「アベンジャーズ:インフィニティ・ウォー」について、包み隠さず全力で語ろう。(前編)
警告!
この記事は、現在公開中の映画に対する評論ならびに考察であり、いわゆるネタバレ要素をこれでもかというほどしこたま含んでおります。
世間様に「そろそろネタバレしても許されるかな~?」という空気が流れ始めたら、閲覧制限レベルを引き下げるつもりでおりますが、ネタバレとかマジ勘弁と思う方は見ちゃダメですよ。今すぐにブラウザなりタブなりを閉じて下さいね。
2018/05/01追記:
あああああ! 絶望して途方に暮れてるファンが多すぎて見てられない!
マーベル本家の要請がなんだ! 俺はタブーを破るぞ! 仲間たちのために!
絶望を抱えて苦しんでいる人たちの元へ、どうか届け! この希望!!!!
イントロダクション
ワタクシ永元は、マーベル映画が大好きです。
そもそもエロ屋を志す前、少年時代に夢見ていた将来の職業は、バトルものや冒険小説を書く活劇作家でした。その情熱を余すことなく注ぎ込んだのが拙作「コヲロコヲロ」なのですが、今のところ自分の中にアレ以上の語るべきテーマを持っておらず、活劇作家としての活動は休止しております。が、厳密に言えば今もなお、その分野で仕事をしたいとは思い続けています。
こればっかりはね、しょうがないです。夢は夢だよねと片付けられるほど諦めは良くないので。エロ書くのもクッソ楽しいんでやめられんだろうけども。
なもんで、マーベル映画が本当に大好きなんですよ。
毎度毎度よくもまあ、手を変え品を変え我々を楽しませてくれるものです。
派手なアクションやリアルなCGに目を奪われがちですけど、物語も実によく作り込まれていて、未来への希望や人間への信頼感、あるいは将来の社会に対する警告がきっちり盛り込まれている。よしんばそこに気付かなかったとしても、世界トップクラスの名優たちが演じるキャラクターたちの演技を追いかけ人間関係の変化にハラハラドキドキしているだけで、あっという間に二時間少々の上演時間が終了してしまう。後に残るのは「あー、面白かった! 次の新作も観にこないとな!」というポジティブな気持ちだけ。
曲がりなりにもエンターテイメントを手がける作り手の一人として、これらの作品群を評価するなという方がどだい無理というもの。ちなみに永元が最も大好きなキャラクターは、トニー・スターク/アイアンマン。彼の自宅にあった「何でも作っちゃうよガレージ」には毎回胸を躍らせていたものです。最近その要素があんまりなくてちょっぴり寂しいけど、それはトニーの成長と歩を合わせてのことなので(ここからしばらく話が脱線するので自主的に省略)
そうして、2018年の春。
やってきました超大作。
「アベンジャーズ:インフィニティ・ウォー」
ネタバレの類は一切目に入れず、今年中学二年になる息子とカミさんを連れて、公開二日目の四月二十八日土曜日に、劇場へ駆けつけたのでございます。
だがしかし
最低のクソ映画だった。
少なくとも視聴直後、永元はそう思っていました。
いや、シーン単位では、もう、ンもう、めちゃくちゃ面白い映画だったんですよ。
一人一人が主演クラスの実力派俳優や魅力的なキャラクターが次から次に登場してくるのに、その全員にきっちり見せ場があって、ないがしろにされている感が微塵もない。緊迫した空気が漂い始めると皮肉と愛嬌で笑いを誘い、かと思えば即座に絶望の底へ叩き込み、それと同時に希望の光が差し込み、クセが強くて折り合わないどころか仲違い真っ最中のヒーローたちが不可能を可能にするため手を結んで巨悪に立ち向かう。ハンパなかった。みんなほんとに頑張ってた。文字通り死力を尽くしてた。目も心もスクリーンに釘付けのまま、あっという間に上映時間が過ぎ去っていく。
一緒に観ていた観客の心は間違いなく一つだったはずです。みんな頑張れ、どうか負けないで、お願いだから勝ってくれ……!!!!
ただまァ、結局のところ、何もかもムダだったことになるんですけどね。
完膚なきまでの完全敗北によって。
どうやら世間ではこれをもって「衝撃的なバッドエンド」と評しているようで、ヒーローが敗北することに対する一種のカタルシスをもって「かつてない傑作」だとする意見が少なからずあるようです。
続編があると確定しているからこそ可能な展開、ファン層が厚いからこそ可能なビッグブランドの力技。ある人はこれを「スターウォーズ ep5:帝国の逆襲」になぞらえて「あの衝撃を越える映画が出てくるとは思わなかった」とまで言っていた。
とんでもねェよ。
帝国の逆襲は、映画単体で観ると確かにバッドエンドでした。主人公のルークが悪の権化ダースベイダーの息子であるという衝撃の事実が明かされるだけにとどまらず、片腕を斬り落とされて完全敗北。ルークもいつかはダークサイドに堕ちるかもしれないという可能性も示唆された。大局で観れば反乱軍も大打撃を被って、ハッピーエンドだった前作のほぼ全てを覆されてしまう……そういう作品でした。
でもね。
「帝国の逆襲」は観客に衝撃と絶望を与えると同時に、たくさんの希望も残していたんです。まず第一にジェダイとしてのルークの修行は道半ばだったし、あの時点では師であるヨーダもまだ生きていた。今はダースベイダーに完全敗北したけど次はそう簡単にいかないし行くはずがないと信じられたんです。反乱軍も決して全滅したワケじゃないし、ハン・ソロも凍結されただけで死んではいない。
次はきっと勝てる、全てを丸く収めるハッピーエンドが待っているはず。そう信じられたから観客は固唾を呑んで待ったんです。続編を。「スターウォーズ ep6:ジェダイの帰還」を。
でも「アベンジャーズ:インフィニティ・ウォー」に、そんな希望は微塵もありません。
敵役のサノスは私利私欲に走るチャチな悪党ではなく、彼なりの確固たる信念を持ち、ステゴロでハルクと殴り合って圧倒するほどの実力がある。おまけにインフィニティストーンというチート級のアイテムを全種類揃えて自分のものにしてしまい、容赦なく一瞬で宇宙の全人類を1/2まで消滅させることに成功します。
彼に単騎で挑んで勝てる者は誰もいないし、今後はヒーローたちが全員集結して連携を取れることもできない。だってほんとに無差別に全宇宙の人類を半減させちゃったんだもん。戦いの最中で殺されたロキやガモーラやヴィジョンはもちろん、スターロードもドラックスもファルコンもバッキーもスパイダーマンもドクターストレンジもグルートもブラックパンサーもみんなみんな消滅。残っているのはソー、キャップ、ハルク、アイアンマン、ロケット、ウォーマシン、ブラックウィドゥほかわずかな面々だけ。
最初に永元はアイアンマンが好きだと言いましたが、彼が生き残ったからって微塵も喜べないんですよね。そのために払った犠牲が大きすぎるし、そもそも今後トニーがどんなに頑張ったところでもう二度とサノスには勝てませんからね。劇中ひょっとしたら勝ってたかもしれない瞬間はあったんですが、その時はまだサノスの手元にインフィニティストーンは全部揃ってなかったしな。
特に救いがないのは、生き残り組に属するハルクですよ。もともと彼はブルース博士の身体に同居してる二重人格のモンスターなんですけど、サノスに全力で挑みかかったのに生まれて初めて真正面から殴り返されて完全敗北したせいで心底ブルっちゃって、以後どんなにピンチになっても頑なに変身しようとしなかったでしょ。もともとハルクはヒーローと呼んでいいのか微妙なところにいるヤツでしたけど、今回ガチでヒーローの側面を放棄しちゃったんですもん。ブルース博士はめっちゃ頑張ってたけど……。
仮に再戦の機会があったとしても、勝機はゼロ。
もう考えるまでもないレベルですよ。ほんとにどうしようもねェ。
そんな絶望感に呆然とするしかない観客の前に、映画の最後、こんなテロップが表示されます。
「サノスは帰ってくる」
何考えてんだよおおお!!!!!! アホかああああああ!!!!!!!!
二度と帰ってくんなあああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!
驚かせりゃいいってもんじゃないだろう
この絶望を覆す(はずの)アベンジャーズの続編は、一年後、2019年の5月に公開予定だそうですけどね。
一年って、けっこう長いですよ。そんなに長い間、わざわざ劇場に足を運んだ観客にフラストレーションを抱えさせ続ける気なのかと。今回以上のワンサイドゲームで完敗することは間違いない状況で何を希望に待てばいいのかと。
いやまあ、負けっ放しじゃ映画になりませんしね。そりゃ次回は勝つんでしょうよ。
だとしても、ですよ。
それってさ、どんだけご都合主義の奇跡を連発すればいいワケなの?
なんでもいいからとにかく勝てばいいってもんじゃないのよ? 残ったメンバーだけでうっかり勝ったら今回の犠牲は何だったのよって話になるやん? 白けるどころの話じゃないよ???
何が衝撃の展開だ。
今まで丁寧に丁寧に積み上げてきたものをブッ壊しただけじゃねェか。
たとえばね、時価数千億円の絵画が目の前にあるとして、それを作者自身がズタズタにして燃やしたとしましょう。そりゃ衝撃的ですよ。何やってんだオイってなります。でもそれだけ。衝撃を与えるためなら何をやってもいいというワケじゃない。作者なんだから自分の都合で作品を葬ってもいいじゃんと言うつもりか。
いえ、別にいいんですよ。いいんですけどね。好きにすればいいんですけどね。少なくとも永元はそんな真似をして「してやったり!」みたいな顔をする作家を今後も応援しようとは思いません。俺の知らんところで勝手に作品作って勝手に破いててくれ。
次に控えているマーベル映画は「アントマン2:アントマン&ワスプ」だそうな。
アントマンもめっちゃ面白くて未見の方にはオススメの映画なんですが、こんなヒドい映画と共通の世界で語られる物語だと思うとゲンナリしてくるわけですよ。また作品を引き裂いて「してやったり!」されるんじゃないかと思っちゃいますしね。
なもんで、わざわざ劇場に行ってまで観る気はなくなっていました。
つーか、マーベル映画とのつきあいも終わりにしようかと思ってました。
そのくらい、永元は「アベンジャーズ:インフィニティ・ウォー」に失望させられたんです。
その思いは、一緒に映画を観ていたうちのカミさんも同じだったらしく。
鑑賞後に立ち寄った喫茶店で失望の溜息をつきつつ、愚痴の言い合いになりました。
そんな気持ちになったのは、おそらく我々だけではなかったと思います。マーベル映画のお約束としてエンドロール後のボーナス映像が必ず入るんですけど、我々と一緒に観ていた観客のうち相当な数の人がこれを待たず早々に席を立っていきました。その数が尋常じゃなかった。いつもなら「マーベル映画の初心者さんかな?」とかほほえましく眺めていられるんですけど、今回はそんなレベルじゃなかったです。
あーあ、やっちまったな、マーベル。
ブランド力にあぐらをかいて、観客を驚かせたらそれでいいと勘違いしたのかなぁ。話題になって観客が入ればそれでOKってことなのかなぁ。要するに炎上商法じゃんね。そんな真似だけはしないと思ってたのになぁ、残念だよ。
………………と、思ってたんですけどね。
そのとき息子が口を開いた
「いや、それは違うんじゃないの?」
うちの息子が唐突に言うのです。
これは敗北の物語ではない、少なくとも希望はある、いやむしろ、アベンジャーズが完全勝利することは約束されているはずだよ。お父さんは大事なことを見落としてるんじゃない?
「ヘイヘイヘイ、何を言ってるんだボーイ。オトナをからかっちゃいけないよ」
みたいな気分で息子の話を聞いてたんですが、永元が顔色を変えて前言を翻すまでたぶん三十秒もかからなかったと思います。それから劇中の描写を脳内で再検証、いろんな可能性を多角的に考えてみたんですけど……。
これはもう確信でした。
アベンジャーズは負けてない。
これは「勝ち」への途中……!
どうにもおかしいヤツが一人いる
この記事の最初に立ち返ります。
「この映画はシーン単位では本当によく出来ていた」という言葉。
一人一人が主演クラスの実力派俳優や魅力的なキャラクターが次から次に登場してくるのに、その全員にきっちり見せ場があって、ないがしろにされている感が微塵もなかった。それはつまり、各キャラクターの本質が微塵もブレてなかったということ。アイアンマンは本当にいつものアイアンマンで、キャップも何一つ変わってなくて、スターロードは毎度あんな調子だし、スパイダーマンは今回もお茶目でとっても良い子でした。
でもね。
よくよく考えると「このヒーローってこんなヤツだっけ?」っていう不自然なキャラクターがね、いるんですよ。一人だけ。
厳密に言えば「ものすごく不自然な言動をしているのに、それを不自然だと感じさせない演出上の罠をしこたま仕掛けていて、大半の観客がまんまと欺かれている」のです。
ワタクシ永元は、まんまと騙されました。
うちのカミさんも騙されました。
あのとき劇場にいた観客の多くも騙されていたはず。
救いのないバッドエンドだと思い込んでSNSで愚痴っていたファンもみんなそう。
でも、うちのぼんずは違ったのです。
いえね、気付いたのはぼんずだけじゃないはずなんですよ。そこに気付いてしまえば「ああああ! それしかない!」と確信できるレベルなんだから。
でも公開から三日目にあたる四月二十八日現在、永元がSNSの検索機能などで調べた限りではまだ見つけられません。救いのない衝撃的なバッドエンドとしてこの映画を評価している(あるいは落胆、もしくは失望、でなきゃ途方に暮れている)人ばかり。
なもんで、この記事を書いている現在、永元はまだほんの少しだけ疑っています。うちのぼんずの直感と、それを立証した自分と、笑顔で同意してくれたカミさんを。我々家族の間で共有されている希望の光を。
だから今、この記事をしたためているのです。
どうか希望が幻でありませんように、と。
あの結末に絶望し、あるいは困惑し、モヤモヤしたものを胸に抱えたままの人たちが「確かにそうかもしれない!」と同意して下さることを期待して。
そしてもし、うちの家族の考察が当たっているとすれば。
マーベルは本当に「やりやがった」のです。
傑作に繋がる前章を見事に語りきったのです。
今までついてきてくれたファンを信じて、誤解されて批判を受けるのも覚悟の上で、一年がかりの大芝居を打ってきたに違いないのです……!
これはね、すごいよ、ほんとにすごいよ、ハンパないことなのだよ……!
というあたりで、今回はいったん記事を締めます。
思い入れが強すぎて長々と書きすぎた!
えーと、今回は問題の「とっても不自然な一人のヒーロー」の名前だけ明かしておきますね。彼の名は――――――
「ドクター・ストレンジ」
次回につづく!
2018/04/29