『DQN-親友裏切り-』ちょい出しサンプル3-2
「颯太、来てたのか」
一志君は、衣服を着終えていた澤北さんを見ても、特に何も言わなかった。
この状況で、オレがガムテを解いてしまったのは明らかなのに………
「ごめん、勝手なことして………」
「いや、構わねーよ」
「西園寺、どういうつもりだ、オレに何を飲ませた!」
激オコの澤北さんが、一志君の正面に立つ。
「声がデケぇよ、ただの睡眠薬だろーが。つか、油断し過ぎだろ、剣道の有段者のくせに簡単に盛られてんじゃねーよ」
「―――ッ、恭也のことで話があると言ったら、お前から招き上げたんだろ。家主から茶を出されたら口をつけるのが常識だ。どれほどお前を毛嫌いしていてもな」
「…………………………」
一志君は何も答えず、ついでに言うと全く悪びれもせずに、澤北さんの横を通り過ぎて、ソファーにどかりと腰を下ろす。
「おいっ!なんとか言ったらどーなんだ! 睡眠薬もだが、あんな格好で放置して、オレに何か言うことはないのか!」
「スリルあったろ? 他人チでパンイチで身動きが取れないなんて、そうそうできる経験じゃないぜ♪」
「お前というヤツは、性根から腐り切っているな」
「オレとしちゃあ、剣道有段者のお漏らしに期待してたのにな」
「………………理解に苦しむ。恭也はなぜお前のようなクズとツルんでいたんだ?」
「オイオイ、勝手に過去形にしてんじゃねーよ。今でも仲良しのラブラブだっつーの」
「ふざけるなっ!恭也を脅しているくせに!」
「………アイツがお前にそういったのか?」
その瞬間、一志君の眼光が凄みを増した。
「ここ最近様子がおかしいから、オレが強引に聞き出したんだ」
「………例の動画も見たのか?」
「動画だと?」
「オレの弟にガン掘りされてるところを、そこにいる颯太に撮らせたんだよ」
「なっ―――!」
驚愕に強張った顔をこちらに向ける、澤北さん。
でも、それはほんの一瞬で、スグにまた一志君に視線を戻した。
「その様子じゃあ動画どころか、内容も知らなかったみてーだな」
「………オレは弱みを握られ、脅迫まがいのことをされているとしか………」
「それで? 恭也がお前に助けてくれって泣きついたのかよ?」
「………いや、今日ここに来たのは俺の独断だ。恭也には片を付けてから話そうと………」
「ふっ、そんなこったろーと思ったぜ。クソ真面目なお前に問い詰められて、渋々打ち明けたってところか」
「………………っ」
「恭也のことならオレの方が熟知してる、二度としゃしゃり出てくんじゃねーよ。テメェは帰って竹刀でも振ってな」
自分たちのことには口出しするなと、はっきりと線引きする。
しかし、澤北さんはそんなことで引き下がるような人ではなかった。
「今すぐ、その動画を消せ!」
「オレの話聞いてたか? テメェは部外者なんだよ、部外者。ったく、クソウゼェ」
「お前の方こそ真面目に聞け。動画を消せと言っている!」
「なら100万だ」
「何?」
「100万出すなら、お前のお望み通り、動画を消してやってもいい」
「………本気で言っているのか?」
「さあ、どうだろうなぁー。100万持ってくりゃあ分かるんじゃねぇ?」
「―――ッ、貴様というヤツは」