ダラナ 2023/12/30 15:34

BL短編集「召喚獣の俺にパシリをさせた挙句に子供を生ませようとするな」試し読み

2000字前後のエッチでやおいなBLショートショートを10作収録した短編集です。R18。
現代もの、ホラー、ファンタジー 転生ものなんでもござれ。




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【召喚獣の俺にパシリをさせた挙句に子供を生ませようとするな】



召喚獣とは異世界に住む神聖なる存在。
その力を借りたいと切実に願う者が契約を交わすことで、別世界に召還することができる。

召還されるのに報酬を要求しないあたり、お人好しなものだが、いやいや、俺にしたら別世界に行けるだけで、ありがたい。
なにせ俺の住む世界は地獄だから。

強大な力を持つ神聖なる存在がうじゃうじゃいて、皆わがままだから、日々争いが絶えず、すっかり世界は色褪せた焦土と化している。
弱くてヘタレな俺なんかは逃げまわるのに精一杯で、絶えず争いが起こる毎日に、心が荒むばかり。

召喚される世界にも魔王が世界征服を企んだり、その部下の魔物がはびこっているとはいえ、比べたらずっと平穏だと聞いていたから。
はじめて召喚されたその日、召喚士だという男と交渉を。

「俺をいちいち呼ぶのは面倒だし、けっこうな魔力を使うだろ?
だったら、人間に変身した俺を旅のお供にするのはどうだ?

小さい山を真っ二つにできるほど怪力だから、人間になっても、その力を活かして旅の手助けをしてやれるだろう。
戦闘で召喚獣にもどるときは、呼びだすより魔力がいらないし」

実際、筋肉質な男に変身してみせれば「ふーん便利そう」と易々と召喚士は承諾。
話が分かるやつと思いきや、なんのその、召喚士の人使いの荒さよ。





【もっと教師である俺を脅して肉体関係を強要すればいい】



「先生」と親しげなその声に震えた。

振りかえれば、クラスを担当しない生徒。
なれど、よく知っている。

俺の友人の弟だから。

彼が顎をしゃくって歩きだしたのに、ため息をついてあとにつづく。

人気のないB棟に行き教室へ。
室内で佇む彼のもとに歩み寄ると、突きとばされて机に倒れこむ。

「さっさと準備しろよ」とベルトを外しているようで背後でかちゃかちゃ。
机に上体を突っ伏したまま、尻を高く上げて、俺もズボンと下着をずらす。

彼のいいなりになっているのは、友人とラブホテルにはいるところを動画で撮られたから。

動画を見せて脅迫したことには「俺がヤりたいときにヤらせろよ」。
「性処理するのに女だと都合わるいから」とほざいていたが、本音はちがうだろう。

脅してまで年上の男、しかも教師に肉体関係を迫る理由は分からない。
こともない。

俺と友人は幼なじみで、二人とも実家暮らしなのもあり、今も仲がいい。
もう二十年以上のつきあいだから、弟がブラコン以上の愛情を友人に向けているのも承知。

可哀そうなことに、友人はモテたため、弟はそばにいて辛かったろうが、指をくわえて見ているだけではなかった。





【三角ビキニをはいた道化の俺は魔王に弄ばれて金欠の勇者を待ちわびる】



そのゲームにはRPGにしては珍しく、勇者一行に道化がいる。

ふだんは芸をして旅費を稼いだり、そうして客と接して情報収集をしたり。
戦闘のときは、芸の一つ、振り子を使った催○術をかけて魔物を惑わしたり混乱させたり。

おもしろいのは、旅の途中で女だとばれること。

勇者は「女性を危険な目にあわせたくない」主義で、男しかパーティーに入れなかったから、道化の格好で男のふりをして、また話せないふりをしていたらしい。
ばれたあとも「すっかりパーティーに馴染んで、今更、切り捨てられない」と道化の彼女は旅の動向をすることに。

まわりにも女だと知れたので、道化の格好をしていない、私服の彼女がこのあと見られるように。
さらに、おもしろいのは、勇者一行が貧乏になると、なぜか彼女の肌の露出が増えること。

最終的には三角ビキニをはいて、ナイスバディをお披露目するという。

どうして彼女が薄着になるのか、ゲームでは最後まで語られず。
「路上で芸をするときに、より客寄せをするため」「じつは体を売っていて、そのことを匂わせている」などなどの憶測を交わし、男性諸君は大盛りあがり。





【スローライフを送るゲームで俺たちは禁断の交わりをする】



鬼畜な上司に虐げられる現実から逃避するのに、あるゲームをプレイ。

オンラインでスローライフを送る系は、いろいろあれど、俺がプレイするのは中でも特殊。

「人に優しくし、人に優しくされたいプレイヤーのための、どこまでも平和を追求したゲーム」と謳っている。
言葉のとおりゲームの世界を構築するため、ルールや監視の目は厳しい。

プレイヤーはチャットで会話するのだが、乱暴な言葉づかいをしたり、誹謗中傷、人を貶めるような噂をすると、一発でアウト。
アカウントが抹消され、新規登録も不可能に。

AIがチェックするだけでなく、人の監視員がひそかに混ぜた皮肉や嫌みなども見逃さない。

「そこまでする!?」と文句をつけるのは少数。
おそらく、ほとんどが俺のように惨い現実を嘆いているから、べつに注意されずとも、平和な世界を保つのに協力的。

ただ俺は、はじめのほう人間不信が極まって過剰防衛に走り、追放されかけたことが。
そのとき根気よく宥めてくれ、ゲームに馴染むよう導いてくれたのが「うさ吉さん」。





【侯爵令息が平民のモブの俺に「生んでくれ」と迫る意味が分からない】



「男も子供が生めたらいいのに・・・」

乙女ゲームをプレイしていた妹が呟いて、ため息を。
「どうしたの?」と聞くと「侯爵令息がモブの平民を愛したがために・・・」と謎の言葉。

妹が狙っていた侯爵令息のアベルは、平民のモブこと魔法の調合師がお気にいりで、よく店に通っているという。

平民のモブは顔に火傷を負っていることもあり、店で引きこもり。
そのことを嘆き「できたら屋敷に招きたいのだが・・・」といつも主人公のヒロインにぼやいているのだとか。

それだけのことで「アベルと平民のモブができている」と妹を含め多くの女子プレイヤーは悟ったらしい。
そして身分ちがいの禁断の恋を応援しつつ「どうしたら円満に結ばれるか」と頭を悩ませているとのこと。

「で、なんで男が子供を?」とあらためて聞けば激昂を。

「名前もない平民のモブは、国でいちばんの魔法の使い手よ!
その能力は血筋によるもの!

だから子供ができれば、能力を受け継ぐ可能性が高い!
長年、魔法の能力を持つ子が生まれないアベルの家だから、そんな子供ができれば、相手が平民だろうと結婚を許すってもんよ!」

妹の力説に感心するやら呆れるやら。

まだ語り足りなさそうだったものを、俺は夜のバイトへ。
居酒屋へ行く道中、暴走トラックにふっとばされて失神。





【ブラコンの彼に求められる心境は複雑だが、俺たちの体の相性がよすぎる】



俺と会社の同僚、窪塚は似ているらしい。
そう指摘されて二人とも首をひねったものだが、入社してから、どれほど名前を呼びまちがえられたものやら。

なんて変な縁があり、窪塚とは仲よしに。

その日は家に招かれ「そうだ!弟に試してみようぜ!」と嬉嬉として窪塚が提案。

窪塚の弟はかなりのお兄ちゃんっ子。
帰宅するとかならず玄関まで「おかえり!」と満面の笑みで迎えにくるという。

さすがに声をだせば、ばれるだろうから、玄関で顔をあわせた瞬間、気づくかどうか試してみようとのこと。

会社でスーツを交換して着替えながら「弟が気づくか賭けをしね?」と誘ってきたので、俺は気づくほうに窪塚は気づかないほうに。

果たして家に踏みこもうとしたなら、扉を半分開けたところで弟は廊下で停止。
「誰だ、あんた?」と険しい表情に。

「いやあ瞬時にばれたなあ」と鼻の下を伸ばして窪塚が顔を覗かせると、とたんに破顔をして「兄ちゃん!」と抱きついたもので。

それから居間に移動し、あらためて事情を説明し詫びると「あんた、全然兄ちゃん似ていない!」と弟は吠えまくり。

「兄ちゃんのほうが品があるし!」
「あんたみたいに、むさ苦しくないし!」
「あんたより頭も性格もいいんだから!」

相当なブラコンらしく、満更でもなさそうな窪塚はにやつくだけで助けてくれず。
まあ、相手は大学生、こちとら社会人だから「ごめんな」と大人の対応をして済まそうとしたのだが。

お手洗いを借りて、トイレからでると弟がスマホを片手に待っていて、そして・・・。




【井戸から這いでてきた男は年ごろの男子を食い物にする】



夏休みになるたびに赴いて長期滞在する祖父の家。
近くに住む従兄、和希と滞在中はずっと遊ぶのだが、どれだけ夜遅くなっても、祖父の家に泊まることはなく。

そのことが不思議だったものを、なんとなく理由が聞けず。

俺が高校生になり、和希は高校三年生。
受験生ながら、とっくに推薦が決まって「よっしゃ遊び倒すぞ!」と吠えていたが、とことん遊べるのは今年が最後だろう。

来年には県外の大学にいってしまうから。
だったらと、聞いてみた。

「どうして和希くんは、じいちゃんち泊まらないの?」

目を丸くした和希は「それは・・・」となかなか応えず。

「・・・そうだな、今日は泊まろうかな。
ただ、家族がみんな寝たら、いっしょに起きてくれよ。

理由を教えるために、あるところにつれていくから」

思わせぶりな物言いに眉をしかめつつ、首肯。

約束どおり、○時すこし過ぎに起きて和希と共に縁側から外へ。
裏庭の林に踏みこみ、懐中電灯を持って先導するのに、鼓動を乱しながらついていく。

そのうち開けた場所にでて、草地の真ん中には井戸が。
背をむけたまま「お前、あの井戸知っているか?じいちゃんから聞いたことあるか?」と問われて「いや・・・」と返せば、ぽつぽつとを語りだした。





【生意気な悪役王子にお尻ぺんぺんしたら懐かれました】



ばりばりに働く企業戦士だった俺は、交通事故にあい、乙女ゲームに転生。
広告で見かけただけの縁がない世界で、悪役王子の家庭教師という変な立場に。

この悪役王子というのが、まあ憎たらしくて。
頭はいいものを、恋愛沙汰になると好きな子をいじめる男子レベルに。

主人公のヒロインにふられた腹いせに、醜聞を広めたり、権威や権力を使って貶めたり。
授業中は彼女への悪口を垂れ流し、恋路の邪魔をする算段をとくと語るから、やっていられない。

前世の年のはなれた弟が糞餓鬼だったころと似ていて、そりゃあ躾たくてしかたなかったが。
この世界にいる弟はしおらしく病弱で、俺の給料がないと薬を買ってやれない。

給料のいい家庭教師の食を失わないために、根性のひん曲がった悪役王子の機嫌を損ねないよう気をつければならず、教育ができないわけ。

弟だけでなく会社の新人教育も徹底していた俺にしたら、王子の横暴ぶりを放っておくのが、そりゃあ耐えがたく。




【夜の警備でこの世ざるものに抱かれるなんて聞いていない】



俺が働くのはホワイトな会社だから週末はがっつり休みで、むしろ暇を持て余してしまい。
そのことを大学時代の先輩に伝えたら「ちょうどよかった!」と満面の笑み。

「俺、警備の仕事してて、もう一人はバイト。
その子が土曜だけは、どうしても、でられないっていうから困ってたんだ。

バイトながら高給だし、お前やってくれない?」

深夜の仕事なれど、気心が知れた先輩といっしょなら大丈夫だろうと首肯。

先輩が警備するビルは変わっていて、二十四時間開いているという。

真夜中にも業者や従業員が出入りするに、裏口の受付で、そのチェックをするのが一人。
もう一人は定期的にビルの見回りと、警報装置や電源などの点検を。

さて出勤初日、渡された制服を着て、先輩に仕事の説明を受けた。
「地下の機械室には絶対に行くなよー絶対だぞー」としつこく告げられて「こりゃ行けってことだな」と判断。

昔から先輩の「絶対○○するな」はフリだから。

見回りの時間になり、いわれた通りにビル内を歩いて、最後に「絶対行くな」と念を押された地下の機械室に。

「エロ本でもあるのかな?」とやや期待して赴いたところで、ドアにしめ縄がかかっていた。
しかも真っ二つに切られているし。




【デスゲームでも俺を抱こうとする助平なお前がいっそ頼もしい】



友人の重森は助平根性がすさまじい。

形がすこし似ているだけで「ちんちん!」と叫ぶし、女性器も然り。

女子が「(雨が降っているけど部活)やりたいねー」とため息を吐けば、コンドームをかざしながら「俺がお相手しよう!」と躍りでるし。

男子が「(親知らずが)ぬけそうでぬけないんだよなあー」とぼやけば「即行ぬける俺のエロ動画コレクションを見せてやる!」とフロア全体に聞こえそうに大声を響かせるし。

まあ、発想や言葉の捉え方、エロ発言の内容が小学生レベルなので「あんた発情した猿みたいね」と女子に鼻で笑われているが。

「やりたいって呟いたじゃん!」としつこく絡むときは俺の登場。
他の人の言葉には耳を貸さずとも「部活を『やりたい』っていったんだよ」と俺が指摘すれば、飲みこみが早く「そっか、ごめん」とすぐに謝る。

が、反省をしないので、翌日には同じような過ちを○すのが、いけないところ。
そのせいで小学生高学年のころから、俺はストッパーとして重森のそばにいつづけている。

腐れ縁のようなものだが、まさかデスゲームにまで運命を共にするとは。

学校の行事で登山をしたときのこと。
休憩場所で重森と連れションをしたら、トイレの手前で拉致されて意識消失。

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