鶯命丹 2022/08/18 19:00

ひと晩泊めてと運命が戸を叩く

支援者限定公開
山奥に暮らす若いきこりのキコの元に「ひと晩泊めて」と傷だらけのガチムチおっさんが現れて……
その豊満なボディに魅了され「宿のお礼にイイコトしてあげる♡」というToLoveる展開です。
巷で噂のえっちな雌おっさん(屈強)です。


珍しくショタじゃない攻め。
年若い青年×ガチムチ雌おっさん(屈強)





 深夜には吹雪くのではないかと思えるほど、冷える雪の夜だった。
暖炉に薪を焚べて、揺れる炎を眺めていたキコはコツコツと戸を叩く音で顔を上げた。
 日もとっぷり更けている、雪の夜に誰かきたのか?
 キコは身をこわばらせてじっと物音に耳を澄ませる。
 コツコツ
 やはり!
「ひっ!」
 キコは息を飲み、咄嗟に口を覆う。
 じっとして様子を伺っているとコツコツコツと戸を叩く音と低い男の声が聞こえた。
「夜分にすまないっ! 道に迷い難儀しているっどうかひと晩ここに泊めてくれないかっ」
 強くなる風の音にかき消されないよう、張り上げた声に余裕はない。
「い、今開けます!」
 キコは慌てて玄関へと走り、戸を開けた。
 ビュービューと吹き荒ぶ雪の中、雪まみれになった大男が立っていた。
「た、大変だっ! さぁ早く中に」
 外気と共に入り込んだ男は雪どころか服のところどころに小さい氷柱さえ垂れている。
「いやぁ助かった! あともう数時間……いや数分外にいたら凍死していたな」
 男は酷い状態の割には快活な物言いをして笑っている。
「さっきも言ったが、道に迷い難儀している。どうか一晩泊めてほしい。すまねぇ」
 そう言ってキコの前に立つ男の逞しいこと。
 キコも山を生活の場にする男であるので、身体の逞しい方であるが、男はそれを上回る巨体だった。
 隆起した肩の厚みは冬用の厚着でもわかるほどに盛り上がり、前を合わせたコートの中に窮屈そうに仕舞われている胸の厚さに圧倒される。
 コートの裾を限界まで押し広げる太腿は堅強で、どんな険しい山道にも耐えられるだろうが、冬山の夜に無闇に歩くのは危険だ。
「ええ。大丈夫ですよ。うちでゆっくり休んで。とにかくまず、濡れた身体を乾かそう」
 キコは男を迎え入れると雪でぐっしょりと濡れた装備を外すのを手伝った。
 コートの中に窮屈そうに収まっていた肉体は防寒着でも守りきれなかったのかじっとりと濡れて冷え切っていた。
「そのまま冷えると良くない」
 キコは急いで乾いた布を持って男の手を引いた。暖炉の真前に椅子を置き男を座らせ濡れた身体を拭く。
 「ああ、悪い」
 防寒頭巾から現れた男は、その低い声に似合いの髭に覆われた無骨な太い顎と、高く大きな鼻、深く精悍な彫りの眼窩に、野生動物のような鋭い眼差しをもっていた。
 更にはこめかみから顎にかけて大きな切傷が付いているのが、男の顔立ちをより一層野生味のある荒々しい強面に見せている。
 傷痕の走る部分には顎髭が生えてない。それ程深い傷だったようだ。
 深い傷痕のある左目の方が引き攣れるようで、よくよく見ると左右で目の大きさが少し違った。
 癖のある髪が無造作に伸びて毛先から水を滴らせている。
 キコは男の迫力ある面持ちにぴくりと身体を強ばらせるも、がちがちと鳴る男の歯の根にハッとして手当に専念した。
「ふ、服も脱いで……火のそばで乾かすから」
「ああ、悪りぃな」
 男は着ていたものを躊躇いなく次々と脱いでいく。
 キコは男の肌を直視出来ずに脱いだ服を受け取ることに集中する。
 受け取った服は、ぐっしょりと濡れて冷たい。
 慌ててそれらを暖炉のそばに干していくキコの鼻に、服に染み込んだ男の匂いがした。
「ん"ん"っ……いま、お湯を用意するから」
 鼻腔から脳を揺さぶる男の濃い匂いを振り払うように咳払いをして、キコは暖炉の端に掛けてあった鉄瓶に手を伸ばす。
 鉄瓶の中でほこほこと湯気を立てていたお湯を木のタライに入れてやり、台所に置いてある水瓶の水を掬って足す。
 少し熱いくらいの湯を張って「ここに足を浸して。そのままだと凍傷になるかも」と男の方にタライを向けた。
「おお、ありがたい。足先がかじかんで痛かったんだ」
 男は嬉しそうに笑うと濡れたブーツを脱ぎ捨て足を湯気たつタライの中に浸す。
「あー……あったけぇ」
 濡れたブーツはぐっしょりと重く、冷え切っている。
「凄い濡れてる……これは本当に凍傷になるところだったな」
 キコはブーツを暖炉のそばに置くともう一つタライを用意する。
 沸かした湯とタオルを入れたタライを男に渡して「これで身体を拭くといい。今、代わりの服を持ってきます」
「何から何まですまんなぁ。助かる」
 男はキコからタライを受け取るとタオルを搾って顔を埋めた。
「ああ……生き返るー」
 タオルに埋もれている男の姿に笑いながら、キコは部屋の中を漁って男の巨体に見合う服がないか探す。
 しかし、キコよりも体格が良い男が着られそうな服が見当たらない。
「すまない……あなたが着られるような服が無くて。替えのベッドシーツでも無いよりマシだろうから、これを身体に巻いて……」
 シーツを持って男の方を向き直り、ついその身体を見てしまった。
 暖炉の炎に照らされて、裸になった男の身体もまた傷が多かった。
 はち切れそうな二の腕にも、ぼこぼこと大木のような腹筋に覆われた腹も、溶けた雪の雫が通るほど、深く大きく筋肉のついた太腿にも、至る所に傷がついている。
「どうした?」
 まじまじと見つめていたキコの視線に気づいた男が、不思議そうに問いかけた。
「あっいや……背中、拭こうか」
「ありがたい」
 キコが背後に回るとじっとりと汗と雪に濡れた背中が暖炉の炎に照らされて光っている。背中もやはり傷がついていた。
「凄い傷……傭兵か何かを?」
 布で拭きながら、バレないようにそっと傷を撫でる。
 気づいてないのか、大仰に笑って男は頷いた。
「あちこちで戦があれば出かけていくヤクザ者だよ」
「どうしてこんな、田舎に?」
 この周辺はのどかなもので、戦争のきな臭い騒ぎも、危険な魔物も滅多に出ない。
 キコの疑問に男は「まとまった金が入ったから田舎に引っ込むことにしたんだ」と笑う。
「この辺は治安が良いから余生を穏やかに過ごせると噂に聞いてな」
 微笑む男の、隆起した筋肉まみれの身体は雄の生気を漲らせ、若々しい。
「余生だなんて……そんな歳には見えない」
 キコがそう言うと「お前さんのような若さは無いさ」と笑った。
 いかつい見た目に反して良く笑う男だった。
 背中にしたたる雫が髪から落ちてきてるのに気づいてキコは湯で温めたタオルで、男の頭をわしわしと拭いてやった。
 「こりゃあいいな! 犬にでもなったようだ」と笑った男に「ご、ごめん! つい……」とキコが手を止めて謝る。
「いいや、続けてくれ。お前さんの手があったかくて気持ちいい」
 男はそう言って項垂れるように頭を下げて、キコの手を待っている。
「じゃあ……痛かったら言って」
 再びキコの手が動く。
「ああ〜いいな。あったけぇ」
 男はされるがままうっとりと呟いた。
 
 「大したものは無いんだけど……」
 そう言ってキコは、鍋を暖炉にかけてスープを温め、しまってあった乾いたパンを出す。
「おお! あったかい食事は久しぶりだ!」
 着替えがわりに渡したシーツにくるまった男が歓声を上げる。
 質素な食事に恥ずかしくなったが、男は嬉しそうに笑ってあっという間に平らげた。
「スープお代わりするかい?」
「いいのか! じゃあ遠慮なく」
 キコの問いに喜色満面に碗を差し出す男。
 本当に犬のように嬉しそうにする男にキコは微笑んで、スープのお代わりをよそってやった。
 
「いやぁ本当に助かった! ごちそーさん」
 男は食後に出した温めた酒を飲み干すと、盛大に頭を下げた。
「頭を上げてくれっ! 困った時はお互い様だよ」
 慌てて男の肩に手をやって頭を上げさせる。
「そうは言っても冬山じゃ、下山するのも一苦労だろ? 蓄えだって限りがあるのに……分けてもらって助かった。ありがとう」
 男はじっとキコの顔を見つめ、低く静かな声で礼を述べた。
「いいんだ、本当に」
 真摯に礼を言われ、キコは顔面が熱く火照るのを感じていた。それを誤魔化すように、早口で捲し立てる。
「は、腹に食べ物が入って、身体が温まったうちに、ベッドに行こう! あいにく、ひとつしかないから共に寝ることになるけど……」
「俺は床でも構わんが」
 男の言葉にキコは激しく首を振った。
「薪はまだあるが、こんな日はひどく冷える。床でなんて寝たら明日には冷たくなってる!」
 キコの剣幕に男は目を見開くが、すぐに頷いて「何から何まで、世話になるな」と困ったように笑った。

 暖炉のそばのベッドに二人で入り込む。
 ベッドにはたくさんの毛布やシーツが重ねられていて、二人で潜り込むとほかほかと暖かかった。
 窓の外からしんしんと雪の降る音がする。
「寒く無いか? もう少しこっちに来たらどうだ?」
 男がキコを抱き寄せる。
「あっ! いや、だ、大丈夫っ」
 男の胸に顔を埋めるような形になってキコは慌てて離れようとするが、男が太い腕で離さない。
「さっきから熱っぽい目で見やがって……」
 男が低く甘い声でキコの耳元で囁くと、ぐっと下半身を密着させた。
 存在感のある陰茎を押し付けられキコは小さく息を呑んだ。
「そんなつもりじゃ!……ごめんなさい」
 たしかに、キコは男の身体見て、密かに興奮を覚えていた。そっと盗み見ていただけのつもりだったのに、まさか気付かれていたとは……
 戸惑い、うつむくキコの顎を、男は指先で撫でて自分の方に向かせる。
 吐息がかかるほどに顔を近づけて「暖かい食事と寝床の礼をしたいと言ったらどうする?」と野性味溢れる鋭い瞳を淫靡に蕩かせて誘惑する。
「どうするって……」
 目の前に迫る男の唇に、抱きしめられる力強い腕に、ぴったりと寄り添った肉厚の身体に、辛抱出来なくなったキコは、男の背に腕を回し口付けた。
「んっ、ふっ……はっあぁ……」
 触れるだけの口付けを繰り返すキコに、男はゆるく唇を開けてキコの唇をちゅくちゅくと吸った。
「ふっんん!」
 驚き、逃げようとするキコの後頭部を大きい手で撫でると、逃がさないというように舌を侵入させる。
「ふぁっ! あっ、はぁ……ぅうっん、あぁっ」
 ぬるぬると自身の舌を肉厚の男の舌で絡め取られ、キコは甘い吐息を零す。
 興奮のまま男のくるまったシーツの隙間に手を差し入れて、その逞しい肌を撫でた。
 ふさふさと体毛の濃い部分と、なめした革のような素肌の手触りにキコは夢中で男の肌を撫で回した。
 特に傷跡がキコの気に入りになった。
 ぽこっと指先に引っかかる傷跡は撫でるとツルツルだったりぼこぼこと盛り上がっていたり、凹んでいたりして、キコの指先を楽しませた。
「ふふっはっ、くすぐってぇよ」
 合わせた唇の隙間から男の笑い声が漏れた。
「あ、ごめん……」
 男の反応に、キコが慌てて手を引く。すまなそうに視線を下げて顔を引いた。
「ああ〜いい、いい、冗談だ。気にすんなって。好きに触っていい」
 男がキコの手を取って自身の身体へ触れさせる。
「イヤじゃ、ない?」
 不安げに瞳を揺らすキコの頬にキスを落とし、男はくつくつと笑った。
「嫌じゃあねぇよ。なんも知らねぇ子どもに悪りぃこと教えてるみてぇで興奮する」
「俺は子どもじゃない。もう大人だ」
 キコは反射的に言い返したが、ムキになって言うその態度こそ、子どものようだと気づいてむっつりと口を閉じた。
「悪りぃ悪りぃ……純粋で可愛いって言ったんだ。な、もっと触ってくれよ。お前の触り方、結構好きだぜ?」
 キコのむくれた唇に、男は何度も口付けながらニヤリと笑った。
「本当?」
 キコは手を伸ばし、男のがっしりとした顎に触れる。
「ああ、焦ったくてゾクゾクする」
 キコを真似るように、男の太い指がキコの顎を撫でた。
「それは、褒めてるの、か?」
 キコが訝しむように呟くと、男はとうとう吹き出して笑った。
「やっぱり褒めてないっ子ども扱いしてる!」
 キコは顔を赤くして怒ったが、男は構わずくつくつと身体を震わせて笑いながら、太く屈強な腕を伸ばしてキコをぎゅっと抱きしめた。


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