きりたん、ホラーゲームに挑戦する1
この前募集したリクエストで、きりたんのおねしょが読みたい!
というリクエストを頂いたので書いてみました。
僕が知っているきりたんは実況プレイ動画でゲームをプレイしている印象が強いので、そちらの方に引っ張られていると思います。
違和感・設定のミスなどありましたらツッコミをください。
サクッと。
あまり長くはならない予定です。
「さて……やりますか」
夜の十時。
木綿の白の女児ショーツと、白のすずらんスリップという姿で、座布団に正座して気合を入れたのはきりたんだった。
十畳ほどの和室の電気は消して、部屋の灯りはといえばテレビのぼんやりとした画面のみ。
その画面には、
『科学がハザードするホラーゲーム』
のタイトル画面が映し出されていた。
ホラーゲームをやるのは、はやり夜に限る。
それも部屋の電気を消して。
もう歯を磨いたし、お風呂にも入った。
あとはもう寝るだけだ。
気合を入れてゲームをする条件は揃っている。
「怖いのはあんまり得意じゃないけど……、わたしだってもう子供ではないんです。だからホラーゲームくらいで尻込みするわけにはいきません」
自らに言い聞かせるように呟く。
それに怖い怖いと脅されると、逆に見たくなってしまうのが人間の哀しい習性というものだ。
「よし……やるぞ……!」
意を決してスタートボタンを押す。
するとすぐに実写映画のようなオープニングが始まるのだった。
☆
『見えない敵に襲われながらもなんとか洋館へと辿り着く一行! これから生命を賭けた探索が始まる……!』
と、いうところでオープニングが終わり、どうやら操作画面になったらしい。
きりたんが操作するのは、広々としたエントランスにたった一人だけいる女性隊員。
名前はジョルと言うらしい。
だけど早くもツッコミどころ満載な展開に、
「なんで単独行動するんですかっ。そこはみんなで行動しようよ!」
「なんでこんな軽装できてるんですか! 拳銃一丁とナイフ一本って! もっとフル装備でしょ!?」
「そもそも救援を呼んでみては!?」
きりたんのツッコミが止まらなくなっていた。
だけど聞いてくれる隊員は誰もいない。
広々と静まりかえったエントランスホールには、たった一人だけきりたんが操作する女性隊員・ジョルがぽつんと棒立ちしている。
「ああ、やだなぁ……。なんでわたしはこんな怖いゲームをプレイしてるんですか……」
早くもやめたいと思いながらも、だけどここでやめたら自分を子供だと認めることになる。
大人なんだからこんなゲーム、平然とクリアしなければ。
「怖くない、全然怖くなんてない……」
呟きながらも、エントランスホールからドアを一つ抜けて大食堂へとやってくる。
シーンと静まりかえった大食堂には、柱時計のチクタクという音だけが響いていて恐怖心を煽ってくる。
「ああ、せめてBGMくらい流しておこうよ……! 時計の音が妙に大きく感じるし!」
否が応にも恐怖心が高まっていく。
背筋を流れ落ちていくのは、滝のような冷や汗。
そして。
じゅわわっ。
極度の緊張感と恐怖心に、こみ上げてきたのは、尿意だった。
震え上がっているおまたから、ほんの少しだけおしっこが滲み出してくると、じんわりとクロッチが生温かくなってしまう。
でもここは我慢しなければ。
(トイレに行ってるあいだにゾンビとか出てきたら嫌だし!)
大食堂には味方の隊員がいるけど、話しかけてみても当然一緒に行動してくれるということはない。
味方隊員であるワイルドな髭のビャリーは単独で食堂を調べると言い張っている。
仕方がないのできりたんはジョルを操作して大食堂から単身で先に進むことになった。
「うわぁ……。真っ暗で不気味な廊下……。しかも見通し悪いですし……!」
大食堂の次は見通しの悪い廊下だった。
しかも廊下の左側の影から、なにかクチャクチャと咀嚼する音が聞こえてきている。
『くちゃくちゃ、はふはふ……』
「見たくないけど、見ないと先に進めないし……ううー!」
慣れない操作で、なんとか咀嚼音がするほうへと向かっていく。
すると突如ムービーが始まる。
ホラーゲームといえばムービー。
ムービーといえば恐怖演出。
お約束だ。
「……ああっ、ムービー始まっちゃったよぉ……」
コントローラーを握り締めて、反射的に身構える。
小さな身体を縮こまらせていると、
じゅわ……じゅわわぁ……
無意識のうちにチビってしまっている。
だけどそのことに気づいている余裕は、きりたんには残されてはいなかった。
なにしろ、画面に映し出されたのは……、
『くちゃ、くちゃ……。はふ、はふ……』
ただでさえ怖い雰囲気だというのに、画面いっぱいに映し出されたのはゾンビの顔。
「ゾ、ゾゾゾ、ゾンビ! ゾンビ! ゾンビ!」
じゅもももも!
かなりの量のおしっこを漏らしてしまうけど、いまはそんなことを気にしている場合ではない。
慣れない操作で逃げようとするけど、女性隊員であるジョルはその場でくるくると回ることしかできない。
棒立ちになっているジョルに、ゾンビがふらふらとした動きで近づいてくると……、
がぶりっ。
「あう! 痛い! 噛むな! この、この!」
いまやきりたんは、ジョルと痛覚を共有していた。
必死になってコントローラーをガチャガチャしてなんとかしてゾンビを振りほどく。
体力が低いのか、それともかなりのダメージを負ってしまったのか、ジョルは脚を引きづりながらもなんとか廊下を引き返して、大食堂へと帰ってきた。
「さすがドア先輩……はぁ、はぁ……」
さすがにゾンビはドアを開けられないはずだ。
これもホラーゲームのお約束。
だから一安心していたというのに――バタンッ!
なんとドアが開いたかと思ったら、何事もなくゾンビがやってきたではないか!
「ギャアアアアアアアア!」
ぷっしゅうううううう!
悲鳴とともに噴き出してくるおしっこ。
それでもトイレに立つことは許されない。
目の前に迫ってきているゾンビをどうにかしなければ。
「ああ! ビャリーだっけ!? 助けて! たしゅけて下さい!」
悲鳴に近い声とともに食堂を調べていた隊員……ビャリーへと泣きつくと、どうやらフラグが立ってくれたらしい。
ビャリーは自慢のマグナムでゾンビを撃ち殺してくれる。
「おお、ビャリー、お前は神か!? もうお前ら一緒に行動しようよ! お願いします!」
画面越しにお願いしてみても、なぜか頑なに別行動をしたがる主人公たち。
結局きりたんは再び洋館を単独で探索する羽目になる。
「もう嫌だこんな洋館! 早く帰らせてよ!」
「セーブ! せめてセーブを! ……って、セーブにも回数制限があるんですか!? どこまで人を苦しめれば気が済むんだ……っ」
トイレに行きたいけど、セーブに回数制限があるとなると話は別だ。
この先、もしもセーブができなくなったらと想像すると、気軽にセーブすることさえもできない。
それに離席をすれば、どこからゾンビが湧いてくるかも分からない状況。
それにトイレに行こうにも、もう既に怖くて行けなくなっている。
ホラーゲームから逃げられなくなっているきりたん。
きりたんの運命やいかに!