではないでしょうか。
 実際、小説などにおいてはテキストは非プロポーショナルのフォントを使うことが基本となっています。普段から縦書きの文章を読むときは、私たちはこちらのほうで見慣れているというわけです。
 したがって、基本的には、縦書きの時は非プロポーショナルのフォントを使うことを推奨します。
(ただしフリーフォントなどの一部は、字幅が一定幅に統一されていないものが存在します。そのようなフォントを使う時は、プロポーショナルフォントのデメリットも理解したうえでお使いください)

合成フォント

「フォント」の下には合成フォントが存在します。これは「ひらがな」「漢字」「半角アルファベット」などを種類別に特定のフォントに自動切り替えができるという機能です。
 しかし特定のグループだけ特定のフォントにしたい、という場面はあまりないと思うので、基本的には操作しなくてもよい部分だと思います。

サイズ

 文字のサイズです。
 注意してください。この数値の設定は、キャンバスの「dpi」によって見える大きさが変わってきます。
 つまり、「300dpiでフォントサイズ10」にした文字は「600dpiでフォントサイズ5」にしたものと同等の大きさになります。ややこしすぎますね。
 dpiが高くなるほどフォントサイズの細かい調整が小数点以下になってしまうので、基本的には文字入れするイラストは300or350dpiほどで考えたほうがよいと思われます。

水平比率、垂直比率

 水平比率で文字の横幅、垂直比率で文字の縦幅をいじれます。
 しかし変形させると見映えが確実に悪くなるので、基本的に100%でいじらないことを推奨します。

字間、文字詰め

 文字の間隔を調整できます。
 文章表現を気にする場合は、この機能にお世話になることが多いかもしれません。
 実際の使用例を見てみましょう。

 二つを見比べてみてください。微妙に違いに気づくはずです。
 左は字間と文字詰めで微妙に字幅を調整しており、改行後にくる文字を操作しています。たとえば、改行部分を「/」で表すと、

「あとで聞/くとそれは」→「あとで聞く/とそれは」
「種族であったそう/だ。」→「種族であったそうだ。/」
「別段恐/ろしいとも思わなかった」→「別段/恐ろしいとも思わなかった」

 このようになります。
 一つの単語が次の段にまたがってしまうことを、専門用語では「泣き別れ」と呼びます。また、句読点などが文頭に来てしまうことは文章としては禁則であり、この場合は字間を詰めて無理やり1行に入れたり(これを「追い込み」と呼びます)、また逆に字間を空けて文字を次の行に送り込んだりします(これを「追い出し」と呼びます)。

 さすがに上の例のように、ここまで字間をいじるのは極端ですが、場合によっては大事な単語などを泣き別れさせたくない時もあると思います。
 そのような場合には、特定の文字列を範囲選択したまま設定を開き、字間などの数値をいじることで選択部分だけを調整することができます。これで見映えを変えたりすることができますので、覚えておいて損はないでしょう。

スタイル

 太字、斜体の効果を選べます。
 用途に合わせてお使いください。
 ちなみにフォントによっては、デフォルトで太字(Bold)的なものもあります。
 たとえば「UD デジタル 教科書体 N-R」に対して、「UD デジタル 教科書体 N-B」は太めの書体となっています。いろいろとフォントによって性質が異なるので、好みのものをお探しください。

袋文字

 白抜き文字、中抜き文字などとも呼ばれる文字修飾です。輪郭線だけが残され、それ以外の内部が透過になります。
 美術的な文字デザインをおこなう時には利用できると思いますが、普通の文章を表現するのには不向きです。基本的には考えなくていい項目でしょう。

 文字色です。
 これは完全に好みですが、私は同人CG集などのようなライトに楽しむ作品では、登場人物ごとにセリフを色分けしたほうが良いかなと思っています。
 ヒロインは赤やピンク、主人公は青などの固有のカラーを決めておくと、ユーザーが流し読みした時でも誰のセリフか一瞬でわかりますね。

縦中横

 縦中横は縦書きで特定の文字列を横書きにする機能です。
 その代表的な使用例は「!?」という記号です。小説(とくにライトノベルなど)を見ると、おそらく100%の確率で「!?」という記号を見つけることができます。
 しかし、これは「!?」という文字があるわけではなく、「!」と「?」を一纏めにして横向きに表示させているだけです。この処理を縦中横と呼びます。
 クリスタには自動縦中横機能も搭載されており、基本的にはこの自動縦中横をオンにしていれば困ることはないので、この「フォント」欄にある手動縦中横はあまり利用することがないと思います。

 全角の「!」と「?」を入力しただけでは、全角文字として認識されてしまい、縦中横されませんのでご注意ください。
「テキスト」の項目に自動縦中横の設定ができるのですが、「2文字」に設定してオンにすると良いと思われます。

今回のあとがき

 さすがに全項目を解説するのは厳しかったので、「フォント」だけの記事でした。申し訳ありません。
 もし需要があるようならば、次の記事も早めに書いていこうかなと思います。
 このほか、クリエイター向けの情報記事としては文章の書き方講座などもいいかな、などと考えています。
(イラストレーターで同人作品を作っている方のなかには、文章を考えるのが苦手という人も多いと思うので)

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