【座談会1_1】ヒロインが優勢なのに漂う不穏な空気
仮想ヒロピン座談会とは
「仮想ヒロピン座談会」とは、ヒロピンに関するテーマを掘り下げるために開かれた仮想の座談会で、管理人がAIとやり取りしながら進めた考察をマスター、ブレーン、トリックという架空の三者による座談会形式にまとめたものです。
仮想ヒロピン座談会の目的はヒロピンに関する議論をコンテンツ化することで、それを呼び水として読者から質問や意見を募集し、さらにテーマを掘り下げ、議論を豊富にしていくフォーラム的な場を作ることにあります。議題となっているテーマについて関心や質問がある方は是非コメント欄にご意見をお寄せ下さい。また、「こういうテーマを座談会で扱ってほしい」といった提案も募集しております。
議題:ヒロインが優勢なのに漂う不穏な空気 1回目
【マスター】
それではヒロピン座談会を始めたいと思います。
今回のテーマは「ヒロインが優勢なのに漂う不穏な空気」についてです。
【トリック】
まだピンチになってないどころか有利な状況に見えるのにピンチの予感が伝わってくる…ちょっと上級者向けシチュですね。
【ブレーン】
上級者向けなんですか?
【トリック】
ダメージを食らったり、追い詰められたり、そういう客観的にはっきりとしたヒロピン状況になっていないのに、そっちに展開していく予感とか期待だけで興奮しちゃうのは上級者です。好きな人はそういう予感に敏感で、そこに本番のヒロピンシーンとはまた少し違う独特の興奮を覚えるものなんですよ。
【ブレーン】
予兆だけで興奮するなんてパブロフの犬みたいですね。たしかに過去の経験からの学習でそういう思考回路が出来てしまっているのなら、予兆だけで興奮することも十分起こりえると思います。
【マスター】
たしかに予兆という側面は大きいですが、このテーマのポイントは「優勢であるにもかかわらず」というところだと思います。いかにも「これからピンチになるぞ」と誰もがはっきりと予測できるような状況とは違う性格がそこにあるはずです。
【トリック】
ヒロイン自身かまたはその戦いを見ている連中が「勝てる」と思い込んじゃってる感じが逆に良いんですよ。要は「慢心」みたいなものがそこに滲み出ちゃってるわけです。「慢心している奴は必ずやられる」というのが物語の鉄則であることを観客は知っているので、優勢の中に慢心を感じるとそれが逆にヒロピンの予感になるんですよ。この「逆に」というところがポイントで、一種のギャップ萌えみたいな効果を生むんじゃないですかね。
【ブレーン】
登場人物が正しく認識していない物語の状況を観客の方は正しく認識している…脚本術の世界で言うところの読者優位(※1)の状況みたいなものですね。
【マスター】
観客はどうやって優勢な状況の中にヒロピンの予兆を感じ取るんですかね。これはもちろん作者が意図的に仕組んでいることなので、作者はどうやってその空気を作っているかという問題でもありますが…
【ブレーン】
一見すると優勢な状況なのにそれをそのまま受け入れることができない…つまりそこに「違和感」があるということなのだと思います。作者はこうした違和感を巧みに生み出すことで、勘のいい観客に潜在的な不安を与えていることになります。まあ、好きな人にとっては期待感なのでしょうが…
【トリック】
不安と期待の混合ですね。ヒロピン的興奮というのは単なる興奮ではなく何らかの不安がそこに入っていることが重要なんです。そういう不安と期待の混合した気分が焦らしや煽りの効果をもつんです。
【マスター】
違和感…つまり「表面上の優勢とは違う実態がそこにあるような気がする」という感覚ですよね。ヒロインがこれから逆転されて負けてしまう予感につながるような。
【ブレーン】
違和感について考えるためには逆転負けのパターンから考えるといいと思います。例えば、
・これからヒロインが失速or弱体化する
・実は敵の方が強いという
・ヒロインたちが予想していない介入がある
などが考えられます。
これらの逆転パターンを予感させるような違和感が優勢な状況の中にも感じられるのだと思います。
【トリック】
ヒロピン上級者になるとそれ以外に構成上の観点も持ってますよ。例えば30分番組の開始5分でヒロインが敵を圧倒していたら、構成上必ず直後に波乱があることを予想するでしょう。「こんなにあっさり敵が倒されるはずがない」というのも違和感の理由になります。
【ブレーン】
いわゆる「約束された敗北(※2)」の一種で「約束されたピンチ」というわけですね。
【マスター】
なるほど。では今回はここまでとして、次回はその違和感についてもう少し掘り下げていきましょう。
※1:読者優位
例えば暗殺者がセールスマンに変装して主人公の家を訪れた場合、主人公に危機が迫っているという事実を主人公は知らないが読者や観客は知っている。このような状況を読者優位または観客優位と呼ぶ。また、このような状況やそれがもつ効果を「劇的アイロニー」とも呼ぶ。ちなみにキャラクターは知っているが、読者や観客には明かされていないという状況はキャラクター優位などと呼ばれる。
※:約束された敗北
ヒロイン工学研究所による造語。例えば主人公と深い因縁がある敵がトーナメント制の武道大会に出場している場合、「主人公とこの敵が決勝戦で対決する」という展開となることは暗黙の約束事になっており、読者はそれを了解している。こうした状況の中で例えばトーナメントの第一試合で主人公の仲間のヒロインがその敵と対決する場合、このヒロインが敵に勝つことは「主人公と敵が決勝戦で対決する」という約束を破ることになってしまうので、ヒロインは必ずこの敵に敗北することになる。このようにバトルの状況や力関係以前の問題として、物語の構成上敗北の結果が確定しているようなケースを「約束された敗北」と呼ぶ。
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