スコムスscomscroll 2021/06/15 23:20

モッド塗れのスカイリムに転送された聖戦士はレベル1になった。(6)

ホワイトランから東の方向へ少し離れた警備塔。
報告で聞いた通り、巨大なドラゴンが上空を旋回していて、半分壊れた塔から警備兵達が弓を射って反撃を試みている。
しかし、凄まじい勢いで降りかかってくる炎のブレスから身を守るため、逃げ回りながらの矢が当たるはずもなく。

私は警備隊長のイリレスさんについて、警備塔から少し離れた横長の岩の後ろで待機する。ホワイトランからの援軍が揃ったところで…

「えっ、援軍ってたったの5人…?」

純粋な疑問を口にしただけだったけれど、そんな私を皆んなが「何がおかしい?」と言わんばかりの目で見つめてきたので、言葉を濁した。

「さあ、私にも倒せるかどうかは分からん。何しろドラゴンなんて初めて目にするからな。でもこの剣で、ホワイトランを守ってみせよう!」

「うおおおお!!」

イリレスさんには申し訳ないけれど、そこまで説得力のある演説とは思わなかった。そもそも、それが大事なところではない。
とりあえず、私も領主様から授かったエンチャントソードを掲げて彼女らの後を追う。

ドラゴンのブレスに苦しまれながらの応射ではあったが、これだけの数で一斉射撃すれば、警備兵達が放つ矢は時々ドラゴンの懐に命中する。
その度、ドラゴンは空中で少しふらつき、またすぐ姿勢を整えて旋回するけれど、こちらからダメージを与えられない訳ではなさそうだ。

そして、蓄積されたダメージが効いたのか、ドラゴンは塔の近くに着地する。コウモリの羽を数千倍に伸ばしたような大きい翼が地面の近くで羽ばたくと、ものすごい砂埃が立った。

私の攻撃はどうせ大したダメージを与えられないだろう。
このエンチャントソードの魔法攻撃に頼ってみるしかない。
魔力はフルチャージされていることだし…
宮殿魔法師のファレンガーさん曰く、この剣は充填された魔力を雷に変えて攻撃に上乗せすることができるらしい。
ふと、先ほど宮殿のホールで私が晒した痴態を思い出し顔が赤く燃えてきた。

イリレスさんの後ろについて、私が多少安全な所から1人考え込んでいる間、何人かの警備兵が武器を弓から剣に取り替えて、突進していく。

「貴様!! 仲間の仇を!!」

彼らが飛び出した塔の出口から。黒焦げになった警備兵の死体が見える。ブレスが直に当たったのだろう。可哀想に。

「お前ら!! 危ない! 退がれ!!」

イリレスさんが後ろで叫んだ。

「「「ヨル」」」

大地を振動させるような轟音がドラゴンの口から出され、その言葉の響きは炎の風に変わり、広範囲なブレスとなって警備兵達を襲う。
数秒もたたないうちに、ドラゴンの前へ飛び出した警備兵達は全身が黒焦げになり、軽い衝突音とともに地面を転がる。

「くそっ! 馬鹿どもが!! 迂闊に接近するな! 弓でやつの体力を削るんだ!」

私の瞬発力でも、剣が届く距離からあのブレスを避けることは多分できないだろう。遠距離から確実にダメージを与えるにはあの必殺技しかない。

「プロヴィデンスサンダー!!」

崩れた塔の壁から身を乗り出し、私は掲げた剣をドラゴンの方へ振り向ける。
元々この技は、剣を敵に刺したまま空中へ飛ばし、神様の力で呼び出した雷を当てるように使う。壮大な威力と比例して結構な精神力を消耗するので、そう何度も繰り出せる技ではない。
この前、ダンジョンの中でイラついたあまり、コソ泥に繰り出そうとしたときは、発動する寸前に相手がダンジョンのモンスター達に倒されたので、この技の威力も通常攻撃のようにけた落ちしているかも知れないけれど。

この剣の魔力に乗せて発動させれば私の攻撃力に関係なく威力を発揮できる。と、思った。
大丈夫。これは神託を受けた聖戦士としての直感だ。

パススっ!!

小鳥が鳴く様な甲高い破裂音とともに、青白い光線が私の剣から放たれ、着地していたドラゴンに直撃する。

「「「くぉぉぉぉ!! 貴様は…」」」

ドラゴンは苦しそうに身を捩らせながら、人間の言葉を発し、私の方向を睨んできた。

「すごい!! 確実にダメージが入っている!! これなら倒せるはずだ!! 撃ち続け!!」

イリレスさんがそう叫びながら、何人かの警備兵を連れてドラゴンの前に突撃する。
電撃のショックが残っているうちに、駆けつけたイリレスさん達はドラゴンの頭や腕、脚を剣で切り込む。
ドラゴンは苦しそうに叫び、地面を蹴り飛び立とうとした。

「ソフィさん! 撃って!! 貴方の攻撃は単一対象の魔法だ! 私達には構わなくていい!!」

「え、えっ、はい!!」

剣身にはまっている緑色の宝石の輝きが少し渋くなっている。しかし、本来なら激しく消耗されたはずの私自身の精神力には何の変化もなかった。
エンチャントというのは素晴らしい。こんな大技を一切の負担なしで繰り返せるなんて。
と感心しながら、二発目の電撃を飛ばす。

「プロヴィデンスサンダー!!」

強烈な青白い光線がまたもやドラゴンに直撃する。
地面を蹴ろうとした足が痺れたのか、跪くように体勢を崩して轟音を叫ぶ。

後方に残った警備兵達は腕を休ませることなく、弓を引き続ける。
ドラゴンは巨大である分、狙いやすい標的なのは確かだが、周りはイリレスさんや数人の警備兵が取り囲んでいる。
彼らは仲間達を正確に避けて、ドラゴンの懐や、翼だけを正確に狙い打つ。見事な腕前だ。

私も電撃攻撃が周りに影響を与えないことを認識してからは、迷うことなく必殺技を繰り返す。
3回目、4回目、5回目、6回目…
初めて経験する大技の連発。疲れることもない便利さに技の発動が楽しく感じるくらいだ。

どんどん出血量が増え、ドラゴンの動作が鈍くなっていく様子が見てとれる。
もうすぐで倒れそうなのだが、最後の悪あがきなのか、ドラゴンはぐるっと身を回転させ、丸太のような長くて太いしっぽを振り回そうとした。

「そうはさせません! プロヴィデンスサンダー!!…あれ?!」

今になって、私は剣身の宝石が輝いていないことに気づく。
あ、これは、まずいん…じゃないでしょうか。

「うわあああっ!!」

「くわわあっ!!」

イリレスさんや、警備兵達が、振り回されたしっぽに打たれ十数メーターもとばされる姿が見えた次の瞬間。
台風の様な風圧で、後方にいた警備達と一緒に、私も飛ばされて地面に転び落ちる。

気を失っていたようだ。


仰向けのまま目をゆっくり開くと、私の目の上には、巨大なドラゴンの顎が浮いていた。

「くうっ…な、なに…」

周りに誰か起き上がったような人気はない。皆んな気絶したのかな。
もしかすると死んでしまったんじゃないでしょうね…

「ひいいっ!!!」

鋭い何かに股を握られたような感覚。
視線を向けると、ドラゴンの手から生えた長く鋭い爪で、私のアーマーが破られ、股間が丸出しにされている。

「キャアア!! 何のつもりなのよ! ど、ドラゴンが…やめて!!」


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