近況2/20 貴様らは正しいのかと聞いている!

 募集中の来月支援者さん向けSSリクエスト、既に14件ほどいただいています。ありがとうございます。

 私一人でネタ出ししていたらまず出て来ないようなアイディアも多く、新鮮な気持ちで拝見させていただいてます。
 次の日曜の日付変更前後くらいまで募集する予定ですので、よろしければじっくり考えていただいて是非ご応募くださいませー。


 さて、今月後半はFGO二次創作エル・アマルナの続きを執筆予定です。
 あちらもいよいよお話を畳む段取りに入ってきますので、気合い入れなおして書いていきます。
 コメントで、バッドエンドも見たいという内容をいただいたりしておりますが、前回のバスチーユの時もそうでしたけど、とりあえず話をちゃんと終わらせる方だけでけっこう脳内手一杯でして、バッドエンドについては現状考える余裕がない状態です。
 まずは一通りグッドエンドで終わらせてから、どうするか考える感じになりますし、おそらくバッドエンドをやるならまた構想から組み立てなおす感じになりますので、着手するのは数カ月先になったりすると思います。
 ……いや、FGOの長めの二次創作、お話を終えるために回収しなきゃいけない材料とか段取りとかがめちゃくちゃ多くて、マジで余分なこと考える余裕ないんスよ。ただ単に倒すだけじゃなくて、やっぱせっかくピックアップして来た歴史上人物に対して、ちゃんと決着つける感じで話を閉じたいですし……。
 そんなわけで、また気長な話になってしまいますが、ご了承ください。

 あと、先月のうちに終えられなかったルリルナ第二話DL販売版作業も並行して進めます。……ちょっとオーバーワークっぽい気もするけど気にしない。


 さて、以下余談。
 先日、こんな本を読み終えたので軽く感想など。
『正義はどこへ行くのか』 河野真太郎 集英社新書

 何度かここに書き散らしておりますが、私、ルリルナを書くに当たっても自分にとってのヒーローもの作品へのこだわりとか、けっこう込めてしまってたりしまして。
 ヒーローもの作品のテーマ、何を守るべきものとし、何を倒すべき悪とするのか、みたいなところはやっぱ関心が深い話題なんで、たまたま見かけてつい買ってしまったんですな。

 本書は前半がアメコミ原作のヒーロー映画、後半で日本の特撮とプリキュアなんかを念頭においたヒーロー論で、新自由主義とか市場原理を読み込んでいくアプローチでございました。

 まぁね。けっこう頭の痛い話ではあるんですよな。
「多様性」を掲げて、いろんな価値観があるのを極力否定せず、互いに尊重しながら共存していく……というスタンスでやってると、どれか一つ特定の正しさだけを贔屓にするわけにいかず互いに相対化される……そんな中でじゃあ、現実に何かを判断する時になにを拠り所にしたら良いかって考えた時に、どれも平等に尊重されてて絶対的な判断基準が存在しない、どれを選んでも尊重されるからこそ、じゃあ「自分がいま属してる価値観以外に、拠り所にできる判断基準ないよね」ってなって。多様性を掲げたはずが、そのせいでかえって、みんなが「自分の属してるところ」を絶対視して先鋭化しちゃう、みたいな。
 逆説的だよねーって話だけど、案外世の中ってそういう逆説で動いたりするものなんですよな。多様性を掲げたからこそ、「全部尊重されるならどれ選んだって同じなんだから、なら今自分が正しいと思ってるこの立場でやれば良いや」で閉じてしまうっていう。思想や理想って、こうやって裏目に出るってことが往々にしてあるから難しいんじゃよな。


 いろいろ考えたり示唆を受けたりしたんですが、本書で特に面白かったのは、日本のヒーローものを読み解く際に「官僚機構」を信じられるかどうかという軸がある、という指摘があったことでしたね。
 ウルトラシリーズは官僚機構を信じたい、というスタンスで(科学特捜隊をはじめ地球防衛を主任務にする隊員たちのドラマが中心になる)、対局的に仮面ライダーシリーズは官僚機構を信じきれない(昭和ライダーはわりと孤独な立場で、警察のような官僚的な治安維持組織は悪の組織を鎮圧できるほどの力がない)、という軸で読み解いていくんですけど。
 個人的にこの指摘が非常に面白くて。というのも、本書では触れられてなかったんですが、昭和ウルトラマンシリーズは後期に入ってくると、歴代ウルトラマンたちが光の国にある宇宙警備隊に所属しているって設定が付け加えられていって、いわばウルトラマンたち自身もまた官僚機構を形成していくんですよね。
 仮面ライダーは等身大で小さいのに対して、ウルトラマンは単独であんなに大きいのに、さらにそのウルトラマンたちが組織を作って連携しているわけです。この対比は面白いなーというか。
 なんかそれで綺麗に作品を読解できる、というよりも、私たちにとってヒーローとは何か、を考えていく時に、重要な補助線を一本引いてもらったような感じなんですよな。
 ウルトラマンと水戸黄門、仮面ライダーと必殺仕事人、っていう連想を働かせてるのも面白かった。官僚的な統治機構を上から包み込む形で補完するか、外部および下から部外者として補完していくか、っていう対比にしていくんですな。

 日本のマンガアニメの活劇と官僚機構と言えば、個人的には富野ガンダムの話は外せないんだけどもw
 富野監督の小説、読んだことある方はご存じかと思いますが、官僚制に対する苛立ちと告発をあれほど熱心に地の文で書き連ねる小説なんて富野小説しか無いんじゃないでしょうかw 官僚制というのがいかに人の文明のあるべき姿を捻じ曲げるか、みたいなことを延々書いてあるんだよね、冨野監督の小説。他では味わえないテイストで、めちゃくちゃ面白いんで読んだことない人はぜひ読んでみてください。
 特に『機動戦士ガンダムF91』上下巻がすごいんですよ。2冊のうち上巻、ほとんどガンダム出て来なくて。シーブックが話に登場するのも分厚い上巻の本当に後ろの方でさ。物語の前半は「コスモバビロニアとクロスボーン・バンガード軍がいかに生まれていったか」って映画の前史にあたる部分で、ロボのバトルシーンなんかほとんどなく、ただ宇宙世紀のあの世界に新興勢力のクロスボーン・バンガードがどうやって生まれていったかを書いてるだけなの。もうね、ロボットアニメのノベライズとはとても思えない。
 しかも何がすごいって、それが面白いんだよ。めっちゃ面白いの!w 何ならシーブックがガンダムに乗り始めた後よりも、その前半の部分の方が面白いかも知れないっていう怪作なんですよw
 まぁ、戦争や武力衝突をリアルに描くところからスタートしたガンダムシリーズは、そのせいで、国家的な官僚機構の中でいかにヒーローは可能か、っていう問題とも向き合わざるを得なかったんでしょうね。そして官僚制ってヤツは融通が利かないので。

 先日Twitterでも、『シン・仮面ライダー』でライダーが国家権力と協力してるような描写になってるのが気に入らない、っていう話題で喧々諤々盛り上がったりしてましたけど。ヒーローのあり方を考える時に、その辺との距離感は海外作品よりも独特な感じになりやすいのかもね。

 そもそも、東アジア、特に中国から広まった文化圏って官僚制抜きに考えられないですからなぁ。
 これもよく例に出すんですけど。ヨーロッパの星座って、オリオンとかカシオペアとか、ギリシャ神話のロマンチックな物語を下敷きにした世界じゃないですか。
 一方、中国における星座ってずいぶん雰囲気が違うんですよ。古代中国の文献とか見ると、北極星が天帝の居所であり、その北極星を囲む北斗七星とかの星は紫微宮という天上世界の宮廷なんですよね。つまり、空の星ですらお役所に見立てられてるんですw
 死後の世界もお役所です。閻魔様をはじめ、十王という冥界の王が治めるお役所になってて、司命神、司録神とかが記録をとったりしてる。とにかくイマジネーションの根幹にお役所があるっていう。
 よく魔術を描いたエンタメ作品で、中国系の呪文として出てくる「急急如律令」というのがありますが。『原神』の重雲くんも言ってるし、『崩壊スターレイル』の景元将軍も秘技使う時に「律令が如く」と言ってますがね。あの「律令」も日本史の教科書に出てくる律令と似たようなもんで、要は法律ですからね。
 つまり、悪霊とか魔物とかに向かって、「てめぇさっさとルール通りにしやがれ!」って言ってることになる。魔物に対してさえお役所ルールで臨む世界というw

 日本も当然、そういう影響を受けております。たとえば、平安時代に小野篁という人がおりまして、この人は昼は御所で、夜は井戸を通って閻魔様のいる冥界で仕事をしたという伝説がございます。京都旅行に行く機会がありましたら、六道珍皇寺という小野篁ゆかりの寺があって、彼が夜な夜な冥界に降りるために使ったという井戸があったりするので、立ち寄ってみると面白いですよ。近くに千本閻魔堂とか、地獄関連の寺社がいくつかあったように記憶してます。

 まぁそういうわけで、日本のヒーローを考える際にも、東アジア的な特色として官僚制との距離感、みたいなテーマは一つあるんだろうな、などとぼんやり考えていたわけでした。
 だから何だというわけでもないですがね……こういうのは、すぐに何かアイディアとかと結びつくものでもないんですけど、だからこそいつか別なきっかけで繋がるかも知れない時のために、脳内に書き留めておく必要があったりするのでした。


 うん、やっぱり刺激的な本を読んで、つらつら考えを巡らせてる時というのは楽しいですね。何か連想の端緒を掴んで、思考が急加速する瞬間の気持ち良さは何物にも代えがたい。
 ま、最近は読書時間がなかなか取れなくて、そっち方向の楽しみを享受する時間が少ないのが悩みと言えば悩みですなー。
 あーあ、仕事行きたくないね!w


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