リョナ・ヒロピン表現における悪の特権
前回の記事でリョナ・ヒロピンと悪役の関係について書きましたが、今回はもう少し具体的にリョナ・ヒロピン的な表現をする上での悪の利点について考えてみたいと思います。
非道な攻撃ができる
これは特にリョナ観点から重要なポイントですね。
社会通念上、女性に対する暴力がそもそも悪である以上、ヒロインに対する情け容赦のない攻撃は悪にのみ許される特権なわけです。
普通の人間なら攻撃することをためらうような場所への攻撃や
もはや戦闘不能のヒロインを勝つためではなく嬲るために攻撃するような行為が自然に出来るのが悪人キャラの長所です。
言葉責めができる
ヒロインを苦しめるのは物理的な攻撃だけではありません。
焦燥感、不安、恐怖、敗北感、屈辱、絶望感…
様々な心理的なダメージもまた、リョナ・ヒロピン嗜好の対象になります。
つまり、ヒロインを嘲弄したり傷付けたりする言葉が必要なんです。
これは特にシチュエーションやヒロインの内面性を重視するヒロピン趣味にとって重要なポイントです。
物理的なダメージによって苦痛や敗北に打ちひしがれるヒロイン――そんなヒロインの姿に憐憫の感情ではなく、侮蔑や嗜虐の感情から言葉を浴びせることができるのも悪人だけです。
彼らは嗜虐的なシチュエーションを自ら楽しむことによって、リョナ・ヒロピン趣味の読者の優秀なエージェントとなり、言葉責めによって読者の興奮を効果的に煽ることが出来ます。
エロ展開への期待をもたせることができる
そんな悪逆非道で情け容赦のない敵が、戦いに敗れ、戦闘不能になったヒロインをそのままにしておくでしょうか?
敵が悪である場合の大きなポイントは、
「敗北=ヒロインの性的蹂躙」の可能性
を示唆できるところです。
バトルそのものに「陵○」のテーマを潜在させることが出来るのも悪人キャラの特権です。
また陵○というテーマは、敗北という要素に付加価値を与えるだけではありません。
ヒロインという存在が敵にとって「対戦者」であると同時に「性欲の対象」でもあるという状況は、バトルに独特の緊張感を与えてくれるだけでなく、戦うヒロインの美の性的魅力を強調してくれます。
なお、こうした利点を発揮する上で、敵があらかじめ勝利後の陵○を宣言している必要はありません。
「こんな奴に負けたら、その後滅茶苦茶にされちゃうんだろうな…」
という印象を与えるだけでも十分効果的です。しかし、あえて語らずともそんな印象を与えることが出来るのは悪人だけです。
「こんな奴に」効果でカタルシス倍増
悪である敵は、憎むべき存在であるだけでなく、負ければ我が身を陵○されるおそれすらあるわけですから、当然ヒロインは絶対に負けるわけにはいきません。逆に言えば、
そんな悪人に負けてしまうことは大きな屈辱と絶望を生みます。
一般的にヒロインの「負けられない」という気持ちが大きければ大きいほど敗北のカタルシスも大きくなりますが、悪人というのは悪人であるというだけで、その「負けるわけにはいかない!」という思いを増幅してくれるのです。
相手が善人であっても「負けるわけにはいかない!」という気持ちで戦う場合はあるでしょう。
しかし相手が悪人である場合は、この思いのニュアンスがちょっと違って、言わば、
「こんな奴に負けるわけにはいかない!」
という思いなわけです。
負けられないのは「この戦い」であると同時に、「この相手」なのです。
ここでは、悪人である相手に対する軽蔑や嫌悪、反感などの強いマイナス感情が、その分だけ「負けらない」という思いを別の理由から強化しています。
これは逆の観点から見るならば、
善人や非悪人とは違って、悪である敵に敗北することは、
ヒロインのプライド、信じてきた価値観、人格の否定
につながりやすいということなのです。
つまり戦うことのリスクがそれだけ大きいわけです。
「こんな奴に負けるわけにはいかない!」という思いによって高騰した戦意は、
「こんな奴に負けるなんて…!」という失意の落差を準備します。
このように悪人である敵は、戦うヒロインの闘争心と敗北のダメージの両方を増幅させカタルシスをより劇的にする効果をもっているのです。