CHIKAKU 2022/02/20 00:00

プロローグ まだ見知らぬアナタへ[音声作品 好きになったらダメなのに エピソード0]

こちらでは初めまして!シナリオの羽山千鳥ですっ!

2月22日発売の第三弾音声作品

好きになったらダメなのに
~頼れる人妻上司美帆さんはエッチは上手いけど愛を知らない~

のシナリオ担当させていただきました~!

なぜ、シナリオライターがCi-enに来たかというと

書き下ろしのプロローグっすよ!!
ふぉふぉふぉ!

今回の音声作品が最高すぎて、もぉ~~書きたくてたまらなくなりまして
エピソードゼロを書いてしまいました。

ぜひこちらのプロローグを読んで、販売開始まで熱く、
ギンギンに昂ってお待ちくださいね!

はぁ~、もうねっ!これはですね!
CVの柚木つばめさんの低音ボイスが脳内に聞こえてきそう~~!
ふふふ、想像してみてください。たまらん~~って感じがしますよぉ!
以上、羽山でした!ヒュー!人妻最高~!

素敵な挿絵をミツギさんに書いていただきました…!
応援イラストありがとうございます!

プロローグ まだ見知らぬアナタへ

ふとパソコンの画面から顔を上げる。

「あら……もうこんな時間」

すでに日付は変わって日曜日になっていた。
そこでようやく、私は作業の手を止める。

「ん~~……はぁ、体が冷えてしまったわ」

ぐぐっと背もたれに寄りかかって固まった背筋を伸ばす。
作業に夢中で、自分の指先が冷えていることにも気がつかなかった。
思わず、手と手を擦り合わせて椅子から立ち上がる。

エアコンはゴウゴウと音を立てて稼働しているし、
厚いカーディガンだって前を留めてしっかりと羽織っている。
しかし、やはりどこか”寒さ”を感じる。

理由はわかってる。こんな広い家にひとりぼっちでいるからだ。

さて、コーヒーでも飲もうと一歩踏み出した時にスマホが鳴る。
メッセージアプリの音だ。

「あっ……!」

ぱっと手に取って確認する。なんでもない、ただのセールのお知らせ。
一瞬でも夫からの返事を期待した自分に嫌気がさす。

長期の出張だと夫から連絡が来たのはもう一年前。
どこへ行き、いつまでかの返事は来ないし、メッセージは既読にならない。

毎月生活費が振り込まれるのを眺めて生存を確認し、
日に一度はお伺いのメッセージを送る。
もうルーティンと化しているむなしい作業だ。

半年前、親切な友人が夫が女性と肩を組んで歩いていたと教えてくれた。
今にして思えば、私の中で何かが壊れたのはその時だったと思う。

そして馬鹿な私は、ようやくそこで夫は私に関心が無いのだと気がついた。
それでも、指輪だけは外す気になれなくて。

「はぁ……気が重くなるから思い出したくないのに」

無意識に左手の薬指に触れる。
硬く冷たい金属の輪、今はそれだけが彼がくれた気持ちのすべてだった。

気を紛らわせようと奥歯を噛んで、首を振る。
薄暗い部屋の中で、パソコンの画面だけが私の歪んだ顔を照らしている。

そこには、完成したばかりの仕事のマニュアルと、
新入社員向けのウェルカムボード用のポスター。
今度の火曜日に新人の男の子が入社してくると聞いて、
私が個人的に用意したもの。

「……喜んでくれるかしら」

ふっと口をついて出たのはそんな言葉だった。
不安と緊張と、ほんの少しの期待が入り交じった声音に自分でも驚いてしまう。
何かが変わる気がするだなんて、そんな夢みたいなことあるわけがないのに。

「って、私ったら……ふふ、やっぱり浮かれてるのね」

新人に気持ち良く仕事をしてもらうためだなんて言い訳で、
本当はただ、このどうしようもない寂しさを埋める行為なのかもしれない。

それでも今はただ、まだ見ぬ彼へ精一杯の気持ちを込めて。
ほんの少しあたたかくなった頬に手を当てて、私はもう一度小さく笑った。

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