遠蛮亭 2021/09/28 11:02

21-09-28-世界包括神話.ギリシア(1)

お疲れ様です、ゲーム化エッセイといいつつこれ(世界包括神話)ばっかり書いてる気がする遠蛮です。今回はギリシア編。

 ギリシア神話はある意味、全世界の神話の基本形と言うべきものなのであらゆる神話との相似点があります。だからというかなんというか、神話を学ぶに当たって一番最初期にギリシア・ローマ神話にあたると、他の神話に比べてどうにもチープに感じてしまうと言うのがあり……これまでインド、イラン、ケルト、北欧、メソポタミア、ロシアとやってきましたけどもなかなか、ギリシアには食指が動かなかったというところがあります。これはギリシア哲学が安っぽいというわけでは全然なく、単純に「慣れ」の問題でして、ゼウス、アテナ、プロメテウス、アレス、アポロン、アフロディテ……などという固有名詞が、あんまりに耳目になじみ深すぎて飽きてしまったということです。わかりやすく言うとたとえば、伊勢神宮は立派でお詣りしたくなるけど近所の宇美八幡にはいちいちお詣りしなくてもなぁと。そういうことです。宇美八幡にも面白い伝承はたくさんありますし、本気で研究しようと思えばそれだけで人生終われますけどもやはり一極集中はできないので、飽きたところより目新しい神話に挑戦したくなるとそういうわけです。

 さておきまして。ギリシャ神話における主宰神は誰でも知っているレベルですけども、ゼウスです。ただここに至るまでの系譜、それは以前も書きましたとおり英雄神話のあとに権威漬けとして作られたもので間違いないのですが、いちおう、大事なので以下に列挙します。

最初に混沌カオスがあり、大地の女神ガイアと幽冥の男神エレボスと夜の女神ニュクスを産みました。エレボスとニュクスは光輝アイテールを生み、一方でガイアはひとりにして愛エロース、海原ポントス、高き険しき山々などを生み、そしてきわめつけに「天空」ウラヌスを産み落とします。さらにウラヌスとガイアが近親相○で海原オケアノス、掟テミス、記憶ムネーモシュネーほかの男神女神を生み、最後に狡知に長けた「時」クロノスを産みました。クロノスまでの神々を「ティターン神族」といって後来の神々と区別します。ガイアとウラヌスの交合はなおとどまることを知らず、三人の「単眼巨人」キュクロプスと、これまた三人の「百腕巨人」ヘカトンケイルなどを産みました。

まけじと夜ニュクスも多くの神々を産み落とします。最も有名なのは運命の三女神モイライ(紡ぐ者クロートー、分け与える者ラケシス、曲げ得ない者アトロポス)。ほかに死の三柱として「定業」モロス「命運」ケール、「死」タナトス。そして「眠り」ヒュプノスと「夢」オネイロス。他にも「非難」モーモス、「苦悩」オイジュス、「義憤」ネメシス、「欺瞞」アパテー、「愛欲」ピロテース「老齢」ゲーラス、「争い」エリスほか。エリスの子らとして「苦痛」「戦」「殺戮」「闘争」「虚言」「破滅」なんかもいますけども、今回割愛で。

ガイアに戻って彼女は今度は「海」ポントスと姦通して海の老人ネーレウス、「驚異」タウマース、ポルキュースと美貌の女神ケートーほかの神々を生みます。ネーレウスの娘の一人がテティスといって英雄アキレウスのお母さんで、タウマースの娘神がホメーロスにしばしば登場する「虹」イーリス。ポルキュースとケートーはまた近親姦で子をなし、これがバケモノだらけ。半人半蛇のエキドナ、ヘラクレスに退治されるオルトロス、地獄の番犬ケルベロス、沼に住む多頭の蛇ヒュドラ、獅子と山羊と竜の頭を持つケルベロスなど、すべてケートーの子供です。

ガイアの寵愛がポントスに向いた所為か、ウラヌスはだんだんいらつき始めます。その結果容姿醜い自分の息子ヘカトンケイレスを、冥府タルタロスに幽閉しました。ガイアはこれに不満です。なのでほかの息子たちを扇動して、クロノスに叛旗を翻すよう仕向けましたが、彼らも暴君な父親が怖いので動けません。このとき末息子のクロノスだけが敢然として母に従い、ウラヌスを殺してその男根を鋼鉄(アダマス。たまーにファンタジー作品に登場する「アダマンタイト(金剛石)」の語原です)の鎌で切り落とし、投げ捨てました(後ろ向きに投げ捨てる、というのは呪術的な意味合い)。ちなみにこの投げ捨てられて海に入った男根から立った泡が美の女神アフロディーテになるのですが、もともとアフロディーテは「泡」アプロスの転訛ではなくギリシアの神格ではない異国渡来の女神であるらしいです。

かくてクロノスは神々の王権を握りましたが、やがて父ウラヌスと変わらぬ暴君になり、また自分も自分の子によって殺されるという預言を受けたので、妹レイアーとの間に生まれてくる子供ら、ヘスティア、デメーメーテール、ヘラ、ポセイドンとプルートをことごとくこの口の中に飲み込みます。当然、子供たちを食い殺されてレイアーが嬉しかろうはずもなく、最後の子を懐妊するとこっそり逃れてイデ山の洞窟でゼウスを産みました。ここでようやく、主神ゼウスの登場です。

ゼウスが成人すると、クロノスを快く思わないのはレイアーだけではありません。ガイアもウラヌスそっくりな息子を憎み、「智慧」メテイスと一緒に吐剤を作ってこれをクロノスに飲ませ、これでクロノスは過去に飲み込んだ子供たちをことごとく吐き出します。

ゼウスは兄弟姉妹と力を合わせてクロノスたちティターン神族と戦い、戦いは10数年におよぶも不利でしたが、タルタロスの獄につながれるキュクローペスとヘカトンケイレスを味方につければ勝てるという預言に従い彼らを解放。キュクローペスの三兄弟はゼウスのために必殺の雷霆、プルートには姿隠しの兜、ポセイドンには三叉の鉾を作って贈り、ゼウスたちはこれを使って勝利、三兄弟で世界を分割統治することにし、ゼウスには天、ポセイドンには海、プルートには冥界が割り当てられます。地上は本来人間の場となるはずでしたが、結局ゼウスの支配下に。かくしてゼウスの権勢は巨大かつ揺るぎのないものとなります。

ここまでが大体、ギリシアの創世神話。ちなみにギリシア神話には人類の創世、というのが具体的には存在せず、神が世界を見渡したときすでに人間が存在していたような世界観です。あるいはゼウスが人を作ったとか、プロメテウスが創造したという説もありますが。

長くなってきましたので、今回この辺で。次回はギリシアの「英雄神話」について語りたいと思いますが、その前に神々のパンテオンでしょうか。ヘラクレスとアキレウスは絶対外せないとして、ペルセウス物語とかアルゴー号の冒険、オデュッセイアなんかも書きたいですがあまり労力を費やす時間もないのでやはり前二者だけで終わりそうですが。

この記事が良かったらチップを贈って支援しましょう!

チップを贈るにはユーザー登録が必要です。チップについてはこちら

月別アーカイブ

記事を検索