shasu/らーすとちゅか 2023/09/04 12:00

仕事熱心なスタッフの多い冒険者ギルドです

#793
冒険者を目指す女の子が色々勘違いしちゃうお話
~第5話~

エネ「奥の部屋って…あ、ココだね…?」

職員に案内された通りに進むと、「冒険者登録用検査室」と書かれた部屋が目の前に現れた。扉に鍵は少しだけ開いていて、隙間から覗いてみると、簡素なテーブルと椅子が置かれた普通の部屋で、中にはまだ誰も居ないようだった。

エネ「もう…また待たされるの…?
全く…今日登録したら早くダンジョンに挑戦したいのに…」

中で待たせてもらおうと思い、部屋の中に置いてあった椅子に座り彼女は不貞腐れながら、また待たされていた…
部屋の外では何だか騒がしかった。何かイベントでもしているのだろうか。

エネ「まだかな…ほんとにここで待ってて大丈夫なのよね?何だか不安になって来たわ…
それに何か外が騒がしいし…ジャンケン…で何でこんなに盛り上がってるのよ…?」

その騒がしかったジャンケン大会(?)が終わったタイミングでギルドの職員が…
先ほど説明を受けた人とは別の職員で、何故か少し嬉しそうな表情を浮かべながら慌てて入ってくる。
見た目は他のギルド職員と似たような服装に、一枚白衣を羽織っただけの簡単な恰好だった。
一瞬エネの全身を観察する様な目線を感じたが気のせいだろうか…

検査員「あっと…お待たせしてしまいましたね…失礼しました…!いやぁ…検査担当を決めるのに手間取ってしまいまして…」
(検査担当者決めじゃんけん大会で時間かかりました、とは言えないしな…)

~少し前のギルド職員スタッフルーム…~

職員A「じゃあ、今回の検査員担当者に志願したい人は挙手して…おぉぅ…」
総言葉を発しようとした直後に、そこにいるスタッフの殆どが挙手をする
職員B「いつも通りじゃんけんで良いですよね…?今回は倍率が高そうだ…」
職員C「おい、お前前回担当したんだから今回は遠慮しろよな?」
職員D「そんなの関係ないね…勝った者が正義だからね」
職員E「くそ…これからダンジョン視察行かないとだなんて…」
わいわいがやがややいのやいの
職員A「静かに!あくまで仕事なんだからな、判ってると思うが…検査以外の「お触り」なんてしたら業務規程違反で即クビだからな?それは皆理解しているな?」

皆一様に頷く
心に欲望に忠実な紳士を住まわせる愉快な集まり、それがこの街の冒険者ギルドスタッフ一同だ。
そして空きスペースに円形に集まった者たち、そこから全力のジャンケン大会が繰り広げられていた…
それを検査に興味ない他のスタッフ(女性職員が主)が呆れる様に眺めながら書類整理をしていた…

女性職員A「あいつら…全くうちのギルドの倫理観はどうなってるんだ…?あんな状態見逃してるギルドマスターの考えが判らんよ…」
女性職員B「別にいいんじゃないっすか?こっちは楽出来るし…一応ちゃんと線引きはしてるみたいっすよ?それに…可愛い男の子が来たら私喜んで検査しますし…♪」
女性職員A「そうか…お前もそういうやつだったな…
何だ…?私が異常なのか…?なんで私の周りは変態ばかりなんだ…」
女性職員B「え~そんな事ないですよ~…♪トーリェさんってそういうの興味ないっすよね?
あれ…でもこの前確か検査のスタッフしてたっすよね、確か…あの…小太りのなんかずっと引きこもりで運動不足そうなおっさん…あ…まさか先輩そういうのが…」
女性職員B「馬鹿野郎そんな訳ないだろ…お前らが好みで選んで検査してるから、ああいうやつの検査をする人が居ない事になるんだろうが…丁度その時手が空いてたのが私しかいなかったんだよ…」

今回は男性勢が多いだけで登録希望者の容姿によっては別の層が検査志願をするのがこのギルドの日常だった…

冒険者登録に必要な検査だが、毎日その仕事がある訳では無いので担当者が居る仕事ではない。なので職員でその都度手の空いている者が担当するというルールになっているのだが、登録者によっては担当を志願する職員が沢山出てくる場合が有った。
特に仕事熱心という訳でも、その仕事が楽…という訳でもない。
それでもエネの様な容姿の整った子が登録したとなると、ハイエナの様に検査担当者になるべく手元の仕事を終わらせ、彼女を色々「検査」したいという邪な考えを持った、モテない男性スタッフの醜い争奪戦が毎回繰り広げられていたのだった。

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